居酒屋の集客や販促の方法とコツ

 感染症の影響後、居酒屋を取り巻く環境は劇的に変化しました。当事務所の顧問先やプロジェクトでの量販居酒屋支援の現場においても同様で、その変化への対応が求められる日々です。それでも居酒屋は、他の飲食店では充足できない独自の価値があることを知っています。その価値を今一度、見つめ直し、その改善点を具現化することが、繁盛店創りの第1歩であることを肝に銘じて欲しいところです。

支援先の居酒屋 坪まる

 つかまなければならない顧客は「なんとなく飲みに行くか!」といった層では無く、「このために層」です。そのお店でしか楽しめない、そのお店でしか味わえないといった取組を加速させることで、実現できます。わざわざ行きたい!と思っていただける取組が出来れば、「このために層」の獲得が叶うでしょう。ただし留意しなければならないことが1つあります。それは、自店が良かれと思った取組も、お客様に魅力的で無ければ、何ら響きませんし、「このために」の演出は無理です。そのあたりを踏まえて、以下の目次の内容を1つ1つ見ていきましょう。

1.居酒屋の「あるべき姿」(居酒屋とは)を考える
2.居酒屋利用の想定顧客(消費者)層の検討と見直しの方法
 ・居酒屋の顧客層を表現する式
 ・選好と嗜好によるグルーピング
3.想定顧客に対する居酒屋の存在価値の決定方法
4.居酒屋の売れる新メニュー開発(新商品開発)の方法とコツ
 ・顧客層を意識したメニュー開発の組み立て方
 ・メニューに動きと参加を促す

備考)売れ筋料理(メニュー)の発見について
備考2)売れる新メニュー(新商品)開発において重要なネーミング

5.居酒屋の売れるアルコール等のドリンク類の品揃えの方法(コツ)

備考3)売れるアルコール等のドリンク類の開発において重要なネーミング

6.売れる(リピートされる)居酒屋の空間演出の方法とコツ
7.居酒屋の既存客から新規客を獲得する方法
 ・競い合う仲間を増やしたくなるポイント制度の導入
 ・紹介してほしい方と「その理由を明確にすること」で来店を誘発する「紹介カード」
8.居酒屋の既存客の来店頻度を上げ来店期間を短期化する方法
 ・次回も来店したくなる「選好に働きかけるカード(割引券)」の配布
 ・早く来店して貯めたくなるポイント制度の導入(ポイントカード)
9.居酒屋が客単価を上げる方法
10.新規客を新たに開拓する方法
 1)インターネットを活用した居酒屋の新規客の集客と販促の方法
 2)チラシ(フライヤー)を活用した居酒屋の集客と販促の方法
 ・アルコール類をPRするのか料理(メニュー)をPRするのかを明確にする
 ・どういった利用をして欲しいのか場面を創造できるように

備考4)チラシの作成の仕方と活用した新規客獲得策

1.居酒屋の「あるべき姿」(居酒屋とは)を考える

 居酒屋とは、居座って酒や肴を楽しむ場所(空間)です。そのため「ゆとり」や「居心地」が良い空間創りが重要です。基本的には長居させなければなりません。とは言え、時勢的に長居は不安な方も多いでしょう。ですから、長居できるよう、不安を払拭することがポイントになります。

支援先のおでん酒場アッカンベー

 そもそも、風邪をひいていたりしている方が傍に居ると、「風邪がうつるのでは?」と心配になりますよね。感染症も「ある意味」同じような不安がお客様にあるのだと自戒して、オペレーションしなければなりません。つまり、体調がすぐれない方には来店を自粛してもらう、来店時は、一般的に推奨される感染症対策に協力してもらう、更には不安を払拭するように、席と席の間の距離や、テーブルとテーブルの距離を適切に確保する、スタッフの健康管理に留意している旨を、ちゃんとPRする等々の対策が必要ということです。

 こうなってきますと、狭い空間に沢山詰め込むような従来の経営スタイルは、今後の将来性には無いということです。狭くても、しっかりとした社会的距離を保ち、居座っても安心な「ゆとりがある」「居心地の良い」食事空間を提供するといったことが求められるのです。

2.居酒屋利用の想定顧客(消費者)層の検討と見直しの方法

 居酒屋の集客を成功させるためには、まずもって「どのような御客様がお店に溢れて欲しいか」を決めることが重要です。男性も女性も、老若男女もといった具合に欲張ると、概ね集客に苦戦します。これは私のようなマーケティングコンサルタントにも言えることですが、仮に飲食店の方が集客に苦戦していて、マーケティングコンサルタントに頼る場合、建設業界も、自動車業界も、食品業界も、といった具合に手広く「支援できる業界」をPRしているコンサルタントに対しては、「この方は大丈夫なのか?信頼して良いのか?」と不安を煽ることになります。逆に「飲食・食品業界専門です」と発するからこそ、飲食店の方も「信頼してみよう!頼んでみよう!」と思うものなのです。 居酒屋に限ったことではありませんが、特に居酒屋においては、この視点を強烈に意識することが、想定した売上や集客を実現する「はじめの一歩」だと、念頭に置いて取組んでほしいと思います。

 繰り返しになりますが、居酒屋においては「誰に来店して欲しいのか」を明確に意識し、アルコール類の充実や、料理(メニュー)の充実、に取り組むことが求められます。

・居酒屋の顧客層を表現する式 

 さて、想定した顧客層とは、どのように考えるかなのですが、以下のような公式がおススメです。

顧客層=性別×年齢別×居住地or勤務地×選好×嗜好 ― ①

・選好と嗜好によるグルーピング

 選好や嗜好の切り口は様々ですが、これまでの支援で上手く事が運んだグルーピングをいくつか紹介すると、下表のように整理できるでしょう。

 紹介した式①にあるように、全ての項目は掛け算のため、それぞれの要素を複数組み合わせて、お店の顧客層を決めていくと良いでしょう。支援先の事例では、以下のようになりました。

顧客層=女性×20~40歳台前半×A駅周辺に勤務している方×選好(野菜を使った料理好き、ボリュームがあるもの)×嗜好(濃い味、カロリー抑えめ)

3.想定顧客に対する居酒屋の存在価値の決定方法

 想定する顧客層が決まったら、「その方々にとって自店は、どのような存在感を提供できるのか」を検討していきます。つまり、存在価値です。そのお店が、長くお客様に愛されて親しまれるためには、その価値を強烈に意識した運営が必須だからです。

 お店の存在する価値の見つけ方には種々のアプローチがありますが、当所でおススメしている方法はこちら(⇒存在価値の発見の仕方)になります。集客に苦戦しているお店ほど、そのあたりを見つめ直してみてはいかがでしょうか。

4.居酒屋の売れる新メニュー開発(新商品開発)の方法とコツ

 新たに売りのメニューを作る方法は、多くの居酒屋の方が、気になるところでしょう。ロジックは、そんなに難しくありませんので、手順に添って進めていきましょう。

・顧客層を意識したメニュー開発の組み立て方

 売りのメニューとは、一言で言うと「自店の存在価値を示す代表メニュー」です。つまり、売りのメニューを検討するにあたっては、この存在価値を強烈に意識しなければなりません。存在価値は、想定顧客層にとって「価値」があれば良いので、想定顧客層の式①を踏まえて組み立てていく必要があります。

 例えば、先の事例の「顧客層=女性×20~40歳台前半×A駅周辺に勤務している方×選好(野菜を使った料理好き、ボリュームがあるもの)×嗜好(濃い味、カロリー抑えめ)」の場合、A駅周辺に勤務している20~40歳の女性に一目置かれる料理でなければなりません。また、その料理は、野菜を使ったものでなくてはならないのです。盛付けは、ボリュームがある工夫が必要で、風味は濃い味、それでいてカロリーを抑えめな健康的なイメージでなければならないということです。

 新メニュー開発(新商品開発)は試行錯誤ですから、これが正解というものは無いのですが、少なくとも、顧客層の式①を踏まえて、下表のようなチェックリスト(イメージ)を設け、その試作しているメニュー(商品)が、そのチェック項目を網羅しているのかを確認していくことが必要です。このことで、試作しているメニュー案の完成度を図ることが可能です。

顧客層を意識した商品開発(メニュー開発)のチェック項目

 確認作業は、実際のお客様に参画していただけるのが1番だと判断します。何百人ということは、規模が小さい店ほど困難ですから、5~10人程度に尋ね、8割以上の方が、全項目で「そう思う」という回答が得られるような完成度にすれば、良いと判断します。無論、10人中10人になるような完成度の域まで、取り組みたいところですが。

 なお、この顧客層「女性×20~40歳台前半×A駅周辺に勤務している方×選好(野菜を使った料理好き、ボリュームがあるもの)×嗜好(濃い味、カロリー抑えめ)」の事例で産まれた商品事例は下記画像です。こちらは「かぶサラダ」として以前、ネーミングの付け方で登場したもの(⇒ネーミングの付け方の記事)です。

・メニューに動きと参加を促す 

 居酒屋は、「動き:聴覚や視覚」と「参加」のいずれか、あるいは両方を加味したメニューにすると「より売れるメニューになりやすい」ことがわかっています。動きとは、文字通りで、盛り付けた料理の全体や一部が動いていることです(下記参考画像・動画)。ワクワク感や鮮度(熱いものは熱い、ついさっきまで生きていた)の良さ等を訴求(PR)できます。

メニューに動きを施した事例

参加とは、調理の最終工程をお客様に委ねることです。お魚を焼いてもらう、小鍋に火を入れ煮詰めてもらう、等々を指します(下記参考画像)。ただし、風味や食味に影響するため、周到な調理マニュアルを用意し、お客様に委ねる準備が必要になるときもあります。

備考)売れ筋料理(メニュー)の発見について

 新たに新メニュー(新商品)を開発せず、既存メニューを見直して売れ筋に育てるというアプローチも効果的です。その場合、頻繁に登場する重点管理(ABC分析)等をベースに「A」に属するからといった単純な理由で、その見直しすべきメニューを選定することだけは避けたいものです。その数字は、単なる一定期間の結果であって、顧客嗜好や各料理に対する満足度等が反映されていないからです。売れ筋メニューの発掘の仕方には種々ありますが、当所は多属性態度モデルによるアプローチを推奨しています。こちら(⇒多属性態度モデル活用による売れ筋商品や人気商品の選択の仕方)に方法を説明してありますので、参考にしてください。

備考2)売れる新メニュー(新商品)開発ではネーミングも念密に

 ヒットするメニュー開発には、ネーミングも重要な要素です。記憶に残り、購買を誘発するネーミングの決め方にはコツがありますので、合わせてこちらの記事(⇒売れるネーミングの決め方)も御覧ください。

5.居酒屋の売れるアルコール等のドリンク類の品揃えの方法(コツ)

 近年の流行る居酒屋のアルコールやソフトドリンク事情を紹介します。まずアルコールですが、あれもこれもではなく、ラインは浅く、アイテムは深くという状態がおススメです。ラインとは、日本酒、焼酎、ビール、カクテルやサワーといったものを指し、アイテムはそのラインに属する各商品(各メニュー)と捉えると良いでしょう。下記に事例を紹介しますので、参考にしてください。

日本酒 事例①
クラフトビール 事例②
カクテルやサワー 事例③

 ラインは狭くということは、日本酒、ビール、カクテル、サワー、焼酎といった具合に、総花的にするよりは、日本酒とビールだけのように、絞るということを指しています。支持される居酒屋の場合は、日本酒専門店、ビール専門店といったように、ラインは極力狭くするに越したことはないということです。

 ソフトドリンクについては、可能な限り既製品を使わないことがポイントです。ウーロン茶などは最たるものですが、ちゃんとお店で湯沸かしし、煮出すようにします。要するに、既製品の銘柄が見えない取組が重要です。ジュース類は、フレッシュにコダワリましょう。いわゆる駅立地にあるジュースバーを参考にされると良いと思います。つまり100%果汁(搾汁)が、支持される方向性です。単価は相応に上がっても構いません。お酒飲みの方に付き合う「お酒が飲めない方」の居心地を良くするためにも、大事な論点です。家では飲めない域を目指したメニュー開発が求められます。

備考3)売れるアルコール等のドリンク類の開発のネーミング

 アルコール類やソフトドリンク類が人気になるには、ネーミングも重要な要素です。記憶に残り、購買を誘発するネーミングの決め方にはコツがありますので、合わせてこちらの記事(⇒売れるネーミングの決め方)も御覧ください。

6.売れる(リピートされる)居酒屋の空間演出の方法とコツ

 居酒屋の定義を思い出してください。居酒屋とは、居座って酒や肴を楽しむ場所です。そのため「ゆとり」や「居心地」が良い空間創りが重要だと説明しました。そのことを具現化することで、お客様は「あの店は楽しい!」「あの店は居心地が良い!」と実感してくれることでしょう。つまり、次回来店へ向けた「事前期待」が高まるのです。

 ちょっと視点を変えて説明しますと、食品メーカーの「ロングセラー商品」のパッケージデザインの起案が参考になります。居酒屋(自店)を、長く愛してもらうということが目的ですから、食品メーカーの商品に例えると「ながく愛用して購入してもらうこと」と同意だと言えます。従って、店内の色使いや彩りは、ロングセラーを誘発する色使いが肝心なのです。色使いや色選択については、こちらの記事(⇒食品パッケージデザインの色の決め方)で詳しく説明していますので、御覧ください。

茶色でロングセラー空間を演出しつつ赤色を指し色に食欲喚起の事例

 なお、上記の視点だけでは、どの居酒屋も「同じような雰囲気」になってしまい、上手くありません。そこで、ここにストアコンセプトを踏まえたメッセージを加味したデザインが差異化のポイントになります。ストアコンセプトを具現化する言葉として、仮に「高級感」「活気」という要素があるのであれば、それぞれ、ゴールドや深赤色、橙色や白色等を指し色に使う等、デザインを秀逸なものにブラッシュアップしていきます。その組立についても、詳しく説明していますので、こちらの記事(⇒食品パッケージデザインの色の決め方)を御覧ください。

茶系でロングセラーを意識しつつ深赤色で高級感を演出した事例

7.居酒屋の既存客から新規客を獲得する方法

 1度来店されたお客様が新規客を連れてくる方が(仲間を連れてくる方が)、独自に新規の御客様を囲い込むより容易です。そのあたりは、皆さんの御店でも実感では無いでしょうか。そこで、数ある飲食店の販促策の中から、居酒屋特有に「うまく集客できる」方法について、少々ピックアップして紹介します。

・競い合う仲間を増やしたくなるポイント制度の導入

 来店頻度や購買額に応じたポイントカードを発行している居酒屋も多いですね。しかしながら、そのカードが機能している居酒屋は、少ないのが実情です。従って、これからは、楽しく、参加したいと思っていただけるようなイベント(企画)と合わせて、実施していくと良いでしょう。以前、ネーミングの決め方という記事(⇒こちら)で紹介した出世サワーという企画は、その一例です。

 サワーの注文点数の累積に応じて、班長、係長、課長、部長、常務、社長と言った具合に店内で使える名刺を手に入れることができます。その名刺に応じた接待(割引や特別メニューの注文等)を受けたいがために、お客様は、仲間を巻き込んで、競い合うようにお店に来店を重ねます。

 このように楽しそう、参加したいと思えるようなイベントとポイント制を組み合わせることで、想定通りの参加を促す「ポイント制度の運用」が叶うのです。

・紹介してほしい方と「その理由を明確にすること」で来店を誘発する「紹介カード」

「誰でも良いから、誰かを紹介してください!」という主旨が、多くの居酒屋の発行する紹介カードでしょう。これでは、誰も紹介してくれないのが関の山です。ですから、これからは、「どのような顧客層を紹介してほしいのか」を明確に書くようにしましょう。そうすることで、紹介カードを渡された方が、紹介する際の「心理的ハードル」が下がるものです。気軽に誘いやすくなります。

 例えば「野菜を使った料理を紹介しつつ、知人等と来店時に、何かしらの特典を付す内容」にすれば、先の事例で紹介した顧客層「女性×20~40歳台前半×A駅周辺に勤務している方×選好(野菜を使った料理好き、ボリュームがあるもの)×嗜好(濃い味、カロリー抑えめ)」が誘いやすくなるでしょう。あるいは、そのような選好や嗜好の友人や知人と来店するかもしれません。あるいは「奥様といっしょに!」と付記すれば、そのような選好や嗜好の奥様を連れて来店してくれるかもしれません。

 このように、誰を紹介してほしいのか、どのような選好や嗜好の方を紹介してほしいのかを明確に記載する紹介カードがおススメです。

8.居酒屋の既存客の来店頻度を上げ来店期間を短期化する方法

 既存客を囲い込めたかどうかを確認する指標には、次回来店までの期間(時間)をウオッチし短期化したかを見る方法、来店頻度が上がっているかを確認する方法があります。この指標を改善するアプローチとして、数ある飲食店の販促策の中から、居酒屋特有に「うまく集客できる」方法について、少々ピックアップして紹介します。

・次回も来店したくなる「選好や嗜好に働きかけるカード(割引券)」の配布

 おススメしたい取組に「次回来店時の割引券」というものがあります。ただし、単に「次回来店したら割引します」では効果が薄いことも事実です。そこで、次回来店したいと思わせるよう、作り込んでおくことが必要です。

 その作り込みの方法は、こちらの記事(⇒次回来店を誘発する割引券の作成の方法)で詳しく説明していますので、ぜひ確認して取り組んでみてください。

こんにゃく好きへの次回来店を誘発する割引券 事例

 簡単にポイントを説明しますと、次回来店時に選好を意識した割引券を配布することです。例えば、魚料理好きに対して、足が速いソーダカツオの刺身がありそうだとPR、ビール党にビールの割引券等を明確にPRする、といったことです。

例 魚料理好きに対して、足が速いソーダカツオの刺身がありそうだとPR

⇒食べれる希少食材や限定メニューへの割引を訴求

例 例 ビール党にビールの割引券)等を明確にPRする

⇒顧客の選好や嗜好を踏まえた割引内容を訴求

・早く来店して貯めたくなるポイント制度の導入(ポイントカード)

 既述で紹介した「競い合う仲間を増やしたくなるポイント制度の導入」の取組は、ここでも役立ちますので、ぜひ取り組んでみてくださいね。既存顧客の来店頻度を高めることに貢献することでしょう。

 他にも、ポイントが貯まることで、得られる特典のみを切り出した取組も、来店頻度を誘発することができます。ポイント数に応じてですが、メニューやアルコール、ドリンク類がランクアップするのも面白いですね。1番効果が高いのが、ポイントに応じた「裏メニュー」の存在を匂わすPRです。ポイントに応じて注文できる内容がランクアップしていくことが人気になる秘密です。工夫次第で御客様が「盛り上げてくれます」ので、めんどくさがらずに、企画して実行してみてくださいね。

9.居酒屋が客単価を上げる方法

 各テーブルに、スタンドPOP(下記画像のようなもの)を用意し、「店長やスタッフおススメの料理」として紹介するようにしましょう。あるいは、お客様からの注文が多く評判の料理等を紹介しつつ「大人気」という表記も良いでしょう。

テーブルPOP事例

 上記画像の事例のようなスタンドPOPを店頭で見たお客様は、「大人気だから頼んでみよう・・!」といった衝動に誘発されることがわかっています。このような表記をテーブルで見たお客様は、ウインナーが食べたいと思ったのでは無く、大人気というメニューを頼んでみたいと思ったということです。これは記号消費といわれる現象で、こちら(⇒記号消費活用による集客や販促の考え方)に詳細を記載していますので、ぜひ参考にしてください。

 余談ですが、このスタンドPOPは、そのお客様が在席している間に「数回」更新を掛けると効果的です。タイムりにーおススメを見ることで、注文意欲が喚起されることがわかっています。「注文が伸びないなー」と思った場合、迷わず事前に用意していた「おススメスタンドPOP」を更新するようにしましょう。結果、テーブル単価(客単価)の向上に大きく貢献することがわかっています。

10.新規客を新たに開拓する方法

 ここでは、既存客を介した新規客の獲得の方法では無く、新規客を独自に見つけ出し、獲得していく方法について説明していきます。とは言え、飲食店全般論では無く、居酒屋特有の方法について、数ある中から、とっておきのおススメを紹介したいと思います。

1)インターネットを活用した居酒屋の新規客の集客と販促の方法

 インターネットで文書や画像を介して提供するwebを活用した集客と販促の方法について説明します。まず押さえたいのは、集客策と販促策との相違です。詳しくはこちら(⇒集客策と販促策の相違と実施方法について)で紹介しますが、簡単に説明しますと、集客策は見込客を獲得する方法、販促は新規客を獲得する目的で行います。

 「集客策と販促策の相違と実施方法について」の記事で紹介している通り、インターネットで扱う集客ツールと、販促ツールには相違がありません。Facebook、Instagram、TwitterといったSNSは勿論のこと、ホームページ(webサイト)等も両方の取組に有効です。居酒屋特有の論点としては、下表の内容の情報の発信を心掛けると良いでしょう。かなり有効な集客や販促が実現できることが、支援の中でわかっています。事例として、日本酒と日本酒に合う肴を提供している居酒屋の事例を紹介しておきます。

居酒屋のSNS等のwebでの情報発信の内容の検討

 なお、発信する情報は、先に紹介した顧客層を意識し、これらの顧客層の選好や嗜好を踏まえて組み立てていくと良いでしょう。例えば、顧客層を「女性×20~40歳台前半×A駅周辺に勤務している方×選好(野菜を使った料理好き、ボリュームがあるもの)×嗜好(濃い味、カロリー抑えめ)」とした場合、野菜の品種、野菜の調理による風味の変化・・等々をPRすることで「集客策とする」というようなことです。

 インターネットに取り組んでいる居酒屋の方で、「発信する情報が無い」「困っている」という話を耳にしますが、以上のように考えていきますと、キリが無いくらい、発信すべき情報は溢れていると言えますよね。日本酒の銘柄を1つ1つ説明するだけで、どれだけの銘柄が日本にあると思いますか。野菜の品種を説明するだけで、どれだけの品種があると思いますか。野菜の調理による風味の変化は、一言や二言で済むわけが無く、切りが無いくらい奥が深いですよね。切りが無いですね。

2)チラシ(フライヤー)を活用した居酒屋の集客と販促の方法

チラシ(フライヤー)を使って新規客を獲得する方法もおススメです。チラシ(フライヤー)を作成する方法や記載内容、どのようにお客様にチラシを届けるかについての詳細は、こちら(⇒チラシ(フライヤー)の作成の仕方とチラシを活用した新規客の獲得の方法)を御覧ください。

ここでは、チラシを作成する際の居酒屋ならではの留意点について、いくつか紹介します。

・アルコール類をPRするのか料理(メニュー)をPRするのかを明確にする

 ここでも、顧客層の選好を意識します。その上でアルコール類をPRするのか、料理(メニュー)をPRするのかを選択します。例えば、下記の顧客層が事例の場合は、それぞれ野菜を売りにした料理、ビール(アルコール)を売りにしたPRを心掛けます。

顧客層事例①の場合

「女性×20~40歳台前半×A駅周辺に勤務している方×選好(野菜を使った料理好き、ボリュームがあるもの)×嗜好(濃い味、カロリー抑えめ)」

顧客層事例②の場合

「男性×40歳台以上×A駅周辺に勤務している方×選好(ビール好き)×嗜好(カロリー抑えめ)」

 なお、記事(⇒チラシ(フライヤー)の作成の仕方とチラシを活用した新規客の獲得の方法)に紹介しているチラシのキャッチコピー5要素(5つの記載すべき内容)を抑えた上で、余白がある場合は、嗜好まで踏み込みます。上記事例①の場合は、濃い味、カロリー抑えめの料理(メニュー)に言及します。事例②の場合は、カロリー抑えめの料理(メニュー)に言及すると良いでしょう。

 またリーチについて(どうやって顧客に届けるか)ですが、安易に新聞折り込みやポスティングといった選択は、あまり効果がありません。記事(⇒チラシ(フライヤー)の作成の仕方とチラシを活用した新規客の獲得の方法)に紹介しているバブル図を使い、どこに「その顧客層が存在するのか」を明確にした上で、届ける手段(持参して手渡し、新聞折り込み、店頭での掲示等々)を選択していきます。その方が、届けたい相手に確実に届けられます。例えば、事例②の顧客層を想定したチラシを作成し、市内の草野球チーム7チーム各々の集まりでビールを楽しんでいただく場を設けたければ、20,000世帯に新聞折り込みするよりも、草野球チームそれぞれに訪問し、監督等に手渡しした方が、費用対効果が高いと言いたいのです。

・どういった利用をして欲しいのか場面を創造できるように

 ここは少し上級者向けですので、可能なら取り組んでみてください。想定した通りの集客に貢献してくれることでしょう。

 居酒屋は居座ってお酒を楽しむ場所です。その居座り方について言及するようにします。再び前項の顧客層事例①と顧客層事例②に登場していただきますが、選好を意識して、表現すると良いでしょう。例えば事例①の場合、「***種類の野菜料理に目移りする楽しさが伝わるよう」表現やイラストを心掛けます。事例②の場合、「***種類のクラフトビールを選ぶ楽しみが伝わるよう」表現やイラストを工夫します。「長居してください」と伝えずとも、結果的に長居するに値する場だというイメージを訴求していきます。

 ほかにも、年末年始を中心とした宴会であれば、宴会の楽しさが伝わるようにします。料理や酒の肴(メニュー)は二の次だったりします。顧客が叶えたい状況は楽しい空間を味わえることです。そうであれば、訴求するイラストや画像は、楽しんでお酒を楽しんでいるイメージのようなものが良いでしょう。

備考4)チラシの作成の仕方と活用した新規客獲得策

 上記を踏まえ、チラシを作成する場合、どうやって進めれば良いかがわからない方も多いでしょう。また、そのチラシを、どうやって見込客に届ければ良いのかを悩む方もいるでしょう。こちらの記事(⇒チラシやフライヤーの作成の方法と活用した新規客の獲得の方法)で、詳しく説明していますので、参考にして取り組んでみてくださいね。

==お知らせ==

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久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。

講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。

2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。

近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。

主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。

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