目次
1.ジョブ理論とは
2.ジョブ理論を活用し顧客価値を創出する手順
3.ジョブ理論を活用しユニークな顧客価値を創出した事例
1)温泉旅館(宿泊業)の事例
2)米菓製造業&米菓専門店(食料品製造業/食料品専門店)の事例
3)お寿司屋(飲食店)の事例
1.ジョブ理論とは
ジョブ理論は英語で「Jobs-To-Be-Done」と書きます。クリステンセンが、下図の著書で紹介した概念で、「ユニークな顧客価値」を小規模事業者や中小企業の皆さんが想像するのに役立ちます。私の支援先でも頻度よく登場するものなので、紹介しようと思います。
ジョブ理論は、顧客が解決したい問題点や課題が「何なのか?」を分析することから始まります。その上で、その問題点の改善や解決、あるいは課題を充足するような商品、製品、サービスを構想する理論です。
この理論を活用するには、顧客が解決したい問題点や課題を発掘することがポイントになります。とは言え、何もガイドをしないで、その問題点や課題を検討すると、中々、想像が難しいので、本書では、「限られた状況」を想像することが入口と、紹介されています。
なお、下記はマーケティングで登場する「ドリル」の話ですが、「下記画像のようようなサイズの穴を空けたい」というものがジョブ(顧客の抱えている課題)で、その課題を実現するために、画像のようなドリルを購入して使ったということです。ジョブ理論では、この購入を「雇用」と読み替えると、理解しやすいです。つまり、仕事(ジョブ)があるから雇用(ハイヤー)するのです。
2.ジョブ理論を活用し顧客価値を創出する手順
それでは、「限られた状況」を想像することから、手順を追って、説明していきます。細かくは、本書を御覧いただくとして、支援現場で簡素に使っている「3ステップ」で紹介していきます。
3ステップとは以下になります。
ステップ①:限られた状況を想像する
ステップ②:ジョブ(状況における課題)の認識
ステップ③:ジョブを解決や改善できるツール(雇用されるもの)を提案する
では、順に見ていきましょう。
電子レンジで温めて食べるレトルト米飯を製造している事業者を事例に紹介します。
ステップ①:限られた状況を想像する
「電子レンジで御飯を温めて提供すると、旦那に手抜き料理だと思われる」という状況があることを、顧客調査で知っています。
ステップ②:ジョブ(状況における課題)の認識
しかしながら、調理を楽にしたいので、レトルト米飯等を「電子レンジで温めて御飯を提供したい」という思いが強く、それでいて「手抜きだと思われたくない・言われたくない」といった課題があります。
ステップ③:ジョブを解決や改善できるツール(雇用)を提案する
電子レンジで御飯を炊くという提案をする。電子レンジではあるが、ご飯を炊くので手抜きとは言わせない(レトルトを温めるではなく、御飯を炊く)ようにする。
3.ジョブ理論を活用しユニークな顧客価値を創出した事例
1)温泉旅館(宿泊業)の事例
ステップ①:限られた状況を想像する
夫婦で山間にある宿泊施設に。16時にチェックインし温泉を堪能。その後、18時から1時間程度の時間を掛けて食事。19時以降、とくに明確な目的もなく、淡々と過ごしている。
ステップ②:ジョブ(状況における課題)の認識
何か、暇つぶしになって、思い出になるようなことが無いかな・・
ステップ③:ジョブを解決や改善できるツール(雇用)を提案する
暇つぶしになるような「夜景見に行く短時間ツアー」
2)米菓製造業&米菓専門店(食料品製造業/食料品専門店)の事例
ステップ①:限られた状況を想像する
出張の土産を持って、取引先を訪問することがある。
ステップ②:ジョブ(状況における課題)の認識
取引先で、渡して恥ずかしくなく(見栄が守れ)、話題が弾むような御菓子があると嬉しい。
ステップ③:ジョブを解決や改善できるツールを雇用する
日本で1番価格が高い高級な米菓。半分は醤油味、半分は米の味を楽しめるように味無し(プレーン)といった「1枚で2度おいしい」米菓
3)お寿司屋(飲食店)の事例
ステップ①:限られた状況を想像する
離乳食で子供にすり身を提供している。既製品ではなく、手作りにこだわっている。
ステップ②:ジョブ(状況における課題)の認識
少し余分かな(多いかな)と思いつつ、食品スーパーで刺身を購入している。切り身1つが欲しいのに・・
ステップ③:ジョブを解決や改善できるツールを雇用する
子育てで魚の切り身を1切使って、調理できる個包装
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飲食店のメニュー開発や食品メーカー(製造業)の商品開発の記事
久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)
加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。
講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。
2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。
近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。
主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。