—最初に就職されたのは、山崎製パンなんですよね。

はい。山崎製パンには5年ほどいました。最初に配属されたのはペストリー課です。デニッシュ系のパンをつくる部署ですね。ただ、ラッキーだったのは、新入社員は全員出さないといけない新商品のアイデアコンテストで、私が出したアイデアが3つも採用されたことなんです。たとえば定番のスナックゴールドっていう渦を巻いたデニッシュがありますよね。あれを伸ばしたツイストロングっていう、日本でいちばん長いパンをつくりました。発想の転換なんですけど、そのときは結構流行りましたね。あとは、今ではすっかり定番になったタラモドーナツもアイデアのひとつでした。そのおかげで工場勤務から一足飛びで商品の企画開発をやらせてもらえることになったんです。

—それは、1年目からすごい展開ですね。

山崎製パンには5年ほどいたんですが、最後の1年も面白かったです。当時、業績が悪くなった製パンメーカーを山崎製パンが吸収合併するケースが多くありました。それで、大阪にある小さな業務用製パンメーカーに出向することになったんです。そこでも同じように商品開発をやったり、経営に近い仕事をさせてもらいました。そこで働いているうちに、わかったことがあったんです。

その製パンメーカーの顧客は、個人経営の喫茶店が多かったんですね。でも当時は、ガストやすかいらーく、ドトールなど、いわゆる量販店がどんどん上がってきている頃で、個店が淘汰されていった時代でした。だから、出向先の業績が悪くて、どうにかしないといけないのはわかっているんですけど、どうやってもテコ入れできないわけです。だって、顧客である喫茶店自体がどんどんなくなっていくから。

それで「これは個店を元気にするしかない」と思ったんですね。個店を元気にしたら、パンだって買ってくれるようになるでしょう。そしたら全部うまくいくんじゃないかって。

当時の社長にも、一緒にメニューを開発したりレシピを提案したり、向こうの相談に乗ることで、お店が元気になって、パンを卸す量が増えるんじゃないかって進言しました。自分が担当したお店では実際に試してみて、うまく店も出てくるようになりました。その手応えも受けて、経営コンサルっていう職業と中小企業診断士という資格が気になり出しました。今の仕事に通じるきっかけは、この体験だったと思います。

—でもすぐに独立するわけではなく、その後は湖池屋に転職されていますね。山崎製パンのお仕事自体もとても充実していたように見えますが、なぜわざわざ転職されたのでしょうか。

製パン・製菓業界ってじつは狭くて、どこの会社も食品スーパーやコンビニエンスストアがメイン顧客です。そうすると、出先でいろいろなメーカーの人に会うんですよね。その中で飲みに行ったりする仲の良い人もできて、そのなかのひとりが湖池屋の営業副本部長だった人でした。その人からマーケティング担当を募集しているからこないかって誘われたんです。

山崎製パンは大きな会社で、同期だけで600人位いました。だから、やりたい仕事だけをこのままできるとも思えませんでした。それに、製パン・製菓業界は移動が頻繁にあって、転職も当たり前なところがあるんです。それなら規模が小さい湖池屋に行って好きにやってみようかなと思いました。ちなみに当時の湖池屋は、まだ社員が百数十人しかいない会社でした。そこでカラムーチョのリニューアルとか、スコーンを1回休売させてもう1回発売するだとか、あとはピンキーモンキーっていうキャラクターを開発したりね。

—スコーンの休売、ありましたね。それも久保さんが仕掛けたんですね。

でもここで実は、1回失脚するんです(笑)。

—失脚!?

そのときは経営企画室の副室長まで出世していました。取引先のお店や会社でこんなことがあったっていう情報を営業に流す仕事もしていたんです。そうしたら、昔、直属の部下だった子から、そのメールに返信がきたんですね。で、その子に返信するつもりでちょっとふざけたことを書いて送ったら、それを全社に配信してしまって。2時間後には上司に呼び出されて、その2時間後にはコンプライアンス委員会にかけられ、2階級降格の給与3割ダウンになり、経営企画室から営業本部の一兵卒まで落とされました。

—それは…本当に失脚ですね。

でも、これがラッキーだったんですよ!

一兵卒まで落とされはしたんですけど、それでもベイシアとイオングループという、湖池屋にとっては重要な、大きな取引先をふたつ任されることになりました。営業は得意だったので、商談もうまく出来たし、ちゃんと数字も出していました。問屋を外して直取引を始めたのもこのときで、それによって収益性もものすごくよくなりましたね。

その結果どうなったかというと、外に出られるようになって、しかも時間が空くんですよ。それによって、ずっと気になっていた中小企業診断士の勉強ができたんです! だからそのあと資格を取ることができたんですよね。

—すごい。ピンチをチャンスに変えてますね。中小企業診断士の資格については、最初に興味を持ってからずっと気になっていたんでしょうか。

湖池屋でも、個店の問題は同じでした。量販店が広がっていけばいくほど、個店の経営は危機的な状況です。たとえば問屋の人に同行して個店に営業に行っても、ほとんどが量販店にお客さんを持っていかれていました。そこで、やはり私は個店の人たちと何かしたいと考えるようになっていきました。そして、コンサルティングの仕事を学ぼうと、コンサルティング会社のトーマツに転職しました。

—個店への思いがすごく強いですね。そこに大きな課題を感じていたからでしょうか。

そうだと思います。もっと遡ると、根幹にあったのは母親が経営していたスナックがダメになったときかもしれないです。確か小学校に上がるか上がらないかぐらいの頃だと思います。施設の面会で、母親が泣いていて。詳しいことは教えてくれなかったんですけど、どうやら騙されて、お店を取られちゃったみたいなんですね。母親が頑張っていたのは知ってたから、なんでそんなことにっていう、それがわだかまりとしてずっと心にありました。

大人になったらなったで、個店の危機的な状況を目の当たりにして、どんどん閉店していくのを見て、小さい店や会社は大変だなと改めて思いました。

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