顧客内シェアの高め方(手段)と事例

目次

1.飲食店や食品メーカー等の顧客内シェアとは
2.飲食店や食品メーカー等の顧客内シェアの高め方
 STEP① 顧客内シェアを高めたいモノ•コトの設定
 STEP② シェアを高めたいターゲットの適切性の確認と設定
 STEP③ リピートしてくれる準備
 STEP④ 集客策の実施(見込客の獲得策)
 STEP⑤ 販促策の実施(新規客の獲得)
 STEP⑥ 効果測定と改善案
 STEP⑦ 顧客内シェアを高める勘所の『繋ぎ』

1.飲食店や食品メーカー等の顧客内シェアとは

個々の御客様にとって、自店の存在感が、どれほど大きいかのモノサシと言えます。商品の存在感や、サービスの存在感等、置き換えることも可能です。

特定の商品やサービスを、顧客が購入(購買)してきた累積の額や、頻度でも表すことができます。

例えば、中華料理屋で固定客が居るとします。その固定客が、年間あたり10,000円を自店で出費していて、他の中華料理店で40,000円出費していた場合、以下の式で、シェアを算出します。

10,000円 ÷ 50,000円 = 顧客内シェア 20%

あるいは頻度で、それぞれ、1回、4回であれば、以下のようになります。

1回 ÷ 5回 = 顧客内シェア20%

一般的に、新規客を獲得するコストや労力よりも、既存顧客に何度も利用してもらうように仕向ける方が、低コストで楽だと言われています。それは、皆さんも実感できることでしょう。つまり、来店頻度を上げてもらい、より購入してもらうよう努力するのです。

その管理指標でもあり、実際の顧客を獲得する手段が顧客内シェアと言われるものです。では、実際に、顧客内シェアを高めることで、必要な売上を獲得する手順について、説明していきます。

2.飲食店や食品メーカー等の顧客内シェアの高め方

STEP① 顧客内シェアを高めたいモノ•コトの設定

顧客内シェアを高めていきたいモノ•コトを決めていきましょう。切り口は、特定のお店、商品、サービスがオススメです。

会社全体の商品やサービス、全店となると、膨大な予算をかけた集客策や販促策が必要になりますから、現実的では、ありません。

ですから、
•うちの主力商品(メニュー)はこれ!
•うちの主力サービスメニューはこちら!
•私のお店!

このように、1つ、1点、1個、1店といった単位で、捉えるようにします。

余談ですが、これから売り出していきたい商品やサービス、お店を選択していくのも良いでしょう。

ここで事例を紹介します。

支援事例にある『まるさ商店』です。

まるさ商店では、お店の集客に苦戦していました。地域のミニスーパーをひと回り大きくしたような店格で、昔ながらの馴染み客が高齢化していること、さらには、近隣にマックスバリューやイトクといった量販店が、後発で出店してきたため、地域の昔ながらの顧客が奪われていきます。

特に、単身の高齢者や単身の若いサラリーマンの減少が著しかったのです。マックスバリュー等の量販店は、惣菜やお弁当が豊富で、また個食のグロッサリーが豊富なため、そこも背景にあったと思います。

また、2人以上世帯においても、やはり減少は見られ、低価格攻勢をかけられて、それが理由のように、肌身に感じていたところです。

いずれにしても、このような課題がありましたので、
取り組みとしては、『お店そのもの』を『顧客内シェアを高めたいコト』に設定したのです。

STEP② シェアを高めたいターゲットの適切性の確認と設定

次は、顧客内シェアを高めたいターゲットを明確にします。その際、一方的に決めるのではなく、自社や自店、商品やサービスの『お客様にとっての存在価値』を確認しつつ、慎重にターゲットを見定めます。

シェアを高めたいターゲットにとって、その商品やサービス、お店等が、『無くてはならない存在』になっていなかったり、『無くてはならない存在』に育めないようでは、どんな集客や販促策も、これらのターゲットには、響きません。

1度は、集客策や販促策が、上手くいっても、『無くてはならない存在』と思えなければ、リピートしてくれないからですね。

リピートしてくれなければ、顧客内のシェアは伸びませんので、この取り組みは意味が無いものです。

従って、ターゲットを設定する際は、自社や自店、商品やサービスの存在価値を、しっかりと検討しつつ進めてみてくださいね。

商品やサービスの存在価値とは・見つけ方

まるさ商店を事例に紹介します。
同店は、これまで立地する地域の方々に支えられて、生存してきたお店です。

一方、マックスバリュー等は、広大な駐車場を完備するなど、比較的、広域商圏で商売をしています。

そこで同店は、ターゲットを地域で、かつ車で10分程度迄に絞ることにしたのです。ここまでは、ある意味、一方的です。

ここで、ターゲット設定の適切性がポイントになります。つまり、存在価値の確認です。お店が『無くてはならない存在』理由が、これらのターゲットに響くのかを確認するのです。

同店の来店客の減少は、明らかに、この商圏の馴染み客でした。ポイントカード等、確認する方法は多岐に渡りますが、顔見知りのお客様が沢山いますので、その方々が最近、来ないといった事実からも、わかります。実際、マックスバリュー等の惣菜売場を偵察に行った際などに、これらの顔見知り客と出逢うくらいですから、明確です。

さて、価値の確認とは、なぜ来なくなったかを考え、目星をつけ、それを改善していくことです。

極端に言えば、価値が無くなったから来ないか、価値が奪われた方が高いから、いずれかです。

従って、同店は、量販店の惣菜売場にやってくる(昔の馴染み)単身の高齢者や単身のサラリーマンの購買行動に着眼します。

それは、個食の量、種類の多さ等です。これを改善することで、自店の価値を以下のように、決めたのです。

「地域で1番、地域の方が買い物しやすいお店」

STEP③ リピートしてくれる準備

顧客内シェアを高めていきたいモノ•コト、顧客内シェアを高めたいターゲット、を決めてきました。

次は、これから実施する集客や販促策で、ターゲットが来店や購買してくれた後、継続的に購買してくださるように、準備していきます。

先にも紹介しましたが、顧客内シェアを高める最大のポイントは、何度も買ってくれるか、何回も来店してくれるか、沢山買ってくれるか等にあります。つまり再来店や、最購買に、繋がらないと実現できないのです。

従って、また買いたくなる、また来たくなる、沢山買いたくなる仕掛けやシズルの準備が必要になるわけですね。

その準備は、何をしたら良いのか、ですが、それは、先に紹介した存在価値を具現化することを指します。

まるさ商店では『地域で1番、地域の方が買い物しやすいお店』と設定していますので、以下のような取り組みを行い、具現化していきました。一部、紹介します。
→個食の量の多様化
→個食惣菜の種類の充実
顧客層で1番多い高齢者のために
→棚の高さを低くする
→突き出し什器の廃止

STEP④ 集客策の実施(見込客の獲得策)

顧客内シェアを高めたいモノ•コトの準備ができましたら、いよいよ、集客策にとりかかります。

ここであえて、販促策と書かないのは、この段階では、集客策にとどめて欲しいからです。

集客策は、見込客を獲得すること、販促策は、見込客の中から新規客を獲得すること、このように明確に異なりますから、注意が必要です。

詳しくは、こちらで集客策と販促策の違いを説明しています。事例とともに、ご覧いただけます。

さて、顧客内シェアを高めていくということは、そのターゲットとの信頼関係を、どう構築していくか、ということになります。

そのため、最初の接触や、関係性の構築の間は、あまり『売り気』を見せない方が、事が上手く運びます。

人は、唐突に売り込まれると、心理的に『売り込まれる』という防御反応が生まれます。そうなってしまうと、ターゲットとの関係性を構築したいのに、出鼻を挫かれることにも、なりかねません。充分に注意しましょう。

まるさ商店では、下記画像のように、お手紙のような新聞折り込みチラシを、地域商圏の全世帯に実施しました。ご覧いただくと、理解できるとおり、『売り気』が無く、あくまでもお店のこれまでや、お客様との関係を、どうしていきたいのか、等、情に働き掛ける工夫をしています。

顧客内シェアを高めるポイントは、この情にあります。コモディティ化が進展する中にあっては、長く関係性を構築する『顧客への働きかけ』で、1番差別化できるのは、心理的な働きかけになります。

STEP⑤ 販促策の実施(新規客の獲得)

集客策の後、ようやく販促策に駒を進めていきます。
集客策で見込客を獲得していれば、次は、この方々に『この機会に買ってみよう!』『この機会にためしてみよう!』と、どうすれば、思っていただけるかの策を練ります。

見込客獲得の集客策では、ターゲットの心理的な壁は、かなり低くなっていますから、少々のこちらの『売り気』も許容されることでしょう。

さて販促策ですが、一般的な価格販促や割引クーポン等もOKです。『この機会に!』と思っていただけるには。しかし、他にもアイデア次第ですね。自分自身が逆の立場で、考えてみると良いですね。『この機会に!』と、どうすれば思えるのかを。

まるさ商店では、下記画像のような新聞折り込みチラシを地域商圏の世帯に実施しました。

先の集客策と違い、ちゃんと商品説明や価格が明示されていますね。また、この時だけ、この量だけのような希少性、限定性もあり、『この機会に!』という誘発もありそうです。

何より、オススメのポイントが、感情を交えながら明示されており、集客策の時と同様に、情が働きかけられており、好感が持てます。

STEP⑥ 効果測定と改善案

以上のステップが一巡したら、必ず効果を確認しましょう。

顧客内シェアが拡大しているかどうかの確認は、主に次のような指標で確認していきます。

•個者の特定商品やサービスの利用頻度
•個者の来店頻度
•個者の特定商品やサービスの累積利用額
• 個者の特定商品やサービスの客単価

他にも確認する方法はありますが、よく使われているのが、上記になります。

ちゃんと顧客内シェアは高まっているのか、を適時確認するようにしましょう。

もし、前回の取り組みの一巡を、二巡目の数字が上回っていなければ、改善が必要だと言うことです。既述のステップ1、2を重点的に見直すようにしましょう。

余談ですが、商品毎やサービス毎の売上等を追うのは意味がありません。あくまで顧客内シェアですから、顧客毎の個人、個者を基準に考えていくことがポイントです。

まるさ商店の場合、来店頻度の向上、客単価が劇的に上書きで更新されています。

STEP⑦ 顧客内シェアを高める勘所の『繋ぎ』

顧客内シェアを高めていくための、大まかな論点を、これまで紹介してきました。後は、これに『繋ぎ』ステップを組み合わせて、よりシェアを高めることが叶います。

繋ぎとは、ターゲットとする顧客の、記憶に残るアクションを指します。
SNSでターゲット顧客と繋がっていれば、コメントを残したり、メッセージを入れたり、あるいは、記憶に残る画像やイラスト、投稿内容を心がけます。

例えば、まるさ商店の場合、先の集客策のように、定期的に、お手紙のようなチラシを新聞に折り込みしてもらいます。

ポイントは、売り気の無い、お礼や感謝のような内容にして、感情と記憶に働きかけることです。

そうすることで、販促策を打った際の、来店や購買の効果が高まることが、わかっています。

==お知らせ==

食品メーカー(加工食品製造業)や飲食業(飲食店)に実践し、成果を挙げている「集客や販促策」「販路開拓」「マーケティング」について、他の記事も併せて、御覧ください。

食品メーカー(加工食品製造業)や飲食業(飲食店)に実践し、成果を挙げている「商品開発」や「メニュー開発」について、他の記事も併せて御覧ください。

必要な売上獲得や集客実現の近道になるはずです。

久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。

講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。

2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。

近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。

主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。

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