食品の「新」商品開発や「新」メニュー開発の実務手順・成功法則|企画書・フレームワーク・アンケート活用・OEMまで|小規模な飲食・食料品製造業向け

「丹精込めて作った商品なのに、なぜか売れない……」

「お客様の声を反映して商品開発したのに、何故売れないのか?」

そのような声を多々、小規模な食品メーカー(食料品製造業)等の支援現場で耳にします。

一方で、食品や料理のメニュー開発を初めて試みる事業者は、そもそも「何から手を付けて、何を考えて、進めていけば良いのか?」という具体的な手順が質問されます。下記画像の「子供向け焼菓子の事業者」も、まさに手順すら、わからないというものでした。

小規模ながら後発参入で子供向け焼菓子で新たなポジションを構築した支援事例

そこで本記事は、当事務所や筆者が、食品メーカーの勤務時代から積み重ねてきた『累計ヒットを生んできた「成功の法則」』を念頭に、実務直結の「商品開発マニュアル・手順書」を公開します。

単なる「作り方の手順」に留まらず、支援先で実際にあった思考などの事例分析を交え、アイデアのフレームワーク・アンケート活用・OEMまで徹底的に解説していきます。

目次

前提①:ロングセラー商品は育てていくことで実現する

先ほどの子供向けの焼き菓子は、小規模事業者でありながら、約5年(26年3月現在)で単品売上を約4千万円ほどに、育てることに成功した事例です。展示商談会や、日常の売場で耳にした顧客要望を踏まえ、改良しながら現在の姿になります。顧客の変化を見逃さず改善を繰り返した結果です。今なお、売上は天井を知りません。従業員はたったの2人の会社です。

さて、この時代、商品は「完成品を作り並べて売る」だけでは、想定通り売れないのは当然の末路です。商品開発を通じて、顧客の悩みに寄り添い、カタチにしていく。そして、その後も、顧客と一緒に「小さな改善を重ねる」(育てていく)ことが重要です。それこそが、ロングセラー商品への近道なのです。

本記事では、弊社が支援した支援事例や筆者の経験を軸に、それでいて、しっかりと学術的要素を抑えながら、小さな会社が「ファン」を作り、選ばれ続けるための商品開発の極意を、順を追って解説します。

前提②:商品開発の大まかな流れは?

一般的には以下のようなステップを辿ります。業界によって多少の差はありますが、基本となる8つのフェーズにまとめました。

①市場調査・アイディア出し(企画)
まずは「何を作るか」を決めるフェーズです。市場分析( 流行、競合他社の動向、社会の変化をリサーチ)、ニーズの把握「顧客が困っていること(不満・不便)」を探ります。その上で、ブレインストーミングなどで、アイディアを出し合います。

②コンセプト設計
アイディアを具体的な「商品像」に落とし込みます。ターゲット設定『「誰に」届けるか(ペルソナ設定)」独自の価値(USP: 競合にはない「その商品ならではの強み」)を定義し、価格帯の想定(いくらなら買ってもらえるか)を検討します。

③実現性の検証(フィジビリティスタディ)
そのアイディアが「本当に作れるか」「利益が出るか」をシビアに判断します。具体的には、技術的な検証(現在の技術で製造可能か)、コスト試算(原価、人件費、物流費などを計算し、採算が合うか確認)、法規制の確認(法律や安全基準をクリアできるかチェック)です。

④設計・試作(プロトタイピング)
実際に形にしてみる段階です。商品の設計の作成(詳細な仕様書などを作成)、試作品の開発(実際にサンプルを作り、デザインや機能を確かめます)、ブラッシュアップ(「思っていたのと違う」部分を修正し、完成度を高めます)です。

⑤テスト・評価
納得のいく試作ができたら、厳しくテストします。

⑥量産準備・製造
工場での生産体制を整えます。

⑦プロモーション・販売開始
いよいよ世の中に送り出します。

⑧販売後の評価・改善(アフターフォロー)
売って終わりではありません。改善点を洗い出し、次の開発やアップデートに活かします。

前提③:飲食店(業)のメニュー開発と食料品製造業の商品開発は、手順や考え方は違うのですか?

「飲食店(業)のメニュー開発と食料品製造業(食品メーカー)の商品開発は、手順や考え方は違うのですか?」といった質問が、商工会などが主催するセミナーの参加者(小規模事業者)から多いです。従って、ここでも示しておきますが、基本的に同様です。ただ、提供の仕方、荷姿が異なります。

・飲食店(業):開発した商品は、そのままお皿などに盛り付け、その場で提供する

・食料品製造業(食品メーカー):開発した商品は、袋などで包装して出荷する。売場は別の場所(食品スーパー、ドラッグストアー、食料品小売店など)が多い

第1章:その新商品開発・メニュー開発は本当に必要?焦らないで!

1)商品開発・メニュー開発のメリット/デメリット

そもそも、皆さんが考えている商品開発は、必要なのでしょうか。ここを検討することが、はじめの第一歩と言えるでしょう。商品開発は、この記事で説明するとおり、とても骨折りです。ですから、まずはメリットやデメリットを確認しておくことが大切になります。

・主なメリット:商品開発の一連の過程で、自らの事業を見つめ直すことが可能であり、自社の存在価値が理解できる、近未来の「稼ぎ頭」を生み出す可能性がある、

・主なデメリット:生み出した商品がヒットするとは限らないため、商品開発に費やした時間や資金がムダになる可能性がある、既存事業のイメージと逸脱する商品が開発された場合、稀に既存事業の「良いイメージ」が毀損する可能性がある、新商品を拡販するにあたって、相応の販売促進費が必要になる。

2)商品開発・メニュー開発を「実施すべき事業者と実施すべきでない事業者」

国内外の多くの2次データや学術的な論文では、「新商品を多く生み出しても(イノベーションの数が多くても)、経営の成功につながらない」という事実が、あきらかになっています。例えば アメリカの20400社を母集団に調査した名著『ビジョナリー・カンパニー4』などです。

つまり、積極的に新商品開発をしなくても、他の手段で売上を高めていくことは可能、あるいは経営は、成功できる!ということです。

既存事業や既存品の売れ行きが悪い場合、新商品開発で苦難を乗り切ろうとする事業者が多いですが、既存事業や既存品の見直しで成功できることも念頭に、新商品開発の是非を吟味することも大切です。
既存品の見直しの方が、売上を高めることに直結しやすいとも言えます。

既存事業や既存品の見直しとは、例えば、「今とは異なる販促内容や販促手段を用意し売る」ということです。同じ商品を、売り方だけ変えて、ひたすら売る。これが利益率が高い事業のKEY(カギ)と言えます。

あなたの事業にとって、新商品開発が「いま!」あるいは「未来に?」必要なのかを念入りに見つめ直すことが大切です。見つめ直すことができる事業者が、実施すべき事業者になります。

3)新商品や新メニュー開発が必要か否かの区分

・新商品開発が必要な事業者
既存のお客様等から「このような商品(サービス)を作ってほしい」「このような商品(サービス)があったらうれしい」といった確かなニーズが認識できる場合

・新商品開発が不要な事業者
既存のお客様から「このような商品(サービス)を作ってほしい」「このような商品(サービス)があったらうれしい」といった確かなニーズが存在しない場合。あるいは、既存の商品(サービス)が「もっとこうなるとうれしい」といった改善や改良のニーズがある場合

では、どうやってニーズを知ることができるのでしょうか。その方法は以下の記事を参考にしてください。

⇒顧客ニーズとは?潜在・顕在ニーズの違いと飲食・食品・小売業での把握方法【事例付】

第2章:【準備】商品種別の決定と法的リスクの確認

1)加工する商品の種別を決める

まずは「何を作るか」ですが、ここは種別を先に決めていきます。種別とは、すなわち、ビスケット、あられ、スコーン、ドレッシング、パン、味噌、等々の具体的にお客様が認識できる食品の総称のことです。以下の画像ならば、スコーンになります。

大切なことは、既存事業とのシナジー(相乗効果)です。サラダが美味しいお店が日常お店で使っている「お手製のドレッシング」があるとすれば、無論、ドレッシングを手掛けることが、正解ですよね。あるいは、サラダの原材料の御野菜そのものでしょうか。いきなり「煎餅!」と言っても、ノウハウも無ければ、売る理由(評判で)も見当たらない。つまり、あなたの御店だから、あなたの小売店だから、お客様が納得してくれる商品の種別を選択していくことが大切です。これを必然性と言います。

⇒必然性というものは、そのお店や商品そのものの顧客価値(存在価値)です。顧客価値の考え方は「【事例付】顧客価値(存在価値)とは?選ばれる飲食店・小売店のコンセプトの作り方」を御覧ください。

また、もう1つ大切なことがあります。それは「自分が作れるもの」だけでなく「市場に求められているもの」の接点を探ることです。

もちろん、「わたしはマフィンが作りたい」「わたしはポテトチップスがつくりたい」「わたしはワカメの乾燥したお菓子を作りたい」といった気持ちにブレーキを掛けるということを言っているのではありません。むしろ、その気持ちが商品開発のエネルギーですから、大切にしてほしいのです。

しかしながら、その気持ちに対して、一歩引いた目線で(自らが消費者目線で)、「もっとこうだったらいいのに」という小さな不満を書き出してみると良いでしょう。それが、後の商品開発において、非常に重要な「御社ならではの優位性」であり、お客様と一緒に「育てていく」ポイントになります。」

2)必要な許認可を確認する

開発すべき食品の種別が決まったら、許認可を確認していきます。食品を製造し販売するには、当然ですが法律の壁があります。

・保健所への確認:作りたい商品種別によって「飲食店営業」「菓子製造業」「惣菜製造業」など、必要な営業許可が異なります。先ほどの画像のスコーンであれば、「菓子製造業」が必要です。

・HACCPの考え方:現在はすべての食品事業者にHACCPに沿った衛生管理が義務付けられています。まずは管轄の保健所に「この商品を作って売りたい」と相談に行くのが最初の一歩です。

第3章:開発する商品の市場性の確認方法(切り口と手順)

食品の種別が決まったら、その種別(例えばスコーン)に市場性があるのか、つまり「将来、戦っていく勇気が持てるか?」を確認していきます。確認とは「市場の動向を俯瞰し、事前に調べておいた顧客ニーズを踏まえ、本当に商売として成り立つ売上が、確保できそうなのか」あるいは、「そのニーズに対応した商品があれば、どのくらいの売上が見込めるのか」等々を確認していきます。その際の切り口には様々なものがありますが、必ず登場するのは、以下の2つの視点でしょう。

1)3C分析

「顧客(Customer)の悩み」「競合(Competitor)がやっていないこと」「自社(Company)だけが誇れる技術」の重なりを探します。例えば「おしるこ」の開発現場で実際に考えた事例が以下です。顧客と競合、自社の重なりの市場規模や可能性を検討します。この重なりがあれば、市場性があると判断することになります。決して、市場規模が大きければ良いというわけではありませんし、小さくても「意図的に参入!」といった選択も正解です。

・顧客:「大手の甘すぎるあんこに不満を持つ女性」

・競合:「大手は手間がかかるからやらない発酵製法」

・自社:「自社の麹技術」

2)STP分析

大手と戦わない「独自の土俵」を探すために使用します。STPは、「どの戦場で、誰を相手に、どんな立ち位置で戦うか」を決めるための、マーケティングの超定番フレームワークです。

S:Segmentation(セグメンテーション):市場を切り分ける(例:年齢、性別、ライフスタイル)

T:Targeting(ターティング):切り分けた中から、狙う相手を絞る

P:Positioning(ポジショニング):競合と比べて「自分はここが違う!」という立ち位置を決める

冷凍食品を事例に整理してみます。

S(切り分け):「とにかく安さ重視」「時短・手軽さ重視」「本格的な味重視」などで市場を分けます。

T(絞り込み):「共働きで忙しく、平日の夕飯作りを楽にしたい30代家庭」を狙うと決めます。

P(立ち位置):単なる手抜きではなく、「有名シェフ監修の味が5分で食卓に出る、家での贅沢時間」というポジションを取ります。

3)事例研究(市場性の調査)

市場性を確認していくときに難しいのが、自社のことではなく顧客や競合のことです。分析するエッセンスを示しておきますので、参考にしてください。

①顧客分析

顧客の状況を確認するとは、どういうことでしょうか。例えば、特定地域の食品スーパー(量販店)の主たる顧客層が高齢者であり、その方々向けに新商品開発を行う場合、地域の高齢化の進展はどのような状況なのかを確認していきます(下表)。この表の場合、総人口は2015年をピークに減少傾向であることがわかります。一方、高齢者の人口は「まだまだ伸びしろ」がありそうですね。従って、顧客の量は増えていきそうだ(市場性がある)と判断することができます。その上で、先の3C分析にあった「顧客の悩み」、つまり高齢者の悩みを深堀していけば良いのです。

②競合分析

競合を確認するとは、具体的にどういうことでしょうか。例えば以下のようなことです。

『競合と思う商品を可能な限り「すべて」挙げて、これらの事業者の主力商品やサービスを研究します。もし同じような商品やサービスを開発することになる場合は、これら競合の事業者よりも「より高機能」で「よりデザイン性」が高いものを生み出す努力が必要だと分析します。」

例)高機能:高齢者向けのレトルト食品を開発する場合、咀嚼が困難な方に目を向け(競合が実施していないから)、咀嚼が困難な方でも食べられるように配慮する等です。競合より柔らかく、食べやすくすることが商品開発のポイントになります。

例)デザイン性:高齢者向けの袋入りパンを開発する場合、「咀嚼が困難な方でも食べられるように配慮」したことを、高齢者の方が一目瞭然で理解できるパッケージデザイン(コピーや説明文の記載等)にしなければなりません。また、高齢者が手に取って恥ずかしくないようなパッケージの色調等を研究します。

また、競合が目指そうとしていることを推察することも重要です。可能な限り、競合と同じことを考えたくないものです。競合と異なれば、自社の新商品が日の目を見る可能性(俗にいうところの差別化)が高まるからです。

例)競合が低価格のレトルト食品を製造販売している場合、自社はどこを目指せば良いのか?
競合が実施していない隙間を見つけます。例えば、下記の画像のようにポジショニングマップを作成すると、野菜中心で高価格な商品は競合が実施していない、お肉中心で低価格の商品は隙間がありそう、と考察できます。

第4章:一般的な「新」商品アイデアの発想方法

実務で明らかな大前提:「新」商品開発や「新」メニュー開発におけるアイデア発想の成功と失敗の差

これから、新商品や新メニューのアイデアを出していこうという手法や手順を紹介するのですが、実務上で重要な「要望の想起」という考えを先に紹介したいと思います。ここを理解しないで突き進むと、発売しても「まったく売れない(的外れになる)・・」といった悲しい事象に陥いります。陥らないための基本の話を紹介します。

・「要望の想起」が無いものは開発アイデアとして採用しないこと

要望の想起という考えがあります。誤解を恐れずに説明すると、顕在化したニーズと潜在化したニーズの話です。要望は「ニーズ」と捉えてください。

⇒「顧客ニーズとは?潜在・顕在ニーズの違いと飲食・食品・小売業での把握方法【事例付】」

顕在化したニーズを商品開発やメニュー開発に活かす場合は、あまり危惧していません。なぜなら、ニーズが明らかなので、その線に沿ってアイデアを出し尽くして、議論を深めていけば、良い商品アイデアに昇華することができるでしょう。

しかしながら、潜在化したニーズが厄介です。顧客自身が要望として「今、現在、自覚していない」ため、商品のアイデアを発散する際に、後述するフレームワークや手段を使って、奇抜なものになりやすくなります。

しかしながら、この奇抜さが問題なのです。その出したアイデアが、偶然に「潜在化したニーズ」に、ヒットすれば良いですが、実は、そのことが1番、確率として難しいです。従って、潜在化したニーズで商品開発やメニュー開発のアイデアを出そうとするアプローチは、特に!小規模や中小企業の方々は止めたほうが良いです。売れないのが目に見えているからです。

・要望の想起の無いものをアイデアに採用した失敗例から学ぶ

まずは、1つの失敗例と、1つの危惧する事例を御覧ください。

失敗例:減塩ポテトチップス(湖池屋webサイトより)

2007年当時、私が勤めていた湖池屋で「減塩のポテトチップス」を新商品として導入したことがありました。主たるチャネルは「ドラッグストア」と見据え、食品スーパーやコンビニエンスストアへの配荷も視野に、意気揚々と進出したのです。しかしながら、まったく売れませんでした。

当時の湖池屋マーケティング部としては、種々の消費者向けの調査事業で、「健康志向の高まりの中で、減塩ブームが到来していたので、きっと受け入れられるであろう・・」と算段したのですが、まったく売れなかったのです。

後で、わかったことですが、「ポテトチップスを買おうと思う方々には、塩分が濃い方が良いとか、薄い方が良い」といった「要望の想起」は、当時、まったく念頭に無かったのです。それどころか「普通のポテトチップスを1袋食べれない方が、果たして健康と言えるのだろうか?」「そもそも、ポテトチップスに健康配慮など求めていない・・」といった考えも、顧客の中では根強いものでした。

余談ですが、現在(2019年時点)は、「減塩」という「要望の想起」は定着しています。今、販売していたら、相応な売行きになるのでしょう。このように「要望の想起」は、時代やトレンドともに変遷していくといったことも忘れてはなりません。

危惧する例:バナナの花

支援先が、バナナの花を卸して販売していました。(当時)無論、これだけが取扱い商品(農作物)では無いので、そんなに心配していなかったのですが、このバナナの花、あまり売れないのです。(日本では)それは何故でしょうか。

一言で伝えますと『野菜、果物、いずれにおいても、消費者の「要望の想起」に、エントリーしていないから』です。仕事を御一緒する機会のある管理栄養士の方々(普段は、主婦)に、この商品を見ていただきましたが、皆さん想像の域を超えて、恐々した反応でした。どうやって調理したら良いか、わからないのです。メニューの献立や開発を日々手掛ける管理栄養士の方ですら、扱いの想像がつかないのです。

無論、バナナの花は食べることができます。東南アジアでは、蕾の部分を炒めて食べたり、サラダや和え物、スープなどに利用します。しかしながら、日本では、野菜、果物といったカテゴリーにおいて想起されないどころか、サラダ、スープ、炒め物といった調理法でも、想起されないのです。頭に浮かばない(想起されない)のですから、そもそも、買う候補にすら入らないのです。

以上のことから、想起されないものは、顧客がそもそも求めていないことが多いので、売場で手に取ってもらえないのです。商品開発やメニュー開発の現場で、単純に奇抜なアイデアで猛進される担当者がいますが、その奇抜なアイデアが『要望の想起』にエントリーしていなければ、売れないのです。

無論、稀に、その奇抜さが『爆売れ』することが、あります。それは単に、『潜在的にあったニーズに、顧客が気づいたから』です。そこはある意味、意図したものでは無いということが重要です。

1)SCAMPER法

SCAMPERは、「今あるものに7つの質問をぶつけて、新しいアイデアを強制的に生み出す」手法です。アイデアに詰まった場合におススメです。

Substitute(入れ替える)

Combine(組み合わせる)

Adapt(適応させる)

Modify(修正・拡大・縮小する)

Put to another use(別の使い道を探す)

Eliminate(取り除く)

Reverse / Rearrange(逆にする・並べ替える)

例えば、「おしるこ」を「そのまま食べるデザート」として捉えたのであれば、「そのまま食べないデザートに入れ替えたら?」と考えます。そうであれば「あずきをパンに塗ってデザートにするパン用」と回答するかもしれませんね。

支援の現場で、質問されることが多いのが「オズボーンのチェックリストと同じですか?」です。もともとは「ブレーンストーミング」を考案したアレックス・オズボーン氏が作った「9つの質問(オズボーンのチェックリスト)」がベースになっています。それをボブ・エバール氏が覚えやすく「SCAMPER」という語呂合わせに整理し直したものです。

他にもチョコレートを事例に見てみましょう。
Substitute(入れ替える):砂糖を「希少糖」や「甘酒」に入れ替えてヘルシーに。

Eliminate(取り除く):個包装を「取り除く」ことで環境配慮とコストダウンを実現。

2)ペルソナ設定

これらは、先ほどのSTP分析などで決めたターゲットを、さらに「生身の人間」として具体的にイメージするためのツールです。ターゲットが「30代・女性・会社員」といった広い層を指すのに対し、ペルソナは「実在する特定の1人」をイメージできるまで細かく作り込んだ架空のキャラクターです。

名前、年齢、住所、職業、年収はもちろん、趣味、悩み、よく使うSNS、平日のタイムスケジュールまで設定します。よく現場である質問が「なぜやるの?」です。チーム全員で「この人(ターゲット)が喜ぶものは何か?」という共通認識を持つために実施するほか、後述する「顧客価値:誰のために、この商品は存在するのか?」の意識を強化するために実施します。

高級オーガニックドレッシングを開発しようとする事業者なら、例えば次のように考えるかもしれませんね。
名前:佐藤美咲さん(34歳)

職業:都内のIT企業勤務、現在は時短勤務中。

悩み:子供には安全なものを食べさせたいが、平日は疲れ果てて凝った料理ができない。

価値観:週に一度のヨガが息抜き。SNSで話題の「丁寧な暮らし」に憧れはあるが、現実はバタバタ。

行動:成城石井などの高級スーパーを「たまのご褒美」として利用する。

ここまで決めると、「パッケージは派手な色より、キッチンに置いて馴染むナチュラルなデザインがいいね」といった具体的な商品像のアイデアが自然と出てくるようになります。

4)カスタマージャーニーマップ

カスタマージャーニーを直訳すると「顧客の旅路」という意味です。前項で設定したペルソナが、商品を知り、興味を持ち、購入して、ファンになるまでの一連の流れ(行動・思考・感情)を時系列で1枚の地図にしたものです。

ちょっと高級な「お取り寄せコーヒー豆」を事例にすれば、例えば次のような図を書くこともあるでしょう。

認知(知る):Instagramでインフルエンサーがおしゃれなパッケージを投稿しているのを見る。

検討(悩む):サイトを見に行き、「鮮度にこだわっている」という説明を読んで、今のスーパーの豆と何が違うか調べる。

購入(買う):送料無料キャンペーンをきっかけにポチる。

利用・評価(飲む):届いた箱を開けた瞬間の香りに感動。淹れ方の解説カードが親切で嬉しい。

再購入・推奨(ファン):友達に勧めたり、定期便を申し込んだりする。

これもまた、「なぜこれが重要なのですか?」と質問されることが多いです。商品開発は「購入」の瞬間だけでなく、「届いた時の箱の開けやすさ」や「ゴミの捨てやすさ」といった利用シーン、使用シーンまで考えることが重要です。その考えの差がお客様が満足する商品か否かの瀬戸際になるのです。なお、利用シーン、使用シーンまで考える顧客価値を「使用価値」さらには「文脈価値」と言います。商品開発の潮流ですから、以下の記事で抑えておきましょう。

⇒「【事例付】顧客価値(存在価値)とは?選ばれる飲食店・小売店のコンセプトの作り方」

5)顧客ニーズへの立ち返り

そもそも何故、新商品を開発しようと考えたのか、原点に戻ることもアイデア発想には、意外と近道です。つまり、顧客ニーズの把握に努めていくということです。顧客ニーズの把握には、「顧客ニーズとは?潜在・顕在ニーズの違いと飲食・食品・小売業での把握方法【事例付】」の記事を参考にしてください。

先ほどの「子供向けの焼き菓子」の場合、例えば下記のような口コミサイトでお客様のニーズを拾うこともあります。例えば、下記画像のお客様の声の中に「1袋、全部あけていいのかな?」とあります。これをヒントにするならば、個食パックが必要と発想していくことが良さそうです。

第5章:筆者がおススメする「新」商品開発・「新」メニュー開発のアイデア発想方法

1)さくらんぼ分割法

新商品や新メニューのコンセプトを2つの属性(さくらんぼの軸)に分け、それぞれをさらに深掘りして分解・再結合することで新しいアイデアを生み出す発想法です。課題を「AとB」に分解し、末端の属性を無作為に組み合わせることで、ユニークな商品開発を実現します。コンセプトについては、後述するとして、さくらんぼ分割法の詳細は以下の記事で確認ください。とても意義深い知見が得られますよ。

⇒「さくらんぼ分割法による新商品や新メニュー開発のアイデア発想法」

2)エクスカーション法

エクスカーション法(Excursion Method)は、テーマ(例:秋のスイーツ)と無関係なカテゴリー(例:文房具)の要素を掛け合わせ、斬新な新メニュー・商品案を生み出す強制発想法です。意外性のある組み合わせにより、既存の枠を超えたアイデアを連想でき、個人や複数人でのブレインストーミングに有効です。

⇒「飲食店の新メニュー開発や食品メーカーの新商品開発の「案」の決め方(エクスカーション法)」

第6章:「新」商品開発と「新」メニュー開発の実務で抑えておきたい売れ筋を作るための7つの仕様(セブン・スペック)

一般的な商品開発やメニュー開発において、前述するアイデアが重要なことは、論を待たないですが、そのアイデアを形にしていく段階で、ガイドしていくもの、つまり仕様が存在します。それが、7つの仕様(セブンスペック)です。この7つが実装されることで、相応の売上が確保できる商品開発やメニュー開発が実現します。

1)存在意義性(顧客価値の実装)

開発する商品、あるいはメニューが、「そもそも」世間に認識される(要望の想起)ものであり、その認識を代弁する要素が含まれていることです。つまり、その商品やメニューが誰のために存在するのかという「顧客価値」を実装しておかなかればなりません。

⇒「【事例付】顧客価値(存在価値)とは?選ばれる飲食店・小売店のコンセプトの作り方」を御覧ください。

2)値ごろ性

商品やメニューを体験した際に、内容や品質の割にリーズナブルであるということです。安いことが良いわけではありませんので、誤解しないようにしてください。

⇒飲食店や食品メーカーの価格感度分析の手順と事例

3)シズル性

開発する商品やメニューが、ターゲットとする想定顧客にとって、納得性のある『「彩り」「量目」「形状」「香り」等々の五感に働きかける見栄えを備えているか』ということです。

4)記号性

お客様が消費する「理由」があることです。消費する理由が、お客様に見いだせないときは、購入に至らないからです。

⇒【事例付】記号消費を活かした飲食店・食品メーカーの集客・販促ガイド|観光客を惹きつけるブランド価値の作り方

例えば、「シズル性のある 上記の画像(食べれる春菊の花で飾った 冷やしそうめん)を見て、この絵が見たい!と顧客(消費者)側で、消費する理由(来店してまで食べたいと思う理由)を見出せる」ということです。

5)話題性

誰かに紹介したくなる、話したくなる、おすすめしたくなる「話題性」が盛り込まれていることです。例えば、上記の画像(食べれる春菊の花で飾った 冷やしそうめん)を実際にお店で体験した際に、その顧客が「SNSに投稿したい!」と思うようなことです。

6)希少性(限定性)

希少性があること(季節限定、1日**食限定、希少食材仕様、等々)です。

7)記憶性

ネーミングは記憶しやすいものであることです。ネーミング(商品名の付け方、メニュー名の付け方)のコツは、以下の記事を御覧ください。

⇒【保存版】売れる商品名の付け方|飲食店・食品メーカーのネーミング成功法則を心理学・顧客価値・法的リスク・相場感から徹底解説

第7章:ヒット商品開発とロングセラー商品開発の実装すべき仕様の相違と強弱

「ヒット商品」と「ロングセラー商品」。どちらも売れている商品ですが、その「売れ方」の性質や戦略は対極にあります。一言でいうなら、ヒット商品は「瞬発力の爆発」、ロングセラー商品は「持続力の勝利」です。冒頭で説明した「子供向けの焼き菓子」の事例は、約5年掛けてと説明していますので、「持続力の勝利」つまり、ロングセラー商品を目指しているところ、と言えるでしょう。

1)ヒット商品(トレンド・ブーム)とは

短期間で爆発的に売れ、社会現象や話題をさらう商品のことです。

①概要: 時代のニーズや消費者の「今、これが欲しい」という気分に完璧に合致したもの。

②特徴:

・話題性: SNSやメディアで一気に拡散される。

・新規性: 今までにない新しい機能、デザイン、体験を提供している。

・短命のリスク: 流行が過ぎると急速に需要が落ちる「一発屋」になる可能性もある。

・事例: パーソナライズAIデバイスや、超タイパ(タイムパフォーマンス)重視の時短グッズなど。

2)ロングセラー商品とは

発売から10年、20年、あるいはそれ以上の長期間にわたって、安定して売れ続けている商品のことです。

①概要: 流行に左右されず、人々の生活に「定番」として深く根付いているもの。

②特徴:

・信頼感: 「これを選べば間違いない」というブランドロイヤリティが高い。

・普遍的価値: 時代が変わっても変わらない「本質的な良さ」がある。

・微調整: 実はパッケージや中身を時代に合わせて少しずつ変えている(サイレント・アップデート)。

例: 日清食品カップヌードル、大塚食品ポカリスエット、江崎グリコのポッキー、湖池屋ポテトチップスなど。

⇒【中小食品メーカー必見】湖池屋や大手事例に学ぶ「ロングセラー商品」の育て方と戦略

3)ヒット商品とロングセラー商品の相違の比較

整理すると下表のようになります。

項目ヒット商品ロングセラー商品
主な目的市場の認知獲得・シェア奪取安定収益の確保・ブランド維持
売上の形垂直立ち上がり (急上昇・急降下)なだらかな安定曲線
求められるもの刺激・トレンド・驚き安心感・変わらない品質
マーケティング大々的な広告・SNSバズターゲット層との深い関係性

4)ヒット商品とロングセラー商品開発の方向性の7つの仕様(セブン・スペック)

以上のように、ヒット商品とロングセラー商品は相違しますので、全章で紹介した「7つの仕様(セブン・スペック)」は、ヒット商品とロングセラー商品の開発では、強弱が違います。

ヒット商品を開発したい場合は、話題性、希少性(限定性)、記号性を重視します。一方、ロングセラー商品は、それほど話題性、希少性(限定性)を重視しません。それよりも、値ごろ性を重視します。

第8章:【製造戦略】内製・外注(OEM)の判断とパートナー選定

1)必要設備の負担感と採算性の見通しの確認

2章で許認可を確認する際、あなたが製造しようとしている加工食品では、どのような設備が必要で、どのような資金(コスト)が発生するのかを合わせて確認していきましょう。

例えば菓子製造でオーブンが必要であれば、そのオーブンが定価でどのくらいの費用が必要なのかを確認しておくことです。必要な設備の積算がいくらになるかを確認し、その積算を購入してまで内製して、営業を始めることが「資金繰り的に問題ないことなのか」を確認します。

いわゆる損益分岐点の原価分析です。これを確認しておけば、「年間○○○○袋を販売すれば、設備投資の総額を回収できる!」「年間△△△△袋を販売すれば、○○円の利益が確保できる!」等々がわかります。

その上で、○○○○袋を販売する希望感を自らの心に問います。「大丈夫!作れる!売れる!」というのであれば、設備投資は「GO!」と言えますね。なお、難しい損益分岐点分析のやり方は、置いておいて、簡便に計算する方法を御案内します。(⇒原価を簡単・簡便に計算する方法)

例)設備Aが必要で50万円、販売管理費の予算が100万円、10000袋の加工食品を年間販売目標にする場合、150万円÷10000袋=150円。つまり、1袋あたりの原価は150円。このように、厳密では無く、大まかな原価を把握する方法を原単価法と言います。

2)外注先を決めるための情報収集と決定

全章の設備投資の負担感や採算性を確認した結果、内製の自信が無い方は、迷わず外注にしましょう。また、内製の自信がある方も、まずは外注から始めるという選択もありますね。なぜなら、売行きが悪い場合、内製時に比べて、早々に撤退が可能だからです。これは想像できますよね?

さて、外注先を探す場合は以下の手順で進めると良いと思います。
・自らが参入したい商品の種別の商品を可能な限り、探索する。
・探索する場所は、食品スーパーや土産物等々の特産品売場をおススメします。

個人や小規模事業者が加工食品を開発する場合、基本100~数万個程度の小ロット製造が一般的です。いきなり10万個!みたいなバカな取組は避けたいところです。在庫過多が見えています。加工食品を販売することは容易なことではありません。楽観視は禁物です。

さて、外注先(つまりOEM先)を探す場合、大企業等々が受託してくれるわけがありません(笑)。そこで小規模や中小の食料品製造業者を探していくことが良いでしょう。どうやって探すかですが、最寄りの商工会や商工会議所に相談するほか、食品スーパーや土産物売場や道の駅などに行くと、個人や小規模事業者が製造元の商品が溢れています。つまり、小ロットで製造を受託してくれる可能性が高い事業者が多い!ってことです。そのあたりに目星をつけていくと良いでしょう。

・まとめ:外注先を探す際は「小ロット対応が可能か」「開発段階から相談に乗ってくれるか」を重視しましょう。展示会や商工会議所のネットワークを活用して情報を集めます。

⇒内製のメリット:小ロットで試行錯誤ができる。こだわりの味を再現しやすい。

⇒外注のメリット:自社設備が不要。大量生産が可能。プロの技術や賞味期限を延ばすノウハウを借りられる。

⇒判断基準:最初は小規模に自社で始め、売れる手応えを掴んでから外注へ切り替えるのがリスクの少ない方法です。

コラム:新商品開発などに活用できる補助金で資金の壁を超える

商品開発には、試作費やデザイン費、マーケティング調査費など多くの資金が必要です。市町村毎に、各都道府県毎にも多々、存在しますし、以下のように国が実施するものもあります。商工会や商工会議所、我が事務所のような中小企業診断士の方々が詳しいので、積極的に訪ねてみてくださいね。

・ものづくり補助金: 革新的なサービス開発や試作品開発に活用可能。

・小規模事業者持続化補助金: パッケージの刷新や販路開拓(展示会出展など)に有効。

これらの資金調達手段を組み込むことで、資金繰りの不安を解消し、内製に踏み出すことも可能です。

第9章:【最重要・核】商品コンセプトの決定と「成功の法則」

商品の種別が決まったら、次の5章と並行して、いよいよ「どんな商品にするか」という心臓部「商品コンセプト」を決定します。

ここで多くの担当者が陥る罠があります。それは「自分が作りたいもの」や「商品のスペック(機能)」だけを語ってしまうことです。しかし、ヒット商品やロングセラー商品には、共通する「成功の法則」があります。

1)成功の法則:ターゲットを「たった一人」に絞り込んで顧客価値を検討する

売れない商品の多くは「誰にでも好かれよう」として、結果的に誰にも刺さらないものになっています。成功の法則の基本は、「ターゲットを極限まで絞り込むこと」です。

ターゲットを絞るとは、単に「30代女性」とするのではなく、「その人が抱えている『不満・不便・不快』は何か?」を特定することです。

では、「その人が抱えている『不満・不便・不快』は何か?」を特定することは何か?と言いますと、それ顧客ニーズと言えますね。では、「顧客ニーズを充足する価値とは何か?」を考えていくことが、提供する顧客価値、つまり、今、開発しようとしている商品の存在価値なのです。

≪参考記事≫

⇒「【事例付】顧客価値(存在価値)とは?選ばれる飲食店・小売店のコンセプトの作り方」を御覧ください。

⇒顧客ニーズとは?潜在・顕在ニーズの違いと飲食・食品・小売業での把握方法【事例付】

2)実例から学ぶ手順:狙うべき顧客価値と商品コンセプトの発見

ここで、実際に行われた「発酵あずき」の需要動向調査(アンケート分析)を見てみましょう。

出所:https://yawora.square.site/

同社の立地する地域には規模の大きな花火大会があります。その際、域外から老若男女問わず多くの方が来場されます。その際に最寄り駅に協力いただき調査を実施したのです。当日は実際にティースプーン1杯のあずきを試食いただき、以下の画像のようなアンケートを実施しました。

調査時のアンケートの内容

作り手側は当初、「砂糖不使用」「発酵の力で健康になれる」という健康面(スペック)を最大の売りにしようと考えていました。しかし、このアンケートで集計したものを、IBM SPSS Statisticsを使用し、因子分析や重回帰分析などを行った結果(実際に生の声を集めてみると)、意外な事実が浮かび上がりました。(下記、PDFは実際の分析の一部を抜粋して紹介したものです。上級者は参考にしてください)

多くの回答者が高く評価したのは、健康面だけでなく「小豆の粒々とした食感」と、瓶を開けて「そのまま手軽に食べられること」でした。

ここから導き出される「本当の商品コンセプト(中心概念)」は、単なる健康への配慮を訴求する食品ではありません。「小腹が空いた時、罪悪感なく、しかも準備の手間なしで満足感を得たい人」のための、「究極のタイパ(タイムパフォーマンス)・ヘルシースイーツ」という姿が見えてきます。

最も強い反応を示したのは「30代〜40代の働く女性」だということもわかりました。当日の調査時の会話や、自由記入のコメントから、彼女たちの不満(ペインポイント)は切実でリアルなものでした。
• 「仕事のストレスで、夜中にどうしても甘いものが食べたくなる」
• 「でも、チョコを食べると翌朝の肌荒れや体重増が怖くて、自己嫌悪に陥る」

3)「不の解消」がロングセラー(育てていける商品)を作る

お客様は「発酵あずき」というモノが欲しいのではありません。

「甘いものが食べたいけれど、砂糖は控えたい(不快)」「健康に良いものを摂りたいけれど、調理は面倒(不便)」

日常の小さなお困りごと(不)」を解決してくれる体験にお金を払うのです。あなたの商品の「商品コンセプト:中心概念」は、誰のどんな「不」を解消しますか?

3)「こだわり」を「顧客価値」へ翻訳する

「砂糖不使用」「発酵の力で健康になれる」という健康面(スペック)の「こだわり」を、商品開発していくために、顧客の言葉に翻訳しなければなりません。また、翻訳しないと届きません。それがお客様に提供する価値(顧客価値:存在価値)です。例えば以下のように考えます。
•機能(こだわり):砂糖不使用、8時間発酵
•価値(ベネフィット):「夜10時、甘いものが食べたいけれど太りたくない……」そんな、あなたの罪悪感をゼロにする、心と体に優しいご褒美

顧客が買っているのは「物」ではなく、「悩みの解決」です。この視点の転換が、商品開発の第一歩となります。

⇒そもそも、顧客価値とは?顧客価値はどうやって構築するのか?が知りたい方は「御店・商品・サービスの顧客価値(存在価値)の構築とコンセプトの設定手順や方法」の記事が参考になります。

コラム:顧客が商品を「雇う」(買う)理由:ジョブ理論

顧客が買っているのは「物」ではなく、「悩みの解決」という考えは、ジョブ理論がわかりやすいです。特定の目的を解決するために商品を「雇う」という視点です。(※この考え方は「ジョブ理論」と呼ばれます。詳しくは、こちらの記事「⇒そもそも、ジョブ理論を詳しく知りたい方は「ジョブ理論を活用し顧客価値を創出(充足)した小規模事業者の事例」の記事が参考になります。」を併せてご覧ください)

先の発酵あずきは、「栄養補給」のために雇いたいと思ったのではありません。「自分を責めずに、一日の終わりに安らぎを得るため」に雇ったのです。この「心の穴」を埋めることこそが、商品開発において定義すべき「顧客価値」です。

コラム:商品開発やリニューアルの際の企画書の作成方法と内容

社内稟議が必要など、商品開発やリニューアルにあたっては、企画書が必要になることもあります。企画書の事例を掲載しますので、項目に添って、自社の検討している内容を埋めていきましょう。

・関係者を納得させる「通る企画書」のテンプレート

以下に示すテンプレートをベースに、熱意や想いをモリモリに盛り込んだ企画書を作成していきます。もちろん、図表、イラスト、画像など、説明力が増す手段は、どんどん活用していきましょう。

【実践事例】商品開発・リニューアル企画書
プロジェクト名:「罪悪感ゼロ」を価値に変える。発酵あずき・リブランディング計画
作成日: 202X年○月○日
作成者: 商品開発部 ○○

1.リニューアルの背景と目的(Why Now?)
現在の「発酵あずき」は、健康志向の高い高齢層をメインターゲットとしてきましたが、売上が伸び悩んでいます。しかし、最新のアンケート調査(n=100)からは、「砂糖不使用」「発酵による整腸作用」という機能が、実は30〜40代の働く女性の「ストレス解消の間食」として強いニーズがあることが判明しました。

本リニューアルでは、ターゲットを再定義し、日常の「ウェルネス・習慣」に食い込む商品への脱皮を図ります。

2.市場環境とアンケート分析(Evidence)
市場のギャップ: 認知度は30%と低いものの、試食後の購入意向は80%を超えており、「良さを知れば売れる」ポテンシャルがあります。

未充足の悩み(インサイト): 30-40代女性は「甘いものを食べたいが、太りたくない(罪悪感)」という葛藤を抱えています。既存の和菓子は「糖分が高い」というイメージで敬遠されているようです。

ベンチマーク分析: 大手メーカーの小豆商品は「安価・大量生産」だが、砂糖を大量に使用している。我々は「砂糖不使用×発酵のチカラ」という大手には真似しにくい手間のかかる製法で差別化する。

3.新商品コンセプト(Concept)
「私を整える、夜のひと匙(さじ)」
〜 砂糖ゼロ、罪悪感ゼロ。明日への自分に投資する発酵スイーツ 〜

ターゲット: 仕事や育児で忙しく、夜に甘いものが欲しくなるが、健康や美容も気になる30〜40代女性。

提供価値(ベネフィット):

精神的価値: 砂糖不使用による「食べても大丈夫」という解放感。

機能的価値: 発酵由来の麹菌と食物繊維による腸内環境の改善。

4.具体的な改善案(Product Strategy)
パッケージ: 従来の「渋い和風デザイン」から、化粧品やサプリメントの横に置いても違和感のない、洗練された北欧風・ミニマルデザインへ刷新。

形態: 一度に食べきれないという声に応え、1食分ずつの個包装タイプ(スティック状)を追加。オフィスや外出先でも手軽に摂取可能にする。

価格戦略: 「和菓子」としてではなく「美容・健康投資」として訴求。付加価値を高めることで、現状より15%の単価アップを目指す。

5.展開ロードマップと期待効果(Future View)
フェーズ1: 既存ファンへのサンプリングと、SNS(Instagram)での「#夜の発酵あずき習慣」キャンペーン展開。

フェーズ2: ターゲットが利用するヨガスタジオやセレクトショップでの限定販売。

期待効果: 1年以内に新規顧客比率を40%向上させ、リピート率(LTV)を現行の1.5倍に引き上げる。

第10章:【レシピ開発】試作と技術的課題の解決

外注するにしろ、内製するにしろ、レシピは必須です。自らの自信作の加工商品の風味が、どのお客様が食べても相違ないものでなければなりません。

例えば、ある時は焼き過ぎで、ある時はしっとりしたスコーンでは、お客様に不安を感じさせてしまいますからね。「これ大丈夫?みたいな(笑)」

また、飲食店等やご家庭で、扱っているレシピは少量での製造に適したものです。それを一気に100個~数千個製造するようだと、微妙に風味が変わるものです。例えば、スープは、仕込む量が多くなると火の通りが遅く、ご家庭や飲食店等での小鍋で設定していた野菜の切りサイズや煮込み時間では不十分かもしれません。つまり、量を多く仕込む視点でのレシピ開発が必要になります。

量を仕込む際のレシピ開発のポイントは、グラム単位での管理です。「少々」「適量」を排除し、すべてパーセントやグラムで管理します。

また、レシピ開発の裏側では、当然、原価計算が必要です。この段階で材料費、光熱費、人件費を計算し、目標とする販売価格に見合うかを確認していきます。(⇒原価を簡単・簡便に計算する方法)

第11章:【仕様設計】パッケージ規格・デザイン・価格の決定

コンセプトが決まったら、それを具体的な「形」に落とし込んでいきます。ここでも、先ほどのような「調査データ」が大きな力を発揮します。

1)パッケージ・量目(サイズ)の決定

1人で食べきりなのか、大勢で分け合って欲しいのか、食シーンや食頻度を意識して量目を決定していきます。量目が決まると、パッケージも個人用、大袋など合わせて検討していきます。特に、利用シーンや使用シーンを念頭に進めます。歩きながらであれば「片手で持てる袋の強度で、1回食べきりで」などを考えるということです。料理で使われるのであれば、「1回の分量で、片手で開けやすく、1食使い切りで」などです。

先ほどの「発酵あずき」の分析結果では、「利便性(手軽さ)」が購入意欲に直結していることが分かりました。
このデータに基づくと、以下のような実務的な決定が可能になります。

・規格の工夫:スプーンが必要なカップ型よりも、片手で食べられる「スティック型」や、手で切りやすい「パウチ」の方が、コンセプトに合致している。つまり、現在の便に入ったものでは、顧客価値を充足できないと考えるのです。

・品質の守りどころ:「食感(粒感)」が評価されているため、粒感が伝わりやすい(見えやすい)パッケージの品質が求められていると言えます。

2)パッケージデザイン:根拠のある「見せ方」

パッケージデザインは「おしゃれさ」だけで決めてはいけません。決め方があります。詳しくは「売れる!加工食品・お菓子のパッケージデザインの作り方・作成方法と相場|おしゃれな成功事例も」の記事を御覧ください。

先ほどのアンケート結果(クロス集計)では、特に「30代〜40代の働く女性」が「原材料のシンプルさ(無添加・農薬不使用)」を非常に重視していることが明確にデータで出ていました。

・デザインへの反映の工夫:パッケージの目立つ位置に「原材料は小豆、麹、塩のみ」と大きく表示する。

また「食感(粒感)」が評価されているため、そこも活かしたいところです。

・パッケージデザインの工夫:「食感(粒感)」が評価されているため、粒感が伝わりやすい(見えやすい)パッケージの品質が求められていると言えます。

このように論理的に考えていきます。パッケージデザインの作成や検討は、マーケティング心理学、色彩心理学が重要です。以下の記事参考にしてください。

⇒「売れる!加工食品・お菓子のパッケージデザインの作り方・作成方法と相場|おしゃれな成功事例も」

⇒「食品パッケージデザイン「色」の決め方!売れる色彩心理・配色比率・タブーを解説」

3)価格設定:安さではなく「納得感」「リーズナブル」

価格は「原価+利益」だけで決めるのではなく、顧客が感じる「価値」から逆算します。ここでは、商品開発という主旨から外れてしまうので、以下の記事を参考に進めてください。顧客が感じる納得感やリーズナブルという感覚は、価格感度分析という方法で算出できます。

⇒「飲食店や食品メーカーの価格感度分析の手順と事例」

先ほどの事例の「発酵あずき」をただの「あんこ」として売れば、スーパーの100円の商品と比較されます。しかし、調査データに基づき「甘いものが食べたいけれど、砂糖は控えたい(不快)」「健康に良いものを摂りたいけれど、調理は面倒(不便)」という方々向けの『究極のタイパ(タイムパフォーマンス)・ヘルシースイーツ』(美容と健康のサプリメント代わり)という見せ方をすれば、1袋300円〜500円でも「納得感のある買い物」に変わります。

・実務のコツ:受容性の確認(アンケート)では、「いくらなら買いますか?」という質問も重要です。「高すぎて買わない価格」と「安すぎて不安になる価格」の間にある「妥当なライン」をデータから見極めましょう。この手法が何度も言いますが、価格感度分析というものです。

⇒「飲食店や食品メーカーの価格感度分析の手順と事例」

第12章:【実装】受容性の確認とリリースまでの最終チェック

最後は「本当に売れるか」を確かめ、世に送り出すフェーズです。

1)受容性の確認(テストマーケティング)

商品が形になったら、身内だけでなくターゲットに近い第三者に試食してもらいましょう。「売れそうか」、「こうしたら売れそう!」的な発想で、ミーティングしていく時間を設けます。ポイントは「買いたい!』的な雰囲気を醸成する商品になるまでです。

・実務のコツ:前述の「発酵あずき」の事例のように、具体的な評価項目(味、香り、食感、パッケージ)を数値化すると良いでしょう。例えば、9点ヘドニック法がおススメです。「非常に好ましい」から「非常に好ましくない」までの9段階で評価してもらうことで、主観に頼らないデータが得られます。

2)リリース前(発売前)の最終確認

食品の裏面表示ラベル作成していきましょう。例えば、一括表示が必要になります。それは、原材料、アレルギー物質、賞味期限、保存方法、製造者などを法律に従って記載します。詳しくは、以下の物販の記事で説明しています。漏れなくがポイントです。

⇒「飲食店が「物販」を始めるための全知識|営業許可の境界線と必要な手続きを支援実績から詳しく解説」

また、賞味期限や消費期限の記入が必要です。実際の賞味期限まで菌が増殖しないか、検査機関で検査を受けましょう。「品質保持試験をしたいのですが・・」と問い合わせれば良いでしょう。

3)「出して終わり」にしないために

商品開発に「完成」はありません。発売後のアンケートや売れ行きを見て、中身やパッケージを微調整し続けることが、ロングセラーへの唯一の道です

第13章:ロングセラー商品開発:商品の改良や改善をを顧客と一緒に

小規模事業者が大手と戦うための最強の武器、それが「価値共創(バリュー・コ・クリエイション)」という考えです。顧客を「ただの買い手」ではなく「開発パートナー」として巻き込みます。つまり商品開発においても、商品を発売後の改良においても、末永く、パートナーとして付き合っていく考えです。これが実現すると、ロングセラーになりやすいことが、様々な文献で、わかっています。詳しく知りたい方は「御店・商品・サービスの顧客価値(存在価値)の構築とコンセプトの設定手順や方法」を参考にしてください。以下に2つほど、手法を使った事例を紹介します。

1)ロングセラーの背景は愛着・愛着を誘発させる「イケア効果」と共創アクション

心理学に「イケア効果(IKEA Effect)」というものがあります。人は「自分で少しでも手を加えたもの」に対して、完成品よりもはるかに高い価値や愛着を感じる性質です。これを商品開発に応用すると、最強のファン作りになります。

•共創のアクション:試作段階で「味の濃さ」や「パッケージの色」をSNSでフォロワーに相談する。あるいは、売場で接触できれば試食などで尋ねる。

•結果:顧客は「自分がアドバイスして完成した商品だ」という当事者意識(オーナーシップ)を持ち、発売前から熱心な宣伝部長になってくれます。

2)ザイオンス効果でロングセラーに育てる:「信頼の貯金」を作る

さらに、「ザイオンス効果(単純接触効果)」も有効です。開発の裏側や、店主が素材選びで悩んでいる姿、失敗した試作品などをこまめに発信しましょう。

「完璧な姿」よりも「一生懸命なプロセス」を見せることで、顧客は親近感を抱き、「この人が作るものなら応援したい」という心理的ロイヤリティが高まります。

また、定期的な交流会や意見を顧客に尋ねる場を設け、改善点を明らかにし、その改善をお客様に大々的にアピールしながら、改良を重ねていきます。

(参考記事)

⇒【中小食品メーカー必見】湖池屋や大手事例に学ぶ「ロングセラー商品」の育て方と戦略

第14章:トップ企業から「盗む」商品開発のコツ・心理学とベンチマークの極意

大手のやり方をそのまま真似ても勝てません。学ぶべきは「手法」ではなく、その裏にある「心理学的な仕組み」です。

1)セブン-イレブンに学ぶ「心理的近接性」

セブン-イレブンは、天候や時間帯で棚を入れ替えます。これは「今、これが欲しかった!」という顧客の心理に寄り添う仮説検証の塊です。

小規模事業者の学びとしては、「今日は雨で気分が沈みがちだから、お店に来店して発酵あずきを購入してくれた方に。温かいメッセージを添えて紹介しよう」といった、大手にはできない「心の距離の近さ」で勝負します。

2)ダイソー(100均)に学ぶ「アンカリング効果」

100円という強力な価格基準(アンカー)があるからこそ、顧客は安心して買い物ができます。

小規模事業者の学びとしては、自社商品が高価なら、まずは「無料お試し」や「少量のトライアルサイズ」を用意し、心理的なハードルを下げてから本商品へ繋げる導線を作ります。

3)化粧品業界に学ぶ「ハロー効果」と世界観

化粧品は、成分の凄さよりも「それを使うことで得られる素敵な自分」を見せています。

小規模事業者の学びとしては、例えば、 発酵あずきを「豆」として売るのではなく、「自分を大切にする時間」という世界観(パッケージデザインや写真のトーン)で包み込みようなイメージです。

第15章:【よくある質問】食品の商品開発・成功のためのQ&A

商品開発の現場でよく寄せられる疑問をQ&A形式でまとめました。実務のヒントとしてお役立てください。

Q1. 食品の商品開発の「全体的な流れ」と、各ステップのポイントは?
A1. 一般的には「企画・調査、コンセプト設計、検証、試作、評価、量産、販売、改善」という8つのフェーズで進みます。
小規模事業者の場合、特に重要なのは「企画・調査」段階で顧客の生の悩み(ペインポイント)を特定することです。発酵あずきの事例のように、データに基づいて「誰の、どんな問題を解決するのか」を明確にすることで、その後の試作やプロモーションの精度が格段に上がります。

Q2. 商品開発のアイデアを出す際、おすすめの「フレームワーク」は?
A2. アイデアの視点を変える「SCAMPER(スキャンパー)法」や、強みを見つける「3C分析」が非常に有効です。

SCAMPER法:既存の商品を「代用する」「組み合わせる」「逆にする」など、7つの問いを投げかけてアイデアを強制発想します。

3C分析:「顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」の3つの視点から、自社だけが提供できる「独自の土俵」を見つけ出します。

Q3. 商品開発における「価値共創」とは具体的にどのような活動を指しますか?
A3. 顧客を単なる「買い手」ではなく、開発プロセスの「パートナー」として巻き込む手法です。
例えば、SNSで試作段階のアンケートをとったり、モニターに「未完成の商品」を体験してもらって意見を反映させたりする活動を指します。これにより、顧客に「自分が育てた商品だ」というイケア効果(愛着形成)が生まれ、発売前から強力なファン層(アンバサダー)を確保できます。

Q4. セブン-イレブンやダイソーなど「大手企業の事例」から学べることは?
A4. 莫大なデータに裏打ちされた「消費者の行動心理」を学ぶことができます。

セブン-イレブン:「今すぐ欲しい」に応える心理的近接性と、徹底した仮説検証のサイクル。

ダイソー:「100円」という絶対的な安心感(アンカリング効果)による、ついで買いの誘発。
これらを自社の規模に置き換え、「小さな店だからこそできる、心の距離の近さ」として応用することがヒットの秘訣です。

Q5. 個人や小規模な会社でも「OEM」を活用した商品開発は可能ですか?
A5. はい、可能です。むしろ「持たざる経営」として、積極的に活用すべき戦略です。
自社で工場を持たなくても、小ロット対応可能なOEMメーカーと提携することで、設備投資のリスクを抑えて新商品を発売できます。製造のプロの知見(法規制や品質管理)を借りられるため、本業である企画や販路開拓に集中できるメリットがあります。

Q6. 商品開発の「企画書」を作成する際、盛り込むべき必須項目は?
A6. 「ターゲットの悩み(負)」「数値根拠: アンケート結果などの客観的なデータ」「解決策(ベネフィット)」「独自の価値(USP)」「収益計画」の5点は必須です。
特に小規模事業者の場合は、大手にはない「開発者の想い(ナラティブ)」や、実際のアンケート結果に基づく「顧客の生の声」を記載することで、社内や協力会社の共感を得やすくなり、プロジェクトが円滑に進みます。

Q7. 新商品開発に使える「補助金」にはどのような種類がありますか?
A7. 「ものづくり補助金」や「小規模事業者持続化補助金」が代表的です。

ものづくり補助金: 新製品の開発や、革新的な生産体制の構築など、比較的大規模な設備投資を伴う場合に適しています。

持続化補助金: 販路開拓、パッケージデザインの刷新、展示会出展など、プロモーション関連の費用を幅広くカバーできます。
採択には具体的な事業計画書が必要となるため、商品開発のプロセスそのものが補助金申請の強力なエビデンスになります。

Q8. マーケティング心理学の「ハロー効果」は食品開発にどう応用できますか?
A8. 商品の「パッケージ」や「世界観」を、特定のターゲットが憧れる要素(ブランドイメージ)で包み込むことに応用します。
例えば、「発酵あずき」を単なる健康食品として売るのではなく、パッケージに「丁寧な暮らし」や「自分へのご褒美」を感じさせるデザインを採用することで、商品そのものの品質(味や成分)に対する評価もポジティブに引き上げることができます。

Q9. 化粧品業界の商品開発手法を「食品」に転用できますか?
A9. はい、特に「情緒的価値(世界観)」の作り方は、食品業界が大いに学ぶべき点です。
化粧品は成分の機能性以上に「それを使うことで、どんな自分になれるか」という期待感を売っています。これを食品に応用し、「この食品を食べることで、どんな健康的で素敵な生活が待っているか」というベネフィットを強調することで、価格競争に巻き込まれない高付加価値化が可能です。

Q10. 商品開発のコンサルタントを依頼するメリットは?
A10. 客観的な視点(独りよがりの排除)と、他社事例のデータベースを活用できる点です。
社内だけで開発を進めると、どうしても「作り手のこだわり」に偏りがちです。専門家によるアンケート分析やフレームワークの活用、OEM先の選定支援など、成功確率を高めるための「最短ルートのナビゲーション」が得られます。

Q11. アンケート調査を商品開発にどう活かせばいいですか?
A11. アンケートは「多数決」ではなく、顧客の「深層心理(インサイト)」を探るために使います。「発酵あずき」の例では、単に「美味しいか」を聞くのではなく、「どんな時に食べたいか」を聞いたことで、働く女性の「夜の罪悪感の解消」という真のニーズが見つかりました。アンケートで出た要望を商品に反映させるプロセスを公開することで、顧客との「価値共創」が始まります。

Q12. 自社工場がない個人や小規模事業者が食品を作るには?
A12. OEM(受託製造)の活用が最適です。製造のプロに任せることで、設備投資のリスクを負わずにスモールスタートが可能です。最近では小ロット対応のOEMメーカーも増えており、小規模事業者でも「持たざる経営」でスピーディーに新商品を市場投入できます。

初稿:2016年2月11日、加筆修正:2026年3月5日

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久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。

講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。

2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。

近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。

主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。

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