食品メーカーの営業は「きつい」?それとも「やりがい」がある?
食品メーカーや菓子・飲料メーカーにお勤めの新入社員の皆様、あるいは新たに営業部へ配属された皆様の中には、インターネットで「食品 メーカー 営業 仕事内容 」「食品 メーカー 営業何する 」と検索し、これからの業務に不安を抱いている方も多いのではないでしょうか。
時には「食品 メーカー 営業 きつい 」「食品 メーカー 営業 やめとけ 」といった声を目にし、ルート営業や商談のプレッシャーに圧倒されそうになるかもしれません。
しかし、結論から申し上げます。食品メーカーの営業は、「正しい行動と役割」を理解し、「戦略的なコツ」さえ掴めば、自社からも取引先からも最も頼りにされる、非常にやりがいのある職種です。本記事では、大まかな営業の役割や社内で評価される思考回路から、小売店(スーパーなど)や問屋(卸売業)での具体的な仕事内容まで、食品メーカー営業の「全体像」を網羅的に解説します。
この記事を読めば、明日からの営業活動に対する迷いがなくなり、確実な成果への道筋が見えてくるはずです。
【この記事の要約】
・食品営業の本質: 単なる売り込みではなく、相手(商談先)との良好な関係を構築し、自社商品を品揃えしてもらうこと。
・会社での役割: 広告宣伝だけではカバーできない「商品の長所」を、売場を通じて消費者に直接届けること。
・評価される思考回路: 会社の理念やコンプライアンス(法令遵守)を守り、「戦略(方向性)」と「戦術(具体的な手段)」を区別して行動する。
・実践的な3つの仕事内容: ①小売店での店回り、②問屋(卸)との関係構築、③本部バイヤーとの商談。
第1章 食品・菓子・飲料メーカーの営業マンの「本当の行動と役割」とは
まずは、食品や菓子、飲料メーカーの営業の仕事とは一体どのようなものなのか、その本質と会社における存在意義を紐解いていきましょう。
1)ただ押し込むだけじゃない「営業の仕事」の本質
食品メーカーの営業の仕事を一言で要約すると、「会社が売り込みたい、普及させたい商品を理解し、担当する取引先に『品揃え』してもらえるよう働きかけること」です。
熱心な営業マンの中には「品揃えしてもらえなければ営業の意味が無い!」と考える方もいますが、実はそれは半分正解で、半分間違いです。
最も優先すべきは、相手(商談先)との良好な関係を構築することです。商談の結果として品揃えされるかどうかは、相手の景況や売場状況に左右されます。相手が乗り気でない商品を無理やり押し込んでも、現場で「売る努力」をしてもらえず、結果的に販売ロスや値崩れといった悪循環に陥ってしまいます。
2)なぜ営業マンが必要なのか?会社における存在意義
「マーケティング予算を大量に投下してテレビCMを流し、誰もが知る最高に美味しい商品を作れば、営業マンはいらないのでは?」と思うかもしれません。
しかし、現実には大企業であっても広告予算には限りがあり、100人中100人が満足する完璧な商品など存在しません。だからこそ、中小や小規模事業者はもちろん、大手メーカーであっても「特定の小売業の売場を担当する人財(営業マン)」が必ず必要になります。
・1人でも多くのお客様に自社商品を知ってもらう(認知度を上げる)
・自社商品の欠点ではなく「長所(食べることで得られる便益や幸福感)」を伝える
これらを、泥臭く「売場」を通じて成し遂げることこそが、営業マンの主たる役割であり、存在意義なのです。
3)目指すべきゴールは「重要取引先」を任せられる人材になること
新入社員であれ、中途採用であれ、すべての営業マンが目指すべき社内でのゴール(立ち位置)があります。それは、「会社から頼りにされる営業マン」になることです。
具体的には、会社にとって極めて重要な取引先(大手流通チェーンなど)や、戦略的に攻略したい重要地域を任せられるようになれば、一人前と言えます。現場で重要取引先を任される人材は、社内での人望も厚く、出世の道を歩みやすくなります。
また、もし将来的に転職やキャリアアップを考える際にも、この領域に達している人材は「転職市場やヘッドハンティング市場」で引く手あまたとなります。
コラム:漬物メーカーの西日本地域での戦い

岩下食品の主力商品の一つが上記の画像の「らっきょう」です。栃木に本社がある関係で、北関東から東北、関東では盤石で、多くの食品スーパーに品揃えしていただいてました。支援当時の課題は、西日本の攻略であり、らっきょうの産地である鳥取県等での配荷です。日々、現場の営業マンは社用車で、食品スーパーを巡回し、自社の「らっきょう」の認知をあげる努力をしていたものです。
西日本の現場には、関東圏で大活躍した営業マンを、戦略的に転勤していただき配置しました。なぜなら、戦略的に攻略したい地域が西日本であったからですね。重要な地域を預かるような営業マンになったことで、同社の西日本エリアの営業マンは、転職市場でも有効であったようです。
第2章 社内で高く評価される営業マンの「振る舞いと思考回路」
会社から頼りにされる営業マンになるためには、ただガムシャラに飛び込み営業をすれば良いわけではありません。社内で高く評価されるには、以下の「振る舞いと思考回路」を身につける必要があります。
1)会社全体の方針やコンプライアンスを遵守する(事例:湖池屋・やおきん)
営業マンは、会社から「営業」という看板を背負い、給与をいただいています。したがって、会社の全体方針や指針を無視した独断の営業活動は絶対に避けなければなりません。
例えば、スナック菓子大手の「湖池屋」では、企業行動憲章の中に「法令遵守」を掲げています。もし、取引先の商談に遅れそうだからと、湖池屋の看板を背負った営業車で法定速度を大幅に超えて爆走していたらどうでしょう。「あの会社の車は危ない」と周囲に思われ、企業の品格を落としてしまいます。遅刻しそうなら、余裕を持ったスケジューリングを心がけるのが本筋です。

2)余談:なぜ食品メーカーの営業車は派手なもの・目立つものが多いのか?
「うまい棒」でおなじみのスナック菓子メーカー「やおきん」などの営業車は、誰もが一目でわかる派手なデザインになっています。これは広告宣伝の意味もありますが、同時に「世間からの注視を営業マンに意識させ、ブランドの品格を落とさない行動を促す」という経営陣の意図も込められていると言えます。

3)戦略と戦術の違いを理解し、マーケティング方針を踏まえて動く
大なり小なり、どの食品・飲料メーカーにも「営業戦略」や「マーケティング戦略」が存在します。優秀な営業マンは、これらを念頭に置いて日々の営業活動に取り組みます。ここで重要なのが、「戦略」と「戦術」の違いを理解することです。
・戦略(方向性): 富士山の頂上から、どちらの方向に大きな石を落とすかを決めること。
・戦術(具体的な手段): 転がっている石を棒でつつき、軌道を微調整すること。
先ほどの湖池屋の例で言えば、企業理念には「独自のブランド戦略のもとに、ロングセラー商品を育成していく(カラムーチョやスコーンなど)」というのが書いてあります。誤解を恐れずに言うなれば、これが冨士山の頂上であり「戦略」です。 これに対し、「イオンにはこうやって提案しよう」「イトーヨーカ堂にはこのPOPを使って売ろう」と日々現場で試行錯誤することが「戦術」に当たります。

会社の大きな「戦略」を理解した上で、目の前の現場で最適な「戦術」を実行できる営業マンこそが、社内で最も高く評価されるのです。
第3章 【実践編】小売店・問屋・商談における具体的な仕事内容
第2章までで解説した「営業マンとしてのマインドセット(会社の戦略の理解とコンプライアンス)」が整ったら、いよいよ現場での実践です。
食品・飲料メーカーの営業の仕事内容は、大きく分けて「小売店でのルート営業」「問屋(卸売業)との関係構築」「本部バイヤーとの商談」の3つに分類されます。それぞれの現場で「何をするのか(戦術)」の全体像をつかみましょう。
1)小売店(スーパー等)でのルート営業・店回りのコツ
消費者が実際に商品を手にする最前線が、食品スーパーやドラッグストアなどの「小売店」です。ここでの主な仕事内容は、店舗を定期的に訪問する「店回り(店舗巡回)」です。
ただ店舗に行って頭を下げるだけではありません。自社の商品がお客様の目に留まりやすくなるように棚の最前面に出す「フェイス管理」や、魅力的な「POPの設置」、そして販売ロスを防ぐための「商品補充(品出し)と発注支援」を行います。
現場の売場担当者に寄り添い、本部の意向や他店の成功事例をフィードバックすることで、「この営業マンは役に立つ!」と高く評価されるようになります。
⇒小売店での具体的な動き方、仕事の仕方、接触の仕方、訪問のルール、本部商談や営業訪問時の持ち物、絶対に入ってはいけない入口などのルールについては、以下の詳細記事を必ず、ご覧ください。
(【完全版】食品メーカー営業の仕事内容とは?小売店(スーパー)でのルート営業と商談のコツ)
2)卸売業(問屋)の営業マンを攻略するコミュニケーション術
食品業界特有の仕組みとして、メーカーと小売店の間には必ず「問屋(卸売業者)」が存在します。実は、小売店の店頭にどこのメーカーの商品を並べるか、実質的な提案権を持っているのは「問屋の営業マン」なのです。無論、末端の小売企業との力関係が影響しますので、全てとは言いませんが・・。
そういうわけで、問屋の仕入れ担当者との商談だけでなく、問屋の営業マン全員に顔と名前を覚えてもらうための「朝夕のコミュニケーション」が売上を左右するカギとなります。問屋の営業マンと信頼関係を築き、「同行営業」の協力を得ることができれば、あなたの営業成績は爆発的に伸びていきます。
⇒問屋(卸)特有のルールや、小売店に勝手に価格を提示してはいけない理由などについては、以下の詳細記事を必ず、ご覧ください。
(【食品メーカー営業必見】問屋(卸売)攻略のコツ!ルート営業の仕事内容と同行営業で売上を作る方法)
3)本部バイヤーの心をつかむ「雑談9割」の商談術
小売店や問屋での泥臭い活動が実を結ぶと、いよいよスーパーやドラッグストアの本部バイヤーとの商談の機会が巡ってきます。
バイヤー商談と聞くと、「一生懸命に商品の魅力や価格の安さをプレゼンしなければ!」と意気込んでしまいがちですが、それは間違いです。毎日何十人もの営業マンから提案を受けているバイヤーにとって、真面目な商品説明だけでは記憶に残りません。
行動心理学の観点からも、商談を成功させる最大のコツは「雑談9割・本題1割」の法則で、バイヤーにとって居心地の良い関係性を構築することにあります。
▼バイヤーの愚痴の聞き方から、具体的なトークの事例までは、以下の詳細記事で詳しく解説しています。
(【食品メーカー営業必見】バイヤー商談のコツは「雑談9割」!きつい営業をやりがいに変える心理学メソッド)
第4章 【Q&A】食品メーカー営業のよくある疑問
最後に、食品・菓子メーカーの営業職を目指す方や、現場で悩みを抱える営業マンが検索しがちな「仕事内容」や「キャリア」に関する疑問に、食品メーカーに勤めていた筆者がお答えします。
Q. 食品メーカー営業の「1日の流れ」はどのようなイメージですか?
A. 担当エリアによっても異なりますが、基本的には「午前中に問屋(卸)へ訪問して営業マンに挨拶・情報提供」を行い、「日中は担当する小売店(スーパー等)の店回りをして、フェイス管理や品出し作業」を実施します。そして「夕方に帰社(または問屋へ再訪問)し、発注処理や翌日の商談資料を作成する」というのが、ルート営業のオーソドックスな1日の流れです。
Q. 営業活動で「きつい」「辞めたい」と感じた時の乗り越え方は?
A. 「きつい」と感じる原因の多くは、ただ数字を追って「売り込み」ばかりをしているため、相手から冷たくあしらわれてしまうことにあります。本記事や詳細記事で解説したように、営業の本当の役割は「相手の課題解決と関係性構築」です。現場の担当者の負担を減らす手伝いをしたり、バイヤーの愚痴を聞いてあげたりと、「売る」ことから「貢献する」ことに意識をシフトさせると、取引先から感謝されるようになり、一気に仕事が楽しくなります。
Q. 未経験から食品メーカーの営業に転職する際の強みは何ですか?
A. 食品営業は「話す力」よりも「聴く力」がものを言う世界です。前職で接客業や事務職などを経験しており、「相手が今何を求めているか(忙しそうだから手短に話そう、など)」を察知するスキルがあれば、未経験でも非常に強力な武器になります。志望動機には、「消費者に身近な食品を通じて、小売店や問屋をサポートし、売上向上に貢献したい」という姿勢をアピールすると良いでしょう。
Q. 食品メーカー営業マンとしての「キャリアプラン」はどう描けばいいですか?
A. まずは担当エリアの「ルート営業」で現場(小売店と問屋)の仕組みを徹底的に理解します。そこで「あいつは現場を知っているし、役に立つ」という評価を得たら、次はチェーンストアの本部を担当する「本部商談(キーアカウント営業)」へとステップアップします。最終的には、会社の売上を左右する「重要取引先」を任せられる人材になることが、社内での出世や、将来的なヘッドハンティングにも繋がる最強のキャリアプランです。
Q. 営業の「モチベーション」を保つコツを教えてください。
A. 「自分が提案して陳列を工夫した商品が、実際にスーパーの店頭でお客様(消費者)のカゴに入る瞬間を見ること」です。自分が関わった商品が世の中の人を笑顔にしているとダイレクトに実感できるのは、食品メーカー営業ならではの最大の魅力であり、何よりのモチベーションアップに繋がります。
初稿:2013年1月9日、加筆修正:2022年5月11日、2025年3月28日、2025年4月7日、2026年3月12日
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久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。
講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。
2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。
近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。
主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。













