飲食店等の食事業者の周年記念イベントの方法・実施策の起案手法と事例

飲食店等の周年記念イベントの方法やコツについて説明していきます。

目次です。

1.周年記念のイベントを開催する期間の決め方
2.周年記念イベントを実施する目的と目標集客人数(目標売上)を決めましょう
3.周年記念イベントの実施策の数々
・周年記念限定の特別メニューを提供する
・周年記念特別メニュー専用のメニュー表を用意
・感謝を伝える周年記念イベント期間中の「お得告知カード」の作成と配布
・周年記念イベント期間実施の抽選券の配布
・周年記念物販の実施
・売上に関連性のあるノベルティーの配布
・SNS等での周年記念イベントの情報発信のコツ
4.ほか周年記念イベント立案におけるコツ
・独り善がりにならない(感謝を伝える)企画を立案すること
・存在価値を明確に伝える企画にすること
5.まとめ(周年記念イベントの立案の流れ)

カフェ、喫茶店、居酒屋、イタリアン、中華料理屋、フランス料理店といった飲食店の方々や、ケーキ屋さん等の洋菓子店、和菓子店、食品スーパー等の食料品小売店の方々が、「お店の誕生日にあたる日」に「周年記念」のイベントを検討される方も多いはず。

そのような「周年記念」のイベントで「どんなことをしようか?」「どうすれば既存のお客様が喜んで来店してくれるか?」「どうすれば、これを機に新規に来店しれくれるか?」とお悩みであれば、ぜひお読みください。

1.周年記念イベントを開催する期間の決め方

 飲食店が、周年記念イベントを実施する日を設定する場合、出来る限り1週間程度は確保するようにしましょう。例えば4月1日が周年日だとしても、この1日に限定せず、ここから1週間程度をイベント期間にすると良いです。

 1日だけのイベント開催の場合は、その日に「行けない」といった御客様も必ず現れます。ですから、1日にだけ限定するのは「来店してくれるかもしれないお客様を、自ら限定してしまう」ことになるから勿体ないです。従って、全ての曜日が収まるよう、1週間程度がおススメです。

なお、稀に1ケ月や数週間等、延々と実施する方もいますが、周年イベントといった主旨の「価値」が弱まってしまいます。ダラダラと期間を引き延ばすことはやめましょう。

2.周年記念イベントを実施する目的と目標集客人数(目標売上)を決めましょう

 飲食店の周年記念イベントの第1の目的は、既存の御客様に感謝を伝え、自店へのロイヤルティを高めてもらうことでしょう。また余力があれば、休眠顧客の掘り起しや、新規客の確保にも繋げたいものです。従って、これらの「目的」を意識した上で、目標を設定するようにしましょう。例えば、既存の御客様の来店人数が1週間あたり70名であれば、「既存の御客様に感謝を伝え、自店へのロイヤルティを高めてもらう」という「目的」に対しての「目標」は70人ということになります。一方、休眠顧客の掘り起しや、新規客の確保を視野に入れる場合は、この70人という「目標」に、上積みして人数を決めていきます。

 以上のことから、イベント期間中の目標の売上は、この目標人数に客単価を掛ける等して、決めていけば良いことになります。

3.周年記念イベントの実施策の数々

 それでは、以下に、周年記念イベントの実施策(集客策と販促策)を紹介していきます。なお、集客策と販促策は異なる概念ですので、こちらの記事(⇒集客策と販促策の相違と事例)を参考に使い分けると効果的です。

・周年記念限定の特別メニューを提供する

 飲食店が周年記念イベントを実施する場合、まずもって以下の2点に留意しなければなりません。

・通常のメニューと同じものを提供するようでは、既存の御客様は「わざわざ、イベント期間中に、食事に行かなくても、いつでも食べれるし・・」と思ってしまうものです。

・イベントを実施するわけですから、通常より多くの御客様が来店することになります。通常のグランドメニューから、あれもこれも注文を受けていると、調理や配膳のオペレーションに負荷が掛かり、お客様が許容できる時間での「料理提供」が実現できないことにもなります。

 そこで、以上のような事態を避けるため、周年記念イベントでは「特別メニュー」を設けることをおススメします。お客様からの注文を、特別メニューに集中させ、オペレーションを効率化する準備も叶います。何より、イベントは「特別なもの、特別なことを体験できる」という意味ですので、希少性、限定性といった特別感の演出が実現できます。

 なお、周年記念特別メニューを開発する際は、以下の点に留意して進められると、成功がグッと近づきます。下記の項目を「チェックリスト」のように使っていただければ良いでしょう。このチェックリスト「飲食店 周年記念特別メニュー開発のチェック項目」の項目に1つでも多くのチェックが入ると、「成功」に近づいていきます。

*↓チェックが多く入るほど、希少性や限定性が高まっていると判断します。

≪飲食店 周年記念「特別メニュー」開発のチェック項目≫
□ 開発するメニューは、主力メニューをベースにしたものか。
□ 開発するメニューで、日ごろ御愛顧いただいていることへの感謝が伝わるか。
□ 開発するメニューは、御利用時間毎に差異化できているか。
(ランチタイム用、カフェタイム用、ディナータイム用、テイクアウト用)
□ 農水産の食材は、地域のものを可能な限り使用している。
(日常のメニューで意識が無い場合、効果的)
□ 日常の売りのメニューの調理法では使わない調理法の導入
(カレーライス専門店が、炊き上げたご飯ではなく、焼き飯を調理しカレーのご飯変わりにする等)
□ 季節性食材を可能な限り使用している。
(晩夏から初秋の食材であるブドウを利用、晩冬の食材である蕗の薹を利用等)

(備考)特別メニューの原価計算や価格の設定は、こちらの記事(⇒メニューの価格の設定方法)で確認できますので参考にしてください。また、特別メニューのネーミングは、お客様が瞬間的に気になる、興味が沸くといった工夫も必要です。ネーミングの決め方は、こちらの記事(⇒ネーミングの決め方)を御覧ください。

(事例)オフィス街に立地しているカレー専門店では、ランチタイムは女性客で賑わうのですが、周年記念特別メニューに「ご縁をありがとうカレー」を起案しました。七夕の日が開業日でしたので、当時の周年記念イベントを「出逢いの願掛け」としたのです。店主が顧客同士の日常の会話に聞き耳を立てていたところ「彼氏ができない」といった会話を女性同士で「交わしながら」食事をしていることが発端でした。また、御店側として、御客様との接点を「大切な出逢い」と考えている旨を伝えたかったのです。

・周年記念特別メニュー専用のメニュー表を用意

 周年記念イベント開催期間中は、特別メニューを中心に、専用のメニュー表を用意するようにしましょう。そのメニュー表には、メニュー名と価格、イメージ画像(イラスト)を掲載しつつ、「お客様に、どういった感謝を伝えたいのか」を明確に説明するようにします。この説明のポイントは、特別メニュー開発の背景、特別メニューに込めた感謝の想い、の2点になります。

(事例)「ご縁をありがとうカレー」のメニューの事例では、価格を1410円とし、ポケベル変換を参考に「愛して」という言葉に読めるよう工夫をしました。その上で、そのメニューの説明文として、以下の文章を添えました。

「このカレーのレシピは、恋愛成就(縁結び)の神様である***神社にお参りし、いつも御利用いただいている皆さんの恋愛が成就するよう祈願したものです。また、当店と皆さんとの出逢いは、当店の成長にとって大きなご縁でした。感謝を込めて、愛情いっぱい調理しました。七夕限定の「ご縁」を感謝するカレーです」

・感謝を伝える周年記念イベント期間中の「お得告知カード」の作成と配布

 周年記念イベントに向けては、事前に告知をするカードを配布するようにしましょう。チラシでも良いのですが、かさばってしまいます。そこで、財布や定期入れに忍ばせれる名刺サイズのカードを用意するようにしましょう。もしチラシを使いたいというのであれば、以前紹介した記事「⇒捨てられない・役にたつチラシの作成方法」を参考に精度を高めるよう工夫しましょう。

 カードでは(チラシの場合はチラシでは)、周年記念イベントの特別メニューをはじめ、後述する実施策を紹介します。わざわざ、その期間中に行ってみたい!と思ってもらえる「お得」を表記した内容とします。カードの作成方法や内容の詳細は、こちらの記事(⇒集客できる飲食店の割引券の作り方とデザインの留意点)を御覧ください。

・周年記念イベント期間実施の抽選券の配布

 周年記念イベント期間に来店し、御飲食された方全員を対象に抽選券といった「消費者参加型」の企画も喜ばれます。抽選券は自店の押印がある手作りのもので充分ですし、周年記念イベントの告知と合わせて配布する場合、チラシや告知カードの四隅等に「抽選券」と表示したもので充分です。

・周年記念物販の実施

 周年記念のイベント期間中にだけ買える物販もおススメです。その期間だけとあって既存の御客様だけでなく、新規の御客様にも喜んでもらえます。コツは「ストアコンセプトや御店のイメージを大切にすること」です。生産者の顔が見える「サラダ」が美味しいお店が、ご自宅用の野菜ボックスを限定で受注し宅配するサービス、カレー専門店がご自宅用のレトルトカレーを販売する、といった具合に、必ず「このお店だからこそ!」といったイメージを大切にします。無論、保健所等の許認可の範囲で可能なことに限定されますが、小ロットで委託製造してくれる事業者も豊富ですので、インターネットで実施したい呼称を入れつつ「呼称 小ロット OEM」のようにGoogleやYahoo!等で検索を掛けて見つけ出すと良いでしょう。呼称というのは、レトルトカレー、ドレッシング、煎餅といった具合に、誰もが食品の種別を判断できる呼び方を指しています。

 なお、イベント期間後の来店を誘発するため、周年記念イベント期間のみ販売する「回数券」もおススメです。回数券は下記画像のように手作りで充分です。ポイントは、周年記念イベントが終わってから利用できる期間を設定することです。この回数券はご年配の方が切り盛りする「お好み焼き屋」さんの事例ですが、手書きでも、まったく問題無く使われていましたので、問題ありません。ある意味、御自身の書体や字の癖で、御自身が、書いたものと明確にわかることから、パソコン等で頑張って作るより、お手軽なのかもしれませんね。

 事例の「ご縁をありがとうカレー」を特別メニューで展開したカレー専門店では、通常メニューの回数券を、この周年記念イベント時のみ販売しています。イベント期間中のみの販売とあって、毎年大人気になっています。

(事例)

・7種のおやさいカレー 10枚5,000円(500円お得)

・100円トッピング 10枚800円(200円お得)

・売上に関連性のあるノベルティーの配布

 周年記念イベントでは、多くの飲食店がノベルティーを作成し配布することが多いです。しかしながら、多くの御店のノベルティーは、単純に店名を記載した文房具や、お菓子を配布する等、実施する意味を感じられないことが多く残念です。このように意味を持たない配布は、誤解をおそれずに書くのであれば、広告宣伝費の無駄遣いでしかありません。お客様の「お店へのロイヤリティの向上」や「顧客内シェアを高める」といった本来の目的を実現できないことが多いのが実情です。

 そこで、ノベルティーを実施する際には、必ず「イベント期間後に売上に繋がる可能性」を充分に検討し、行ってください。コツはお店の売上への関連性です。事例を以下に示します。

(事例)

 支援先のベーカリーでは、同店の人気商品のクロワッサンを、周年記念イベント終了後に、お得に購入できる特別クーポンを発行しました。チケットを介した紹介が誘発される等、トライアル購買に繋がる等、新規客獲得にも一定の効果がありました。

(事例)

「ご縁をありがとうカレー」を特別メニューで展開したカレー専門店では、「契約栽培先農家**さんの自家製ラッキョウの甘酢」をカレーのトッピングとしておススメしたいと思っているが、売上が伸び悩んでいた。そこで、周年記念イベント期間中に来店されて着席された方全員に、3ケ入りの袋詰めラッキョウを配布した。テーブルにはPOPを置き、「当店で賞味期限内に、御注文のカレーにぜひ、付け合わせしてみてください!」と書き添えた。結果、賞味期限内の来店促進の一躍を担うとともに、このラッキョウのトッピングが、人気のトッピングの3位まで順位を上げた。

・SNS等での周年記念イベントの情報発信のコツ

今回、実施策としてLINE、Twitter、Facebook、Instagram、種々のブログといったSNSや、Googleマイビジネス(ビジネスプロフィール)等について言及していませんが、これまで紹介した実施策の告知そのものを掲載するだけでも、従来からのフォロワーに「周年記念イベント」が実施されることが、少なからず伝わるでしょう。

周年記念イベントの実施策が固まったら、1つ1つの実施策を丁寧に、説明するよう投稿していくようにしましょう。コツは、実施策を全て1回で紹介しないことです。少しずつ段階的に情報を発信することで、フォロワー等の情報に触れた方の「お店への期待」を醸成していくようにします。

無論、webサイト(ホームページ)に、周年記念イベントの全容がわかるページを用意し、SNS等からの情報の受け皿として活用しても良いでしょう。

4.ほか周年記念イベント立案におけるコツ

・独り善がりにならない(感謝を伝える)企画を立案すること

周年記念イベントは、お客様に「感謝」を伝える場です。しかしながら、多くの飲食店や食料品小売業では、集客策の切っ掛けとして、単に安くメニューや物販をPRしたり、ノベルティーを配ったりしていることが多いです。これでは単なる販促になってしまいます。いつも気を掛けてくださっている応援客(お店を応援してくださるお客様)に対して、単に売る気では、お客様においては、気持ちが良いものではありません。お店へのロイヤルティを高めたいのであれば、必ず感謝を伝えるために実施するのだと、細部まで気を配ってほしいのです。

・存在価値を明確に伝える企画にすること

あなたの飲食店や食料品小売業が、開業後、存続できたのは、そのお店に「何らかの存在価値」があるからだと言えます。周年記念イベントを立案する際には、この「何らか」を知る努力が大切です。「消費者にとって無くてはならないお店」が存在価値のあるお店として、未来も存続できるのです。

また、その存在価値をストアコンセプトにし、種々の集客や販促の実施策を展開していけば、まだまだ出逢っていないお客様にとっても、貴重な存在として、あなたの御店を重宝してくれることでしょう。ですから、存在価値を見つけたら、その価値を使ってお客様に自店を知ってもらう努力(コミュニケーション)が必要になるということです。

5.まとめ(周年記念イベントの立案の流れ)

周年記念イベント立案時は、自店の「お客様にとっての存在価値」とは何なのかを検討します。その上で、周年記念イベントの内容を立案し、PRを開始します。PRはお客様の気を魅くことが重要ですので、記号消費という手法を使って実施していきます。記号消費は、周年記念イベントの内容を検討するときから、1つ1つの企画の内容に反映しておけば、非常に楽に展開できます。

(備考)

 以下に、存在価値の決め方と記号消費を活用した集客や販促の考え方を紹介した記事のリンクを貼っておきます。御利用ください。

⇒存在価値の決め方とは

⇒記号消費を活用した集客や販促の方法とは

==お知らせ==

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久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。

講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。

2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。

近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。

主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。

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