損失回避性(損害回避傾向)を活用した飲食や食料品製造事業者の集客や販促の方法

大手の飲食チェーンや、食品メーカーでは、理解が進んでいて、集客や販促策に利用される概念の1つ「損害回避傾向」(損失回避性)。
小規模な飲食店や食料品製造業(食品メーカー)での利用は、少ないように感じます。

非常に有効な場面も多いので、今回は、このあたりを取り上げます。

目次
1.損失回避性(損害回避傾向)とは
2.損失回避性を利用した集客や販促策の考え方
3.損失回避性(損害回避性)を利用した集客や販促の手順
ステップ① 事象に対して損となることを洗い出す
ステップ② 損となることが損とならない方法(得になる)を検討する
ステップ③ 損とならない方法をプロモーションメッセージ等に組み立てる

1.損失回避性(損失回避傾向)とは

「損害回避傾向」と言われるこの概念、精神医学の分野で広く研究されてきました。

人は意思決定の際、得を取るか、損しないか、この2つの思考が、頭の片隅で作用するものです。
購買等の場面も「意志決定」ですから、同じく影響してきます。

その意志決定の際、「利潤を得ることよりも、損しないように」という気持ちが大きく行動に影響するというものが損害回避傾向と言われるものです。

この概念が行動経済学の分野に利用されたのは、ノーベル経済学賞を受賞したカーネマン等で、彼らは「プロスペクト理論」というものを提唱しています。

2.損失回避性を利用した集客や販促策の考え方

例えば、飲食店に「はじめて」来店したお客様が注文に悩む際、店内やメニュー表に「店主おススメ」と書いてあるものを、安易に選びます。この心理は、記号消費(⇒記号消費の考えはこちらをクリック)という概念も効いているのですが、背景の心理としては、「おススメだから、他のものを注文してチャレンジするよりは、間違いないだろう(損しないだろう)」というものです。

このように、消費者に選択肢を用意して、意図的に「損をしないように!」と思わせれるように仕向けることが、集客や販促策で有効に活用するためのコツになります。

3.損失回避性(損害回避性)を利用した集客や販促の手順

それでは実際に、この仕組みを取り入れた集客や販促策の起案の手順を説明していきます。

ステップ① 事象に対して損となることを洗い出す

まずは、売りたい商品や製品、サービス等について、損となることを洗い出していきます。例えば、イチゴを使った洋菓子を売り出したいと考えている場合、次のようなことが損になるのでは無いかと考えます。ここでは事例ですから、2つしか明示していませんが、この要領で、多面的に掘り下げ、洗い出して列挙していきます。

事例①
 :苺の旬は3月頃から4月上旬のため、3月の販売時は、同社のイチゴの洋菓子は、1番美味しい季節。 つまり、3月頃から4月上旬以外のイチゴの洋菓子の  購入は、美味しい時期に比べると、損である。
事例②
 :苺の旬は3月頃から4月上旬のため、3月の販売時は、苺の仕入れが1番安い。同社のイチゴの洋菓子は原価で20円の範囲で原材料で使えるだけ使っているので、1番苺の量が多いのは、3月頃から4月上旬。つまり購入は、3月頃から4月上旬以外は、損である。

ステップ② 損となることが損とならない方法(得になる)を検討する
 ステップ①で洗い出した「損」になる情報を使い、損とならない方法を検討する。

事例①
 :苺の旬は3月頃から4月上旬のため、イチゴの洋菓子の購入は、美味しい時期で、得である。
事例②
 :苺の旬は3月頃から4月上旬のため、イチゴの洋菓子はの購入は、1番苺の量が多いため、得である。 

ステップ③ 損とならない方法をプロモーションメッセージ等に組み立てる
 ステップ②で決めた「お得」情報を踏まえ、プロモーションメッセージに表現を変える。その上で、広告効果の高そうなものを選抜する。今回の事例では、②を採用することとしました。

事例①
 :3月限定販売「イチゴの洋菓子」 旬の苺を美味しく仕上げました。
事例②
 :3月のみ「苺」増量! 「イチゴの洋菓子」 

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久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。

講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。

2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。

近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。

主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。

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