相乗積を使い新商品や仕入・品揃え・商品のラインとアイテム見直しや改善に活かす方法

支援の現場では、どのような新商品や新メニューを開発すべきか、どの商品やメニューを重点的に販売していくべきか(集客策、販促策、仕入策)といった論点が、頻繁に登場します。

経験や勘も大事ですが、数字を根拠に起案していけば、間違いないアプローチを導けるというもの。ぜひ、利用したい観点ですね。中でもおススメは、相乗積です。まずは相乗積の用語を説明しつつ、商品開発や集客策、販促策の起案の現場で、どのように「この数字を解釈すれば良いか」について、紹介していきます。

目次
1.相乗積とは
2.販促は「どの商品やサービス」を強化すべきか知る方法
3.新商品や新サービスは「どのようなときに必要か」を知る
4.まとめ

1.相乗積とは

 特定の商品、特定のメニュー、特定の事業部門といったように、事業や商売を、セグメントにわけて売上や利益管理を行うことがあります。その際のセグメント化された「ある部門」の「粗利構成比」のことを指します。お店や会社といった全体の売上高に対して、「ある部門」の「粗利益率」を表しています。 計算式は「相乗積=売上構成比×粗利益率」 です。

 下表は、支援先の菓子製造業の商品毎の年間売上、売上構成比、粗利率を整理したのち、相乗積を計算したものです。例えばAという商品は、売上構成比が10%(0.1)で、粗利率が20%(0.2)ですから、この2つの数字を掛け合わせることで、0.02という数値を導くことができます。

図表1

 相乗積が面白いのは、各部門(上記では、AからFの全ての商品)の相乗積の合算が、会社全体の粗利率と一致することです。従って上表では、商品Cの相乗積が1番大きくなっており、粗利率から俯瞰した際は、商品Cが、この会社の主力商品だと判断することも可能です。

2 販促は「どの商品やサービス」を強化すべきか知る方法

 様々なアプローチや考えはありますが、経営的には、自社の収益性や売上の伸長率を「近未来に向けてどうしたいのか?」 ここを、まずは考えるようにしましょう。
 例えば、図表①の会社が、会社全体の粗利益率を、20%超にしていきたいと「経営改善の目標」に掲げたとしましょう。その場合、相乗積の数字が大きいものに着眼して取組むと、その目的を達成しやすくなります。
 この視点で、図表1を確認すると、商品Cや商品Fの相乗積が1位2位を争う高さです。従って、この2つのいずれか、あるいは両方の販促を強化すれば良いことになります。
 今回は、商品Fを強化することとしました。仮に、販促の目標売上を「90万円」増額と設定したならば、下表のようにシミュレーションできます。

図表2

 結果、目標で掲げた粗利益率20%超を達成できることになります。

 以上のように、販促を起案する場合、対象とする商品やサービスのいずれを選ぶかが重要で、その際は、相乗積の高いものに着眼して、取り組めば良いことが理解いただけると思います。

3.新商品や新サービスは「どのようなときに必要か」を知る

 さて、仮に、図表1の経営目標の粗利率が、会社全体で40%超を設定したとしましょう。その場合、図表1の各商品には、そのような収益性が確保できているものが無いことに気づきます。最大でも、商品Fの32%でしょう。つまり、相乗積の高い商品Fを販促で強化したところで、所詮、40%超という目標には届かないのです。

 相乗積視点から、新商品開発の必要性を検討する際には、ここが重要です。要するに、現在の商品やサービスの中には、目標の収益性(粗利率)を実現したものが無い場合に、新商品や新サービスの開発が必要になることを知りましょう。
 例えば図表1にあらたに新商品を年間売上350万円(粗利率48%)で投入できたとしましょう。結果、図表1で19.45%であった粗利率が、図表3では、新商品の導入効果もあって20.57%へと改善しています。つまり導入した新商品を主力の売上へと育てていくことで、会社全体の粗利率が40%へと次第に差を詰めていくことになるのです。

図表3

4.まとめ

  いかがでしょうか。販促や集客策、新商品開発や新サービス開発というものは、可能な限り、戦略的でなければなりません。何のための販促なのか、何のために開発が必要なのか?このあたりを事前に検討しておくことがポイントです。

 また、今回は菓子製造業の実例を踏まえて、説明していますが、これは飲食や外食業でも同じことです。この商品がメニューに変わるだけですね。種々のサービス業においては(例えば、美容室など)、この表の商品が、サービス名に変わるだけです。

 なお、相乗積を使った分析は「付加価値の高い」「高付加価値な」商品開発を「数字面」で描くときにも役に立ちます。付加価値の算定式には、営業利益が含まれますから、粗利率が低いよりも高い方が、付加価値の高い商品開発に辿り着きやすいのです。食品や飲食店の付加価値の高い商品開発(メニュー開発の方法)については、こちらの記事で紹介しています(⇒ こちらをクリック)

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久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。

講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。

2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。

近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。

主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。

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