小売店での食品や菓子、飲料メーカーの仕事の内容と方法(コツ)

食品メーカーや菓子メーカー、飲料メーカーにお勤めの新入社員の皆さん、あるいは、新たに営業に配属になったのだけど、どういう風に仕事を進めて良いかわからない方向けに、担当した小売店での仕事の仕方や方法、コツについて説明していきます。

イオン幕張新都心店:イオン本部に1番近い店で、著者も頻繁に売場視察に寄っています

目次

1.担当の小売店での日々の仕事とは
1)食品メーカーの営業の店まわり(各店巡回)と入店ルール
2)食品メーカーの営業のフェイス管理
3)食品メーカーの営業のPOP作成と設置
4)食品メーカーの営業の商品補充と発注支援
5)本部意向や他売場情報の提供
2.担当の小売店の本部バイヤーとの商談の内容や方法
1)商談で議題にあげる内容
2)商談のコツは雑談9割本題1割の法則を順守
3)商談書作成のコツ
4)商談時に持参したい持ち物

1.担当の小売店での日々の仕事とは

 ここでは、食品や菓子、飲料メーカーの新入社員の方や、配属が変更になり、営業職に新たに着任された方、転職で初めて食品や菓子、飲料メーカーで営業をしようとされる方向けに、大まかな仕事や業務について、紹介していきます。

1)食品メーカーの営業の店まわり(各店巡回)と入店ルール

 まず担当する小売店は、概ね食品スーパー、ドラッグストア、コンビニエンスストア、高速道路の売店や道の駅といったところでしょうか。他にも食品や菓子、飲料を扱う小売店は存在しますが、概ね大きな売上が望めるのは、このあたりではないでしょうか。店回りとは、後ほど紹介する本部商談の際に、あらかじめ許可をとっておいて、各店を順次、回って売場を管理するということになります。例えばイトーヨーカ堂の本部で許可をもらえたら、イトーヨーカ堂和光店といった個店を巡回し売場管理していくのです。気を付けてほしいのは、コンビニエンスストアです。こちらは、100%巡回許可はもらえませんので、店回りは出来ないと考えてください。他は、概ね何らかの形で許可をもらえるでしょうから、対象になります。

 入店時は必ずバックヤードから入ります。入店時には社名、お名前、連絡先、入店時間等を記入する欄がありますから、必ず記入します。その際、ほとんどの御店では入店証というものを渡されます。これを視覚的にわかりやすいところに掲示して、バックヤードから売場に向かいます。入店証は、ほとんどの御店では、名刺ホルダーのようなもので、首から掛けるパターンが多いです。

 売場管理と先ほどから書いていますが、管理すべき売場は、自社の商品が品揃えしているカテゴリーの売場を指します。菓子パンなら日配のパン売場、チョコレート菓子ならドライのチョコレート売場と言った具合です。この管理ですが、概ね次のことを行います。フェイス管理、売場の整理整頓、POPの取り付け、商品補充、発注支援等々です。必ず、ご自身の扱う売場担当者を訪ねて(菓子であれば菓子担当者、漬物なら漬物担当者等)、会話をしてから、このような作業にあたるようにしましょう。勝手にやっていると、まず怒られます(笑)。会話では、後ほど説明しますが、本部の意向や本部商談のフィードバック、他小売店の売れ行き状況といったことを中心に話し、その担当者が売場創りや陳列の工夫に活かせる情報提供を心掛けます。無論、何度も訪問するようになると、雑談も弾むものです。そうなってくれば、その担当者は心を開いてくれたと思って間違いないでしょう。自社に優位なように、種々、取り計らってくれることでしょう。

 なお、店回りは、すべての御店を回れることが理想ですが、大手流通業の場合、現実的には不可能です。例えばイトーヨーカ堂と言っても全国にあるわけですから、あなたの会社が、よっぽど大手で、複数人で、かつ各地域に担当者がいないと、到底不可能なことです。ですから、基幹店を優先に回るようにしましょう。これは、本部商談の際にバイヤーに聞くか、すでに自社の商品が導入済みであれば、売上が大きいお店と考えてもらって良いと判断します。

2)食品メーカーの営業のフェイス管理

 フェイスとは、商品陳列の最前面を指します。お客様が商品を手に取って購買していくと、手前に商品の面が見えず(下記画像の赤丸の部分)、お客様への視認性が低下します。そこで、営業担当者は、店回りで個店に入店した際は、まず、自社の商品を最前面に見えるように、陳列する(整理する)ことをおススメします。

3)食品メーカーの営業のPOP作成と設置

 POPは、必ず本部で許可を得たものを、個店で掲示するようにします。勝手に掲示していますと、個店の担当者から本部に連絡が行き、二度と許可を得られなくなったりします。必ず本部の許可を事前に取るようにします。POPは、自社の商品への視認性を高めるために実施します。例えば飲料売場で、自社の商品が「新商品」として導入された暁には、お客様にとっては初お披露目になります。ですから「新商品」であることがわかるような掲示や、「どのような風味なのか?」が伝わるようなPOP等を掲示することになります。

 POPの作り方や書き方の方法やコツは、こちらの記事で詳しく説明しています(⇒POPの作成の四方法とコツ

4)食品メーカーの営業の商品補充と発注支援

 店回りをしていて、自社の商品が売れていて、スペースが空いているようなときは、販売ロスになってしまうため、売場の担当者の許可を得て、自社の商品在庫をバックヤードから探し、補充します。仮にバックヤードに在庫が無いときは、担当者にお知らせし、可能な限り早い段階で発注するようにお願いします。売場の担当者と仲良くなってくると、発注の仕方や端末を貸してくれることもあります。実際、支援先の食品メーカーの担当者には、そのような関係性が出来ているところもあります。こうなると、自分自身で、発注を行うことができ、納品される日に品出し、陳列を手伝いに来るなど、売場担当者の負担を軽減するアプローチも叶います。

バックヤードに山積みされた商品:売場担当者の方も御苦労されています

5)本部意向や他売場情報の提供

 売場担当者にお会いする際は、必ず、直近の自社の商談状況を、売場担当者にフィードバックするようにします。例えば本部との商談で、自社のポテトチップスが特売を行うことになっていて、週末に各個店に30ケースずつ配荷されるような場合、事前にその旨を伝えておき、エンドや催事売場のスペースを確保できるよう、担当者に心の準備をお願いしておきます。自社の商品の売場での消化率(要するに売行き)が高いと、また次回の本部商談時に有利になったり、追加で注文が入ったりと、嬉しいことが必ずあります。ですから、必ず売場担当者に事前に話しておくようにします。売場担当者も日々の品出しで疲れていて、あまりに多い量がお店に本部支持で送り込まれてくると、ウンザリするものです。ですから、必ず「ご苦労をかける旨」を丁寧に「お礼」と共に、伝えておくと良いです。その営業マンへの心象が良くなることでしょう。

 また、売場担当者は、常々、社内の別の御店の売れ行きや取組情報、競合店の売れ行きや取組情報を気に掛けています。その良いところを売場に取り入れたり、悪いところは自店の売場では改善したいと思うものです。店回りで得た他店の情報は、話せる範囲で、担当者に伝えるようにしましょう。これを繰り返すことで、その売場担当者は、この営業マンは役に立つと、思ってくれるようになり、好意的に接してくれるようになります。

2.担当の小売店の本部バイヤーとの商談の内容や方法

1)商談で議題にあげる内容

JR中央線四ツ谷駅 麹町口から徒歩最寄のイトーヨーカ堂本部の玄関:セブン&アイホールディングスの本部でもある 

 担当の小売店(食品スーパー、ドラッグストア、コンビニエンスストア)の本部を担当することになったら、必ず本部商談の機会を持てるように取組みましょう。とは言え、どうやって本部商談にこぎつけるかは、かなり難題です。大手の食品メーカー、菓子メーカー、飲料メーカーであれば、バイヤーも好意的に時間をとってくれますが、中小や小規模な事業者の場合、かなり難しいのが実情です。アプローチの方法やノウハウは、説明が長くなるため、別の機会にこちら(⇒近日公開)で説明しますので、確認ください。さて、本部商談であげる議題は主に次のようなことです。

⇒定番への既存商品の品揃え依頼

⇒新商品の導入依頼

⇒これら商品にかかわる広告宣伝の取組の全容

(交通広告、テレビコマーシャル等々)

⇒御店への巡回許可や個店での受注促進の許可

2)商談のコツは雑談9割本題1割の法則を順守

 前項で、本部商談の内容の議題について、紹介しましたが、バイヤーは日々、このような話を、各食品や菓子、飲料メーカーから商談され、飽き飽きしています。そこで、商談でバイヤーの気を魅くためには、雑談9割本題1割といったバランスの良い商談を心掛けてほしいと思います。詳しくはこちら(⇒バイヤーへの商談の方法・コツ)に紹介していますので、ぜひ活用してください。きっと有利な商談が叶うことでしょう。

3)商談書作成のコツ

 バイヤーと商談を有利に進めるためには、商談書も相手の印象に残るものでなければなりません。無論、各小売業の規定のモノを使うことがありますが、補足として自社で用意したものを持参して説明に使っても構わないのです。従って、バイヤーと有利に商談を進める商談書の作成のコツについて、こちら(⇒近日公開)で紹介しておきます。

 余談ですが、後述する帳合の問屋さんと、本部商談の前に、必ず「どのような商品を、どのくらいの値段で紹介するのか」を話し合っておきましょう。ほとんどの食品や菓子、飲料メーカーは、商流として問屋さんを介していることが、ほとんどです。つまり、メーカーが問屋に卸し、問屋が少々の儲けをのせて、小売店に卸すのですから、小売店に卸す「卸値」の権限は、問屋にあるわけです。勝手に小売店に「**円」で卸しますといって、商談をしてしまうと、問屋さんが儲けが無く、嫌われることになります。従って、必ず問屋さんに「小売店への卸値」を聞いて、商談書や見積書に卸値を記載するようにしましょう。

4)商談時に持参したい持ち物

 主な持ち物は、見積書(小売業の本部指定のモノor無い場合は自社のモノ)、商品規格書(小売業の本部指定のモノor無い場合は自社のモノ)、商談書、商品カタログやパンフレット、広告宣伝の計画書、商談書を補足する1次データや2次データの資料。

==お知らせ==

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久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。

講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。

2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。

近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。

主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。

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