規模が小さな食品メーカー(食料品製造業)の方で、度々 見かける誤解の1つ「ターゲットを絞った方が良いのか、拡げた方が良いのか」について説明します。
目次
1.ターゲットとは
2.ターゲットの設定の方法
3.ターゲットの設定は絞った方が良い理由

1.ターゲットとは
ターゲットとは、自社や御店がターゲットにしたい顧客層のことです。具体的にどんなお客様に来店してほしいか、どんなお客様に自社の商品を使ってほしいか、といったことをイメージすることからはじまります。
2.ターゲットの設定の方法
ターゲットの設定は、競合を意識したポジショニング、そして顧客ニーズの両面を検討することで、理解できます。詳しくはこちらに記載しています。活用ください(⇒こちらをクリック)
3.ターゲットの設定は絞った方が良い理由
先日も支援先の菓子メーカーより、あった質問です。
「ターゲットを絞ると、売上獲得機会が減少するのですよね・・」
「売上獲得機会の減少が怖いので、ターゲットを広くしても良いですか?」
小規模な食品メーカーに限らず、飲食店でも、悩ましい議論ですね。
当事務所の考えを先に紹介しますと、以下のようになります。
回答:ターゲットを絞った方が、売上獲得機会が向上します(利益も。。)
=====理由は以下になります=====
ターゲットを設定するのは、効率的な販売促進活動により、獲得する売上や利益を、極大化するためです。特に売上は、「売上≒ターゲットの購買額」と考えることができ、重要です。
ターゲット設定の視点で、売上を表現すると、次のような算出式になります。
売上=ターゲットリーチ×トライアル購入率×リピート購入率
ターゲットを絞ると、販売機会が減ると考えている食品メーカーや飲食店の方は「ターゲットリーチ」という側面しか見ていない可能性が高いです。
しかしながら、ターゲットの設定の目的の1つに、利益がある以上、ターゲットリーチのみでは不充分です。トライアル購入やリピート購入までを検討し、実の成果に結びつけてこそ、見込客獲得、さらには新規客獲得さらには固定客獲得といった目的に到達できるものです。
ターゲットを絞るという考え方については、限られたターゲットに対して予算を集中させ、トライアル購入率とリピート購入率を引き上げるという解釈が正しいのです。逆に、広くターゲットを設定した場合、限られた予算の中ではどうしても「浅く広く」なってしまいます。結果、浅く広くリーチは取れても、リーチの密度が薄くなるため、肝心のトライアル購入やリピート購入につながらないことになります。
一方、最も収益が見込めるターゲットに絞ってターゲティングし、予算を集中させれば、有望なターゲットに対して密度を厚くアプローチできます。つまり、トライアル購入につながりやすくなります。更には、浅く広く獲得したトライアル顧客と比べて、狭く深く獲得したトライアル顧客の方が、商品やサービスに対するニーズや理解、あるいは感情移入の度合いが強いため、リピート購入にも結び付きやすいものです。
このように考えると、ターゲットを絞ると販売機会が減るという考え方は、ターゲットリーチのみに着目し顧客化を無視した一面的な考え方であり、合理的でないことに気付きます。
また、売上獲得の結果の「利益の極大化」も重要です。利益の極大化は「売り上げを上げる」こと、「コストを下げる」こと、この2つから実現可能です。つまり「最小の費用で、最大の利益が見込めるターゲット」が必要なのです。
ターゲットは「なるべく拡く設定する」という考え方だと広告宣伝費等のコストがかさんでしまいます。そこで「最も収益性の高いターゲットに絞る」必要があるのです。
そのようなターゲットの設定の仕方は「何度も購買してくれそうな方」を設定することがカギをにぎります。
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==お知らせ==
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久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。
講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。
2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。
近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。
主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。