インバウンド(訪日外国人)集客の方法(飲食業・宿泊業・食料品製造業・農林水産業向け)

近年、引き合いの多い、インバウンド(訪日外国人)集客の御相談。

各地でオーバーツーリズムが問題になるなか、まだまだ地方には恩恵が薄いのも事実。そういった背景の中で、当事務所にも、地方の飲食店、食料品製造、宿泊業、農林水産業の方々から、満遍なく御相談があります。

例えば、日本政府観光局(JINTO)の訪日旅行者の推移を拝見していますと、24年はコロナ前を軽く上回り、おそらく25年もさらに上澄みされていることなのでしょう。

日本政府観光局(JNTO):https://www.jnto.go.jp/
日本政府観光局(JNTO):https://www.jnto.go.jp/

 観光庁の2次データでは、訪日外国人の方の出費を概観できまして、宿泊、飲食、その周辺への出費が多いようです。そのようなことも、当事務所への御相談が多い一因なのかもしれませんね。

観光庁「インバウンド消費動向調査」

 当社は、最初は右も左もわからない中から手探りで、これらの方々向けの対策を立ててきました。(必要に応じて、わざわざ当社のスタッフがその分野の専門の方に助言を受けるなどして)

 その結果、おおむねインバウンド(訪日外国人)集客は『ここだけは抑えておくべきだ!』という確信が持てることが整理できましたので、ご紹介していきたいと思います。

 皆さんの取組を見直したりする際のチェックリストのように使っていただけると幸いです。取組のポイントは、「旅マエ(計画中)」と「旅ナカ(日本滞在中)」の視点です。

1.受入環境の整備(まずは土台づくり)

 集客をする前に「来てもらっても困らない、ガッカリさせない」ための最低限の準備が必要です。

・無料Wi-Fiの設置
海外の方にとって、スマホは命綱です。Wi-Fiが無いだけで選択肢から外されることもあります。とくにアジア圏からの海外旅行者の場合は当てはまります。「Japan Wi-Fi auto-connect」などのアプリに対応したWi-Fi導入も有効です。

・キャッシュレス決済の導入
 特に欧米や中国の方は現金をあまり持ち歩きません。クレジットカード(VISA/Master)や、QR決済(Alipay/WeChat Payなど)への対応は必須だと判断します。

・メニュー・案内表示の多言語化
プロに頼まなくても、翻訳アプリ(DeepLやGoogle翻訳)を使えば十分だと思います。文字だけでなく、「写真」を大きく載せてください。写真は世界共通言語です。「指差し注文」ができるメニューブックを作りましょう。

2.旅マエ(自国)での計画時に見つけてもらう

 海外にいる彼らが、「日本に行ったらここに行こう」と探す場所に情報を置きます。ここで重要なのは「自社ホームページ」よりも「プラットフォーム(地図や口コミサイト)」です。

1)Googleビジネスプロフィールの整備(最重要)

来国している旅行者が最も使うのは「Googleマップ」のようです。Googleマップ上の自分のお店・会社の情報をオーナーとして登録・編集します(無料)

・Googleマップの「店名」表記について
 例えば寿司処みちこであれば、寿司処みちこ(Sushi shop Michiko)とします。 Sushi shop Michiko(寿司処みちこ)ではなく、寿司処みちこ(Sushi shop Michiko)の順をおすすめします。

理由1(日本人客への配慮): すでに日本人向けに展開されている場合、メインの顧客である日本人がパッと見て認識できる「日本語」を先頭にするのが親切です。

理由2(Googleのルール): Googleは「看板に書かれている名前」を正式名称と見なす傾向があります。もし看板が日本語メインであれば、Google上の登録も日本語を先頭にしたほうが、アカウント停止などのトラブル(ガイドライン違反)のリスクが低いです。

※注意点: カッコ内はあくまで「英語の正式名称(読み方や屋号)」に留めてください。「美味しい寿司 (Delicious Sushi)」のような宣伝文句を入れるのはNG(ガイドライン違反)ですのでご注意ください。

・Googleマップの「カテゴリ」設定について
 これも支援時にたくさんの質問がある観点です。日本語の管理画面で、一番近い「日本語のカテゴリ」を選べばOKです。日本の管理画面では「Japanese Inn」や「Ramen Restaurant」という英語の選択肢は表示されません。「旅館」「ラーメン屋」と表示されているはずです。Googleマップは、閲覧する人の言語設定に合わせて、カテゴリを自動翻訳して表示します。例えば「ラーメン屋」を選択して登録した場合、アメリカ人が見ると、自動的に”Ramen restaurant”と表示されます。フランス人が見ると”Restaurant de ramen”と表示されます。安心して日本語の選択肢の中から、自店に最も当てはまるものを選んでください。

2)OTA(オンライントラベルエージェント)と口コミサイトの活用

 自社サイトを見つけてもらうのは難易度が高いため、彼らが普段見ている巨大サイトに掲載します。宿泊業なら、Booking.com, Expedia, Agodaへの登録です。これらは世界標準です。また、飲食・食料品であれば、TripAdvisor(トリップアドバイザー)でしょうか。欧米圏では絶大な信頼があります。「ここに行けば間違いない」と探すときに使われます。

3)食料品製造業特有のアプローチ

 工場見学や直売所がある場合、「体験(Experience)」として売り出します。例えば、Viator(ビアター)やAirbnb体験で「酒蔵ツアー」「和菓子作り体験」などのアクティビティとして登録していきます。体験重視の旅行者の目に止まりやすいです。

3.旅ナカ(すでに来日している方)に見つけてもらう

 日本に到着し、「今の場所から近くで、良い店はないか?」と探している層へのアプローチです。

1)「現在地周辺」検索への対策(MEO対策)

 彼らは街中でスマホを取り出し、Googleマップで「Restaurants near me(近くのレストラン)」や「Hotel in Kyoto(京都のホテル)」と検索します。この場面では、先ほど御案内したGoogleビジネスプロフィールの情報を常に最新にすることが重要になります。「営業中」かどうかが正確であることが非常に重要です。

2)店頭の視覚的アピール(アナログですが強力)

 通りがかりの外国人は「この店に入って大丈夫か(英語が通じるか、何屋か)」を不安に思っています。そこで、ウェルカムサインが店頭に必要になります。「English Menu Available(英語メニューあります)』などを貼るだけで、入店ハードルが劇的に下がります。
 また、食品サンプル・写真も店頭にあると良いです。何が食べられるか一目でわかるようにします。

3)SNSでのリアルタイム発信(Instagram)

 Instagramは場所検索ツールとしても使われています。当然ですが、ハッシュタグは、日本語だけでなく英語のタグをつけるようにします。「#shinjukufood」「#japantravel」「#ryokan」といった感じです。無論、投稿には必ず店舗の位置情報を紐付けます。

4)自社webサイトによるインバウンド集客の誤解

 日本語の頁を英語圏向けに英語にしておけば、Googleやヤフーなどで検索で辿り着いてくれるだろうといった考えは、間違いです。それには、以下のような理由があります。

・検索エンジンの違い
日本に住んでいる 私たちは「google.co.jp」や「yahoo.co.jp」を見ていますが、アメリカ人は「Google US」、中国人は「Baidu(百度)」を見ています。日本のYahooで上位表示されても、彼らの画面には1ミリも表示されません。

・検索キーワードの違い
日本人は「新宿 居酒屋 おすすめ」と検索しますが、外国人は「Shinjuku Izakaya Best」や「Places to eat in Shinjuku」と検索します。

5.自社webサイトを機能させてインバウンド集客を実現させるには

 小規模事業者の場合、時間と資金が限られますので、支援の経験則として、ターゲットとする国を明確に決めて取り組むことが重要です。例えば秋田県の支援先の宿泊業や飲食業、食料品製造業の場合は、そもそも旅行客の多い台湾の方々を個別に対策する国に選んでもらったり、あるいは、保有している資産を利用して、その資産で集客できる国を対策を立てたりします。例えば、イギリスやフランスの方は、庭園が好きであったり、ガストロノミーであったりという傾向がありますので、秋田の庭園が美しい宿では、イギリス人やフランス人を個々の宿でターゲットにして展開しています。

例えば、フランスにいるフランス人にアピールすることを、ここでは考えていきましょう。そのためには、念頭に、フランスのGoogle(google.fr)や、フランス語設定のブラウザに評価される必要があるということを置いて取り組む必要があります。

技術的なポイントを、以下に説明しておきますね。

1)Webサイトの技術的ポイント(SEO対策)

  ただ日本語のサイトを翻訳ツールで変換するだけでは、フランスのGoogle検索には引っかかりません。以下の3つの「裏側の設定」が重要です。

①URL(住所)を分ける 【ディレクトリ構造】

 今のサイトが Michiko-sushi.com だとしたら、フランス語ページは Michiko-sushi.com/fr/ のように、「/fr/」という専用の部屋を作ってあげるのがベストです。Googleは「/fr/がついているから、ここはフランス語のエリアだな」と認識してくれます。

②Googleへの合図を送る 【hreflangタグ(エイチレフ ラング タグ)】

 これが一番の技術的ポイントです。Webページの裏側(ソースコード)に、「このページはフランス語を使う人向けですよ」という名札(タグ)を埋め込みます。これがないと、Googleは「これは日本のサイト?それともフランス?」と迷ってしまい、フランスでの検索結果に出してくれません。制作会社に依頼する際は「多言語化の際は、必ずhreflangタグを設定してください」と伝えてください。

③サーバーの場所と表示速度

 Webサイトのデータが置いてある場所(サーバー)が日本にあると、フランスからアクセスした時に表示が遅くなることがあります。表示が遅いと、見てもらえずに閉じられてしまいます。そこで、当事務所では、インバウンド集客とwebに詳しい方から、CDN(シーディーエヌ)」という技術を教えてもらいました。これを使うと、世界中どこからアクセスしても、一番近い拠点からデータを配信してくれるため、フランスから見てもサクサク表示されます。

2)リスティング広告(Google広告)

 webサイトを完成させたら、リスティング広告も検討してみましょう。日本国内で観光関係の広告を打つより、特定の海外で自社や自店への広告を打つ方が、はるかに競合が少ないと肌身に感じています。例えば、フランスの場合、次のように考えます。

・エリア設定:管理画面で「フランス」全土、あるいは「パリ」などを指定します。
・言語設定: 「フランス語」を使用しているユーザーを指定します。
・キーワード: 日本語の「寿司」ではなく、「Sushi Paris」「Voyage Japon(日本旅行) Restaurant」など、フランス語のキーワードを設定します。

3)サジェストワード・ロングテールキーワードを意識

 webサイトの頁を起案するには、どういった目的で検索者が調べているかを、予測した対応が必要です。旅マエ(計画段階)の方々のニーズを把握するようにします(最下段に国別のニーズについて少々、紹介しました)。

 例えば、「旅マエ(計画段階)」のフランス人が、実際にスマートフォンやPCで打ち込んでいるであろうキーワードを、Googleキーワードプランナーを使って、カテゴリ別に50個ピックアップしてみました。これらは、Webサイトの記事タイトル、本文、あるいはGoogle広告(リスティング広告)のキーワード設定に使っていきます。

・フランス人が日本旅行計画で使う検索キーワード
【旅行全般・計画】(まずはここから検索が始まります)
Voyage Japon (日本旅行)
Partir au Japon (日本へ行く)
Itinéraire Japon 2 semaines (日本 旅行日程 2週間)
Quand partir au Japon (日本 いつ行くべきか)
Budget voyage Japon (日本旅行 予算)
Conseil voyage Japon (日本旅行 アドバイス)
Blog voyage Japon (日本旅行 ブログ)
Guide francophone Japon (日本 フランス語ガイド)
Circuit Japon organisé (日本 ツアー旅行)
Avis voyage Japon (日本旅行 口コミ/評判)

【食事・レストラン全般】(「何を食べるか」を探すワード)
Manger au Japon (日本での食事)
Cuisine japonaise (日本料理)
Restaurant typique Japon (日本の典型的なレストラン)
Gastronomie japonaise (日本の美食/ガストロノミー)
Où manger pas cher Japon (日本 安く食べられる場所)
Meilleur restaurant [Tokyo/Kyoto] ([東京/京都] 最高のレストラン)
Réservation restaurant Japon (日本 レストラン 予約)
Menu en anglais restaurant Japon (日本 レストラン 英語メニュー)
Street food Japon (日本のストリートフード/食べ歩き)
Petit déjeuner japonais traditionnel (日本の伝統的な朝食)

【具体的な食べ物・体験】(ピンポイントな指名検索)
Meilleur Sushi Tokyo (東京 最高の寿司)
Ramen bar Japon (日本のラーメン屋)
Manger boeuf de Kobe (神戸牛を食べる)
Wagyu dégustation (和牛 試食)
Tempura restaurant (天ぷらレストラン)
Yakitori izakaya (焼き鳥 居酒屋)
Okonomiyaki Osaka (大阪 お好み焼き)
Kaiseki ryori prix (懐石料理 値段)
Unagi restaurant (うなぎ料理店)
Soba et Udon (そばとうどん)
Matcha dessert (抹茶デザート)
Mochi japonais (日本の餅/大福)

【お酒・飲料・工場見学】(製造業・体験重視向け)
Saké japonais visite (日本酒 酒蔵見学)
Dégustation saké (日本酒 試飲)
Brasserie saké Japon (日本の酒蔵)
Whisky japonais distellerie (ジャパニーズウイスキー 蒸留所)
Cérémonie du thé Kyoto (京都 茶道体験)
Bière japonaise (日本のビール)
Izakaya ambiance (居酒屋 雰囲気)
Bar à saké (日本酒バー)

【宿泊・滞在】(宿泊業向け)
Hôtel Japon (ホテル 日本)
Ryokan avec onsen (温泉付き旅館) ※非常に人気のある検索です
Dormir dans un Ryokan (旅館に泊まる)
Hébergement traditionnel Japon (日本の伝統的な宿泊施設)
Minshuku Japon (民宿 日本)
Guest house Japon (ゲストハウス 日本)
Hôtel capsule expérience (カプセルホテル 体験)
Logement chez l’habitant Japon (日本 民泊/ホームステイ)
Tatami chambre (畳の部屋)
Ryokan luxe Japon (高級旅館 日本)

上記のキーワードを活用するには、以下の「検索意図」を理解しておくと効果的です。

・フランス人は、「Typique(典型的な)」や「Traditionnel(伝統的な)」が大好きです。モダンで便利な場所よりも、「日本らしさ」「古き良き雰囲気」を強く求める傾向があります。広告文やWebサイトにはこれらの単語(Typique/Traditionnel)を混ぜるとクリックされやすくなります。実際、イギリスのウエールズ大学の大学院で仲良くなったフランス人の友人が、フランス国内の調査事業で把握し、教えてくれたものです。

・フランス人に限らないかもですが、彼ら彼女らは「Avis(口コミ・評判)」を、とても重視します。リストの10番目に紹介した「Avis voyage Japon (日本旅行 口コミ/評判)」にある通り、第三者の意見を気にします。トリップアドバイザーなどの口コミサイトへの誘導も有効です。

・これもフランス人に限らないかもですが、彼ら彼女らは「Pas cher(安い)」と「Luxe(高級)」の二極化の検索傾向があります。「ランチは安く(Pas cher)、でも旅館は奮発して高級(Luxe)に」というメリハリのある旅行計画を立てる方が多いです。自社がどちらのニーズに応えられるかを明確にしましょう。

6.インバウンド集客のためのコンテンツ (イベントや料理・メニュー)の開発のコツ

 コンテンツを開発するためには、顕在化したニーズを意識して、コンテンツを起案していくことが重要です。もちろん潜在的なニーズを検討することは、重要ですが、海外の方のことを分析することは、小規模事業者には困難だと思います。ですから、まずは顕在化したものをニーズとして把握し、コンテンツのアイデアを出していきます。
 その際、各国の傾向を、Googleキーワードプランナー等を使って、調べていきたいですが、なかなか骨折りです。そこで、当事務所が支援中に分析して、簡易にまとめた資料がありますので、以下を参考にしてください。これは国別の傾向を整理したもので、宿泊プランや、料理、体験型のイベントを起案する際のベースになります。

1)米国 

2)フランス

3)ドイツ

4)イギリス

5)オーストラリア

6)中国

7)台湾

8)韓国

9)タイ

10)ベトナム

11)フィリピン

7.商工会や商工会議所向けセミナーについて

 例えば2025年(現在時点)では、相模湖商工会、藤野商工会、かづの商工会、にかほ市商工会など、全国19か所で実施し好評でした。内容の深さは、本ブログ記事より更に実務よりになり、会員さんに、きっと楽しんでいただけると思います。ぜひ、インバウンド対策に必要であれば、ご検討の一助にしていただけますと幸いです。

8.海外展開支援について

 当社は、タイ、ベトナム、フィリピンなどのアジア8ケ国、さらにはフランス、イギリス、ドイツ向けの飲食業、食料品製造業などの海外進出支援のコンサルティングを実施しています。現在、7社の支援を実施しています。支援事例を含め、ご相談が可能です。お気軽にお問い合わせください。

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久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。

講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。

2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。

近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。

主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。

売上を伸ばすことで
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3)知恵やスキルを身につけたい

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是非、お気軽にお問い合わせください。

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