飲食店や、洋菓子店(ケーキ屋等)、和菓子店等の食料品小売店の方が、店頭に看板を設置したり、道路沿いに屋外看板を設置したりする場面は、意外と少なくありません。
そこで、この記事では、屋外の看板の設置の内容や手順、方法を説明していきます。参考にしていただければ幸いです。
目次
①屋外看板(広告)とは
②飲食店等の看板は「誰に見てもらうか」を決めて設置が重要
③許可や届出が必要か否かを確認する
④屋外看板(広告)の記載内容の検討のポイント
⑤車の運転手から屋外看板(広告)はどのくらい見えているのかを確認
⑥屋外看板に最適な文字の大きさを確認
⑦車の速度が速くなるたびに狭くなる視野角を確認
⑧歩行者にとって良い看板(広告)とは
⑨結局のところ最善の屋外看板(広告)とは
①屋外看板(広告)とは
屋外看板(広告)は、「のぼり旗」「野立て看板」「袖看板」等を指します。その役割は通行者や通行車に、自身の経営する飲食店や食料品小売店(洋菓子や和菓子店等)の存在を、気づいてもらうことにあります。また日常を通じて、お店の存在を、刷り込んでいくことでもあります。
通る人に看板を見て内容を知ってもらい(=気づき)、通学路や通勤経路など、繰り返し通る人に何度も見て記憶してもらう(=刷り込み)ということです。結果、皆さんが経営する飲食店や、食料品小売店(洋菓子や和菓子店等)の「認知」と「記憶」の効果を上げることになります。
②飲食店等の看板は「誰に見てもらうか」を決めて設置が重要
看板を設置しようと考える際、1番大切なことは、「誰に対して⁉︎」を決めることです。ここを決めなければ、看板を設置する意味はありません。何となく「通行している方に」という視点もあっても良いですが、それでは、広告という視点(費用対効果)では、もったいないです。
ですから、集客したい方を明確に決め、その方のために、その方に見えるように、その方に読んでもらえるように、「誰に!」を強烈に意識して、看板を設置するようにしましょう。例えば、神奈川県茅ケ崎駅前にある喫茶店を事例に見ていきましょう(こちらの画像です)。
この画像は、どこから撮影したかと言いますと、対面にあるドトールコーヒーの2階客席からです。つまりこの看板は、競合のドトールコーヒーの店内に居る「顧客」を「誰に!」として設置したものです。つまり、ターゲットを指し、ターゲットはドトールコーヒーで珈琲等を楽しんでいる方々です。
茅ヶ崎駅前のドトールコーヒーの顧客層は、約5割は中高齢の男性層のようです。この方々が同店に来店してほしい、あるいは増やしたい顧客層だから、この看板を設置しているのです。
つまり、看板設置で重要なことは、以下の3つに気を配って取組むことです。
・誰に見てほしいのか?
・見てほしい方はどの方向から見る可能性があるのか?
・方向が決められない場合、どのようなイラストや言葉なら自分ごとになり目に入るのか?
余談ですが、誰に見て欲しいのか?を検討する際に参考になる事例を記事で紹介しました。こちらも御覧ください(⇒看板を誰に見て欲しいかを考える記事)
③許可や届出が必要か否かを確認する
飲食店や、食料品小売店(洋菓子や和菓子店等)の方が、屋外に看板などの広告物を設置するには、原則として条例に基づく許可を受ける必要があります。また、広告物等には屋外広告物管理者を設置しなければいけません。しかしながら、看板の種類と大きさによっては許可が不要なものもあります。許可が必要になるか否かは、設置する場所が「商業地域」か「住宅地」か等々の条件によっても変わってきます。許可申請が必要な看板はどのようなものか、神奈川県を例にとって紹介します。
商業地域や工業地域などは、看板設置許可地域になっています。自己の氏名や営業の内容等を自己の住居・事業所・営業所等に表示又は設置するものは、看板面積が 10 平方メートルまでは適用御除外になります。商業地域や工業地域以外は、禁止地域または広告景観形成地区になりますが、自己の氏名や営業の内容等を自己の住居・事業所・営業所等に表示又は設置するものは、5 平方メートルまで、適用除外になります。
つまり、看板の面積が許可地域では、10 平方メートル以下、禁止または広告景観形成地区の場合は 5 平方メートル以下であれば、届け出が不要ということです。
他にも、皆さんの事業所の立地する場所や看板設置の場所によって、種々の届け出が必要になることがありますので、詳しくは神奈川県の URL を参照(⇒こちらをクリック)してください。
④屋外看板(広告)の記載内容の検討のポイント
飲食店や、食料品小売店(洋菓子や和菓子店等)の方が、屋外看板(広告)の記載内容を検討する際のポイントは、「見せ方」と「情報量」になります。見せ方とは、どこから見えるか、どのように見えるか、です。情報量は見ている方にとっての「適量」の検討となります。
支援の現場で、店主や社長さんと、表示する内容について議論をすると、店名、それから伝えたいことを、盛り込めるだけ盛り込もうとする方がいらっしゃいます。実は、それが1番、集客できない看板だと知ってください。
では、どのような情報(ワード)を盛り込めば良いかが、わからないということになりますが、それは種々の2次データで明らかになっています。具体的には、お店の特長や、お店の売りのメニュー・商品の売上と相乗効果があるワードを把握することから始まります。
例えば、お刺身定食を店内で注文数を伸ばそうとすると、どのような工夫が必要でしょうか。おそらく店内掲示等で、PRしたい言葉をPOPに記載することでしょう。お刺身定食の場合、「鮮度が良い」「最寄の漁場からの水揚げ」といった情報が、注文点数を伸ばす影響を持ちますので、このようなワードを、看板での掲示ワードとして候補に挙げることになります。気をつけたいのは、逆に注文を伸ばさないワードがあるということです。そのようなワードの場合、御客様が「刺身定食を食べたいといった熱が込み上げて来ない」ので、そのような言葉は、看板でも使いたくないワードということになります。
次の画像は、お刺身定食を売りにする飲食店の事例です。ここでは鮮度を朝どれと言う言葉で示し、最寄りの漁場を漁港名で示しています。
⑤車の運転手から屋外看板(広告)はどのくらい見えているのかを確認
車は常に移動しており、運転手の視界は速度に応じて狭くなっていきます。歩行者のように立ち止まって看板を見るということもできません。従って瞬時に目に入ってくる広告が必要になります。以下は車が 1 秒間に進む距離をまとめた表です。
例えば、自店が出稿した屋外看板が、百メートル手前からだと別の建物の影に隠れ、見えないと設定しましょう。その上で、車が 50 メートル手前から、看板が見えるようになる場合、時速 60 キロなら、看板が見え始めてから看板を通り過ぎるまで 2.99 秒です。もし、時速 80 キロなら 2.25 秒しかないことになります。これは移動時間であって、看板に目を止める時間ではありません。この限られた時間の中で天候や道路の状況、運転者のスキルに応じて、周辺の看板などの情報を見る時間はさらに短くなっていきます。
⑥屋外看板に最適な文字の大きさを確認
先ほどの例のように 50 メートル手前からだと看板が見えるのであれば、文字の大きさを200cm 以上にしておくと、看板が見え始めたと同時に文字も読まれる可能性が高くなります。このように距離に応じた文字の大きさの目安が分かると、設置する看板に最適な文字の大きさが見えてくるものです。以下は公共機関や交通機関などで目安とされる距離に応じた文字の大きさを表した表です。
屋外広告の場合、上記の文字の大きさは最低限として、実際は 1.5 倍~2 倍程度の大きさで作製すると安心して読めます。
⑦車の速度が速くなるたびに狭くなる視野角を確認
車の速度が増すと運転者の視野は狭くなります。時速 40km では、運転手は 100 度の範囲の視野がありますが、時速 130km では視野は 30 度の範囲となり、極端に認識できる周辺視野が狭くなります。
ロードサインなどの屋外看板やのぼり旗は道路脇に設置されることが多いです。スピードに応じて看板が運転手の視野に入ってくる距離が変わってきます。速度の速い道路ほど、「より遠くから」、「より大きく」表示させることが視認性を高めることにつながります。
⑧歩行者にとって良い看板(広告)とは
以上のことからわかるように、飲食店や、食料品小売店(洋菓子や和菓子店等)を目指す歩行者にとって、少なくとも「通行車に視認性が良く、情報量が適切であれば、歩行者にとっても、良い看板である」と言えます。
⑨結局のところ最善の屋外看板(広告)とは
飲食店や、食料品小売店(洋菓子や和菓子店等)が看板を広告として設置したり利用したりする場合は、結局のところ、1秒程度という言葉を頭に思い浮かべてほしいと思います。
車の運転手が看板を確認するにしても、通行人が瞬間に確認するにしても、「1 秒」程度で理解できる内容と情報量が理想です。ロケーションや看板のサイズにより看板を見てもらう時間は異なりますが、表示内容を「1 秒」で伝わる広告にしておけば、ある程度どんな場面でも表示内容を認識してもらえると言われています。なぜならば、人の目線は一箇所にとどまらずに、常に動いています。その際に「0.3 秒で 15 文字程度を認識できる」と多くの調査結果で明らかだからです。つまり「パッ」と見て目に飛び込んでくる情報を瞬時に認識することができるような広告を心掛けるべきです。
初稿 2020年9月23日
加筆 2022年9月23日 2024年5月28日
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久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)
加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。
講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。
2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。
近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。
主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。