
はじめに:賞味期限や消費期限はお客様との安心安全の約束
飲食店の現場で「うちのサラダに利用しているドレッシングがお客様に好評なので、瓶詰で販売していきたい!だけど賞味期限にすべき、消費期限にすべき?」
あるいは、農業者がはじめて食料品製造業に参入するために商品開発をしている現場で「賞味期限か、消費期限、どちらでしたっけ?何かルールがあるのでしょうか?」
このような内容の質問が多いのも事実です。
そこで、今回は、商品開発のパッケージデザインの裏面で課題になる賞味期限と消費期限の設定のルールや手順について、細やかに解説していきます。
備考)この記事では、賞味期限や消費期限の説明に終始しますので、ほか商品開発や物販にかかわる手順や方法、テクニックなどについては、以下の記事を参考にしてください。
・食品の「新」商品開発や「新」メニュー開発の実務手順・成功法則|企画書・フレームワーク・アンケート活用・OEMまで|小規模な飲食・食料品製造業向け
・食品パッケージデザイン「色」の決め方!売れる色彩心理・配色比率・タブーを解説
・売れる!加工食品・お菓子のパッケージデザインの作り方・作成方法と相場|おしゃれな成功事例も
・【保存版】売れる商品名の付け方|飲食店・食品メーカーのネーミング成功法則を心理学・顧客価値・法的リスク・相場感から徹底解説
・飲食店が「物販」を始めるための全知識|営業許可の境界線と必要な手続きを支援実績から詳しく解説
裏面の一括表示(原材料表示や添加物表示など)は、以下の記事に手順やルールや事例を整理しています。ご利用ください。
・【初心者向け】食品一括表示の書き方ガイド|原材料表示や添加物表示のルールと手順
第1章:賞味期限と消費期限の意味の違い
1)賞味期限(しょうみきげん)とは
一言でいうと、「その食品を、おいしく食べることができる期限」のことです。
スナック菓子、カップめん、缶詰、ペットボトル飲料など、比較的傷みにくい食品に表示されています。この期限を過ぎたからといってすぐに食べられなくなるわけではありませんが、風味や香りが落ちてしまう可能性があります。 「品質が変わらずにおいしく食べられる期間」を保証する指標といえます。
2)消費期限(しょうみきげん)とは
一言でいうと、「その食品を、安全に食べることができる期限」のことです。
お弁当、サンドイッチ、生菓子、精肉など、傷みが早い食品に表示されています。期限を過ぎると、見た目に変化がなくても細菌が増殖しているなど安全性が損なわれている恐れがあるため、期限を過ぎたものは食べないほうが安全です。「お腹を壊さず安全に食べられる期間」を保証する、いわば「守るべきデッドライン」です。
3)両方に共通する「重要な前提条件」
| 項目 | 賞味期限 (Best-before) | 消費期限 (Expiration date) |
| 意味 | おいしく食べられる期限 | 安全に食べられる期限 |
| 対象の食品 | 傷みにくい食品 | 傷みやすい食品 |
| 期限を過ぎたら | すぐに食べられなくなるわけではない | 食べないほうがいい |
| 目安期間 | およそ5日を超えるもの | およそ5日以内のもの |
| 具体例 | スナック菓子、缶詰、ペットボトル飲料、乾麺、冷凍食品 | お弁当、サンドイッチ、生菓子(ケーキ)、精肉、生鮮魚介類 |
どちらの期限についても、説明する際に必ずセットで伝えるべき大切なポイントが2つあります。
・「未開封」であること
一度袋や容器を開けてしまうと、表示されている期限は無効になります。開封後は期限に関わらず、早めに食べる必要があります。
・「決められた方法」で保存していること
「直射日光を避けて常温で」「10℃以下で保存」など、パッケージに書かれた保存方法を守っていることが前提の期限です。
第2章:どちらを表示するかの「基準」と「分類」
開発された食品がどちらに該当するかは、農林水産省や消費者庁のガイドラインに基づき、以下のステップで判断します。
1)「5日」がひとつの境界線
一般的には、製造日(または加工日)から5日以内に品質が急速に劣化するものは「消費期限」、それを超えるものは「賞味期限」と分類されます。
2)食品の特性による分類
①消費期限を表示すべきもの
・水分量が多く、細菌が増殖しやすいもの。
・加熱殺菌されていない生もの。
・冷蔵保存(10°C以下)が必須で、短期間で変質するもの。
②賞味期限を表示すべきもの
・乾燥している、砂糖や塩分濃度が高い、または酢漬けなど、保存性が高いもの。
・缶詰、レトルト、冷凍、真空包装など、微生物の増殖を抑える処理がされているもの。
第3章:賞味期限や消費期限の設定の「法律と慣行」
1)法律上のルール:「科学的・合理的根拠」に基づく自己責任
食品表示法や食品衛生法において、「豚ホルモンは〇ヶ月にしなければならない」というような、一律の法的日数は決まっていません。賞味期限や消費期限は「製造者(または販売者)が、科学的・合理的な根拠に基づいて自ら設定する」のが法律上のルールです。
2)業界の慣行:「安全係数」の掛け合わせ
設定の際、業界標準として「安全係数(通常0.7〜0.8未満)」という考え方を用います。
・例:検査の結果、「10ヶ月間は品質が劣化せず安全に食べられる」と判明した場合。
・計算:10ヶ月 × 0.8(安全係数)= 8ヶ月
このように、実際に日持ちする期間よりも短めに設定し、流通や家庭の冷凍庫での温度変化(ドアの開け閉めなど)のリスクを吸収するのが鉄則です。
3)検査機関に出して確認した方が良いか?
水分量が多く消費期限の設定を検討される場合は、必ず検査機関に出した方が無難です。焼菓子など水分量が少なく保全性が効くものは、実際に手元に置いておき、1週間、1ケ月・・といった具合に、食味や風味を確認しながら、自らチェックすることでも代用できます。
とはいえ、今後拡販に力を入れていく意思があるのであれば、平行して、必ず検査機関(第三者機関)に出して確認・証明書を取得すべきです。
例えば、スーパーなどの小売店に流通させる場合、バイヤーから「賞味期限の根拠となる検査成績書(エビデンス)」の提出を求められることが多々あります。これがないと、取引口座を開けない(棚に置かせてもらえない)ケースがあります。
また、万が一品質トラブルが起きた際、第三者機関のデータによる「科学的根拠」があれば、ブランドと製造者の信頼を守る強力な盾となります。
第4章:具体的な検査機関とオファー(依頼)方法
1)主な検査機関
地域の食品衛生協会、日本食品分析センター、地元の民間環境衛生研究所などが該当します。それらに「保存試験(賞味期限設定検査)」を依頼することになります。
2)検査機関へ伝えるべき5つの要件(依頼用フォーマット)
検査機関に「保存試験(賞味期限設定検査)」を依頼します。その際、以下の情報を整理してオファーするとスムーズです。
①対象品目の詳細
例えば、冷凍の味付け豚ホルモンであれば、「冷凍の味付け豚生ホルモン(未加熱)」であることを伝えます。焼菓子であれば、「パウンドケーキ」といった具合です。
②原材料や食品添加物の内容
後述する原材料表示(裏面)の情報を提供します。たとえば冷凍の味付け豚ホルモンであれば、豚内臓、タレの成分Aなどと、そのまま伝えます。
③想定している(目標とする)賞味期限や賞味期限
例:「製造から半年(または1年)を賞味期限として設定したい」と明確に伝えます。この目標期間をベースに、機関側が逆算して検査スケジュール(例:安全係数を見越して、8ヶ月後や15ヶ月後まで検査する等)を組んでくれます。
④保存条件
例えば、冷凍の味付け豚ホルモンであれば、「-18℃以下(冷凍保存)」などと伝えます。
・実施してほしい検査項目(機関側から提案してくれますが、基本は以下3点です)
⇒微生物検査(細菌検査):一般生菌数、大腸菌群、黄色ブドウ球菌などの増殖度合い。(食中毒のリスク判定)
⇒理化学検査:豚の脂は冷凍下でも酸化が進むため、過酸化物価(POV)や酸価(AV)、揮発性塩基窒素(VBN・鮮度の指標)の測定。(油焼けや劣化の判定)
⇒官能検査:実際に解凍・加熱調理した際の「見た目、におい、味、食感」のテスト。(おいしさが保たれているかの判定)
⑤検体の提出方法
実際のパッケージに包装された状態のものを、何個、いつ、どのように送れば(持ち込めば)よいかを確認します。
3)検査にかかる費用相場と期間の目安
初めて検査機関を利用する際、「いくら費用がかかるのか」「どれくらいの日数が必要か」は最も気になるポイントです。検査する項目(一般生菌数、大腸菌群、水分活性など)や品目によって異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。
・費用相場:1検体あたり数千円〜1万5千円程度
・検査期間:検体到着から結果報告まで、おおむね1週間〜2週間程度
事前に複数の検査機関のホームページで料金表を確認するか、無料の見積もり相談を活用して、自社の予算に合った機関を選びましょう。
4)HACCP(ハサップ)義務化と設定根拠の保管
現在、すべての食品事業者に「HACCPに沿った衛生管理」が義務付けられています。賞味期限や消費期限を「なんとなく」決めるのではなく、検査機関の結果や安全係数を用いた「客観的な根拠」に基づいて設定することは、HACCPにおける衛生管理の妥当性を証明する上でも非常に重要です。
万が一のクレームやトラブルを防ぎ、お客様に安心安全な商品を提供するためにも、期限設定の根拠となった検査結果や計算式の記録は、必ず文書として手元に保管しておきましょう。
5)商工会や自治体の補助金・支援制度の活用
新商品の開発や、それに伴う検査機関への依頼費用は、自治体や商工会・商工会議所が実施している「小規模事業者持続化補助金」や、独自の新商品開発支援制度の対象になるケースがあります。
資金面での負担を減らして安全な商品開発を進めるために、本格的な検査を依頼する前に、お近くの支援機関へ活用できる補助金がないか相談してみることもおすすめします。
第5章:品目別の賞味期限・消費期限設定の実情
1)焼菓子(クッキー、パウンドケーキなど)
・期限の性質: 賞味期限(品質の保持)
・実情:自社での検査(官能検査)で設定されることが多い
- 水分活性が低く、カビや細菌が繁殖しにくいため、食中毒のリスクが比較的低いカテゴリーです。
- 個人のケーキ屋さんや道の駅での直売などであれば、製造者が実際に日数を置いて食べてみる「官能検査」のみで「賞味期限:2週間」などと設定するケースが多々あります。
- ※ただし、スーパーやコンビニに卸す場合や、3ヶ月以上の長期保存を謳う場合は、油脂の酸化(過酸化物価)やカビの検査を機関に出すよう求められることがあります。
事例研究:糖衣の豆菓子の賞味期限の設定の思惑
筆者が大好きな「(神奈川県内の事業者の)糖衣された豆菓子」の裏面表示を確認しながら、この事業者は賞味期限を、どのように検討し設定しているのかを、いっしょに確認していきましょう。

1)賞味期限の確認「ぴったり2週間(14日間)」
まず、冒頭のラベルの日付を確認しましょう。(下記に画像を再掲)

・加工日: 26. 3. 28(2026年3月28日)
・賞味期限: 26. 4. 11(2026年4月11日)
日数を数えると、加工日から賞味期限までが、ちょうど14日間(2週間)に設定されています。これは、検査機関に出して複雑な日数が算出されたというよりも、作り手側が「この期間内に食べてほしい」という明確な基準(ルール)を持っている可能性が高いです。
2) 一般的な「豆菓子」に比べて、あえて短く設定している
商品の名称は「豆菓子」で、原材料は「落花生、砂糖、オリーブ茶葉」です。 砂糖をたっぷり使ってコーティングした落花生は水分が非常に少なく、腐ったり食中毒を起こしたりするリスクが極めて低いです。そのため、一般的なスーパーで売られている豆菓子であれば、賞味期限が「3ヶ月〜半年」など、かなり長く設定されるのが普通です。
しかし、この商品はあえて「2週間」という非常に短い期間に設定しています。ここから、作り手の強いこだわりが見えてきます。
3)短い賞味期限に込められた「3つの推測」
なぜ腐りにくいのに2週間なのか。次のような理由が考えられます。
①食感と風味(美味しさ)のピークを保証するため
落花生には油分が含まれており、時間が経つと空気に触れて油が古くなる「酸化」が起こり、味が落ちてしまいます。また、オリーブ茶葉の繊細な香りや、砂糖のカリッとした食感(湿気を吸う前の状態)を100%楽しんでもらうための「美味しく食べられる期限(=賞味期限)」を厳格に設定しているのだと考えられます。
②保存料や特殊な包装を使っていない(手作り感)
原材料を見ると、保存料や酸化防止剤などの添加物が一切入っていません。袋の中には、鮮度保持剤(脱酸素剤など)は入っています。簡易的なパッケージであるため、自然な状態ですぐに食べ切ってもらいたい意図が読み取れます。
③「新鮮なうちに」というお客様へのメッセージ
「日持ちしませんので、お早めに召し上がってください」というスタンスは、逆に言えば「作りたてを提供している」という価値(ブランド力)に繋がります。
④総括
このラベルは、「腐るから2週間にしている(消費期限の考え方)」のではなく、「一番美味しい状態(風味・食感・香り)を味わってもらうための限界が2週間である(賞味期限の考え方)」という、作り手の品質へのこだわりがそのまま表れている良い事例です。
2)レトルトパウチ食品(カレー、パスタソースなど)
・期限の性質: 賞味期限(長期保存)
・実情:ほぼ必ず検査機関(またはそれに準ずる自社の大規模設備)での検査が必要
- 常温で1〜2年という長期保存を前提とするため、ボツリヌス菌などの重大な食中毒リスクを完全に排除する必要があります。
- 「加速試験(虐待試験)」と呼ばれる、意図的に過酷な温度環境に置いて数年分の劣化を短期間でシミュレーションする特殊な検査が必要です。
- 小売店のバイヤーも、レトルトに関しては「エビデンス(検査成績書)」がないと絶対に取引してくれません。
3)袋入りのパン
・期限の性質: 消費期限(安全性の保持 ※製造から5日以内の場合) または 賞味期限
・実情:期間によって自社か機関か分かれる
- 水分が多く、カビが生えたりデンプンが老化(パサパサになる)しやすいため、基本は数日間の「消費期限」となります。
- 町のパン屋さんが袋に入れて売るような「消費期限:3日」であれば、過去の経験や自社での保存テスト(官能検査)で設定するのが一般的です。
- 一方、スーパーに並ぶような大量生産品や、「天然酵母で1ヶ月もつ」といったロングライフパンの場合は、カビや一般生菌数の検査を機関に依頼し、安全係数を掛けて設定します。
4)それでも迷う「検査機関に出すべきか」の判断基準
迷った場合は、以下の2つの基準で判断するのが業界のセオリーです。
①販路は「BtoB」か「BtoC」か
・自社店舗や手渡し(BtoC): 自社での官能検査(食べて確認)でも許容されやすい。
・スーパーや卸売(BtoB): 第三者機関の「検査成績書」が取引条件になるため必須。
②水分が多く、食中毒・腐敗のリスクが高いか
ホルモンなどの生肉、レトルト食品、惣菜などはリスクが高いため、自社判断は危険です。機関への依頼を強く推奨します。
初稿 2026年4月1日
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主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。













