食品等のパッケージ デザインの色の決め方・手順・色の選択の方法

 食品パッケージの開発において、1番重要なことが色を決めることです。つまり、色の3属性(色相、明度、彩度)の中の色相を決めることです。最初に結論から紹介しますと、その食品(商品)がお客様に伝えたいメッセージを決めて、そのメッセージを表現する色を採用して、パッケージのデザインを起案していくことがポイントです。では順序立てて説明していきましょう。

目次(2019年1月31日初稿 2023年6月8日 最終加筆)
1.食品パッケージデザインの色(色相)の決め方(方法)と手順
2.食品パッケージで伝えたいメッセージを表現する色について
3.食べ物の美味しさを表現する色(五味五色)
4.食品の集客や販促に効果が大きい(売れる)4色について
(食品パッケージデザインの基本の4色とは)
(食品パッケージのマーケティングにおける4色の取り扱い)
5.食品の集客や販促で効果の薄い(売れない)色と活用策
6.ロングセラーに育てたい食品パッケージに活かしたい色
7.食品パッケージに日本人の世代間の色の好みを踏まえること
(全体と世代間の傾向)
8.日本人の地域間の色の好みを食品パッケージに活かすこと
9.食品パッケージの流行色の取り入れ方の日本人の傾向を踏まえる
10.食品パッケージデザインの色(色相)の決め方の事例

1.食品パッケージデザインの色(色相)の決め方(方法)と手順

STEP① 消費者に伝えたいキーワードを出し尽くす

STEP② ①から2~3つのキーワードまで絞り込む

STEP③ キーワードを意識し色を選択する

STEP④ キーワードを意識した色を使いパッケージデザインの色調や色彩を決めていく

2.食品パッケージで伝えたいメッセージを表現する色について

3.食べ物の美味しさを表現する色(五味五色)

食の業界には五味五色と言う言葉があります。この意を汲んで、食品のパッケージデザインに活かそうという試みも、多くの大手食品メーカーで実施されています。五味は「甘い」「塩辛い」「酸っぱい」「苦い」「辛い」からなる五つの味を指す料理用語です。五色は「青」「赤」「白」「黒」「黄」の五つの色を表す料理用語です。素材の色を組み合わせて盛付け時に、美味しそうで鮮やかな色合いを演出するために用いられる言葉です。

 近年では、以上の考えが発展し、下表のように、五味を表す色がわかってきています。

 例えば「甘い食べ物であることを伝えるために、色の基調をピンクに統一しよう!」といった使い方です。

4.食品の集客や販促に効果が大きい(売れる)4色について

(食品パッケージデザインの基本の4色とは)

 これまでの多くの2次データや研究で明らかになっているのが、集客や販促、大ヒット商品に必ず使われている色が存在することです。この色使いを念頭に置くことで、食品パッケージの色の基調を決めやすくなります。

 なお、4色とは、赤色、青色、黒色、白色を指し、下表のようになっています。

(食品パッケージのマーケティングにおける4色の取り扱い)

 中でも赤色と青色が、集客や販促には、大きな効果があります。しかしながら、赤色の方が印象付けや、目立つという意味で軍配があがります。

 従って、競合の食品(商品)等を意識し、まずは赤を獲得するという戦術が有効です。一般的には、赤を制するモノが優位なことが多いです。仮に競合が赤を先取しているようであれば、対色の青色を採用するといった工夫も有効です。青を基調にしつつ指し色で赤を使う等で対応できます。また自社内で主力にしたいものがあれば、そちらに赤を使うという選択も有効です。

≪参考画像(左 コカ・コーラ 右 ペプシコーラ)・各社webサイトより≫

5.食品の集客や販促で効果の薄い(売れない)色と活用策

 これまでの多くの2次データや研究で明らかになっている「売れない色」というものもあります。集客や販促に苦戦する、ヒット商品になりにくい、と研究されているからです。この色使いを念頭に置くことで、食品パッケージデザインの色決めに役立たせることが可能です。 なお、この分類に入る色は2色で、緑色、黄色になります。

 しかしながら、使わない方が良いということではなく、緑色の持つ憩いや、安らぎ、ゆとり等のイメージをメッセージとして伝えたいといった主旨等、心理的に働きかけたい場合は、有効に活用できます。

6.ロングセラーに育てたい食品パッケージに活かしたい色

 長く愛されるお店や商品の特長として、「飽きさせない」ということがあります。先に紹介した売れる色(赤色、青色、黒色、白色)は、工業製品が出回る前から、自然界に広く存在する色として、この効果も期待できると言われているのです。また、以下の3つの切り口も、ロングセラーに育てたい場合、有効とされています。

7.食品パッケージに日本人の世代間の色の好みを踏まえること

(全体と世代間の傾向)

 日本人が好きな色というものもあります。経年で種々の2次データがありますが、概ね、青色、赤色、黄緑色の3色が、上位3位を構成します。また、世代毎に好きな色に特長があり、以下のことがわかっています。

8.日本人の地域間の色の好みを食品パッケージに活かすこと

 地域によって、平均的な日照時間、湿度、気温、太陽光の色味等等々の気象条件が異なることから、地域間によって、色の好みがあるという研究や2次データが豊富です。これらの情報を整理すると、概ね下表のようです。参考にしてみるのは、いかがでしょうか。

9.食品パッケージの流行色の取り入れ方の日本人の傾向を踏まえる

 カラーパーソナリティーという言葉があります。これは、流行色というものに触れた時に、どのような反応をするかを指します。大きく以下の3つの分類になります。また、日本と米国では「反応の違い」に大きな差があることに気付きます。この日本や米国の反応の違いは、私が種々の2次データを踏まえ、紹介した概算数字に過ぎませんが、傾向は表しているので、ぜひ、参考にしてください。

 以上のことから、日本人は、流行色に対して、保守的な反応が多いということがわかります。そのあたりを踏まえた、色の選択が必要です。

10.食品パッケージデザインの色(色相)の決め方の事例

 地方の和菓子製造の事業者を事例に紹介します。

STEP① 消費者に伝えたいキーワードを出し尽くす

 栗を使った焼菓子のパッケージデザインを決めていきます。この商品は従来品よりも、より高級な栗を使い、更にはマーガリンでは無くバターを使うなど、食材にも最善のコダワリを見せた商品ということで、高価格の値付けをしたいとのことでした。

 そこで伝えたいメッセージは以下としました。

・高級感がある

・優雅なイメージ

・おいしそうなイメージ

・親近感のあるイメージ

・信頼感のあるイメージ

これらのイメージを具現化する色は、下表を参考にすると、ゴールド、水色、茶色、赤色、橙色、オレンジ色、深赤色等々、多岐に渡ります。

STEP② ①から2~3つのキーワードまで絞り込む

 STEP①では、候補の色が多すぎて、パッケージデザインの色調を選択するには、絞り切れません。そこで、伝えたいメッセージを以下の3つに絞ることとしました。

・高級感がある

・優雅なイメージ

・おいしそうなイメージ

STEP③ キーワードを意識し色を選択する

 STEP②で絞り込んだ伝えたいメッセージから、重複する色、網羅性のある色を選択していきます。先の表を御覧いただくと理解できる通り、茶色、ゴールドが当てはまります。

 そこで、この2色をベースにパッケージデザインを起案していくこととなります。

STEP④ キーワードを意識した色を使いパッケージデザインの色調や色彩を決めていく

 以上のステップを踏まえ、実際の起案されたデザインを紹介します。

 御覧いただくと何だか殺風景な感覚を持ちませんか?

そこで、これまで説明してきた色の持つ意味(心理的なイメージ)で、色調や色彩を調整していきます。ここでは、ロングセラーに育てていきたいという想いや、近畿地方を攻略していきたいというメッセージを意図し、橙色、オレンジ色あたりを指し色に使う方法で調整しました。以下のようです。

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久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。

講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。

2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。

近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。

主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。

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