小規模飲食・小売・製造業の加工食品 商品開発の手順と方法

加工食品の商品開発の手順や方法を細かく説明していきます。

支援に入る際、カフェや居酒屋等の飲食店や小さな食品スーパー(食料品小売業)等から問い合わせが多い件の1つ「どのような手順で商品開発を進めれば良いですか?」

この件について、簡単に 簡潔に 整理して紹介します。
加工食品の開発のステップは、大きく以下の9つです。

・まずは加工する商品の種別を決める

・決めた商品の種別に必要な許認可を確認する

・内製するのか外注するのかを決める

・外注先を決めるための情報収集と決定

・製造のレシピを決める

・商品コンセプトを決める

商品パッケージやデザイン・量目等の規格の設定

価格の設定法

・受容性の確認

1) まずは加工する商品の種別を決める
 商品の種別とは、すなわち、ビスケット、あられ、ドレッシング、パン、味噌、等々の具体的にお客様が認識できる食品の総称のことです。

 まずはこれを決定します。
大切なことは、既存事業とのシナジー(相乗効果)です。

 サラダが美味しいお店が日常お店で使っている「お手製のドレッシング」があるとすれば、無論、ドレッシングを手掛けることが、正解ですよね。
いきなり、「煎餅」と言っても、ノウハウも無ければ、売る理由(評判で)も見当たらない。

 つまり、あなたの御店だから、あなたの小売店だから、お客様が納得してくれる商品の種別を選択していくことが大切です(必然性)。

 これは商品の存在価値が何なのかを決める方法を合わせて御覧いただければ理解が深まります。(⇒商品やサービスの存在価値とは)

 また、どれを加工食品にすれば良いかお悩みの場合、お店で見せかけの売上に捉われず、お客様が「このお店と言えば 〇〇が美味しいから、おススメ!」といった「〇〇」を見つけ出す論理的なアプローチもあります。取り組んでいみてはいかがでしょうか。(⇒多属性態度モデル活用による主力メニューの見つけ方)

2)決めた商品の種別に必要な許認可を確認する
 これは例えばビスケットなら焼き菓子の免許を保健所から取得しなければなりません。
つまり菓子製造業の営業許可を取得しなければならないということです。

 商品の種別の必要な許可が何なのかをわからない方は、まずは、最寄りの保健所に気軽に相談にいけばいいでしょう。

3)内製するのか外注するのかを決定する
 2)で許認可を確認する際、あなたが製造しようとしている加工食品では、どのような設備が必要で、どのような資金(コスト)が発生するのかを合わせて確認していきましょう。

 例えば菓子製造でオーブンが必要であれば、そのオーブンが定価でどのくらいの費用が必要なのかを確認しておくことです。必要な設備の積算がいくらになるかを確認し、その積算を購入してまで内製して、営業を始めることが「資金繰り的に問題ないことなのか」を確認します。

 いわゆる損益分岐点の原価分析です。これを確認しておけば、
年間○○○○袋を販売すれば、設備投資の総額を回収できる!
年間△△△△袋を販売すれば、○○円の利益が確保できる!等々がわかります。

 その上で、○○○○袋を販売する希望感を自らの心に問います!大丈夫!売れる!というのであれば、設備投資はGO!と言えますね。なお、難しい損益分岐点分析のやり方は、置いておいて、簡便に計算する方法を御案内します。(⇒原価を簡単・簡便に計算する方法)

例)設備Aが必要で50万円、販売管理費の予算が100万円、10000袋の加工食品を年間販売目標にする場合、150万円÷10000袋=150円。つまり、1袋あたりの原価は150円。このように、厳密では無く、大まかな原価を把握する方法を原単価法と言います。

4)外注先を決めるための情報収集と決定
 3)で内製の自信が無い方は、迷わず外注にしましょう!また内製の自信がある方も、まずは外注から始めることをおススメします。なぜなら、売行きが悪い場合、内製時に比べて、早々に撤退が可能だからです。これは想像できますよね?(笑)

 さて、外注先を探す場合は以下の手順で進めると良いと思います。
・自らが参入したい商品の種別の商品を可能な限り、探索する。
・探索する場所は、食品スーパーや土産物等々の特産品売場をおススメします。

⇒個人や小規模事業者が加工食品を開発する場合、基本100~数万個程度の小ロット製造が一般的です。いきなり10万個!みたいなバカな取組は避けたいところです。在庫過多が見えています。加工食品を販売することは容易なことではありません。楽観視は禁物です。

 さて、数万個以下の場合、外注先として、大企業等々が受託してくれるわけがありません(笑)。コンビニは、非常に魅力的な売場ですが、大企業だらけの品揃えが一般的です。食品スーパーや土産物売場や道の駅などに行くと、個人や小規模事業者が製造元の商品が溢れています。つまり、小ロットで製造を受託してくれる可能性が高い事業者が多い!ってことです。

5)製造のレシピを決める
 外注するにしろ、内製するにしろ、レシピは必須です。自らの自信作の加工商品の風味が、どのお客様が食べても相違ないものでなければなりません。

 例えば、ある時は焼き過ぎで、ある時はしっとりしたビスケットでは、お客様に不安を感じさせてしまいますからね。「これ大丈夫?みたいな笑」
 また、飲食店等やご家庭で、扱っているレシピは少量での製造に適したものです。それを一気に100個~数千個製造するようだと、微妙に風味が変わるものです。

 例えば、スープ等では、仕込む量が多くなると火の通りが遅く、ご家庭や飲食店等での小鍋で設定していた野菜の切りサイズや煮込み時間では不十分かもしれません。つまり、量を多く仕込む視点でのレシピ開発が必要になります。

6)商品コンセプトを決める

5)を進める際に、合わせて実施してほしいことが商品コンセプトを決定することです。

 商品コンセプトの決定の手法は、そんなに難しくありません。誰に、何を、どのようにして、その商品を提供したいのか、この加工食品は何のために存在するのか?これを検討することです。

 つまり、存在価値を検討し決めることです。参考記事を紹介しておきますね。(⇒商品やサービスの存在価値とは)
 商品コンセプトは、人に紹介する際に、説明しやすい短さと端的さの言葉を意識して作成するようにしましょう。

 例えば、春菊の生産者が居て、お客様が、知人に紹介する際、「サラダでおいしい春菊」だよ!って発したとします。その紹介された知人は、数ある多くの春菊の中から、サラダ用だ!というように 差別化して記憶に刻みます。そうです、それこそが商品コンセプトですね。

 誰が:紹介された方

 何を:春菊

 どのように:サラダで

7)商品パッケージやデザイン・量目等の規格の設定
 商品パッケージを決める際には、その食品の物性や食シーンをイメージしながら決定します。例えば、ふにゃふにゃ柔らかいものをPEの袋に入れて販売すると、袋が重さで歪み食べにくいでしょう。
そうであるならば、紙箱を外装にしたり、といった対応が必要になってきます。

 また、鞄に潜ませて、歩きながら食べて欲しいとおもうのであれば、ポテチのような大袋では不便で仕方ないでしょう。そのような発想で決めていきます。

 量目も同じです。1人で食べきりなのか、大勢で分け合って欲しいのか、食シーンや食頻度を意識して量目を決定していきます。

 デザイン基調色は紫色、緑等のいわゆる食欲減退食は最低限避けて、選択していきます。デザイン基調色の選択の際は以下の視点で選ぶと良いですね。
・中身を創造しやすい色
・中身が見える透明色
・中身とのギャップを感じさせない色
・体に存在する色(赤、黒、茶)
・食べられると一般的に認識されている色(赤、茶、黄等々)
・安心感を与える色(茶)
・洗練されたイメージを与える色(白)
・自然界で想像しやすい色(青、水色)

 また、戦略的に色をデザインで意識したいですね。そのような方には、次の記事が参考になりますよ。(⇒食品パッケージ デザインの色の決め方在り方選択の方法とは)

 これらを参考に進めていけば近道ですね。

8)価格の設定法
 原則は、3)で記載した損益分岐点分析で明らかになった「見込販売予定数」に伴う「見込総コスト」を明らかにすることから始まります。その上で、商品化するものの原価を設定していきます。

つまり総コスト÷見込販売予定数=1つあたりのコスト(≒原価)

 原価が決まると簡単です。いくらの利益が欲しいのか、いくらならお客様が納得して買ってくれるのか、これを検討していきます。その決定した利益を上乗せして価格を決めていきます。

9)受容性の確認

ある程度、商品の形が見えてきたら、周りの知人や友人に実際に現物を見てもらったり、試食してもらいながら、「売れそうか」、「こうしたら売れそう!」的な発想で、ミーティングしていく時間を設けましょう。

ポイントは、売れそう!買いたい!的な雰囲気を醸成する商品になるまで、です!

==お知らせ==

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久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。

講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。

2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。

近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。

主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。

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