新入社員研修や入社数年目の食品営業マン向け研修では、「陳列応援や販売応援、そもそもなんで行くのか?」という質問が多いです。そのような際、以下のように説明しています。
目次
1.陳列応援や販売応援を受けるべきか否か
2.陳列応援や販売応援を受けるべき理由
3.陳列や販売応援の違法性の判断の視点について
1.陳列応援や販売応援を受けるべきか否か
回答:食品の営業マンは陳列応援を第1に依頼を受けましょう。
回答:スケジュールが合わない場合は、第2に販売応援を受けましょう。
スケジュールで難しい場合は、販売応援ですが、必ず改装や、新店のオープンに立ち会える時を選択するようにしましょう♪
2.陳列応援や販売応援を受けるべき理由
ダイエーが全盛の頃に比べると、このような、量販店からの応援依頼はとても少なくなりました。
私がまだ食品企業で下っ端の営業マンの頃、深夜の陳列応援も当たり前の時代でした。
さて、日々、問屋さんと接していると、末端の小売業が新店(出店)するから、あるいは改装するから、手伝いに来てくれないかとの打診を受けることもあるでしょう。
仮に、攻略したい量販店が対象であれば、必ず受けたいものです。受ける場合は、陳列応援が必須、販売応援は出来るだけ、といったスタンスが必要です。
なぜなら、陳列応援の場合、必ず仕入れ権限を持っているバイヤーや商品部の部長級の方が、お店に数日、常駐されることが多いからです。
陳列の応援を、1日しっかりとバイヤーの傍でお手伝いできれば、他愛もない話題提供の1つや2つも可能で、しっかりとお手伝いしてくれているメーカー名と営業マンの御名前を憶えてくれるものです。
仮に陳列応援が数回続けば、陳列応援に来ていないメーカーに比べ、優位に接触してくれるようになります。やはりバイヤー等は、恩に感じるものですし、陳列という大変な作業を共にすることで、絆が深くなります。また、帳合の問屋の担当者との関係性も同様のことが言えます。
また、販売応援の場合は、新店も改装も、初日の応援を受けることをおススメします。初日であれば、バイヤー等も売場の状況確認のため等、お店に長居してくれますので、陳列応援と同様の効果が見込めます。
つまり、陳列応援や販売応援は、売上をあげるためのキーマンに合う手段と考えれば良いということです。
3.陳列や販売応援の違法性の判断の視点について
・独占禁止法の無償派遣からの見解
一般的には、小さな食料品製造業(食品メーカー)の方は、食品スーパー等の量販店との関係性で、力が弱いことが普通です。関係性で優位にたつ食品スーパー等が、食料品製造業(食品メーカー)等の仕入先に、そのスタッフを無償で派遣することは、禁止されていると思っていただいて良いと判断します。しかしながら実情は、食料品製造業(食品メーカー)の方々が、新店やリニューアル時の陳列応援等に駆り出されるのは、商慣行として定着していると思います。
ここがポイントで、法的にダメな派遣を、食料品製造業(食品メーカー)の方が受け入れることがあるのは、なぜなのでしょうか。それは、一見、同じに映る「無償派遣」も、独占禁止法の違反にあたる場合と、当たらない場合があるからだと解釈していただければ良いでしょう。
取引を行う上で、取り交わす契約と言うものは、原則、どのような内容でも自由です。言葉として無償派遣と聞くと、食料品製造業(食品メーカー)にとって、一方的に不利益に映るかもしれませんが、この食料品製造業(食品メーカー)にとって、バイヤーや商品部の部長等との良好な関係づくりを意図すれば、定番売場の品揃えが増えたりする等、売上の増加や取扱いアイテムの増加といった効果も期待できます。つ要するに販売促進の効果と言えます。
ですから、食料品製造業(食品メーカー)の側が、その販売促進効果を見込んで(腹持ち)して、販売応援や陳列応援に参加することに関しては、こちらにも意図があり、一方的な不利益とはならないことから、このような場合は、無償派遣で違反とは当たらないと解する事が一般的だと言えます。
ですから、食料品製造業(食品メーカー)の営業マンや、その上司においては、依頼先の食品スーパー等の量販店が、「自らの優越的な関係性を利用し、自らの利益にしかならない業務を行うよう要請してきてきていないか」「自社として、その無償派遣依頼の利用を受けることで、どのような販売促進効果が期待できるか」を、しっかりと検証し、販売応援や陳列応援に、応じるという姿勢が重要になります。
==お知らせ==
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陳列で売上を想定して「どこの売場に並べるよう」に仕向ければ良いのか
久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)
加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。
講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。
2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。
近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。
主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。