新商品開発や新メニュー開発のアイデア出しを成功させる3つの視点

今回は、新商品を開発しても、まったく売れない(的外れになる)といった悲しい事象に陥らないためのテクニック(いや、基本の話)をお示しします。

大きく「3つの視点」について、留意すると「まったく、売れない・・」といった間違いを起こすことはありません。

3つの視点は以下の目次の通りです。

1.どのような顧客価値(存在価値)があるのか常々念頭に置く
2.「要望の想起」が無いものは開発アイデアとして起案しない
3.圧倒的な認知を構築できないなら「アイデア」は却下する

では、3つの視点を見て行きましょう。

1.どのような顧客価値(存在価値)があるのか常々念頭に置く

 1番抑えてほしいのは、顧客がお金を払ってまで、充足したいとする「何かしらの価値」を創出したいと、念頭に置くことです。その価値を発見し、定めておかないと、どのような荷姿にすれば良いのか、どのようなデザインにすれば良いのか、どのような量目やサイズにすれば良いのか等々、何も考えられないものです。

 従って、商品やメニューを新たに起案したり、既存の商品や新サービスを改良したい場合は、まずは「顧客にとって、どのような存在価値があるのか」を念入りに検討するようにしましょう。その顧客価値(存在価値)の発掘は、以下の記事で詳細に説明していますので、確認ください。

 ⇒商品やメニュー、御店そのものの顧客価値(存在価値)の検討の方法

2.「要望の想起」が無いものは開発アイデアとして起案しない

 まずは、1つの失敗例と、1つの危惧する事例を御覧ください。

≪失敗事例 減塩のポテトチップス≫

https://koikeya.co.jp/news/detail/99.html

 2007年当時、私が勤めていた湖池屋で「減塩のポテトチップス」を新商品として導入したことがありました。主たるチャネルは「ドラッグストア」と見据え、食品スーパーやコンビニエンスストアへの配荷も視野に、意気揚々と進出したのです。しかしながら、まったく売れませんでした。
 マーケティング部としては、これまでの種々の消費者向けの調査事業で、「健康志向の高まりの中で、減塩ブームが到来していたので、きっと受け入れられるであろう・・」と算段したのですが、まったく売れなかったのです。
 後にわかったのですが、ポテトチップスを買おうと思う方々には、塩分が濃い方が良いとか、薄い方が良い、といった「要望の想起」は、当時、まったく念頭に無かったのです。それどころか「普通のポテトチップスを1袋食べれない方が、果たして健康と言えるのだろうか?」「そもそも、ポテトチップスに健康配慮など求めていない・・」といった逆説的な着想さえ、あったのです。

 余談ですが、現在(2024年時点)は、「減塩」という「要望の想起」は定着しています。従って同社の「食塩不使用」のポテトチップスは、相応な売行きを見せています。このように「要望の想起」は、時代やトレンドともに変遷していくといったことも忘れてはなりません。

≪危惧する事例 バナナの花≫

 支援先がバナナの花を卸して販売しています。無論、これだけが取扱い商品(農作物)では無いので、そんなに心配していないのですが、このバナナの花が日本では売れないのです。それは何故でしょうか。一言で伝えますと、野菜、果物、いずれにおいても、消費者の「要望の想起」に、エントリーしていないからです。仕事を御一緒する機会のある管理栄養士の方々(普段は、主婦)に、この商品を見ていただきましたが、皆さん想像の域を超えて、恐々した反応でした。無論、バナナの花は食べることができます。東南アジアでは、蕾の部分を炒めて食べたり、サラダや和え物、スープなどに利用します。しかしながら、日本では、野菜、果物といったカテゴリーにおいて想起されないどころか、サラダ、スープ、炒め物といった調理法でも、想起されないのです。頭に浮かばない(想起されない)のですから、そもそも、買う候補にすら入らないのです。

 さて、小規模な(小さな)事業者が、商品開発やメニュー開発を進める際は、「要望の想起」というものを逸脱してはならないことを肝に銘じてほしいと思います。無論、当たる!といったヒット商品への道は、無い事は無いですが、そのような結果は、なかなかお目見えできないものです。開発する立場としても、そこそこに売れてもらわないと、開発コスト等も回収できないわけですから、冒険的なチャレンジは避けた方が身のためです。

 以前顧客ニーズの発見の仕方の記事で、下記のような図を示しましたね。これも、実は要望の想起なのです。この事例の場合は「マフィンと言えば・・、炭水化物、糖質、糖質制限・・・」といった言葉が想起がされます。

 そして、その想起された知識や体験が、「顧客のニーズの根っこ」として御客様の頭の中で、認知されるのです。つまり、認知されて、はじめて顕在化したニーズとなります。上記の湖池屋の事例では、当時、ポテトチップスで減塩といった言葉は想起されなかったため、顧客ニーズが無かったと解せます。また、バナナの花の場合は、食材としても、料理としても想起されないので、顧客ニーズが無かったと解してほしいのです。つまり、ニーズが無いものは売れないといった単純な構造なのです。

 ⇒顧客ニーズの発見の方法や手順はこちらを御覧ください

3.「圧倒的な認知」を構築できないなら「アイデア」は却下する

 さて、では想起されない要望をニーズとして捉え、商品化やメニュー化することは、どうなのでしょうか。先述のバナナの花や、減塩のポテトチップスのように、ただ単に店頭に並べていても、ニーズとして存在しないわけですから、売行きは厳しいと言わざるを得ません。

 ただ、1つ突破口があります。それは、半端なく、多くの顧客に認知してもらうことです。百人十色、千差万別とはよく言ったもので、多くの認知が拡がれば拡がるほど、そういったものの想起がある方が、少なからず接触できます。多くの方の目に触れれば、触れるほど、そのチャンスが拡がるでしょう。そうやって、トライアルユーザーを囲い込み、想定通りの売上に結び付けていく、という算段です。

 ただし、これはテレビコマーシャル等、多額の広告宣伝費が必要になりますので、やはり、小規模事業者(小さな事業者)には選べない戦術と言えます。従って、小さいな会社は、前項の2に戻って、「要望の想起」といった範疇から、商品やメニュー開発アイデアを起案していくことが求められるのです。

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久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。

講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。

2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。

近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。

主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。

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