食品事業者が展示会・商談会に出展する際の小間(ブース)内容や装飾の方法

今回は、食品メーカーや菓子メーカー等の食品事業者が、展示会や商談会に出店する際、「想定通りの集客が実現できる」「想定通りの売上確保が実現できる」小間(ブース)づくりについて、説明していきます。

目次

1.来場者にとっての小間(ブース)の存在価値を決める
2.小間(ブース)の存在価値に添った文字や図表等の展示内容を決める
3.小間(ブース)の存在価値に添った装飾内容を決める
4.小間(ブース)の存在価値に添ったキャッチコピー等を取りまとめる
5.最後の商談の「ひと押し」の企画を立案し伝える準備をする

備考)文字サイズや文字量も重要

 小間(ブーズ)装飾や、キャッチコピーの開発、さらには、展示内容について、は、出店(出展)側が、何となく、このようなシズル(感じ)だろうと決めて良いものではありません。無論、一方的なブランディングに必要だから等、そのような場面も想定できます。しかしながら、限られた予算で、売上や集客の極大化を進めたい思惑があるのであれば、これでは、実現が不可能です。そのあたりを肝に銘じて、実践していただければと思います。

1.来場者にとっての小間(ブース)の存在価値を決める

まずもって、決めなければならないことは、その小間(ブース)の来場者にとっての存在価値です。なぜ、この小間(ブース)は必要なのか、なぜ、この商品は、必要なのか、逆に言うと、消費者にとって(来場するバイヤー等にとって)、なぜ、無くてはならない存在なのかを決めていかなければなりません。

実際の支援事例として、芳味園株式会社さんの事例を使い説明していきます。同社では、出展に際し、上記のような存在価値を定義することが叶いました。同社の主力商品は、ホワンミーという無添加、無着色の食品調味料です。

(同社webサイトより)

同社の商品は、簡単に様々な食材に調味が実現できることが「売り」ですので、この売りを、来場した生鮮バイヤー目線で、整理することとしたのです。

結果、「バイヤーは、自身の管理する生鮮食材の売上を向上させるネタを探しに来場しているはずだ!」と認識することができ、出展に際しての、これらバイヤーへの存在価値を、「食材(農水畜産物)を拡販できるツール」だと据え、そのことをPRすることとなったのです。

ここで重要なことは、出展する来場者が誰なのか?を強烈に意識することです。この意識が無ければ、その出展するブースの価値を、来場される方に認識してもらえません。芳味園株式会社さんの場合、仮に来場される方が、一般の消費者の場合、時短や料理のレパートリーが増える等、直接的な訴求も可能ですが、この事例では、そのようにしませんでした。なぜなら、来場されるバイヤーが「来場する切っ掛けや動機」が、「あくまで生鮮食材の売上を伸ばすこと」に目的があると判断したからに、他在りません。

2.小間(ブース)の存在価値に添った文字や図表等の展示内容を決める

次に、行わなければならないことは、STEP①で決めた「来場者にとっての存在価値」を、上手に伝えるために、どのような文字情報や、図表が必要になるかを決めることです。芳味園株式会社さんの事例では、次のように決めていきました。

やはり、生鮮バイヤーへの拡販をお手伝いするという小間(ブース)の存在価値を伝える(説得する)内容になっていることに気付かれると思います。文字や図面で伝える際には、大きく3つ程度で簡潔に訴求することが重要です。ここでは、同社の商品ホワンミーを使ったレシピで、バイヤーの売りたい生鮮食材の売上を伸ばす提案を行うことを大々的に訴求していますね。

このようにすることで、バイヤーは、「この小間(ブーズ)の事業者と商売をすすめれば、うちの売場の見直しや改善など、種々のメリットがありそうだ!」と思っていただけることでしょう。

3.小間(ブース)の存在価値に添った装飾内容を決める

次に、STEP②で明瞭にした「来場者にとっての存在価値」を示した文字や図表を、どう装飾していくかということです。装飾は非常に重要で、小間(ブーズ)の前を通過した来場者が、「あっ!当社に関係ありそうだ!」「あっ!気になる!」といった具合に、視覚的に、かつ瞬間に、興味喚起できるようにしなければならないということです。芳味園株式会社さんの事例では、次のように決めていきました。

同社の場合、1つの料理を事例で紹介することとし、大さじ1杯のスプーンで、この料理が「どれだけ調理」できるかを視覚的に表現することとしました。例えば、秋の出店では、冬に向けた売場創りを提案することとし、肉団子鍋としたのです。その肉団子鍋にかかわる必要野菜を量感陳列し、そのレシピを明示します。さらには、模型の大型スプーンを展示し、大さじ1杯の「力強さ」を表現することとしました。

肉団子鍋の肉を魚やお肉と使うことで、水産、畜産系の生鮮バイヤーに興味喚起を図ります。また鍋ですから、野菜は彩りを踏まえると必須になります。

従って、青果、精肉、魚の生鮮バイヤーに働きかけるシズルを意識したのです。なお、バイヤーに自分事になっていただくために、野菜の量感陳列はもちろんのこと、精肉や魚の大型の模型を大々的に展示することとしました。

これら装飾は、外注する必要はありません。社内のメンバーで「ワイワイたのしみながら」、自作することも重要です。出展に際し、メンバーのコミュニケーションが活発になることも期待できます。

4.小間(ブース)の存在価値に添ったキャッチコピー等を取りまとめる

以上のSTEPを経て、「来場者にとっての存在価値」を示した文字や図表、装飾が決まりましたので、それを総括する意味で、小間(ブース)に掲示するポスターや、キャッチコピーのバナーを用意していきます。芳味園株式会社さんの事例では、次のように決めていきました。

ポイントは、書きすぎないことです。なるべく簡素に表現し、アクセスした来場者(ここでは生鮮バイヤー)と会話が弾むように、「寸止め」した表現でとどめておくことが重要です。

5.最後の商談の「ひと押し」の企画を立案し伝える準備をする

 装飾する内容、つまり商談するポイントが決まったら、当日の商談で「バイヤーからの関心を魅きつける策」を検討し、それを伝える商談書やフライヤー(チラシ)を手配りできるようにします。展示会や商談会はバイヤーにとってはイベントですので、その時しか手に入らない情報、その時しか引き出せない値差補填(特売等)の魅力を伝えます。無論、値差補填のような価格優位に頼らなくても、バイヤーの関心を魅き出すことは可能です。例えば、今回登場いただいている事業者の場合、一定数を購入いただいた小売店さんで、マネキン販売を実施する旨を伝えることとしました。売場の賑わい創出も、バイヤーの仕事の一つなので、如何に喜んでくれるか想像がつくところですね。

余談ですが、チラシや商談書は捨てられないように作成することがポイントです。捨てられないということは、気になる、いつか利用したいと思われるということです。そのようなチラシの作り方をこちらの記事(⇒捨てられないチラシの作り方)で紹介していますので、参考にしてください。

備考)文字サイズや文字量も重要

文字サイズや文字量も重要です。来場した方が、小間(ブーズ)を通過する際の時間は、数秒です。その数秒で伝わる文字量か、文字の大きさか、といった点も、しっかりと確認して、準備をすすめましょう。なお、文字サイズ等を、どう考えれば良いのかに悩むと思います。そんな時は、こちらの屋外看板の記事の中にヒント(⇒屋外看板の有効な作り方)がありますので、御覧ください。

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久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。

講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。

2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。

近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。

主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。

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