脱6次産業志向から6次産業化に取組む農業者の稼ぎ方を説明(儲かる理由とは)

目次
1.6次産業化とは
2.農業者の6次産業化の取組は儲からない(稼げない)
3.6次産業化の成功の秘訣は

1.6次産業化とは

 6次産業化とは、1次産業の農林漁業と、2次産業としての製造業、3次産業としての小売業やサービス業、これら3つの産業の事業との総合的かつ一元的な推進を図ることで、農山漁村の豊かな地域資源を活用した新たな付加価値を生み出す取組を指します。1、2,3という数字を掛け算して回答が「6」であることから6次産業という言葉を使います。これにより、農山漁村の所得向上や雇用の確保を目指すと農林水産省のホームページでは書いています。

シンプルべジ サラダに美味しい春菊

2.農業者の6次産業化の取組は儲からない(稼げない)

 私自身の農業経験と、支援先の農家や農業者の現場支援の実情を踏まえると、6次産業は「後回し」に考えるべきだと思います。

 例えば イチゴ農家がイチゴジャムを製造する場合で考えてみましょう。理由は種々あるのですが、コスト面でも説明できます。まずは下グラフの左側の囲いの部分をしっかり眺めてみてください。

6次産業化における農業経営者のコスト構造

 1番左は、イチゴ農家がイチゴを栽培し販売するまでの主なコスト図です。その右隣りは、イチゴ農家がイチゴを栽培した後、加工品を製造し販売するまでのコスト図です。

 商慣行的に、生のイチゴであれ、加工品のイチゴジャムであれ、せいぜい最大の利益率は30%も取れれば良いところでしょう。
つまり、
→生のイチゴを栽培し利幅30%
→イチゴジャムを製造しても利幅30%

 そう、労力と手間と時間だけが掛かるのが6次産業です。変わるのは、額ということにはなりますが。
自動車や戸建て住宅、家電では無く、食料品ですので、そのあたりの留意は必要です。つまり、冷蔵庫1台の売上が10万円、300円のイチゴジャムを10万円販売しようと思うと、334個以上を売り上げないと実現できないという感覚です。

 つまり、加工食品や農作物は単価が安いので、単価の高い自動車や冷蔵庫より、稼ぐための労力が低い(効率が悪い)側面は否めないのです。

 以上のことから、同じ利益率30%を確保することを考えれば、「一般的な農作物の場合は、生で出来たものから順に出荷する方が、1番効率的に儲かる(稼げる)」のです。これは 当方の支援先でも実証済みですし、我がシンプルべジにおいても 実証、実感するところです。

3.6次産業化の成功の秘訣は

 上記グラフの右は、大手製造事業者のコスト構造にも似ています。どこか大手のジャム製造会社をイメージしてご覧になると想像しやすいでしょう。

 市場より、イチゴを安く買い付けますので、農家や農業者にあたるところの「生のイチゴの栽培販売」までのコストと比べると大きく水をあけられます。さらに、量産で製造時の種々のコストが低減可能ですから、これまた、農家の加工コストに、大きく差をつけることになります。

「いやいや、うちのイチゴは 無農薬だから・・その辺の大手のイチゴジャムより値段か高くなっても、大丈夫・・」

 このようなことを口にする農業経営者が多いですが、果たしてそうでしょうか。よくマーケットを調べてみてください。無農薬の「大手が製造するジャム」は、今時いくらでも存在します。

以上、なんだか、ダラダラと書きましたが、6次産業という言葉に踊らされないでください。

 まずは、農作物をそのまま販売できるよう、農作物そのものを商品開発してみてください。例えばシンプルべジでは春菊を栽培出荷していますが、「サラダに美味しい春菊」として商品化できています。つまり、栽培方法を工夫することで、農作物そのものを商品開発することも可能なのです。
(⇒詳しくは こちらの記事で農作物の商品開発について紹介しています)

 例えば、チャネルを工夫することも良いでしょう。御自身の農作物が、どのチャネルで受け入れられやすいかを本気で考えたことがありますか。マルシェ、道の駅、料理教室・・挙げれば切りがありません。このように「どのチャネルに受け入れられるか」を考えて、イベント等を主催したり、飲食店等と協業でイベントを開催したりすることも、立派な6次産業という言葉の範疇です。

 肝心なことは、6次産業ありきで「加工食品にしょう!」といった発想にならないことです。

・どのような料理に利用されたいのか?
・どのようなシーンで食べてほしいのか?
・どのような人物像に食べて欲しいのか?

 最低でも上記の3つを念頭に決め、その方々に伝える手段として、加工が必要であれば加工すべきですし、イベントが必要であれば実施すべきでしょう。生のままで出荷が可能であれば、そのままが1番、手間も労力も掛からず粗利30%確保可能なのです。

 上記の3つのようなことは、常々商売の中で、検討しておくことをおススメします。具体的には、存在価値を発見したり、見つけることです。(⇒存在価値の見つけ方は、こちらの記事で詳細に説明しています)

 さて、よほど栽培しすぎて、余剰やロスが出そうといったこともあるでしょう。そのような場合に加工食品にしようと思うのであれば、内製化は、まず考えずに、スポットで外注で実現しましょう。小規模事業者には小規模事業者の商品開発の手順があります。その手順も紹介していますので御利用ください(⇒こちらの記事)

4.さいごに

 農家は農作物の栽培の専門性で勝負すべきです。加工は加工で、得意な小規模事業者がいくらでも居ます。頼んじゃいましょう。

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久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。

講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。

2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。

近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。

主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。

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