小さな御店でも自らできる商圏分析(商圏調査)の手順・分析方法

豆腐店、八百屋、鮮魚店、お茶屋、乾物屋、洋菓子店、和菓子店といった食料品小売店の皆さん、更には居酒屋、ラーメン屋、カフェといった飲食店の皆さん。御自身の商圏のお客様の態様や状況を把握していますか。

あるいは、把握したいと思ったことはありませんか。

この記事は、そのような方々のために、商圏分析(商圏調査)の方法や手順、分析の方法を細やかに説明したものです。最下段にはダウンロードできるようPDFで資料を用意しましたので、ご自由に御利用ください。

目次
1.商圏とは
2.商圏分析とは
3.商圏分析の進め方
4.売上を構成する要因の検討と設定
(1)事業の売上に影響する「要因」を検討する
5.設定商圏の明示(机上による商圏の設定) と売上見込の算定
(1)旅行速度の検討と設定
(2)e-STATによる机上の商圏の設定
(3)e-STATの商圏データでわかる主な内容
a)商圏範囲
b)年齢別構成比
c)世帯数と世帯の中身
d)商圏の成長率
e)産業構造
f)その他
(4)商圏分析で売上見込を算定する方法
 a)1次産業の算定の考え方
b)2次産業の算定の考え方
c)3次産業の算定の考え方
(5)競合を踏まえた商圏分析で売上見込を算定する方法
6.実際商圏の設定(実査による商圏の設定) と売上見込の算定
(1)実査書と集計
(2)集計結果を踏まえた売上見込の算定
・売上高比較法
・重回帰分析法
7.売上差異分析による改善項目の洗い出し
(1)売上差異の認識
(2)改善ポイントの検討
8.広域商圏設定
9.商圏分析の事例

1.商圏とは

 対象とする事業所(小売業、飲食業、サービス業等)が商売する場所(所在地)において、売上の獲得が見込める物理的(地理的)範囲の設定を実現したものです。また、その範囲での売上獲得の将来に渡る見込みを算出するものです。

2.商圏分析とは

 設定した商圏において、現状獲得できる「売上見込み」と実際の売上との差異を論理的に明確にし、差異を埋める要因(競合度や磁石、視認性や認知度等)と改善策を、具体的に明示するまでの一連の作業や活動を指します。
また将来に渡っての商圏の成長性を分析し、事業継続または事業拡張の意志決定の「判断基準:モノサシ」を提供するものです。
 新たに創業や起業する場合は、始める事業の商圏での売上見込を論理的に明確にすることで、精度の高い事業計画の策定が叶います。さらには、始める事業の阻害要因等を明確にし、対策できる改善策を明示できます。

3.商圏分析の進め方 

 商圏分析の進め方は大まかに以下の図のようになります。

4.売上を構成する要因の検討と設定

(1)事業の売上に影響する「要因」を検討する

 商圏を設定し分析する理由は、見込売上を算出することにあります。その売上は、多くの場合、以下のように設定して進めることが多いです。

見込売上高=導入率(来店率)×通行量×1人あたり消費額または客単価×営業日数
しかしながら、式の中にある導入率(来店率)をどのように決定するかは、非常に難しく、論理的に説明することが困難です。従って本書では、売上に起因する(影響する)要素を可能な限り洗い出し、そこから売上を予想するという手順をとることにします。
一般的には、売上を構成する要因は、次の図のように説明できます。

 立地要因とは、「どれだけお店に誘引する力があるか?」を示す言葉で、誘因性とも言われています。また商圏要因とは「事業やお店を取り巻く購買力や競合の影響を踏まえて、どれだけ売上を獲得する力があるか?」を示す言葉で、市場性とも言われています。 
 立地要因は具体的に、顧客誘導施設や、認知度、動線、建物構造、アプローチから説明でき、商圏要因は、マーケットの規模や商圏の質、ポイント規模、競合から説明できます。それぞれの言葉は難しいかもしれませんが、「6.実際商圏の設定(実査による商圏の設定) と売上見込の算定」の「(1)実査書と集計」にある実査書の質問の内容が参考になりますので、この内容から理解を深めていただければ幸いです。
 従って、商圏分析では、これらの要因を実際に「足と目で」確認する作業がポイントになります。

5.設定商圏の明示(机上による商圏の設定) と売上見込の算定

(1)旅行速度の検討と設定

 机上で商圏を設定していきます。机上で商圏を設定する場合は、まず、旅行速度を設定します。旅行速度とは、事業を営んでいる(始めようとしている)店舗や事務所の「正面」の車や歩行者のスピードを設定することから始めます。
 徒歩であれば、概ね時速4㎞~7㎞になります。日頃、高齢者が多いと思えば、時速4㎞程度に設定すると良いでしょう。若年層が多いと感じていれば、7㎞程度に設定すると良いでしょう。高齢者も若年層もほどほど多いと感じるなら、間を取って5.5km程度にしても良いです。高齢者と若年層の構成比がわかる場合は、加重平均で算定しても良いです。決定が難しい場合は、商工会の経営指導員に尋ねていただければ問題ありません。なるべく実情に応じた歩行速度を決めていくことがポイントです。
車の場合は、実際の法定速度を参考に設定すれば良いです。


(2)e-STATによる机上の商圏の設定

 商圏分析を机上で進める際に活用したいのが、「e-Stat」です。e-Stat(イースタット)とは、政府統計の総合窓口のことです。Yahoo!やGoogleで検索いただくとたどり着くことができます。トップ画面は次の写真のとおりです。

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  以上、いかがでしたか。ここまで理解が出来れば、以下のPDFファイルを是非、ダウンロード(無料)して御利用ください。目次にある「(3)e-STATの商圏データでわかる主な内容」以下が、細やかに記してあります。

 自ら立地する商圏の態様や状況等を把握し、将来に渡って適切な施策(集客策、販促策)を打てるよう、学習を進めてくださいませ。

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久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。

講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。

2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。

近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。

主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。

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