飲食店や食品スーパー、洋菓子店や和菓子店、豆腐屋や八百屋等の食料品小売店の方々の支援の現場で、意外と多い「在庫管理」の助言。
そこで今回は、その要点のみ整理して提示しますので、御利用ください。
目次
1.在庫管理の必要性
2.在庫管理の勘所
3.適正な発注数(量)を求める方法
4.日々の増減を確認する
5.販売予想数(量)を検討する
6.適正な在庫数(量)を求める
7.適正な発注数(量)を実際に算出してみよう
8.決まった手順で発注する
9.決まったタイミングで発注する
10.棚卸は必ず実施
11.棚卸の方法
12.帳簿上と実際の棚卸高の差異の確認
1.在庫管理の必要性
飲食店や食料品小売店等の現場で、在庫管理の必要性は、様々な理由で語られますが、当事務所としては、主に以下の論点から必要だと考えています。
・食料品小売店における過剰な在庫は、売れるまで仕入れコストとして回収できないということです。
・飲食店の場合、食材ロスは、コスト上昇で利益を削ることになります。
・「売れないかも?」を意識しすぎると、旬の商材の仕入れをケチるなど、お店の品揃えやメニューの魅力が失われます。
・品揃えやメニューを渋ると、買いたいお客様が来店しても、販売出来ないことになり、機会ロスになります。
2.在庫管理の勘所
在庫管理の勘所は、「売上を逃さ無い程度に」「ロスを出さない程度に」「適切なタイミングで」必要量を発注することです。
3.適正な発注数(量)を求める方法
まずは、どのように求めるのかの概念を頭に入れておく必要があります。算出式は次のとおりです。
発注数(量):仕入れ数(量)=適正な在庫数(量)ー現在の在庫数(量)ー既に発注済みの数(量)
算出式の中の「現在の在庫数(量)」と「既に発注済みの数(量)」は、日々管理していく中で「既に知っている(把握している)」数字です。ですから、「適正な在庫数(量)」を知らなければ、発注数(量)を決めることが出来ないことを認識しておくことが重要です。
4.日々の増減を確認する
日々、仕入れ数(入庫個数)、出庫個数、在庫数を確認し記載するようにしましょう。
飲食店や食料品小売業は、賞味や消費期限がある在庫を持つことになります。この期限のチェックも忘れないで行います。概念的な雛形を上記画像のように用意しました。こちらを参考にチェックするようにしてください。仕入れ数から在庫数を引けば、どのぐらいお客様に販売したか(消費したか)が一目瞭然になります。
5.販売予想数(量)を検討する
「日々の増減を確認」し、どのくらい販売できそうか(消費しそうか)の予想を立てる癖をつけていきます。その際、予約販売状況や気温や天気、曜日、月々の季節変動、イベントなども加味して予測するようにします。おおよその販売数の予測が出来たら、「適正な在庫数(量)」を求めることができるようになります。当事務所では、エクセルで管理できるツールを用意しています。支援の現場で当初のスタッフにお声掛けいただければ、使い方とともに御案内いたします。
6.適正な在庫数(量)を求める
具体的には次のステップを踏むと「適正な在庫数(量)」がわかります。
⇒ステップ1 過去の実績から1日分の使用量を出す
季節変動が少ない店であれば、一定期間(3ヶ月以上)の平均値で充分です。季節変動が大きい店では、昨年同月の数値を使います。
⇒ステップ2 発注から納品までの所要日数
何日分の発注をまとめて行うか、発注の間隔です。仕入れ先からの納品期間(発注後納品されるまでの日数や時間)も含めて考えます。
⇒ステップ3 適正な在庫数(量)
ステップ①にステップ②をかけた分の20%程度で考えると良いです。
例)玉ねぎ 1日使用量 3kg 4日分の発注を行う場合。
3kg×4×20%=2.4kg
12kg+2.4kg=14.4kg 適正在庫量14.4kg
なお、管理が慣れてきたら、ブレが少ない正確な予測ができるようになりますので、その場合は10%などに設定を変更していくことが理想です。
7.適正な発注数(量)を実際に算出してみよう
⑥で適正な在庫数を算出できるようになりました。③と④で「現在の在庫数(量)」「既に発注済みの数(量)」が管理できるようになったはずです。あとは、②の算出式に導入するだけです。
8.決まった手順で発注する
発注においては「決まった手順」が大切です。決まった手順とは「発注の際に使用するツールが変わらない」ということです。事前に仕入先と同意した発注の仕方を継続する必要があります。常々FAXですが、稀に電話で発注、常々メールで発注だが稀に電話で発注といった具合では納品ミスを誘発するだけです。
9.決まったタイミングで発注する
発注ミスを防ぐため、決まった時間に決めた手順で発注するようにします。 決まった時間とは、1日の営業時間内で(1週間の営業日で)1番効率が良い時間を探すことです。概ね、営業終了後か営業終了間近(休業日の前日)になることが多いです。仕入先の営業時間内(営業日内)に発注できるかも重要です。この2つの視点で、発注する時間を決めるようにします。
10.棚卸は必ず実施
在庫管理の原則ですが、定期的に棚卸を実施してください。月1回は棚卸を行いたいところです。在庫数の確認はもちろんですが、品質も同時に確認しましょう。棚卸は一般的に、月末の締めのタイミングで行います。これが可能になると、月次の損益計算、売上原価の計算が出来るようになります。
11.棚卸の方法
⇒棚卸表を準備する
・チェックする商品名や材料名等は先に記載して印刷しておくと漏れがありません
⇒数量を調べて記入する
⇒商品や材料それぞれの単価から金額を計算し、売上原価を確認
可能であれば、働いている方々全員で取り組むことがポイントです。作業に携わることで「在庫=お金」の認識が生まれ、ロスを減らすことができます。
12.帳簿上と実際の棚卸高の差異の確認
帳簿上とのズレがあれば原因究明をしてください。とくに、帳簿上の在庫と棚卸の結果(=実在庫)が0.5%以上ずれていたら危険な状況です。思わぬところで「お金が減っている」と考えてください。以下は飲食店を例に、差異の原因で「よくある」ものになります。
・発注量と入荷された量が違う
・廃棄した食材を帳簿に書いていない
・従業員による不正(食材の持ち帰りや大量の味見)
・オーダーミスや調理ミスが多い
・規定量以上で商品が提供されている(オーバーポーション)
・盗難被害
・棚卸時のカウントミス
以上のように、棚卸高や在庫数を確認したら、月初の「現在の在庫数」に反映させてください。
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久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)
加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。
講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。
2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。
近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。
主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。