食品メーカーのロングセラー(定番)商品開発の重要性と方法

飲食業、食品製造業、農業者の売上獲得支援をしている中小企業診断士の久保正英です。

今回は、食品メーカーにとっての定番商品(ロングセラー商品)開発の重要性と、その開発の方法について、主な論点を整理しました。

==目次==

1.食品や菓子の定番商品の開発のポイントはヒューリスティックへの配慮
2.食品や菓子売場での消費者の購買心理や行動の事例
・消費者そもそもの購買動機
・過去の経験が参考に
・その場の情報を参考に
3.食品や菓子の定番商品の重要性と開発の仕方
・原則的な開発の手順は変わらない
・暮らしの中の「存在価値」で商品コンセプトを決める
・ロングセラー商品になりやすい色調・色彩のパッケージにする
4.定番商品が開発できれば高級志向の商品開発にもチャレンジ可能

1.食品や菓子の定番商品の開発のポイントはヒューリスティックへの配慮

今回は、食品や菓子を製造販売する「食品メーカー」には一般的な「定番商品:ロングセラー商品」について、解説を進めると共に、その定番商品の重要性や、開発の基本的な考えにについて説明していきます。

定番商品の開発を上手に進めるにあたって、最大のポイントは、消費者の心にある「ヒューリスティック」に配慮することです。

これは、「行動経済学」にも登場する論点で、「人は物事を、即座に判断する」といった内容になります。消費者の、日常の購買行動を観察していれば、気づかされます。

2.食品や菓子売場での消費者の購買心理や行動の事例

例えば、近年のポテトチップスの商品開発の傾向は、二極化していて、概ね、次の2つです。

・従来のポテトチップス(いわゆる100円以下で買えるもの)

https://koikeya.co.jp/

・最近の高価なポテトチップス(上代が200円以上のもの)

https://koikeya.co.jp/

消費者が店頭やECサイトで「スナック売場」に行き、買い物をする際、仮に上記の2品が並んでいたら、概ね、次のような視点が(瞬間に)、頭の中の想像を染めていくことでしょう。

・消費者そもそもの購買動機

小腹が空いたから、補食として買いたい。食べたことがある「従来のポテトチップス」なら買い物しても間違いなさそうだな・・

でも、高級感のある「高価なポテトチップス」も気になる・・

・過去の経験が参考に

食べたことがある「従来のポテトチップス」なら、美味しいことを知っているし、いつも通りにしようかな・・

でも、高級感のある「高価なポテトチップス」も気になる・・

・その場の情報を参考に

プライスカードやPOPを見て、「従来のポテトチップス」の相場観や、割引率なども念頭に、今日は、少し安いし、やっぱり「従来のポテトチップス」にしようかな・・

でも、POPの「芳醇な風味」や、高級感のある「パッケージデザイン」も気になるし、「高価なポテトチップス」も気になる・・

さて、このような心情を考えることが、行動経済学をマーケティングに活かす最大の論点なのですが、実は、結果は概ね理解できていて、ほとんどの消費者は、「従来のポテトチップス」を手に取ります。

これがヒューリスティックです。

いくつかのヒューリスティックが複雑に絡み合うのですが、例えば、「いつもの経験」「いつも目に触れ、記憶に残っていること」が大きく影響し、何となく「まっ、従来のポテトチップス」で良いか!と回答を、直観、即決させるのです。

3.食品や菓子の定番商品の重要性と開発の仕方

食品メーカーにおいて、定番商品(ロングセラー商品)の開発の重要性が「常に、語り継がれている」ことですが、この「いつもの・・」という安心感から、消費者に直観、即決させることを「経験的に知っている」ことが背景にありそうです。

以下に、定番商品へと育んでいくために、抑えておかなければならない主要な論点について、列挙しておきます。

・原則的な開発の手順は変わらない

定番商品だからと言って、商品開発の手順や思考が異なるかと言えば、原則的には変わりません。基本い忠実に、進めていただければ良いのですが、後述する「存在価値」「パッケージデザインの色」については、複雑に絡み合うことが多いので、まずは、この2つ「存在価値」「パッケージデザインの色」について確認をしていただき、その上で、基本的な「食品の商品開発」の手順を確認していただくと理解が進むことでしょう。基本的な「食品の商品開発の手順」については、こちらのリンク先の記事で詳しく説明しています。

・暮らしの中の「存在価値」で商品コンセプトを決める

開発する商品(食品や菓子)は、日常の暮らしの中で、「消費者にとって、無くてはならない存在価値」を持っているかを「最優先」に開発していかなければなりません。消費者にとって、日常で「無くてはならない存在」になれば、売場でも「絶対に品揃えしなければならない商品=定番商品」と育っていくからです。存在価値の作り方については、こちらのリンク先の記事で詳しく説明しています。

・ロングセラー商品になりやすい色調・色彩のパッケージにする

 定番商品は、長く愛されることがポイントです。これは、俗に言う「ロングセラー商品」と言えます。ロングセラー商品の開発においては、パッケージデザインへの配慮も、最重要な課題の1つです。

ロングセラー商品に育てやすい「色調や色彩」というものが存在しますので、徹底的に配慮して取り組むことをおススメします。ロングセラー商品に育てる色の使い方は、こちらのリンク先の記事で詳しく説明しています。

4.定番商品が開発できれば高級志向の商品開発にもチャレンジ可能

定番商品の展開が上手くいった事業者の多くは、次に、高級志向の商品やメニューを開発したいとする方が多いのも、支援の現場での実情です。その場合、何を念頭に取組めば良いのでしょうか。いわゆる定番といわれるメニューや商品には、ヒューリスティックが働きますので、高級な商品を横に品揃えしても、なかなか、手にとってもらえないのが実情です。

そうであるにもかかわらず、多くの事業者は、パッケージで高級感を出したり、原料をコダワルことで、その高級路線にチャレンジします。しかしながら、多くの事業者で「失敗」に終わります。

そこで、紹介したいのが、私が支援している中で、明確に効果を期待できる手法です。ヴェブレン効果というものです。

では、次回、そのヴェブレン効果を使った商品やメニュー開発の具体的手順等について紹介していきたいと思います。(具体的手順 ⇒ クリック

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久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。

講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。

2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。

近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。

主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。

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