食事業者がブランドやストアイメージを価格に反映する方法(ブランド価値を価格設定に活かす方法)

 マーケティング活動を丁寧に進めている飲食業や食品製造業の場合、御店に対するイメージ(ストアイメージ)や、商品やメニューに対するイメージが、次第に定着していくことでしょう。そのような事業者の方々にチャレンジして欲しい取り組みの1つが「そのイメージを価格に反映すること」です。

 今回は、お店や商品のイメージ(つまり、ブランド・イメージ)を、価格に反映する思考や手順について説明していきます。

目次

1)ブランド イメージ(ストア イメージ)と売上の関係
2)ブランド イメージを価格に反映(算定)する実務

1)ブランド イメージ(ストア イメージ)と売上の関係

 御店にブランド イメージが付いてくると、そのイメージの分だけ、競合他社の御店の商品より、価格設定が優位になってきます。例えば、支援先に「おから マフィン」を製造小売りしている事業者がありますが、この事業者の場合、「乳腺炎や糖質制限の罹患者向けのマフィンであれば同店」というイメージが醸成(*注)されており、他のマフィン 専門店よりも優位な価格設定が実現できています。

 つまり、「イメージの良さの幅」は「価格を高く値付けできる幅」であると言えます。あるいは「イメージの良さの分、稼ぐ力がある」と言えます。

 この稼ぐ力を図る尺度に、販売生産性という指標があることを、ここで知ってください。販売生産性は、売場1平方メートルあたりの販売高を指しています(単位面積当たりの売上)。すなわち、この数値が高まるほど売場の稼ぐ力が大きくなる。そのような解釈で問題ありません。ブランドイメージが醸成できている御店では、この稼ぐ力が他店より大きいため、価格設定(値付け)が優位に運べるのです。

(*注)イメージを醸成するということは、顧客から、そのような御店であるというイメージを持たれるということです。この概念を言い換えると、御店の存在価値と言えます。その存在価値の見つけ方について、説明した記事があります。ぜひ、合わせてお読みください。

 ⇒御店や商品・メニュー等の存在価値の見つけ方(決め方)

2)ブランド イメージを価格に反映(算定)する実務

 例えば、私の支援先のレストラン(昔ながらの洋食屋)の事例を紹介したいと思います。このお店、都内からも近いとあって、観光客、更には地域住民の取り込みに成功し業績は向上の一途です。

 この事例紹介時点での売場面積は34㎡で、紹介時点の直近1年間の平均月商(売上)は、約320万円になっています。そこで販売生産性を計算しますと以下のようになります。


 販売生産性 = 320万円 ÷ 34㎡ = 94,117(円/㎡)ということになります。

 このお店が、仮にデミグラスソースを製造し販売する場合、いくらの値付けをすれば良いのでしょうか。このデミグラスソースですが、仮に、5㎝×5㎝の四角の棚を設けて、その場所に置いて販売しようと検討していることとしましょう。販売生産性を踏まえて値付けをする(価格付け)場合、次のような段階を経て価格を決めていく(値付けをする)と良いことになります。

1、この販売しようとしているデミグラスソースの売場面積は5㎝×5㎝ですので、底面積は25㎠

2、このお店の販売生産性は94,117(円/㎡)なので、1㎡あたり94,117円の稼ぐ力があります。

3、1㎡あたり94,117円(1㎠あたり941円)の売上を稼ぐに値する「価値」があるお店であると考えます。

4、販売しようとしているデミグラスソースの売場の底面積は25㎠ですので、25㎠あたりでは、23,525円を月商で稼ぐ力があると考えます。言い換えますと、月あたり23,525円の価値がある商品である必要があります。

 では、デミグラスソース1瓶 容量はいくらにすればよいのか。1瓶を月で売るのであれば、23,525円という価格を付けなければなりません。また、それに見合った容量が必要になります。月に10瓶を販売するのであれば、2,352.5円を計算上、値付けしなければならないということになります。

後は、原価とにらみ合いながら、その値付け(価格付け)で利益が確保できるのかを確認していくと良いでしょう。原価の決め方においては、当所では原単価法を推奨しています。ぜひ、以下の記事よりチェックしてみてくださいね。

 ⇒原単価法によるメニューや商品の原価の決め方

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久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。

講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。

2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。

近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。

主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。

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