食品メーカーの棚割方法の1つ線形計画法の活用法

 数十年前までは、食品スーパー等の棚割は、そのスーパー等を担当するカテゴリーリーダーのメーカーの仕事でした。

 しかしながら近年、種々の棚割システムが普及する中で、小規模な食料品製造業においても、必需なスキルの1つになりつつあります。とくにエンド・コンコースの売行きが良い売場で、値差補填して特売攻勢を掛けていくことは狙いたい取組です。ここで実績を積めば、定番導入にも繋がる可能性が飛躍的に伸びます。

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 とは言え、お金をかけて棚割システムを導入することが現実的では無い小規模事業者が多いのも事実です。そこで、手計算(エクセル活用等)でも、論理的なエンド・コンコースの売場を提案できる方法について説明していきます。

1.売場での他の品揃え候補の商品を知る

 食品スーパーのバイヤーと商談する際には、その売場で他にどのような商品を扱う予定なのかを知るように努力します。その上で、1個あたりの売価、粗利益、商品の高さや奥行といった情報を得ます。とは言え、売価は教えてくれても、粗利益までは教えてくれないことが通常です。

2.品揃え候補の商品と自社導入意向商品の制約条件を整理する

 1で得た情報を使い、売価(または粗利益)、棚に何フェース陳列可能か、棚の奥に何個ストック可能かを整理していきます。話をわかりやすくするために、商品が自社の導入意向商品(商談で導入したい商品)と他1社1品しか無いこととします。

 自社:売価200円、3尺1本の棚に7フェース、奥行きは5個並べることが可能

 他社:売価220円、3尺1本の棚に5フェース、奥行きは6個並べることが可能

3.制約条件を数式として扱う

 2で得た制約条件を数式にしていきます。売場で陳列(棚割)する目的は、売上や利益の極大化です。ですから、その売上や利益が極大化する組合せを探っていくのです。なお、ここでは売上でアプローチすることとし、何フェース並べるかをそれぞれ、X、Yと表すことにします。

 求める売上高:200円×5個×X + 220円×6個×Y

 棚の列数(*) :X + Y = 6フェース

 なお、XとYは整数です。X≧1、Y≧1

(*) 6フェースの中に自社商品と他社商品を並べることとします

4.最適なフェース数(棚割数・陳列数)の算出

 3で得た式を説いていきます。商品数が多くなると、計算が複雑になりますので、エクセルのソルバーを活用すると便利です。事例で掲載しておきます。

4.最適なフェース数(棚割数・陳列数)の商談の仕方

 3の結果、商談先の食品スーパーにとって、自社の商品は1フェースの提案が適切と言えます。もっとたくさんフェースを取れるように提案すれば良いのにと思われるかもしれませんが、持続的で良好な関係性を気付いていくには、このような謙虚な提案が、バイヤーに評価されることを念頭に置いておかなければなりません。

 もし、多くフェースを確保したいのであれば、粗利面で貢献できないかを探ることです。他社商品の粗利率や額情報を獲得できれば、同様な計算が可能です。それでも1フェースが限界、でも、もっと品揃えして欲しいというのであれば、更なる値差補填で、フェース数を拡げることも叶うでしょう。

 今回はエンド・コンコースの特売提案をイメージした線形計画法の活用でした。これは定番の売場でも同様に扱えますので、ぜひ、チャレンジしてみてくださいね。

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久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。

講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。

2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。

近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。

主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。

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