パン屋さんやベーカリーの運営上のボトルネック。それは、主に以下の論点では無いでしょうか。
■ベンチタイム後のナマ生地の保管
御客が、どの程度くるかもわからない中でも、店頭の魅力を演出するために、相応にパン生地を仕込み、いつでも焼けるようにしなければなりません。そこで、多くのベーカリー(パン屋)さんは、ベンチタイムの後、生生地を冷凍し、保管することを試みたはずです。
しかしながら、状態はいかがでしたか。多くの個人や小規模な個店は、冷凍に「一般的な冷凍庫」を使用しているため、風味が落ちるという問題が発生したはずです。この現象は、庫内に仕込んだ生地を在庫するために、冷凍庫を開閉することで、温度が上昇しているからに他なりません。
■焼成前(2次発酵前)の生地の保管
上記と同じ理由で、結局、成形までたどり着き、2次発酵の前に、冷凍庫に保管することになりませんか。そうであるならば、ベンチタイム後と同様に、鮮度保持が難しくなるはずです。
さて、上記のような課題をお持ちのベーカリーやパン屋の方は、御店の繁盛が実現した際の繁忙に備えて、改善や対応策を考えて準備しておきたいところです。
これらの改善ですが、残念ながら技術や段取りで、改善できる代物ではありません。設備投資が必要になります。
■ベンチタイム後のナマ生地の保管の解決には
風味を損なわないためには、「-40℃~-22℃」のいずれかの条件下で一定に保たなければなりません。それが可能なのは、急速冷結庫が適切です。例えばこのようなタイプです。
(パナソニックwebサイトより 急速凍結庫 BF-F120A)
■焼成前(2次発酵前)の生地の保管の解決には
これは、上記のような条件を備えつつ、成形後は嵩張るため、大容量のものが必要になります。そのためには、御店の販売量を踏まえた、大容量急速冷結庫を用意する必要があります。
さて、上記の課題解決により、工程上のボトルネックが解消されることになるでしょう。それよりも 何よりも、この取組には、とても嬉しい副産物があります。
つまり、冷凍保管のため、風味を損なわない、販売する時に焼成する、これが可能になるため、無添加でレシピを構築できるのです。ぜひ、無添加にチャレンジしてみてください。
余談ですが、成形後の冷生地を販売したいとお考えの場合、冷凍食品の販売には保健所での手続きが原則必要です。
久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)
加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。
講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。
2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。
近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。
主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。