サブスクリプション方式。
最近、小規模飲食店や小売店等もチャレンジモードです。
当所の支援先においても、取組みを開始する事業者さんが増えているように感じます。
種々論点はあるのでしょうが、1つだけ今回は紹介します。
この方式に取組み際の1番のポイントは「課金をどういう形態にするか?」です。
なぜならばお客様は、その「課金形態の情報を素に、どういったサービスなのかを推察する」からです。
幾度も紹介していますが、人(消費者)は、購買を検討するか、しないかの必要性を、瞬時に売場や店頭等で判断するものです。従って、気を魅くシズル、キャッチコピー、POPが重要と常々説明しているところです。
つまり、サブスクリプション方式では、消費者(検討する)側に、「どういった課金形態か?」が瞬時に伝わる工夫が「1つ」加わることになる。そのように考えてもらうとわかりやすいのかなと判断します。
さて、その課金形態ですが、主な課金形態について整理しておきましょう。
①無料提供方式
一定期間や一定量を無料で提供する方法です。
②定額制方式
契約した期間中、お客様の要望の量や機能を、自由に利用いただけるようにする方法です。
③従量課金方式
実際に利用した時間、量、数量に応じて課金する方法です。
さて「課金形態の情報を素に、どういったサービスなのか?を即推察することが可能」とはどういうことか。それは、例えると以下のようなことです。
①無料提供方式
「1度、体験してほしいんだー!」というメッセージを伝えることになる(試用性の訴求)
②定額制方式
「魅力的な体験がたくさん提供されているんだー!」というメッセージを伝えることになる(利便性の訴求)
③従量課金方式
「必要なだけ体験できるから、便利だよー!」というメッセージを伝えることになる(必要性の訴求)
このように整理すると、小規模飲食店や食料品店、製造業の皆さんも使い勝手の良い発想ができませんか。要するに次のように考えるのです。事例を織り交ぜながら、紹介します。
①試用性を訴求したい場合
新メニューや新商品の購入が想定通り、進まない場合、1度食べていただければ、その後の購買に繋がる自信がある場合などは、無料提供方式を採用すると良いでしょう。ただしその後、定額や従量課金に仕向ける準備と販促(紹介)をセットにするのが重要です。
例えば、コダワリの珈琲豆を販売したい場合
来店したお客様に「その豆で入れた珈琲」を、通常の珈琲を注文したお客様に無料でランクアップできる旨を提示しておき、併せて、グラム10円でご利用いただけますといった従量購入可能な旨のPRチラシを手渡すなどです。
②利便性を訴求したい場合
例えば、揚げ物屋さんが、当店の揚げ物は、種類も豊富で、ずっとお付き合いしていただいても、飽きが来ないですよ!といった場合に、採用できるのが定額です。
例えば1年間*万円といった形態にし、その間なら、品揃えしている種類の中から、1日4点まで購入可能とする等です。この方式の採用は、採算管理がポイントです。かなり頑張って毎日食べた場合の限界量を踏まえつつ、また、揚げ物の素材の食材原価等を踏まえつつ、慎重な値付けが要求されます。
③必要性を訴求したい場合
例えば、マイタンブラーで、珈琲を利用できる、ミネラルウォーターを利用できる、マイパックでご飯を利用できるといった場合が考えられます。
これはグラムやmlあたりの販売単価を明示して、測り売りするということです。ここでのポイントは、マイタンブラーやマイパック等を、お店側等が販売し、その容器のみで利用可能といった取組と合わせるようにしましょう。無論グラムやmlあたりの採算性の検討は必須です。また保健所の指導を仰ぐなど、行政区毎での方針の違いもチェックです。
久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)
加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。
講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。
2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。
近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。
主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。