農作物商品開発阻む種苗法改正

農作物の商品開発を進める中で、大事な概念の1つ「タネ」。ここに大きな課題がありますので先に紹介したいと思います。

それは、種苗法改正です。農作物や農家のオリジナリティーの要素の1つである「自家採取」ができなくなることに問題があります。

固定種のアロイトマト

 そもそも日本は「食料・農業植物遺伝資源条約(ITPGR)」(国際条約)に加盟しています。植物遺伝資源の1つである農作物タネ(種)は、農業者がこれまで大切に育んできたものであり、農業者が自家採種する権利の主張の中心の概念となっています。

 日本は他国への特許等の知的財産権を強化する国際条約(植物新品種の保護に関する国際条約)(UPOV)」を推進の立場です。この機運で種苗法改正が課題になっているのです。

 では、どのような農作物がこの自家採取できなくなる対象にあるか?︎と言いますと、例えば、トマト、ブロッコリー、ナス、大根、など2020年の今、約400種類近くにもなります。つまり、農家の身近な農作物が対象にあることが大問題なのです。

 例えば以下のようなこともありそうです。

 概ね農家の扱うタネは、最初は種苗会社から購入してスタートすることになります。つまり、そのタネには「種苗会社等の知的財産」が含まれているから、「勝手に自家採取して売り物等に使うな・・!
使うならライセンス料等払え!」といったことも、あり得るのです。

 とはいえ、農家は「タネをとって一人前」と昔から言います。つまり、ちゃんとした農家は、毎年自家採取し、その土地や栽培の仕方や風土に馴染み、オリジナルなタネに形質や遺伝情報等が変わっていきます。

 元々は買った種(タネ)でも、数十年と自家採取していけば、立派な固定種ですし、後継者がつないでいけば100年なんて簡単に超え、立派な在来種です。農家の栽培の工夫を反映したタネを自家採取できなくなれば、極端、どの野菜を食べても同じ品種、似たような風味になってしまい、農家のオリジナリティが失われてしまいます。

 例えば、シンプルベジという農業者の春菊は、サラダに美味しいように栽培し、自家採取しているので、栽培環境が遺伝し、ますますサラダに美味しくなるのですが、そこが失われてしまうのです。

久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。

講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。

2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。

近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。

主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。

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