飲食店が物販(テイクアウト、冷凍食品、オリジナル調味料、雑貨販売など)に参入するのは、収益の柱を増やす素晴らしい戦略ですね。
今回、「製造・加工」「保存・陳列」「包装・ラベル」「会計・販促」の4つのフェーズに分けて、物販に参入する際に必要な設備を網羅的に整理しました。
なお、具体的な物販の許認可や食品表示の内容、手順等の物販にかかわることは、「飲食店が「物販」を始めるための全知識|営業許可の境界線と必要な手続きを支援実績から詳しく解説」で紹介しています。そちらで確認してください。
1.製造・加工設備(バックヤード用)
物販の基本は「お店の味をいかに劣化させずに届けるか」にあります。厨房設備にプラスアルファで必要になるのが、以下の5点です。
・真空包装機
料理を専用の袋に入れ、空気を抜いて密閉する装置です。酸化を防いで鮮度を劇的に長持ちさせるだけでなく、味を染み込ませる調理や、湯煎販売にも対応できるようになります。
相場は卓上型で10万〜50万円程度。購入時の注意点は、カレーやソースなどの「液体」を扱うかどうかです。安価なノズル式ではなく、液体がこぼれにくい「チャンバー式」を選ぶのが物販では定石です

・ブラストチラー
加熱したばかりの料理を、菌が繁殖しやすい温度帯を一気に通り過ぎて急速冷却する機械です。
価格は50万〜150万円と高価ですが、HACCP(ハサップ)という衛生管理基準への対応が求められる現代では、安全性を担保する強い味方になります。水分を飛ばさずに冷やせるため、料理のしっとり感が損なわれません。
・急速冷凍機(庫)
一般的な冷凍庫とは異なり、マイナス30度〜40度で一気に凍らせる設備です。細胞を壊さないため、解凍したときに「ドリップ(旨味成分の流出)」が出ず、お店のクオリティを再現できます。
相場は100万〜300万円以上と投資額は大きいですが、通販(EC)を本格展開するなら必須と言えます。

・フードドライヤー
果物や野菜、肉などを乾燥させてドライフルーツやジャーキーを作る装置です。 相場は3万〜15万円程度と比較的手を出しやすい価格帯です。
余った食材を加工して「おつまみ」や「トッピング」として販売できるため、フードロス削減にも貢献します。トレイの数やタイマーの細かさを基準に選びましょう。
・精密電子天秤
物販商品は「内容量」を正確に記載する必要があります。誤差があるとクレームや法令違反に繋がるため、1万〜5万円程度の精度の高いものを用意しましょう。 0.1g単位で測れることはもちろん、商売として重さを証明して売る場合には「検定付き」の計量器が必要になる場合がある点に注意してください。
2.保存・陳列設備(売り場用)
お客様が思わず手を伸ばしたくなる「見せ方」が売上を左右します。
・冷蔵・冷凍ショーケース
中身が見えるガラス張りの什器です。相場は15万〜60万円程度です。
選び方のコツは「結露防止機能」があるかどうかです。中が見えなくなると購買意欲が激減します。また、庫内LED照明の色味によって商品の美味しそうな見え方が変わるため、デモ機などで確認することをお勧めします。
・平型オープンケース
スーパーの精肉売り場にあるような、上部が開いたタイプです。相場は20万〜80万円程度です。
「手に取りやすさ」が最大の特徴で、ついで買いを誘発するのに適しています。ただし、冷気が逃げやすいため電気代が高くなりがちというデメリットも理解しておく必要があります。
・壁面ディスプレイ棚
常温で販売できるドレッシング、レトルト、オリジナル雑貨などを並べる棚です。
価格は既製品なら2万〜15万円程度です。安価なスチールラックでも良いですが、飲食店の雰囲気を壊さないよう、木製やアイアン素材などインテリアに馴染むものを選びましょう。耐荷重(重いビンを並べても大丈夫か)の確認は必須です。
・卓上保温ショーケース
レジ横で揚げたてのコロッケや温かい惣菜を売るための設備です。相場は5万〜15万円程度です。 商品を乾燥させない「加湿機能」が付いているタイプを選ぶと、長時間経っても美味しさを維持できます。
・自動販売機
最近増えている、店頭に設置する冷凍・冷蔵自販機です。相場は150万〜300万円です。
人件費をかけずに24時間販売できるのが魅力ですが、設置場所の防犯対策や、商品の補充オペレーションを考慮する必要があります。また、補助金(事業再構築補助金など)の対象になりやすいため、賢く導入しましょう。
3.包装・ラベル作成設備(コンプライアンス用)
物販において最も神経を使うべきなのが、法律を守った「ラベル表示」です。
・ラベルプリンター
原材料、賞味期限、アレルギー表示、保存方法などを印字する機械です。 相場は3万〜15万円程度です。パソコンと連携して自由にデザインできるタイプが便利です。
感熱式の安価なものは、時間が経つと文字が薄れてしまうため、長期保存する商品には「熱転写式」を選ぶのが無難です。
・熱転写シーラー
袋の口を熱で溶かして密閉する道具です。卓上型の簡易なものは5,000円程度からありますが、物販で大量に作るなら、足踏み式や自動で袋が流れるベルトシーラー(5万〜20万円)を検討してください。
密封が甘いと食中毒のリスクや品質劣化に直結します。
・ハンドラベラー
「カチカチ」と音を立てて値札を貼る手持ちの機械です。 相場は5,000円〜1万5,000円。
バーコードを印刷しない場合や、セール時の価格変更などに重宝します。インクの補充が簡単で、手に馴染む軽量なものを選びましょう。
・緩衝材製造機
通販(EC)を行う場合に、段ボールの隙間を埋めるエアクッションを作る機械です。 相場は5万〜15万円。新聞紙を詰めるよりも見栄えが格段に良く、ブランド価値が高まります。
大量に発送するようになると、資材を買うより自社で作る方がコストを抑えられます。
4.会計・販促設備(フロント用)
レジ周りの混乱を防ぎ、お客様に魅力を伝えるための設備です。
・物販対応POSレジ
飲食の会計と物販の会計を分け、かつ在庫管理ができるレジです。 iPadなどを使うタブレット型なら、初期費用は数万円、月額も0円〜1万円程度で導入可能です。
飲食と物販で消費税率が異なる(軽減税率)場合があるため、それに対応しているかは必ずチェックしてください。
・バーコードリーダー
物販商品に付けたJANコードを読み取ります。 相場は1万〜3万円程度です。
手入力によるミスを防ぎ、会計時間を短縮します。ワイヤレスタイプを選ぶと、棚卸しの際にも持ち運べて便利です。
・デジタルサイネージ
店頭や店内で、商品の魅力を動画で流すモニターです。 相場は5万〜20万円程度です。例えば「このドレッシングを使ったレシピ動画」を流すだけで、静止画のポスターよりも数倍の販促効果があります。
・POPスタンド・備品
「店主のこだわり」や「美味しい食べ方」を伝えるためのカード立てや黒板です。 1つ数百円から購入できますが、ここでケチらずにデザインを統一することが「お店のブランド」を作るコツです。
5.まとめ
物販を始める際、設備以上に重要なのが「保健所への確認」です。また、どういった物販商品を開発するかです。飲食店としての営業許可だけでは、店頭でパック詰めしたものを売ることはできても、卸売や通販ができないケースが多いです。「何を、どこで、誰に売るのか」を明確にして、設備を買う前に必ず保健所の担当者に相談してください。
以下に参考になる記事を紹介しておきます。
⇒そもそも開発する物販(商品)の存在価値が重要です「【事例付】顧客価値(存在価値)とは?選ばれる飲食店・小売店のコンセプトの作り方」
⇒「飲食店が「物販」を始めるための全知識|営業許可の境界線と必要な手続きを支援実績から詳しく解説」
⇒「食品の「新」商品開発や「新」メニュー開発の実務手順・成功法則|企画書・フレームワーク・アンケート活用・OEMまで|小規模な飲食・食料品製造業向け」
⇒「売れる!加工食品・お菓子のパッケージデザインの作り方・作成方法と相場|おしゃれな成功事例も」
初稿:2015年2月11日 加筆修正:2026年3月9日
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久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。
講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。
2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。
近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。
主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。













