御土産や特産品の商品開発の方向性の決め方と要点

地方の支援現場で多い案件の1つ「御土産や特産品の開発」の手順や方法について、説明していきたいと思います。

目次
1.御土産や特産品が売れる背景の7つの要点(ポイント)
2.特に重要な必然性と価格決定の方向性と方法
3.具体的な御土産や特産品の商品開発の手順や方法

1.御土産や特産品が売れる背景の7つの要点(ポイント)

・必然性がある

その地域で、非常に長い年月を掛けて、かねてから食べられており、食文化として根付いていることが必要です。

例)秋田県潟上市の佃煮

(菅英佃煮本舗 Webサイトより)

秋田県潟上市の食品スーパー等にいくと、日常から地域の方が食す文化が根付いている為、佃煮の売場が非常に大きく確保されています。「2.特に重要な必然性と価格決定の方向性と方法」にて必然性の確認手法を詳しく説明します。

・地域流通価格を上回らない根付が実現できていること

他地域から来た方をもてなす食品が特産品食品の役割の1つです。従って、地域で当たり前に流通している価格が、値付けのベースになります。つまり、これを上回るには、それなりの上回る理由が無ければならないのです。

例)八丈島の島オクラ(2.特に重要な必然性と価格決定の方向性と方法 参照)

・製法や原材料の文化の定着

製法や原材料は、非常に長い年月を掛けて、かねてから定着しているものでなければなりません

さて、多くの残念な特産品食品は、概ね、小麦粉、マーガリン、種々の食品添加物等々で、成形されたものが、ほとんどです。ですから、本当に売れる特産品を開発したい、個人や小規模事業者の方は、ぜひ、基本に立ち返り、上記視点の網羅性をスタートにしてほしいと思います。

 以上、いかがですか、上記3つが、御土産物や特産品が最低限、実装しなければならない仕様(スペック)と言えます。しかしながら、こうなると、「どの事業者も同じような取組になり、周りが競合だらけで、埋もれてしまいそう・・」そのような心配も出てくることでしょう。そのような場合は、下記視点を特に注意して取り組むことで、競争優位な商品を構築することが叶います。

・製法の進化

健康、安全や安心、自然環境への配慮等々をテーマに、製法を改善していくこと

・原材料の価値づけ

健康、安全や安心、自然環境への配慮等々をテーマに、原材料を改善していくこと

・外観の価値づけ

 上記2つを踏まえ、デザイン性によって、シズル感やパッケージに優位性を持たせること

・利便性

 売場、流通形態、個食化等々、顧客の食シーンや保存シーンを踏まえた、商品仕様を加えること

2.特に重要な必然性と価格決定の方向性と方法

題材にあげるのは、農作物にしましょう。農作物はコモディティの象徴です。この象徴を土産にする「考え」を理解いただければ、原材料が多く複雑な加工品でも、頭の整理が用意になると考えるためです。

何か事例があった方が、理解が進むと考えますので、八丈オクラを題材に説明していきます。

全国の自然栽培で生産する農業者の方や、無農薬有機栽培で栽培されている農業者さんには御馴染みの八丈オクラですが、現地の八丈島の食品スーパーでは、下記画像のような値段や似姿で販売されています。

よく御覧ください。金額の「桁」を、10本が1000円で販売されています。ここで考えていただきたいのは、食品スーパーですから、地域の日常買いで、この値段だということです。

オクラは日本に、江戸時代末期に、米国より入ってきました。名前の由来は、英語「okra」です。温暖な気候を好み、一方で高温を嫌うオクラは、東京都の八丈島で栽培が盛んになってきたという歴史があります。

八丈島は、周りが海で湿度こそ高いものの、島を風が吹き抜け滞留しないため、気温は夏場でも30℃を超えることは少ないようです。まさに栽培にうってつけの地だったのでしょう。
江戸時代からですから、立派な在来種と言えます。

ここのオクラは、15cmは超えるサイズが標準で、一般のオクラに比べ、やわらかく、後味に甘味が有るのが特徴です。また丸みを帯びていることから、よく見る断面の星形に比べ、角張りがなく、さやが柔らかいのです。ですから、現地の方は、生で食べます。八丈島では「ネリ」と呼ばれているのも面白いですね。

さて、何故このような値段が日常の食卓でまかり通るのでしょうか?東京都内や大阪市内等々の食品スーパーでは、せいぜい10本100円程度ですから、高いと思うのが肌感覚でしょうか。

その理由の1つが、「八丈島の現地の方々が、このオクラの価値を認めているから」と言えます。

居酒屋などの飲食店に行きますと梅雨明け以降、当然のようにメニュー化され、日常の食卓のみならず、外食においても定番化されているのです。よく地域特産品や御当地者の売れ筋を生み出すには、「必然性」が大事と言います。八丈オクラは、この必然性が無論、兼ね備えられていますね。

従って、八丈島の方は、土産や特産品は何ですかと尋ねられると、八丈オクラを「その1つ」として選び、観光客に土産物として薦めたり、居酒屋等の外食で当然のように出現するわけです。

先ほど、認められていると書きましたが、ここが土産物や特産品を開発する際の大きな要点(ポイント)になるでしょう。八丈オクラの場合、けっこうな値がついて、通常の食卓向けに売られています。ですから、これが根拠として、観光客の方々に「この値段でおススメできる」わけです。

従って、地域の土産物や特産品の開発支援の場で、「高単価商品を創りたい」との要望を受けますが、まずは、地域に認められる値付けが出発点であることを自戒しなければなりません。「地域で利用されている値段以上のものを、他の地域に売りつける・・」こと自体が矛盾していることにそろそろ気付くべきでは無いでしょうか。

また開発の現場では、このオクラを乾燥してパウダーにしたり、何かしらのドレッシングとセット販売できないか等々、様々な検討がされてきました。「そういった過程を経て、土産物や特産品として定着出来ないか」といった考えなのでしょう。

しかしながら、支援の現場では、全て棄却させていただいています。何故なら「必然性」が無いからです。普段から食卓等で、乾燥してパウダーにして利用したり、地域ならではのドレッシングをかけて食べているのであれば認めます。しかしながら、普段から食べていないものを「観光客等の他所の方に、おススメするのですか」 日常食べていないものをおススメすることは、土産物の開発では「捏造手法」と陰口を叩かれていることに気付いてほしいものです。

観光客が「これ、どうやって食べるんですか?」といった問いに日常の経験から応えられる範囲が、開発における「必然性」の範囲です。

余談ですが、オクラは無農薬有機や自然栽培において、どちらかと言えば扱いやすい商品ですね。梅雨時期に種を蒔き、梅雨明けとともに9月下旬に向けて、多収です。私の法人でも栽培がありますが、正しい原価計算からすると、人件費込でもせいぜい、150円10本でしょう。そうであれば、相当粗利が良い、商売を八丈オクラ栽培の八丈島の農業者は実現できていることになります。

以上を総括すると、土産物や特産品の商品開発の現場では、開発の方向性を決める際に以下の2点への留意が必要です。

☑ 必然性があること
土産物や特産品の商品開発は、「なぜ御社が作るのか」「なぜ、この地域で作るのか」「なぜ、このような食べ方をするのか」といった問いに応えられる範囲がコツです。

☑価格は吹っ掛けないこと
 土産物や特産品の価格決定(値付け)においては、地域で実際に受け入れられている価格以上の設定をしないことが重要です。そうでなければ、観光客等は心理的に受け入れてくれないでしょう。

3.具体的な御土産や特産品の商品開発の手順や方法

 以上、土産物や特産品の商品開発の要点について、説明を重ねましたが、具体的な開発の方法は、特に一般的な加工品の商品開発手順等と変わりがありません。以下に、「商品開発の手順や方法」について、段階ごとに丁寧に整理していますので、御利用いただければ幸いです。

「商品開発の手順や方法」の記事はこちら

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久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。

講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。

2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。

近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。

主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。

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