起業は「事業ポジション」が重要。移動系と立地系、複合型で成否が決まる

先日の起業相談のやりとりから1つ紹介します。起業の際には主に2つの切り口が必要だと考えます。

■立地系

 製造(またはサービス提供の場)と販売が一体のビジネス

■移動系

 製造と販売が切り離して行えるビジネス

立地系としては、居酒屋、カフェ、中華料理、イタリアン、フレンチ、大衆食堂など飲食店が、わかりやすいでしょう。移動系は、セラピスト、種々の出張施術、ケータリング、農業者等々がわかりやすいです。

 立地系の起業の場合、なかなか「その場」を離れることができません。ここがポイントです。例えば飲食店の場合、御店があることが前提ですから、その場を離れると、来店したお客様に料理を提供できなくなってしまいます。

 一方、移動系は受益者から依頼があって、その受益者の下に商品やサービスを届けます。例えば、ケータリングは事前注文を受けておいて、要望の日時に届けるのです。農業者においても、栽培は畑ですが、イベントに出店して販売したり、帳合や個人宅に郵送したり、つまり、製造と販売が切り離して行うこともできます。

 さて、先ほど紹介したポイントの話に戻ります。立地系の場合、どんなに儲かっていなくても、「その場」を離れるわけにいきません。例えば、年間の損益分岐点売上が700万円に対して、400万円の進捗においても、300万円を補填するために、その場を離れ、アルバイトやパートで埋め合わせる。それも叶いません(営業時間外は可能)。

 一方、移動系の場合は、時間管理を上手に行えば、製造、販売の時間以外は、どこに移動しようが、どのように時間を使おうが、御客様には見えません。

 さて、起業1年未満の農業者の御相談で整理したものが下表の収支表です。

 結局のところ、事業が軌道にのっていないため、単月では131,000円の赤字です。お子様がいらっしゃる家庭ですので、生活費も相応に必要で、生活費300,000円とすると、169,000円が赤字です。

 しかしながら、この農業者、深夜を中心に パートで120,000円稼いでいます。生活費のためには、残49,000円必要との計算になります。

 私が紹介したいのは、移動系の起業を考えられる方々の、起業における事業ポジションです。私が俯瞰している限りでは、例えば農業者では、専業農家ポジションの起業は、生計を維持するのが厳しく
就農系の補助金終了が 事業撤退の切れ目と言う方も多々。


 一方、兼業農家ポジションの起業は、他に収入手段を持つため、何とか生計を維持でき、継続して頑張っていくことができます。

 移動系の起業をするにあたっては、自分は○○という事業を行っています!という確固たる信念と、
とはいえ、生計維持のために、別途アルバイトで収入を得ることも已む無しという柔軟な考えが必要だと言いたいのです。

 つまり、この考え方が「起業における事業ポジション」と言います。

 さて、副業で収入を得るために大事なことは、本業に活かせるということです。つまり、本業へのシナジーです。

 先の農家さんは、食品スーパーにパートで務めています。店長との関係性が良く、ご自身の野菜を「地場野菜コーナー」に置いてもらうことが叶いました。また、日々御客様と接する中で、「どのような嗜好の野菜が好まれるか?」等々、マーケティングに役立つ情報収集も実現しています。

久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。

講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。

2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。

近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。

主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。

売上を伸ばすことで
1)根本的な経営改善をしたい
2)資金繰りを改善したい
3)知恵やスキルを身につけたい

そのようにお考えの方は、
是非、お気軽にお問い合わせください。

※メールは24h受け付けています。

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