小規模な(小さな)食品メーカー(食料品製造業)、食品の製造小売り(和菓子店、洋菓子店、味噌屋、醤油屋)、食品の小売業(八百屋、鮮魚店等)、飲食業の方々が、自社の商品、メニューの「顧客ニーズ」を知りたいと思う場面は多々あります。
例えば、新商品開発や新メニュー開発の場面で、種々の集客策や販促策を起案する場面等です。どのような商品にしょうか、どのようなメニューにしようか、どのような集客をしようか、どのような販促策にしようか、といった場面です。その際、必ずといって念頭に置いて進めなければならないのが、顧客ニーズと言われるものです。
1.顧客ニーズとは
顧客が何かを欲しいと思った際の背景にある「理由」や「動機」と言えます。あるいは、日々の暮らしの中で実感している「不満を解消したいとする欲求」や「充足したいとする欲求(つまり欠乏の充足)」「改善してほしいという欲求」と、説明できるでしょう。
この顧客ニーズは、様々な切り口で分類できるのですが、私は、主に以下の6つの切り口で検討することをおススメしています。
「顕在化ニーズ」「潜在化ニーズ」「身体的ニーズ」「心理的ニーズ」、「充足されたニーズ」「未充足のニーズ」
事業者の皆さんが、何かしら商品開発やサービス開発などを行う場合、「顕在化ニーズ」「潜在化ニーズ」「身体的ニーズ」「心理的ニーズ」について深掘りしておくことが良いでしょう。その際、下表のようなマップで整理すると理解が深まります。

2.ニーズ(目的)とウォンツ(手段)の違い
顧客ニーズを深く理解する上で、マーケティングの基礎として必ず知っておくべきなのが「ニーズ」と「ウォンツ」の違いです。
・ニーズ(目的):「お腹を満たしたい」「健康になりたい」「居心地の良い空間でリラックスしたい」といった、顧客が抱える根源的な『欠乏感』や『目的』を指します。
・ウォンツ(手段):「美味しいハンバーグが食べたい」「糖質オフのマフィンが欲しい」「静かな個室のカフェに行きたい」といった、ニーズを満たすための具体的な『手段』に対する欲求のことです。
顧客の「〇〇が欲しい(ウォンツ)」という表面的な声だけを鵜呑みにするのではなく、「なぜそれを欲しいのか(ニーズ)」まで掘り下げて捉えることが、顧客の期待を超える商品開発やサービス提供に繋がります。
3.顧客ニーズの分類と概要
1)身体的ニーズとは
その名の通り、「身体を通じて実感する欠乏状態を充足したいとする欲求」です。例えば、寒い季節、暖かい場所に身を置きたい、温かい食事をしたい、といったものが挙げられます。
2)心理的ニーズとは
その名の通り、心理的な背景から生まれるニーズを指し、「感情(気持ち)を通じて欠乏状態を充足したいとする欲求」です。例えば、「かわいいデザインのものだと気持ちがあがる」「レトロなデザインの方が好み」といった感覚です。
3)充足ニーズと未充足ニーズとは
充足されたニーズ・未充足のニーズについては、実際に売場に足を運んだり、インターネットで検索するなどして、調べることになります。充足ニーズは、市場に「そのニーズを解決する商品やサービスがある」、未充足ニーズは「そのニーズを解決する商品やサービスが市場にない」といった状態を指します。

例え、「顧客ニーズがある!」とわかったとしても、すでに「市場にたくさん存在し、充足されている」のであれば、安易に参入することは避けた方が良いと言えます。
4)顕在化ニーズとは
顧客自身が、「何を不満に思い、解消して欲しいのか」「何を充足して欲しいのか」「何を改善して欲しいのか」が明確にわかっていて、それを要望として、説明できることを指します。
例えば、支援先の和食の飲食店で、1年間、お客様の声をメモ入れして整理していくと、要望の多い順に、下表のように整理できました。

御覧いただくと、理解できると思いますが、いずれも顧客は、「何を不満に思い、解消して欲しいのか」「何を充足して欲しいのか」「何を改善して欲しいのか」が明確です。つまり、こういったものが、顕在化したニーズと言えます。
また、次のようなアプローチでも顕在化したニーズを探ることができます。下記画像は、支援先のマフィン専門店が、マフィンと言えば「直ぐに頭に浮かぶこと:想起」を、複数人の御客様に尋ねてリスト化したものです。これはGoogleやYahoo!といった検索サイトで、どのようなワードで検索されているか等でも知ることができます。

顧客は、何かを知りたい、食べたい、買いたいと思った時に、頭に何かしらの知識や体験が浮かぶものです。この知識や体験が、「顧客ニーズの根っこ」だと覚えておいて欲しいのです。例えば、上のマフィンの想起の中から、カロリーが気になれば「カロリーが低いマフィンが欲しい!」と顧客自身が認知することでしょう。そう、その認知こそが、顧客ニーズなのです。
顧客ニーズは、1面性だけで決まるものではありません。一般的には、あれも、これも、それも、という具合に、わがままな側面があります。そして、この中からいくつかを選択し、そのニーズを多面的に捉えて「顕在化したニーズ」として念頭に形成していくのです。
下図を御覧ください。矢印のサイズは、顧客の心にあるマフィンへのニーズの大きさだと念頭に置いて見てください。『糖質を抑えたい」と思う気持ちが大きいようです。しかしながら、真逆である『甘いものが食べたい』といったように逆に引っ張られる気持ちも混ざっています。つまり、「糖質を抑えたいのだけど、甘いものも止められない」といった複雑な気持ちが垣間に見えます。このように複雑なことが一般的です。つまり、図にある等式が「複雑な心理を捉えた顧客ニーズ=顕在化したニーズ」と言えます。

5)潜在化ニーズとは
顧客自身が、「何を不満に思い、解消して欲しいのか」「何を充足して欲しいのか」「何を改善して欲しいのか」が、明確にわからない状況では、要望として説明でき無い状態にあります。この「説明は出来ないけれど、何かしらの充足要求や改善要求、不満改善要求」を潜在化ニーズと言います。
とは言え、多くの方々は、その要求さえ気づかないものなので、潜伏しているという意味で、潜在といった言葉を使って表現しています。
なお、潜在ニーズは、そのニーズを把握できた段階で、顕在化したニーズとなるので、そのあたりの関係性にも留意しましょう。
4.顧客ニーズを正しく把握するための代表的な手法
顧客ニーズを把握するためには、以下のようなマーケティング手法が広く用いられています。
1)ペルソナの作成とカスタマージャーニーの分析
自社の理想の顧客像(ペルソナ)を具体的に設定し、その顧客が商品を知り、購入し、リピートするまでの行動や感情の動き(カスタマージャーニー)を可視化することで、どのタイミングでどのようなニーズが発生するかを把握します。
2)アンケート調査やインタビュー(VoCの収集)
既存顧客に対して「なぜ購入したのか」「何に不満を感じているか」を直接ヒアリングする手法です。定量的なデータと定性的な生の声の両方を集めることができます。
3)ソーシャルリスニングや競合分析
SNS上の顧客のつぶやきを分析したり、競合他社の商品がどのように評価されているかを調査したりすることで、市場全体のトレンドや隠れた不満(潜在ニーズ)を見つけ出します。
こうしたマーケティングの基本アプローチを踏まえた上で、次項からは「飲食・食品事業者」が店舗や現場ですぐに実践できる、より具体的なニーズ確認方法を解説していきます。
5.顕在化したニーズの検討方法と弱点
1)Yahoo!やGoogleの検索結果から検討する
Yahoo!検索や、Google検索時の使われるサジェストワードやロングテールキーワードからも、顕在化したニーズは知ることができます。なぜなら、インターネットで検索する意図は、調べる方が「知りたい」「見たい」「行きたい」といったウオンツの宝庫だからです。ウオンツがわかれば、その検索意図を分析します。それが「顧客ニーズ」です。
・ウオンツ:インターネットの検索が「子連れ OK カフェ」
・顧客ニーズの検討:子どもが少々騒いでも許してほしい・・など
なお、Googleのキーワードプランナーなどでは、そのサジェストワードの検索量が、どのくらいあるのかを知ることができます。これは、まさに、そういったウオンツが多いということで「市場が大きい」と解釈していくことも可能です。
2)種々の口コミサイトへの改善要望をニーズのヒントにする
下図を御覧ください。これは私の支援先の飲食店へのGoogleビジネスプロフィールへの口コミです。

子連れでは行けない店だという不満の口コミですが、これを見た事業者が「どう判断するか?」です。仮に子連れも来店していただきたいと思うのであれば、そのような空間やサービス待遇の改善が必要になります。
インターネットにある種々の口コミサイトに寄せられる批評や改善要望は、消費者の充足して欲しい欲求そのもののため、顕在化したニーズと言えます。
3)顕在化したニーズの弱点
顕在化したニーズを具現化した商品やサービスの展開は、既に競合も多く、新規客の獲得には苦戦することが想像できます(既述の充足ニーズの視点)。ですから、顕在化したニーズではなく、潜在化したニーズを見つけ、競合と類似した商品やサービスを避ける工夫が必要になります。
6.潜在化したニーズを探ってみる方法
1)会話や特定の質問で潜在化ニーズを知る
下図を御覧ください。行動心理として、多くの研究結果がありますが、下図のような特定の質問や会話を、お客様(顧客)との間で実現できれば、顕在化したニーズだけでなく、潜在化したニーズを知ることが可能です。


例えば、カフェに入店した顧客が、少しメニュー表を眺めてから、店員さんに「おススメは?」と尋ねてきたとしましょう。その顧客には何かしらのニーズがあって、そのメニューに解決するウオンツがあれば、おそらく注文をスムーズにしたことでしょう。しかしながら、わざわざ「おススメは?」と尋ねるのですから、そのメニュー表には「魅力的なものが無い」と思っているということです。別の側面で分析すると、ニーズは表出していない(顕在化することなく)と言えます。つまり、潜在的なままなのです。
そこで重要になってくるのが接客としての会話です。潜在している要望(潜在化したニーズ)を探るような会話が求められます。例えば、以下のような感じです。
・今日は暑いですね。汗が止まりませんね。何か冷たいものをお出ししましょうか?
⇒顧客は、そうか!冷たいものが良いということに気づきます(潜在から顕在へ)
・さっぱりしたものか、苦いもの、甘いものもありますが、どのような気分ですか?
⇒顧客が、さっぱりしたものと言えば、そういったニーズだと自分自身が気づきます(潜在から顕在へ)
いかがですか。このように、接客やお客様の声が大事と言われる理由が、ここにあります。
2)SNSの投稿内容から潜在化したニーズを探る
下図を御覧ください。SNSの投稿内容の行間を読み込む努力で、顕在化したニーズだけでなく、潜在化したニーズを知ることが可能です。


上記の豆大福の事例では、「朝食時間」「移動しながらの車の中」が面白いですね。これは、忙しい朝に「ワンハンドで食事を接種できると良い」というニーズと捉えることができます。この投稿された方にとって、この光景は日常でも、他の多くの方々は、気づいていない可能性が高いと言えます。つまり「見充足ニーズ × 潜在化したニーズ」と解釈が可能です。
7.顧客価値と顧客ニーズの関係性と相違
これも、よく勘違いされる論点です。以下の顧客価値の記事の中で、詳しく説明していますので、確認ください。
⇒【事例付】顧客価値(存在価値)とは?選ばれる飲食店・小売店のコンセプトの作り方
初稿:2020年2月 加筆修正:2024年5月8日、2026年2月22日
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飲食店のメニュー開発や食品メーカー(製造業)の商品開発の記事
久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。
講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。
2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。
近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。
主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。













