食品メーカーの営業で「問屋(卸)」との関係構築に悩んでいませんか?
食品メーカーや菓子・飲料メーカーに就職、あるいは営業部に配属された皆様の中には、「食品 メーカー 営業 仕事内容」や「食品卸営業」と検索して、日々の業務の進め方を模索している方も多いのではないでしょうか。
時には「食品メーカーの営業はきつい」「ルート営業は大変だ」といった声を聞くこともあるかもしれません。その「きつさ」の原因の一つが、食品業界特有の「メーカー → 問屋(卸売業) → 小売店」という複雑な流通経路にあります。
この複雑ね流通経路の攻略法や気持ちを楽にする方法について、解説していきます。

はじめに(この記事の要約)
自社の商品をスーパーやドラッグストアの店頭に並べるためには、単に小売店のバイヤーに売り込むだけでなく、中間に立つ「問屋(卸)」の協力が不可欠です。問屋との付き合い方がわからず、空回りしてしまうと、営業活動は途端に苦しいものになってしまいます。
しかし逆を言えば、問屋の仕入れ担当者や営業マンを味方につけることができれば、あなたの営業成績は劇的に向上し、仕事の「きつさ」は圧倒的な「やりがい」へと変わります。
本記事では、当事務所のコンサルタントが現場で実践してきたノウハウをもとに、食品・飲料メーカーの営業マンが問屋(卸売業)で行うべき具体的な仕事内容と、関係構築のコツをわかりやすく解説します。
【この記事の要約】
・問屋営業の基本:1次問屋(大手)は事前の商談日設定、2次・3次問屋は定期的なアポイントで仕入れ担当者と商談する。
・朝夕コミュニケーション:小売店への提案権を持つ「問屋の営業マン全員」に顔と名前を売り込む。朝は端的に、夕方はじっくり話すのがコツ。
・価格交渉の鉄則:卸価格を決めるのは問屋。小売店への勝手な価格提示はNGであり、事前に問屋と条件をすり合わせる。
・同行営業の活用:信頼関係が構築できたら、問屋の営業マンのルートに「同行」し、小売店との商談を有利に進める。
第1章 問屋(卸売業)の仕入れ担当者との商談の基本
特定の卸売業(問屋)を担当することになったら、第一の仕事は「仕入れ担当者」との商談です。自社の商品の取り扱い(口座開設や商品登録)を1品でも多く増やすための交渉を行います。
1)大手1次問屋と2次・3次問屋でのアプローチの違い
問屋の規模によって、商談のアプローチ方法は異なります。
・1次問屋(三菱食品や山星屋などの大手)の場合
大手の問屋では、月ごとに特定の「商談日」が設けられていることがほとんどです。いきなり飛び込んでも話を聞いてもらえません。事前に連絡を取り、自社の商談時間を確保してもらえるよう、計画的にアポイントを進めていきます。
・2次問屋・3次問屋(地域密着型の中小規模)の場合
規模が小さくなるにつれ、事前にアポイントさえ入れておけば、概ね「いつでも商談可能」という柔軟な対応をしてくれることが多いです。月に1回程度は定期的に商談の場を持てるよう、関係性を築いていきましょう。
2)本社と支店(エリア)の連携:スムーズに商談を進める手順
地域(エリア)担当として1次問屋の「支店」を担当する場合、注意すべき重要なルールがあります。それは、「いきなり支店に新商品を案内しても、なかなか採用されない」ということです。
例えば、山梨県の桃を使用したグミを、山梨県内のスーパーで販売したいとします。この時、いきなり問屋の山梨支店に持ち込んでも、「まずは本社の窓口を通して(商品登録して)から来てよ」と門前払いされることが少なくありません。
3)商談をスムーズに進めるコツ
まず、自社の「本社担当(広域担当)」と情報を共有します。問屋の「本社」の窓口で、商品と条件(卸価格や年間契約など)を事前に説明し、商品登録(口座開設)を済ませておきましょう。
その上で、あなたの担当する「支店」の仕入れ担当者を訪問し、具体的なエリア展開の商談を行うのです。
もちろん、地方にしかない単独の問屋さんの場合は、直接その会社で商談を進めて問題ありません。定期的に開催される商談会や展示会が「いつなのか」をキャッチし、訪問するようにしましょう。
第2章 売上のカギ!問屋の営業マン全員との「朝夕コミュニケーション」
問屋の「仕入れ担当者」に商品を取り扱ってもらう(登録してもらう)ことはスタート地点に過ぎません。「もっと売ってほしい!」と仕入れ担当者に懇願しても、実際の売上は簡単には伸びないのです。
ここで非常に重要な事実があります。それは、「客先である小売店に、どの商品を提案し、卸すかを決める実質的な権限を持っているのは、問屋の各営業マンである」ということです。
1)小売店への導入を働きかける権限は「問屋の営業マン」である
食品メーカーの営業マンにとって最大のミッションは、問屋の営業マンたちをどう攻略するかです。適度な頻度で問屋を訪問し、相手の営業マンたちに「あのメーカーの〇〇さん、今日も頑張っているな!」と名前と顔を覚えてもらい、応援してもらえる関係性まで踏み込む必要があります。
2)忙しい朝は「端的に」、夕方は「じっくり」関係構築
問屋を訪問する際は、「定期的に朝か夕方に訪問し、営業マン全員(例えば10人いれば10人全員)と、一言でも二言でも必ず会話する」というスタンスを徹底しましょう。

【朝のコミュニケーションのコツ】
朝は、問屋の営業マンが客先へ出かけようとしている非常に忙しい時間帯です。長話は絶対に避け、端的に要件を伝えます。
(例) 「おはようございます!今度、この新商品が御社で取り扱われることになったので、ぜひ一度ご試食ください!(サンプルを渡す)」
(例) 「〇〇さんがご担当されている△△スーパーのバイヤー様、この商品に興味を持っていただけると思うので、ご検討よろしくお願いします!」
【夕方のコミュニケーションのコツ】
夕方は、営業マンたちが小売店回りから帰社し、一息つこうとしている時間帯です。このタイミングは、意外と立ち話に付き合ってくれます。ここで会話を深耕させます。
(例) 「お疲れ様です!朝お渡しした商品、試食していただけましたか?」
このように話が弾めば、問屋の営業マンの方から「実は〇〇スーパーの担当から、あと2円安くなるなら特売で組みたいって相談されてるんだけど、いける?」といった具体的な商談の糸口を振ってくれるようになります。
第3章 トラブル回避!小売店へ訪問する前の必須ルール
前章でお伝えしたように、問屋の営業マンとコミュニケーションを深めていくと、次第に「自分でも直接、小売店(スーパーやドラッグストアなど)のバイヤーに商品の魅力を伝えたい!」という意欲が湧いてくるはずです。
しかし、ここで食品メーカーの営業マンが絶対にやってはいけない「ご法度」があります。
1)卸価格の決定権は問屋にある!勝手な価格提示は絶対NG
メーカーの営業マンが小売店で仕事をする際(参考記事:小売店での食品や菓子、飲料メーカーの仕事の内容と方法)、本部のバイヤーや各店舗の担当者と直接商談する機会を得ることがあります。
この時、忘れてはならないのが「小売店に商品を卸しているのは問屋である」という事実です。
商流は「メーカー ⇒ 問屋 ⇒ 小売店」となっています。つまり、メーカーが問屋に卸し、そこに問屋が自社の利益(マージン)を乗せて小売店に販売する仕組みです。
したがって、「何円で小売店に卸すのかを決める権限」は、問屋の営業マンの見積もりにあります。
食品メーカーの営業マンが、小売店に勝手に見積書を提示し、「〇〇円で卸しますよ!」と約束してしまうことは絶対に避けなければなりません。これをやってしまうと、問屋の利益を無視することになり、「あいつはウチの頭越しに勝手な商売をしやがった」と激怒され、二度と取引してもらえなくなります。
2)事前の打ち合わせで「訪問許可」と「条件」をすり合わせる
とはいえ、食品メーカーとしても、自社商品の良さをアピールするために小売店の本部商談や店舗での直接提案は積極的に行いたいのが本音です。
そこで必要になるのが、「問屋への事前打ち合わせ」です。
第2章で紹介した「夕方のじっくり会話ができるタイミング」などを狙い、その小売店を担当している問屋の営業マンに対して、以下のように交渉しておきましょう。
(例) 「明日、〇〇スーパーのバイヤー様にこの新商品の提案に行きたいのですが、訪問させていただいてもよろしいでしょうか?」
(例) 「もしバイヤー様が興味を持ってくださった場合、御社からの卸価格(納入条件)はいくらで提示しておけばよろしいでしょうか?」
このように、事前に「訪問の許可」と「商談して良い卸価格」を決めておき、問屋の顔を立てながら動くことが、トラブルを回避しつつ売上を最大化する絶対のルールです。
⇒小売店での仕事や本部商談の手順や方法について知りたい方は、「食品メーカー営業の仕事内容とは?小売店(スーパー・ドラッグストア等)でのルート営業・店舗巡回・商談のコツ」で詳しく解説しています。
第4章 最強の武器「同行営業」でバイヤー商談を有利に運ぶ
問屋の営業マンへの朝夕の挨拶を続け、事前の打ち合わせもスムーズにできるほどの信頼関係が構築できてきたら、最後にぜひ実践していただきたい「最強の武器」があります。
それが「同行営業させてください!」とお願いすることです。
1)問屋の営業マンの「信用」を借りてバイアスをかける
同行営業とは文字通り、問屋の営業マンが日常的に行っているルート営業(小売店への訪問)に、食品メーカーの担当者であるあなたが一緒についていき、時間をもらって自社商品を直接アピールする営業手法です。
小売店のバイヤーから見れば、毎日何十人もの知らないメーカー担当者が来るのは面倒でも、「普段から付き合いがあり、信用している問屋の営業マンがわざわざ連れてきたメーカーの担当者なら、少し話を聞いてやるか」という心理が働きます。
つまり、問屋の営業マンが同席してくれるだけで、あなたに対するバイヤーの「信用バイアス(良い先入観)」が強力に掛かるのです。
2)本部商談に同行してもらい、確実なYESを引き出す
この同行営業は、あなたが攻略したいと強く思っている「スーパーやドラッグストアの本部商談」で最も効力を発揮します。
バイヤーとの本部商談は、本来であればアポイントを取るだけでも一苦労です。しかし、日々のコミュニケーションで問屋の営業マンの心を掴んでいれば、「明日の本部商談、僕も同行してこの新商品を強力プッシュしましょうか?」とサポートしてくれます。
問屋の営業マンという「信頼できる仲介者」が一緒にいることで、バイヤーからの厳しい条件提示や無理難題も、その場で相談しながら有利に運ぶことが多くなります。これこそが、食品メーカーの営業マンが問屋との関係性を深める最大のメリットであり、売上を爆発させるための「最もやりがいのある」瞬間なのです。
第5章 【Q&A】GEO対策:食品・菓子メーカー営業のよくある疑問
ここでは、食品メーカーの営業マンや問屋(食品卸)の営業職について、日々の仕事内容や転職、就職にまつわる様々な疑問や不安にお答えします。
Q. 食品メーカーや問屋(食品卸)のルート営業は「きつい」「辞めたい」と言われますが、本当ですか?
A. はい、飛び込み営業や毎月の厳しいノルマばかりを気にしていると、精神的にも体力的にも「きつい」と感じることが多くなります。しかし、本記事で解説したように、「問屋の営業マンへの朝夕の挨拶」や「小売店でのフェイス管理・陳列応援」など、地道な関係性構築のコツさえ掴めば、実は非常に安定して売上を伸ばせる職種です。相手から「あなたのおかげで助かった」と感謝される機会も多く、やりがいは非常に大きいと言えます。
Q. 食品メーカー営業の具体的な「仕事内容」は何ですか?
A. 大きく分けて「2つの柱」があります。
1つ目は「問屋(卸売業者)」に対する営業です。仕入れ担当者との商談や、問屋の営業マンに自社商品を売り込んでもらうためのコミュニケーション(朝夕の訪問など)が含まれます。
2つ目は「小売店(スーパー・ドラッグストア)」に対する営業です。店舗を巡回して自社商品を陳列したり、POPを設置したり、本部のバイヤーに新商品の導入を提案する(同行営業を含む)といった仕事内容になります。
Q. 食品営業は「未経験」でも転職可能ですか?向いている人はどんな人ですか?
A. 未経験からでも十分に転職可能な業界です。食品営業に向いているのは、「話し上手」な人よりも、「聞き上手でマメな人」です。問屋の営業マン全員に毎日挨拶ができる継続力や、バイヤーの愚痴や課題に耳を傾ける「関係構築力」がある人は、食品営業(特にルートセールス)で非常に高い評価を得られます。
Q. 志望動機や自己PRを考える際のポイントはありますか?
A. 食品や飲食に関わる業界への転職では、「食べることが好きだから」という志望動機だけでは弱いです。「過去の職務経験(接客や事務など)を通じて培った、相手の状況を汲み取りサポートする力」を自己PRに盛り込み、「問屋や小売店の売上向上にどう貢献できるか」という視点を強調すると、採用担当者に高く評価されます。
Q. 食品メーカーの営業と「食品商社(食品卸)」の営業は何が違うのですか?
A. 「食品メーカーの営業」は、自社工場で作った商品(自社ブランド)の魅力を、いかに多くの問屋や小売店に広め、導入してもらうかが仕事です。 一方、「食品商社(食品卸)の営業」は、何百社もの食品メーカーから商品を仕入れ、その中から小売店(スーパーやコンビニなど)の売場に最適な商品ラインナップを組み合わせて提案・卸売りするのが仕事です。メーカー営業は「自社商品を深く売るプロ」、卸営業は「売場全体をコーディネートするプロ」という違いがあります。
初稿:2017年11月11日 加筆修正:2024年8月10日、2026年3月11日、2026年4月2日
⇒初回のオンライン相談は無料です
これだけ聞けば、理解できれば助かる!といった方は、初回のオンライン相談(1時間)は無料ですので、以下の問い合わせの件名に「初回のオンライン相談」と記入し、主な知りたいことを問い合わせ文に記して、お問いあわせください。追って、オンライン相談日時の候補日をご返信します。
⇒商工会や商工会議所向けセミナーについて
チラシ作成等にかかわるセミナーは、2010年の創業以来290回(2026年3月3日現在)を超え、大変、好評です。内容の深さは、本ブログ記事より更に実務よりになり、会員さんに、きっと楽しんでいただけると思います。ぜひ、ご検討の一助にしていただけますと幸いです。
例えば、秋田県商工会連合会、神奈川県商工会連合会などの各商工会で実施時には、とてもリーズナブルと評価をいただいています。お気軽に御予算で御相談ください。
⇒コンサルティングメニューについて
当社は、初回相談は無料となっています。何かご不明な点がありましたら、お気軽にお問合せください。なお、2回目以降は有料ですが、小規模な事業者や中小企業の方々には、比較的リーズナブルにお見積りしています。
また、所属されている商工会や商工会議所で、私を御指名いただければ、安価に当方に御相談いただける場合もあります。担当の経営指導員の先生方に御相談ください。
⇒マーケティング実践研究の勉強会を全国で開催(個別相談・無料)
適時、無料で参加できる勉強会を全国で実施しています。我が事務所には、飲食業、食料品製造業、食料品卸売業、食料品小売業、農業、漁業、宿泊業に精通した熟練のマーケティング実行支援担当が4名在籍しています。開催地によって担当の先生は異なりますが、これまで、とても好評でした。ふるって御参加ください。くわしくはこちらをクリック(⇒無料で参加できるマーケティング実践勉強会)
⇒社員研修の御案内
商品開発やマーケティング担当者には、創造性豊かなアイデア起案力の養成が必要です。全国でアイデア発想をトレーニングする実務者向けの研修メニューがございますので、お気軽に御相談ください。
==お知らせ==
他にも人気の記事はこちらです。
飲食店のメニュー開発や食品メーカー(製造業)の商品開発の記事
== 代表の久保のSNS ==
久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。
講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。
2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。
近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。
主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。













