記号消費活用による集客策・販促策・商品開発・メニュー開発の方法(手順)

記号消費を活用した集客策、販促策、商品開発等の方法を、手順を追って説明していきます。

目次

(はじめに)
(記号消費とは)
(記号消費を体験してみよう)
(記号消費が集客策や販促策等で有効な理由)
(記号消費で集客や販促に成功している事例)

(はじめに)

心理学者のティモシー・ウイルソンを御存知でしょうか。

飲食店、洋菓子店(ケーキ屋)、和菓子店、魚屋さん、八百屋さん、食品製造業(食品メーカー)、食品スーパー(食料品小売店)といった「食を消費者」に製造したり、販売したりしている事業者の皆さんには、ぜひ、知識として手にいれておいていただければと思います。

 彼の種々の研究結果は、対消費者に向け、集客や販促策を立案する際に、必ず念頭に置いておくと、役立つ知見を示してくれています。
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 ティモシー・ウイルソンは「人間は1秒間に1100万ビットの感覚情報を処理している」と種々の実験で明らかにしました。しかも、そのうち、意識的に処理しているのは、たったの40ビットだそうです。
 これを割り算すると、0.00036%のみが、人は意識を向けて、購買行動できるということです。

 つまり、消費者の購買選択は、ほとんどの意志(選択)決定が「瞬間」であり、論理的である判断は「ごく稀」だと言うことです。

 食品メーカーや飲食店、食品スーパー等の掲げるPOP、ECサイトの商品掲載や説明、飲食店のメニューPR(メニュー表)等々、あらゆる集客や販促物が、ほとんど消費者には無意味で、何かしらの工夫をしなければ、「消費者は見ているようで、読んでいるようで、気にも留めない」といった状況が日常だと言えます。

 消費者の選択の場面では、「思わず興味をもってしまうシズル」「思わず興味を引きそうな文言や画像、イラスト」といった取組が重要ということになります。そうでもしなければ、消費者の関心を引き付け、購買候補に入れてもらうということは叶わないということです。

 この事実を踏まえると、我々が日常良かれと思って実施している種々の集客策や販促策は、ほとんどの情報が、消費者の眼前では無意味に近いと言えそうです。

 その状況を抜け出し、想定した集客や、想定した購買を誘発する販促を実現する方法に「記号消費論」が活かせるのです。

(記号消費とは)

記号消費とは、ジャン・ボードリヤールというフランスの思想家・社会学者が提唱したもので、「消費が意味と機能に乖離し、意味を記号化することにより欲望と消費を刺激することが可能になること」を指します。少しわかりにくいので、下図で説明します。例えば洋食屋という飲食店は、消費者にとって「空腹を満たす」という機能を持っていますね。お腹が空いたから洋食屋等の飲食店に行こうと思うものです。しかしながら、「Googleで高評価だったから、行ってみよう!」「インスタグラムで見た料理の絵が気になって・・」等々、お腹が空いたから(本来の機能)以外の理由でも、来店することが増えている傾向があります。

 つまり、消費者は、洋食屋等の飲食店が本来提供している「機能:お腹を満たせる」という理由で来店(消費)することよりも、何か他の理由を消費者自身が見出し、そこに共感したり、意識を向けることで、来店することが増えているということです。ここで言うところの「何か他の理由」が、上図の意味(意義)を指しています。

インターネットの浸透、種々のSNSの隆盛により、この傾向は、より強まっています。また、経済的に豊かなため、単にお腹を空いたからといった理由で、来店することの方が少なくなっているのです。「あの店の店頭、素敵だから1度入店してみよう!」「この商品のパッケージ、かわいいから買ってしまった!」といった体験があれば、それが「記号消費した」ということなのです。

(記号消費を体験してみよう)

 例えば、居酒屋にお友達とお店に行ったということをイメージしてみてください。テーブルに着いた時に、下記画像のようなメニューPOPが置いてあり、ファーストメニューを頼む場面を創造しましょう。お友達と何を注文しようか?と会話している中で、このような場面を考えられませんか。「大人気!って書いてあるから、ソーセージ盛りか豚キムチ炒めでも 頼もうかな!」

ここで、豚キムチ炒めやソーセージ盛りを頼んだとしたら、まさに、それが記号消費したということです。この場合、記号が「大人気」という言葉や「大人気」という文字のイラストです。

(記号消費が集客策や販促策等で有効な理由)
 いかがでしたか、記号消費という手法は、消費者に「瞬間的に」「意識を向けさせる(気を引く)」効果が期待できます。ヒト(人)は、五感を経て、意識的に情報を処理しているのは、たったの00036%のみです。気を引いて、意識を向けさせることができなければ、皆さんの商品やサービスの良さを伝える機会すら得られないのです。逆に気を引き、注目さえしてもらえれば、かなりの高確率で、自社の商品やサービスの良さを伝えることが可能になります。

(記号消費で集客や販促に成功している事例)

 以上、説明をしてきましたが、イメージがまだまだつかめない方もいらっしゃると思いますので、いくつか画像と共に紹介しましょう。

・看板にオムライスのサーフボード

 一目でオムライスが売りの店だと、通行客等に伝わります。なお立地は、サーフィンにも人気な湘南エリアです。

 記号:オムライスデザインのサーフボード

・サイクリング ラックの設置(実際の自転車とともに)
 サイクリング客を囲い込みたいと考えるカフェが、店頭にサイクリング ラックを置くと、サイクリング客は、店頭を通る瞬間に、「サイクリング客を、このお店はウエルカムモードなのだ!」と感じ、立ち寄りやすくなります。

 記号:サイクリング ラック

・柿の種という御菓子のパッケージデザインに「日産自動車の名車」をあしらう

 「日産自動車の名車が好きな方」が、自分事として、この商品に意識を向けるようになります。また車好きの方の気を魅くことも可能です。

記号:「日産自動車の名車」

・アジの干物に受賞したことをラベリング

 土産物屋でアジの干物を購入したいと探索している方々に、どうせ買うなら、農林水産大臣賞を受賞した干物でも買ってみようか!という衝動を誘発できます。

 記号:農林水産大臣賞の受賞ラベル

・シズルに配慮した飲食メニュー

 以下に事例で紹介するメニューは、記号は、シズル(つまり絵)そのものになります。消費者は、SNS等で「この絵」に触れ、見てみたい、食べてみたい!という衝動に駆られます。お腹が空いたからではなく、見てみたい!体験してみたい!といった消費(来店)理由が誘発されます。

⇒春菊の花が鮮やかで絵になる

⇒刺さっているエビと量感が絵になる

⇒カブサラダというメニュー名をリアルに再現しているところが絵になる

⇒カツカレーという名の通り、カツがカレーを凌駕するボリュームが絵になる

(最後に)
 消費者の「心理」に「瞬間的」に働きかけることができる手法が記号消費です。また、消費者の気を魅く(引く)ことも叶います。お客様の興味を引けるネーミング、パッケージデザイン、プロモーションメッセージ、画像、イラストは、アイデア次第です。ぜひ、チャレンジしてみてくださいね。

 なお、記号消費の「記号の作り方」には、論理的なアプローチがあります。よろしければ、当事務所が受賞した中小企業庁長官賞の受賞論文を一読ください。

==お知らせ==

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久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。

講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。

2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。

近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。

主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。

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