飲食店の支援先において、新型コロナウイルス感染症の影響下で、「飲食店が自ら扱う食品を物販しようとする動き」が加速しました。
一部、この影響下では、行政も寛容なところがあり、通常なら認めてくれ無いようなことも認めてくれたり、例外もあったものです。

しかしながら、通常に戻った現在、食品類の物販で実施できること、出来ないことについて、整理しておく必要があるなと思い、以下に整理しました。
1.飲食店が物販できることと出来ないことの総括
まず、まとめると、飲食店の食品の物販で出来ることは「料理そのもののテイクアウト、食品表示が既にあるものを仕入れた場合(その仕入れたものを封を空けていないもの)、農作物を仕入れて、そのまま販売すること」になります。一方、出来ないことは「酒類を仕入れて販売、精肉を仕入れて販売、鮮魚を仕入れてそのまま販売等」です。
2.テイクアウトは原則OK
飲食店ですから、御店で調理して店内で提供しているものがあります。グランドメニュー表にある種々の料理です。こちらは店内での受け渡しであれば、テイクアウトは無許可で実施できます。
3.仕入れ加工食品や菓子などを封を開けないで販売OK
話をわかりやすくすると、裏面表示が既にあるものであれば物販は可能です。裏面表示とは、要するに下記の画像のようなものです。
なお、裏面表示があるからといって、冷凍食品は販売できません。営業許可をとる必要があります。営業許可の申請は各都道府県の保健所で行われています。
4.冷凍食品の販売は許可や届出が必要
店内で提供している主力メニュー(料理)を、冷凍食品で提供したいという御相談も多々あります。この場合は、行う内容に応じて、営業許可や届出が必要になります。以下に概要をまとめておきます。
(許可の種類)
・冷凍食品製造業の営業許可
半加工品などのお惣菜を冷凍食品として製造する場合に必要です。
・複合型冷凍食品製造業の営業許可
複数の種類の冷凍食品を製造する場合に必要です。具体的には、冷凍食品の製造に加えて、以下のいずれかの食品製造業も行う場合に必要となる許可です。
食肉処理業、菓子製造業、水産製品製造業、麺類製造業、
以前の食品衛生法では、これらの複数の業種を営む場合、それぞれの許可を個別に取得する必要がありました。しかし、2021年の法改正により、複合型冷凍食品製造業の営業許可を取得すれば、これらの追加許可が不要となりました。
(許可取得の要件)
・食品衛生責任者の資格
食品衛生責任者の資格が必要です。資格取得には、養成講習の受講または特定の資格(調理師、栄養士など)が必要です。
・施設基準
施設の構造、設備、衛生管理などが都道府県の基準を満たしている必要があります。これは保健所等に、御相談されることが近道になります。この基準は、共通基準と特定基準に分かれます
・HACCPに基づく衛生管理
HACCP(危害要因分析重要管理点)に基づいた衛生管理計画の作成と実施が必要です。
なお、既製品(袋詰め未開封)の冷凍食品を仕入れて販売する場合もありますね。このような場合は、保健所への届出が必要になります。
5.生鮮の中で農作物の販売はOK
調理に使っている農作物を、せっかくなので販売したいといった声もあります。その場合、例えば、レタスなどを1/2にカットしたりする等、加工したものは販売できません。惣菜製造の許可が必要になります。また、精肉の販売も原則出来ません。食肉販売業の許可が必要になります。魚貝類の販売も出来ません。魚貝類販売業の許可が必要です。
6.精肉を販売する際の許認可
例えば焼肉屋さんのような飲食店で、御相談が多いものが、精肉をテイクアウトして良いのか、販売して良いのかです。こちらは、別途こちらの記事で紹介しています。御利用ください。
⇒焼肉屋がメニューで取り扱っている精肉を小売(物販)する手順とポイント
7.飲食店が物販してはいけないものを整理
保健所等の行政の許可が無いと物販出来ないものは、酒類、冷凍食品、精肉、魚介類等の鮮魚です。ただし、許可取得は難しくありません。要するに、保健所等の指示にしたがって、冷蔵庫、冷凍庫等々の必要な設備を別途用意するなどです。
初稿:2019年1月10日
加筆修正:2024年3月9日 、2025年3月3日
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久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。
講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。
2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。
近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。
主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。