食品や和洋菓子・小売店・飲食店等のPOP作成の手順や方法

 食品スーパー、パン屋(ベーカリー)、種々の和菓子店、ケーキ屋のような洋菓子店、居酒屋や食堂、カフェといった御店の課題には、客単価を上げること、買上点数を増やすこと、いずれか、または両方が挙げられます。そのような場面で活躍するツールが売場に掲示するPOPです。

道の駅かづの あんとらあ  燻製屋猫松さんの事例

 今回紹介する「POPの充実」「POPの作成の仕方」を活用いただき、客単価の改善、買上点数の向上に繋げていきましょう。では目次です。

目次(2018年1月10日初稿 2023年6月9日 最終加筆)

1 食品や菓子を扱う現場で使用するおススメのPOP素材
2 売行きが良くなるPOPのレイアウトにはコツがある
3 POPのキャッチコピーと商品説明の切り分け方
4 POPのキャッチコピーと商品説明の9つの捻出方法
5 POPデザインにおける色や色彩の選択方法
6 POPは余白を作らない工夫をする
7 売行きが良くなるPOP文字サイズ
8 売行きが良くなるPOPの強調線
9 売行きが良くなる立体POP重ね

支援先で助言しつつ作成したPOP
仲間の先生が指導して作成したPOP

1 食品や菓子を扱う現場で使用するおススメのPOP素材や文具

 いろいろと素材を試してきましたが、当事務所がおススメするPOP素材は、ケント紙になります。これは「油性ペンで描いてもにじみにくい」「消しゴムで消しても毛羽立ちにくい」「紙の割には、水気に強い」という特長があり、それなりに厚手(厚口)で、相応の耐久性があるからです。ただしPOPとして活用時に、水気が多いと少々、伸縮します。ただ、これも味のある風情になり、おススメしています。

 無論、一般のコピー用紙のようなものに描き、パウチ等をすれば耐久性も増しますので、ベターなのですが、POPは可能な限り、定期的に改善したいものなので、使い捨て要素が否めません。こうなってきますと、パウチするには時間もコストも大きくなってしまいますので、ケント紙で、ある程度の時間が立ったら、交換をおススメしています。もちろん、カラーペーパー、厚紙、画用紙等、お好みの素材を使っていただいて構いませんが。

(ダイソーのような100均でも購入できるケント紙)

 また後述する通り、カラフル・オシャレなマスキングテープや、折り紙も、装飾には、とても有効ですので、日ごろから、手元に置いておくこともおススメしています。著者も常々、飲食店や食料品小売店等の支援では、下記画像のような一式を持ち歩いています。基本は油性のマジックですが、クレヨン等、も持ち歩き使うことがあります。

(著者が持ち歩いているPOP作成文具一式)

 なお、作成において手書きが良いのか、パソコンで作った方が良いのか、と尋ねられることがありますが、正直、どちらでも良いというのが当事務所の回答です。手書きは温かみがあって、おススメしますが、それなりにセンスや熟練を要しますので、「可能なら・・」と支援先では話しています。

2 売行きが良くなるPOPのレイアウトにはコツがある

 まずはPOPの全体の構成を検討していきます。種々の研究や2次データがありますが、良いとこ取りをして整理すると、以下の構成と記載項目になります。

 キャッチコピー4:商品名1:商品説明4:価格2

(POPのレイアウト構成比)

 上記の視点は、縦書きでも、横書きでも同様です。POPを書き出す前に、薄く鉛筆等で、区画を区切っておけば良い(パソコンでも点線を画面上で明示しておく等)でしょう。無論、完璧である必要はありません。概ねで結構です。

3 POPのキャッチコピーと商品説明の切り分け方

 お客様に伝えたい内容を出来るだけ沢山書き出します。その上で優先順位を1位から順位付けし、1位をキャッチコピーに利用、2位以降を商品説明に利用します。

 余白にもよりますが、商品説明は2位だけでなく、3位以降も、使えるだけ使います。ベースのPOPサイズに収まらない時は、後述する「立体POP重ね」を活用し、ベースPOPに貼り付けて立体的に商品説明を展開しても良いでしょう。

ポイント お客様に伝えたい内容1位をキャッチコピーに変換しましょう

ポイント お客様に伝えたい内容2位以下を商品説明に活用しましょう

 支援先では、いろいろと商品毎に書き出してもらおうとするのですが、なかなか「出てこない」ことが多いです。そのような場合は、次項のように捻出していくと良いでしょう。

4 POPのキャッチコピーと商品説明の9つの捻出方法

 前項で説明した「お客様に伝えたい内容が1つも浮かばない」と悩まれる場合は、以下の9つを検討することで、「必ず」捻出が可能です。ぜひチャレンジしてみてください。

☑商品の時点や期間での販売実績の内容

 ⇒まだ買ったことが無い、まだ食べたことが無いお客様には、大いに参考になります。これは、以前紹介した記事「部分最適訴求表示法」(⇒詳しくはこちら)の一種です。

事例:支援先の豆腐屋(津久井在来大豆とうふ)

 店主の回答:販売期間3ケ月(1日営業時間8時間・1ケ月の営業日は25日)で約36,000個 売れている

 訴求メッセージ:1分に1個売れています!

☑その商品の3つの性(希少性・限定性・季節性)の内容

⇒お客様にとって、今だけ、この季節だけといった要素は、「今しか買えないといった気持ちをかきたてます。

事例:支援先の豆腐屋(津久井在来大豆とうふ)

 店主の回答:津久井在来大豆は相模原市の千木良発祥で、今が旬。早生種と異なり1ケ月ほど収穫が遅い。ほとんどが無農薬栽培で生産量は希少。豆腐に活用している事業者も数店。中でも消泡剤を使わずに生産した豆腐はうちだけ。

 訴求メッセージ:希少で今が旬の津久井在来大豆を使った豆腐は他店にあれど、消泡剤を使わない昔ながらの製法はうちだけ!

☑その商品利用時のスタッフの感想の内容

⇒販売するスタッフは、来店するお客様の等身大とも言えます。その方々の正直な感想は、お客様の購買検討時に大きな後押しになります。

事例:支援先の豆腐屋(津久井在来大豆とうふ)

 店主の回答:スタッフの意見として、「麻婆豆腐の中の豆腐の風味は、赤唐辛子・花椒・豆板醤、豆豉の味が強烈で、正直、豆腐は、どこの御店のものでも良いと思っていました。でも、この豆腐は、赤唐辛子・花椒・豆板醤、豆豉の風味に負けず、豆腐の美味しさがハッキリ感じられる」という声が多い。

 訴求メッセージ:麻婆豆腐に使っても豆腐の甘味やコクが「しっかりと味わえる」くらい濃い味が特長!

☑その商品をスタッフが買わない理由の内容

⇒販売するスタッフは、来店するお客様の等身大とも言えます。その方々の正直な感想は、お客様の購買検討時に大きな後押しになります。

事例:支援先の豆腐屋(津久井在来大豆とうふ)

 店主の回答:この豆腐を気に入らないスタッフの意見として、「豆の味が濃厚で、チーズのような風味が気に入らない」という声が多い。

 訴求メッセージ:豆の濃厚な味が感じられる豆腐が嫌いな方は食べないで!

☑御客様から商品に対して質問されたことがある内容

⇒お客様が、その商品等に質問をするということは、少なからず興味や関心があるということ。その興味や関心に、あらかじめ訴えることができれば、強烈な購買の動機付けになります。

事例:支援先の豆腐屋(津久井在来大豆とうふ)

 店主の回答:「この豆腐は、どうやって食べれば良いですか?」と頻繁にスタッフが尋ねられます。

 訴求メッセージ:湯豆腐!冷奴!麻婆豆腐など全ての料理で、唯一主役が晴れる豆腐!

☑その商品活用時のデメリットや利用時のクレームになりそうな不安要素の内容

⇒事業者が想定するクレームになりそうなこと、不安要素は、お客様は事前に知っておきたいことでもあります。そうであるならば、そのことをあらかじめ伝えておくことで、お客様が抱かなくてよかった不満の内容等を、未然に防ぐことができます。また、その論点は、ある意味、別の御客様にとって、強烈な動機付けになることもあります。

 店主の回答:消泡剤を使わない、添加物は一切使わない、包装後は他店に比べ高温で殺菌しない(低温殺菌)なので、日持ちしないことが不安様子です。

 訴求メッセージ:高温殺菌等をせず、豆腐本来の風味を活かした「鮮度」が売り!

☑御客様から商品に対して「いただいたことがある」感想の内容

⇒お客様が、その商品等に感想を述べてくれるということは、少なからず、その商品に納得している理由があるということです。その理由は、等身大の他の御客様に、参考になる情報であることが多いので、強烈な購買の動機付けになります。

 店主の回答:「風味が濃く、豆の味がしっかりとした豆腐ですね」「本物の豆腐って、この商品のことを言うのでしょうね」と、頻繁に感想を頂戴しています。

 訴求メッセージ:多くの御客様から本物の豆腐」だと好評です!

☑その商品をおススメしたいお客様を誰か1人具体的にイメージした内容

⇒たったの1人でも納得するのであれば、他の方々も納得する商品である可能性が高いものです。どういった方に食べて欲しいか等々、強烈に意識して整理しましょう。

 店主の回答:最近、若い方ほど、豆腐を食べる機会が減っていると感じています。それは豆腐の本当の風味や美味しさが、量産品で感じられないからでは無いでしょうか。そのような方々に、この商品を食べてもらいたい。

 訴求メッセージ:「本物の豆腐の美味しさに出逢ったことが無い!」といった方におススメの1品!

☑その商品がSNSや種々のメディアで話題になった内容

⇒メディアで評判になっている内容は、その商品の良さを表現されたことが多いものです。紹介くださったブログや、Instagramの記事の内容等、こまめにチェックしておきましょう。

 店主の回答:糖質制限(糖質オフ)をされているお客様が、この豆腐を使った食事やレシピをブログで紹介してくださっています。その中で、やはり「料理で豆腐の存在感が半端ない!」「他の豆腐は、どれも水っぽく食べ応えが無いとのことですが、この商品は、食べ応えがある!」と紹介しています。

 訴求メッセージ:糖質制限(糖質オフ)な食事をされているお客様から「どの料理でも存在感のある豆腐!」と人気です!

 以上の情報を整理し、1番伝えたい情報(メッセージ)が異なる2パターンのPOP文面を事例で示すと以下になります。

POP文例①
POP文例②

5 POPは余白を作らない工夫をする

 POPは、余白が少ない方が良いと言われています。これも多くの2次データや種々の研究で明らかです。「情報のぎゅうぎゅう感」「詰まった感」を意識して作っていきます。文字数が多いほど、余白が少ないほど、「伝えきれないほどの魅力が、この商品にはある!」というイメージが消費者に醸成されることがわかっています。目一杯の情報を伝えるように構成していきます。

ポイント 余白は少ない方が良い「情報のぎゅうぎゅう感」「情報の詰まった感」

 仮に以下の写真のように、余白が出来てしまった場合は、マスキングテープや折り紙等を駆使し、埋めていくと「シズル感」が大きく向上しますので、おススメです。

事例①:余白あり
事例①:余白を折り紙を貼り付けて埋めた事例
事例②:余白あり
事例②:余白をマスキングテープで埋めた事例

4 売行きが良くなるPOPの文字サイズ

 売行きが良くなるという文字サイズも、種々の2次データや研究が進んでいます。そのポイントを整理すると、概ね、次のような文字サイズが良いと言われています。商品説明を1とした場合の文字サイズが2倍、3倍と解釈してご覧ください。

ポイント 商品説明1:価格・商品名2:キャッチコピー3

5 売行きが良くなるPOPの強調線

 POPをお客様に読み込ませ、購買意欲を喚起するために「強調線」が有効なことも、種々の2次データや研究で明らかになっています。「注目してほしい言葉」「伝わってほしい方」この両方を意識して、必要な箇所にアンダーラインを入れます。

ポイント 注目してほしい・絶対に伝えたい言葉にアンダーライン

アンダーライン無し

6 売行きが良くなる立体POP重ね

 POPは売場を活気づける効果があることが、種々の2次データや研究で明らかになっています。中でも、切り抜き写真、切り抜きイラストの活用は有効です。POPが躍動的になるだけでなく、売場の楽しさや華やかさが演出できます。例えば、既述の事例の「訴求メッセージ」の中に「今が旬」とありました。これを立体的にベースPOPに重ねると次のような画像になります。

ポイント 立体POP重ねを活用しましょう

7 POPデザインにおける色や色彩の選択方法

 食品を扱う売場のPOP作成では、食品パッケージデザインの基本4色(赤色、青色、黒色、白色:台紙)をベースに、ロングセラーに育てたいのか、目立たせてその場の売れ行きが向上すれば良いのか(短命でも)、地域性、世代別、季節感といった要素を織り交ぜながら、色を使って文字やイラストを起こしていきます。

 「食の基本色である赤を中心にするか、青を中心にするかをベースにPOPの色を使ったデザインを起案するアプローチ」「ロングセラーに育てたいのか、目立たせてその場の売れ行きを向上させるのかのアプローチ」、この2つのパターンから起案していくことがオーソドックスな考えです。

 ただし、赤は食品を扱う売場においては「食欲や購買意欲を喚起する色」ですから、後者の「ロングセラーに育てたいのか、目立たせてその場の売れ行きを向上させるのかのアプローチ」においても、指し色で使うようにしましょう。全体の色使いのうち1~2割以下で使いたいところです。その際、商品名で使うことは避けましょう。種々の2次データや研究で、売行きが芳しくないといった報告が散見されますので。

 なお、食品の販売や商品化において戦略的に色を使いたい方は、こちらの記事(⇒食品の品揃えや商品パッケージデザインでの色の選択や組み合わせの方法)で詳細を説明しています。上記の2つのアプローチの背景にある具体的な色も説明していますので、合わせて御覧ください。

ポイント POPの色使いには大きく2つのアプローチがあり商品をどう育てたいかを意識すると良い。

さいごに・・

 いかがでしたか。下記画像のようなPOPを作成できましたか。気後れせずに、ぜひチャレンジしてみてくださいね。

==お知らせ==

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久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。

講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。

2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。

近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。

主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。

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