鮮魚店や八百屋、精肉店等の食料品小売店の集客や販促の方法、コツ、手順について説明していきます。
目次
1水産物や農作物・精肉の品揃えを商圏態様に合わせて修正する
2地域や近郊から顔の見える水産物や農作物を仕入れて品揃えする
3設備投資が可能な場合の必勝パターン(複合店づくり)
4仕入れる漁師や農家の顔が見えるならマネキン販売を行う
5MEO対策を徹底し携帯端末の検索時に自店を上位表示させる
6POPを充実させ活況や賑わいを店内や売場で演出する
7顧客紹介キャンペーン等を打ち新規客の獲得の手を緩めない
8店内での体験や学びが多いイベントを取り入れる
1水産物や農作物・精肉の品揃えを商圏態様に合わせて修正する
鮮魚店や八百屋、精肉店等の食料品小売店で集客や販促を考える場合、1番最初に取組まなければいけないのが、立地する商圏に合わせた品揃えです。例えば総務省のe-stat(⇒こちらの記事で紹介)を活用することで、商圏内にはどのような年齢層が多く住んでいるのか、どのような世帯構成なのか、住居よりも事業所が多いのか、事業所の場合、どういった業種が多いのか等々、がわかります。
当然のことですが、品揃えは、主たる顧客になりうる商圏の素性を踏まえた取組が必要です。例えば高齢者が多い商圏や、若くても単身の女性世帯が多い商圏では、ジャガイモ1つ30円、ニンジン1本50円、刺身5切100円といったように個食を意識した品揃えを充実し、1点から買い物をしやすいように仕向けたいところですし、事業所が多い場合は、惣菜製造の許可を取得する等でカップサラダを豊富に品ぞろえしたり、野菜の加工品の品揃えを充実したり、商圏の態様に添った品揃えを意識していきます。
2地域や近郊から顔の見える水産物や農作物を仕入れて品揃えする
もし、皆さんの御店が、漁港や農地、養豚や養鶏の生産者等々と身近なら、少しでも良いので、直で生産者から仕入れを起こしていきましょう。鮮魚や野菜は、ニンジンと言えば大なり小なり、どれも同じ色、同じ形状ですし、真アジと言えば、誰が見てもアジの域を超えないものですから、見た目の品揃えの差別化が難しいものです。ですから、近郊の農家や近郊の漁師から、直接仕入れを行い、その旨をPOP等で積極的にPRすることで、他所とは相違する売場創りの起点になります。また、これが実現できれば、顔が見えにくい量販店等との品揃えの差別化も叶います。
農作物の場合は、最近の潮流である「自然栽培」の野菜や果樹、果物であるとか、固定種・在来種の野菜を扱う生産者と繋がれれば、量販店等に並ぶ規格品とは、見た目も質感も一線を画した品揃えが実現できるので、おススメです。
3設備投資が可能な場合の必勝パターン(複合店づくり)
鮮魚店(魚屋)や八百屋、精肉店等の食料品小売店を、顧問先として支援していく中で、近年、必勝パターンが見えてきましたので紹介します。それは、お店に「もう1つ以上の機能性」を持たせることです。1番わかりやすい事例が、店内に飲食スペースやイートインスペースを設けることです。例えば、下記画像は事例ですが、向かって左側の赤枠の四角の部分が、席数10席ほどで、飲食店許可を取得して、刺身定食や焼き魚、煮魚定食を提供しています。刺身定食をPRした「のぼり」もあります。
地域の昼食(ランチ)需要や夕ご飯(ディナー)需要を満たすことで、これまで鮮魚店に何の所縁もなかった若年層の来店を獲得することに成功しています。また、この飲食スペースの利用を通じて、店主やスタッフと仲良くなり、鮮魚の買物は同店で済ませるようになる等、新規客の獲得が可能です。
つまり鮮魚店は、鮮魚に親しんでもらうための飲食メニューやイートイン・メニューの充実、八百屋は、野菜や果物に親しんでもらうための飲食メニューやイートイン・メニューを充実させ、既存の小売部門との相乗効果(シナジー)を狙って取り組んでいくのです。
元々、鮮魚店や八百屋、精肉店等の食料品小売店は、水回りが施設充実していますので、飲食店やイートイン施設の開設にはハードルが低いです。小規模事業者持続化補助金や、業務改善助成金等、適度な予算で実現可能なことも多いですから、1度、検討してみてはいかがでしょうか。当初がおススメする必勝パターンの1つです。
精肉店についても1つ事例を紹介しましょう。精肉店が営む食堂「会津屋」です。神奈川県相模原市の津久井の長竹にあります。隣接する「伊従肉店」という精肉店が経営しています。おすすめは、お肉にかかわるお料理。写真は牛カルビライス。ボリュームが多いのでライスは半ライスという選択も。
この事例も、複合店で(イートインスペース設ける等、飲食部門の強化)、成功をしているお店です。正面入り口から向かって、左側が飲食(食堂)で、右側が精肉店になります。
こちらは支援先ではありませんが、常々参考にさせていただいています。商売の傾向を確認するため、年に数回、食事を取りに行きます。やはり、飲食部門に魅かれて、精肉購買に繋がったり、精肉購買で知り、食堂に来店したりと、相乗効果が期待できます。
4仕入れる漁師や農家の顔が見えるならマネキン販売を行う
お店に活気があると、店頭を通り過ぎる方々も気になるものです。ですから積極的にイベントの手数を増やしたいところです。もし、顔の見える関係の生産者のお魚や、野菜、果物を仕入れる関係が出来ているのであれば、その漁師さんや農家さんにお願いして、自らの農作物や御魚をPRして、販売協力いただくよう、お声掛けしてみてはいかがでしょうか。月に1度や、数ケ月に1回程度の頻度であれば、概ね協力的なことが多いです。気遅れせずに、積極的に農家さんや漁師さんにお声掛けしてみてください。無論、養豚家や養鶏といった御肉の生産者さんも同様にお声掛け可能です。
私の支援先でも、農家さんを呼んでお話会を実施したりすることで、普段何気なく買い物しているお客様の方に、その農家さんの御野菜に親近感が沸き、その農家さんの野菜を御指名で買い物に来ることが増えてきています。お店の売りの商品に育つ効果も期待でき、一石二鳥ですよ。
下記画像は、シンプルべジの生産者の側面を持つ私が、飲食店で春菊の栽培の苦労や、食べ方の特徴などを、お話させていただいた時の写真です。お店や生産者へのロイヤリティが高まりますのでおススメです。
5MEO対策を徹底し携帯端末の検索時に自店を上位表示させる
皆さんの御店は、Googleビジネスプロフィールをフル活用していますか。MEO(地図エンジン最適化)を実践していますか。例えばマンションやハイツが多い住宅街の場合などは特に、新規で引っ越しされてくる世帯も相応に多く、どこかに美味しいお魚を売っているお店が無いかな、どこかに買い回りしやすい八百屋が無いかなと、手元のスマートフォーン等の携帯端末をフル活用している模様です。先に紹介した飲食店やイートインスペースを併設したのであれば、なおさら、これらお客様がランチ等の外食の場を探したりしています。無料で、ここまで集客できるのかと実感できるには、少々時間と、更新努力が必要ですが、必ず成果を実感できるものです。積極的に活用していきましょう。
余談ですが、MEOの取組は、こちらに(⇒MEOの取組の仕方の記事)詳しく説明していますので、ぜひ活用ください。
6POPを充実させ活況や賑わいを店内や売場で演出する
POPは鮮魚や八百屋、精肉店の店頭を通るお客様に賑わいや活気を示す上で、最重要な取組の一つです。お店への最初の印象が、その後もずっと、そのお店の印象として捉えられてしまうことも多いので、店頭を中心に、最新の注意を払いたいものです。
また、来店してくれたお客様に、コモディティ化した鮮魚や御野菜を、ただ並べて値付けをしているだけでは、そのお店の仕入れ努力が伝わらないどころか、個性が例えあるお野菜や鮮魚ですら、量販店と何ら変わらないイメージを持たれてしまいます。
何より、買上点数の向上に大きく影響するものですから、積極的にPOPには工夫を入れていきたいものです。とくに鮮魚や野菜、果物を活用した加工食品の場合、売れるか売れないかの分かれ道と言っても過言ではありませんので、手を抜かずにPOPの掲示を進めましょう。
POPの作成の仕方や活用による販促や集客は、こちらの記事に(⇒POPの作成の仕方やコツ)詳しく紹介していますので、ぜひ活用ください。
7顧客紹介キャンペーン等を打ち新規客の獲得の手を緩めない
お店に継続して買い物に来てくださるお客様は、自店の良さを1番理解しているという側面があります。また、新しくお店を選択する際の基準の1つに、お客様の口コミが絶大な影響を及ぼすことは、店主の皆さんが1番理解しているところでしょう。
そうであるならば、積極的に紹介カードを作成し、既存の御客様に配布する等、働きかけていくようにしましょう。その際、「誰でも」「どんな風にでも」紹介できるのなら、お願いします!というアプローチは禁物です。「誰でも」では、お客様が誰を紹介したら良いかと悩んでしまいます。結果、誰も紹介せずにお蔵入りは当然の末路です。ですから、誰を紹介してほしいのか、どんな風に紹介してほしいのかを、明確にした紹介カードを作成し配布するようにしましょう。
効果的な紹介カードの作成や配布方法については、こちらの記事のいずれか(⇒紹介カードの作成の仕方と配布方法①)(⇒紹介カードの作成の仕方と配布方法②)で紹介していますので、積極的に活用してみてくださいね。
8店内での体験や学びが多いイベントを取り入れる
食料品小売店においては、店内での体験や、消費者にとって知らない(学びが多い)内容のイベントも、人が人を呼ぶ「呼び水」として、おススメです。例えば支援先の和菓子の米菓店では、下記画像のように、生地を御客様自身に焼かせ、調理する過程を体験させるイベントを週に2回ほど、設けるようにしています。焼き方の難しさを体験いただくことで、自店の煎餅の焼き色の繊細さをPRすることが叶います。
結果、口コミが口コミを呼び、当初は商圏内のファミリー層でしたが、今では広く遠方からも車で来店する顧客層を囲い込むまでになりました。 お客様に最終の調理工程や加工工程等を体験いただけるポイントが無いか、御自身の商材で検討してみてはいかがでしょうか。
お味噌販売であれば、味噌玉で御好みのお味噌汁を作って楽しんでもらう、八百屋であれば、野菜の品種を学ぶ勉強会を実施する等、工夫次第でイベントの立案は可能です。
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飲食店のメニュー開発や食品メーカー(製造業)の商品開発の記事
久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)
加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。
講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。
2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。
近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。
主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。