ジョブ理論とは?わかりやすい具体例と飲食店・食品・宿泊業・農業での「ジョブの見つけ方」(顧客価値の発見)

なぜ今、「顧客ニーズ」がわからないのか?

「新商品を開発したのに売れない」「アンケートをとって改善したのに、客足が伸びない」 飲食店や食品メーカー、宿泊業など、日々顧客と向き合うビジネスの現場において、このようなお悩みを抱えていませんか?

現代はモノやサービスが溢れ、従来のような「20代女性向け」「年収500万円のファミリー層」といったターゲットの属性(ペルソナ)だけでは、顧客が本当に求めているものを捉えきれなくなっています。

そこで利用されているのが「ジョブ理論(Jobs to be Done)」です。 この記事では、マーケティングの強力な武器となるジョブ理論について、その基礎知識から、明日から使える「ジョブの見つけ方」まで、具体的な事例を交えてわかりやすく解説します。

目次

第1章:ジョブ理論とは?わかりやすく解説

「ジョブ理論とは」、ハーバード・ビジネス・スクールの故クレイトン・クリステンセン教授が提唱した、イノベーションと消費のメカニズムを解き明かすマーケティング理論です

一言で言えば、「顧客は、特定の商品を買っているのではなく、自分の抱えている用事(ジョブ)を片付けるために、その商品を『雇用(ハイア)』している」という考え方です。

クリステンセン, 2017

この理論を活用するには、顧客が解決したい問題点や課題を発掘することがポイントになります。とは言え、何もガイドをしないで、その問題点や課題を検討すると、中々、想像が難しいので、本書では、『「限られた状況」を想像することが入口』と紹介されています。

第2章:ジョブ(片付けるべき用事)とは何か?

ここで言う「ジョブとは」、顧客が特定の状況下で成し遂げたい進歩や、解決したい課題のことです。

有名な格言に「ドリルを買いにきた人が欲しいのはドリルではなく、壁の穴である」というものがあります。 この場合、「壁に穴を開けたい」というのが顧客のジョブです。もし、ドリルを使わずに魔法のように一瞬で綺麗な穴が開く道具があれば、顧客はドリルではなくそちらを買うはずです。

https://makit.jp/03278/

つまり、自社の商品・サービスが「顧客のどんなジョブを片付けるために雇われているのか」を深く理解することが、ヒット商品を生み出す第一歩となります。

第3章:有名な「ミルクセーキ」の事例から学ぶ本質

ジョブ理論を理解する上で欠かせないのが、クリステンセン教授が実際に行ったファストフード店の「ミルクセーキ(シェイク)」の事例です。

あるファストフード店では、ミルクセーキの売上を伸ばすために「もっと甘くする」「量を変える」といった改善を行いましたが、売上は全く伸びませんでした。そこで、「顧客はどんなジョブを片付けるために、ミルクセーキを雇っているのか?」を徹底的に観察し、インタビューを行いました。

【観察とインタビューからわかった驚きの事実】

・いつ買われているか?: 午前8時前の早朝。

・誰が買っているか?: 車で長距離通勤をする一人乗りのドライバー。

・何のために?(ジョブ): 退屈な通勤時間を紛らわし、午前中の空腹を満たすため。

バナナではすぐに食べ終わってしまい、ドーナツでは手がベタベタになります。ドロドロとしていてストローで吸うのに時間がかかり、腹持ちが良いミルクセーキは、「退屈な長距離通勤を乗り切る」というジョブを片付けるのに最も適した(雇いやすい)商品だったのです。

この本当のジョブに気づいたお店は、「もっと甘くする」のではなく、「よりドロドロにして長持ちするようにする」「果肉を入れて飽きないようにする」「通勤客がすぐに買えるように専用の券売機を置く」という対策を行い、見事売上を大きく伸ばしました。

第4章:【業界別】ジョブ理論を用いた「ジョブの見つけ方」と具体例

ミルクセーキの事例で「ジョブ(片付けるべき用事)」のイメージが掴めたでしょうか。
ここからは、飲食店、食品メーカー、宿泊業の3つの業界に分けて、よくある「間違ったニーズの捉え方」と、ジョブ理論を用いた「正しいアプローチ(見つけ方)」を具体例とともに解説します。

1)飲食店の場合:間違ったニーズの捉え方と正しいアプローチ

飲食店におけるメニュー開発や集客において、最も陥りがちな罠が「味」や「価格」だけで競合と勝負してしまうことです。

【よくある間違ったアプローチ】

「20代男性向けに、もっとボリュームがあって辛いカレーを作ろう」(属性へのフォーカス)

「近所のカフェがコーヒーを値下げしたから、うちも下げよう」(機能・価格へのフォーカス)

【ジョブ理論を用いた正しいアプローチ】

お客様は「お腹を満たすため」や「喉を潤すため」だけに飲食店に来るわけではありません。顧客の行動の背景にある心理を深掘りしてみましょう。

事例:あるビジネス街のカフェのジョブ
筆者が、「次の支援先の訪問まで1時間空いてしまった。静かな場所で資料の最終確認をしたい」というジョブ(用事)を片付けるためにカフェを「雇用」したことがあります。このような場面は多々です。そのようにカフェの経営者(オーナー・店長)気づいたら、どうなるでしょうか。

この場合、競合は他のカフェの「美味しいコーヒー」ではなく、「公園のベンチ」や「コワーキングスペース」になります。ここで提供すべき顧客価値は、コーヒーの豆の産地にこだわることではなく、「座り心地の良い椅子」「安定したWi-Fi」「隣の席が気にならないパーテーション」など、「集中できる快適な空間」を提供することなのです。

事例:レストランのジョブ
「小さな子供が騒いでも周りの目を気にせず、親がホッと一息つける時間を過ごしたい」というジョブであれば、キッズスペースの充実や、提供スピードの速さが最も重要なメニュー(サービス)となります。例えば、次のような口コミがGoogleビジネスプロフィールにあった事業者は、そういったジョブがあるかもしれませんね。

2)食品メーカー・製造業の場合:商品開発への応用実践

食品や飲料などの製造業では、「新商品開発」の場面でジョブ理論が強力な武器になります。スーパーやコンビニの棚は激戦区であり、単なる「美味しい新商品」はすぐに埋もれてしまいます。

【よくある間違ったアプローチ】

「健康志向の30代女性向けに、カロリーオフのクッキーを作ろう」

「競合他社が抹茶味を出したから、うちも抹茶味のバリエーションを増やそう」

【ジョブ理論を用いた正しいアプローチ】

その商品は、お客様の生活のどんなシーンで、どんな課題を解決するために「雇用」されるのでしょうか。パッケージデザインや打ち出し方も、このジョブに合わせて変える必要があります。

事例:地方のクラフトソーセージ・ハムのジョブ
単に「地元産の豚肉を使った美味しいソーセージ」として売るのではなく、顧客の生活に目を向けます。

もし顧客が、「金曜日の夜、1週間頑張った自分へのご褒美として、自宅でちょっとした贅沢を味わいたい」というジョブを持っていたとします。このジョブを満たすためには、単にグラム数で売るのではなく、「金曜夜の晩酌セット」としておすすめのクラフトビールと一緒に提案したり、パッケージを高級感のあるデザインにして「ご褒美感」を演出したりするアプローチが有効です。お客様は「肉」を買っているのではなく、「週末の至福のひととき」を買っているのです。

⇒商品開発については、こちらの記事「食品の「新」商品開発や「新」メニュー開発の実務手順・成功法則|企画書・フレームワーク・アンケート活用・OEMまで|小規模な飲食・食料品製造業向け」が参考になります。

3)宿泊業の場合:価格競争から抜け出す顧客体験の作り方

ホテルや旅館などの宿泊業は、OTA(宿泊予約サイト)の普及により、立地、部屋の広さ、価格による厳しい比較競争に晒されています。

【よくある間違ったアプローチ】

「近隣のホテルより1,000円安くして稼働率を上げよう」

「とりあえずアメニティの種類を増やして豪華に見せよう」

【ジョブ理論を用いた正しいアプローチ】

「泊まる(睡眠をとる)」という機能的な価値だけでは差別化できません。お客様が旅行や宿泊を通じて「どんな体験をしたいのか」「誰とどんな時間を共有したいのか」という感情的なジョブに焦点を当てます。

事例:地方の温泉旅館のジョブ
お客様が「両親の金婚式のお祝いで、一生の思い出に残る親孝行をしたい」というジョブで旅館を雇用したとします。この場合、求められているのは単なる広い部屋や豪華な食事だけではありません。サプライズのケーキの手配を手伝ってくれるコンシェルジュの存在や、家族写真を綺麗に撮ってくれるスタッフの気配りなど、「感動的な思い出作りをサポートしてくれること」が最大の価値になります。

旅館側とお客様が一緒になって素晴らしい体験を創り上げる(価値共創)プロセスこそが、価格競争を抜け出し「あなたに頼みたい」と選ばれる理由になります。

第5章:ジョブ理論で「選ばれる理由」(顧客価値)を創り出した支援事例

いかがでしたでしょうか。
ジョブ理論は、決して大企業だけのものではありません。むしろ、お客様との距離が近いスモールビジネス(飲食店、地域の食品メーカー、小規模な宿泊施設など)にこそ、大きな武器となる考え方です。

競合と「価格」や「単純な機能」で戦うのは消耗戦への道です。まずは、あなたの商品やサービスが、お客様のどんな「ジョブ(片付けるべき用事)」のために雇われているのかを、現場の観察と対話から深く探ってみてください。

お客様の本当のジョブを理解し、そのジョブを完璧に片付けるための「顧客価値」を提供できたとき、お客様は単なる消費者ではなくなり、あなたのお店の熱烈なファンになってくれるはずです。ジョブ理論を活用して、独自の「選ばれる理由」を一緒に創り上げていきましょう。

⇒顧客価値については「【事例付】顧客価値(存在価値)とは?選ばれる飲食店・小売店のコンセプトの作り方」で確認しておきましょう、ジョブ理論も顧客価値の発見手法の1つだからです。

1)【事例】温泉旅館が気づいたジョブとは?

ステップ①:利用される状況を観察する
若い夫婦で山間にある宿泊施設に16時にチェックインします。温泉が目的であるので存分に堪能します。その後、18時から1時間程度の時間を掛けて食事をとります。19時以降、とくに明確な目的もなく、淡々と過ごしています。

ステップ②:ジョブ(状況における課題)の認識
食事中の会話に耳を傾けていると、「ごはん食べた後、何する?また、温泉に行く?」との内容が聞こえてきます。「何か、暇つぶしが出来て(時間を費やして)、思い出になるようなことが無いかな・・」といったジョブを抱えているようです。

ステップ③:ジョブを解決や改善できるツール(雇用)を提案する
暇つぶしになるような「夜景を見に行く短時間ツアー」を企画することとしました。ジョブ(暇つぶし)のために、この企画を雇用したのです。

2)【事例】お寿司屋さんが気づいたジョブとは?

ステップ①:webサーフィンで魚のすり身の利用状況を確認する
離乳食では、子供にすり身を提供していることがわかった。子供想いの親の中には、既製品ではなく、魚の切り身を使って、手作りにこだわっている層が多く存在することを知りました。

ステップ②:ジョブ(状況における課題)の認識
食品スーパーで刺身の切り身の売場を観察していると、乳幼児を持つ親が買い物する姿があることに気づきます。手に取っては戻し悩むお母さんに話しかけると、「少し余分かな(多いかな)と思いつつ、食品スーパーで刺身を購入している」旨を知ります。「切り身1つが欲しいのに・・」との心境のようです。

ステップ③:ジョブを解決や改善できるツールを雇用する
「切り身1つが欲しいのに・・」との心境をジョブに設定し開発した商品が以下です。子育てで魚の切り身を1切使って、調理できる個包装タイプを用意しました。もちろん、多くの方に雇用される商品になりました。冷凍で保存が効くのも、インターネット販売としては優れていました。

第6章:ジョブを特定する!実践的な見つけ方とフレームワーク

ここからは、実際にあなたのお店や商品が「どんなジョブで雇用されているのか」を見つけるための具体的なアプローチをご紹介します。

ジョブを見つけるためには、アンケートで「どんな機能が欲しいですか?」と聞くのはNGです。顧客自身も、自分の本当のジョブ(深層心理)に気づいていないことが多いからです。

重要なのは、顧客の「行動の背景にある文脈(ストーリー)」を紐解くマーケティング心理学の視点です。以下の2つの手法を実践してみてください。

1)顧客心理を引き出すインタビュー手法(ストーリーを探る)

顧客に直接話を聞く際は、商品そのものの感想ではなく、「その商品を買うに至った経緯(ストーリー)」を時系列で質問します。まるでドキュメンタリー番組のディレクターになったつもりで深掘りするのがコツです。

きっかけの質問:「一番最初に『こういう商品(お店)が必要だな』と思ったのは、いつ、どんな状況の時でしたか?」

検討プロセス(代替品)の質問:「うちを選んでいただく前、他にどんな選択肢(お店・商品・別の解決策)と迷いましたか?」

雇用の決定の質問:「最終的に、今日、うちの商品を買おう(うちの店に行こう)と決めた決定打は何でしたか?」

解雇の質問:「以前は使っていたのに、使わなくなった商品(行かなくなったお店)はありますか?それはなぜですか?」

これらの質問から、「本当は〇〇したかったけれど、諦めていた」といった、顧客の隠れた不満や妥協(ジョブの種)を見つけ出します。

2)顧客の行動を観察するポイント(ワークアラウンドに注目する)

インタビューが難しい場合は、現場での「観察」が極めて有効です。特に注目すべきは「ワークアラウンド(間に合わせの代替策)」です。

ワークアラウンドとは、既存の商品ではジョブを完璧に片付けられないため、顧客が自分なりに工夫して補っている行動のことです。

飲食店の例:お客様が、定食の小鉢をわざわざ別の料理のソースにつけて食べている。(=「もっと色々な味の変化を楽しみたい」というジョブが隠れているかも)

宿泊業の例:部屋の小さな机に、わざわざ持参したPCスタンドと延長コードを広げて仕事をしている。(=「出張先でもオフィスと同じくらい快適に作業したい」というジョブを満たせていない)

こうした「ちょっと不便そうにしている行動」や「想定外の使い方」の裏には、まだ誰も満たせていない強烈なジョブが隠されています。

第7章:【業種別】今日から使える!ジョブ理論の具体例30選

「ジョブ理論」を自社のビジネスにどう当てはめるか?ここでは、6つの業種別に「顧客が抱えるジョブ(用事)」と、それを解決するための「提供価値(解決策)」の事例をご紹介します。

1)カフェのジョブ理論事例

単なる「美味しいコーヒー」ではなく、空間と時間の使い方がジョブになります。

ジョブ: 「次の商談までの45分間、誰にも邪魔されず資料の最終確認をしたい」

提供価値: 壁を向いた1人用の電源付きカウンター席と、高速Wi-Fiの提供。

ジョブ: 「小さな子供が泣いても周りの目を気にせず、ママ友と息抜きがしたい」

提供価値: 靴を脱いで上がる小上がり(座敷)席や、カフェインレス飲料、子供向け絵本の設置。

ジョブ: 「仕事モードからプライベートモードへ、気持ちをリセットしてから帰宅したい」

提供価値: 温かみのある間接照明とリラックスできるBGM、心を落ち着かせるハーブティーのセット。

ジョブ: 「休日に資格の勉強をしたいが、長居すると店員さんの目が気になってしまう」

提供価値: 「2時間パック」「フリータイム」など、時間制で気兼ねなく滞在できるコワーキング的な料金プラン。

ジョブ: 「SNSで『センスの良い私』をアピールできる、写真映えする体験がしたい」

提供価値: 季節限定の鮮やかなドリンクと、それを撮影するためだけに計算された「専用の撮影スポット(背景)」の用意。

2) 居酒屋のジョブ理論事例

「お酒を飲む場所」の代替品は「家飲み」です。わざわざ足を運ぶ理由(ジョブ)を探ります。

ジョブ: 「部下や同僚と、周りに聞かれずに込み入った仕事の相談をしたい」

提供価値: 完全個室や、横並びで話しやすいL字型のカウンター席の配置。

ジョブ: 「出張の夜、限られた時間で効率よく『その土地ならではの食』を満喫したい」

提供価値: 地元の名物料理と地酒を少しずつ楽しめる「郷土料理お試しセット」と、素材のストーリーを語れるスタッフ。

ジョブ: 「仕事で理不尽なことがあった日、家に帰る前にサクッとストレスを発散したい」

提供価値: 長居無用で立ち寄れる立ち飲みスペースと、最初の1杯が1分以内に出てくるスピード。

ジョブ: 「友人の昇進を、堅苦しくなくサプライズで盛大にお祝いしたい」

提供価値: 花火付きのデザートプレートと、スタッフ全員で盛り上げる活気ある演出。

ジョブ: 「お酒は飲みたいけれど、健康や体型維持の罪悪感は減らしたい」

提供価値: 地場野菜をたっぷり使ったヘルシーなおつまみメニューや、糖質ゼロのドリンクの充実。

3)スイーツ専門店のジョブ理論事例

ケーキや焼き菓子は「感情」を動かすための強力なツールとして雇用されます。

ジョブ: 「家族との約束を破ってしまったので、機嫌を直してもらうためのお詫びがしたい」

提供価値: 特別感のある高級なパッケージと、誰もが美味しいと感じる王道の味(失敗しない選択肢)。

ジョブ: 「1週間ハードな仕事を乗り切った自分に、ささやかなご褒美をあげたい」

提供価値: 金曜日の夕方限定で販売される、少し高価で濃厚な「大人向け」のスイーツ。

ジョブ: 「アレルギーのある孫に、安心してみんなと同じおやつを食べさせたい」

提供価値: 米粉の使用や、原材料がひと目でわかる大きな表示、無添加への徹底したこだわり。

ジョブ: 「ホームパーティーの手土産として持参し、その場で会話の主役にしたい」

提供価値: 切り分けると中からソースが溢れ出すなど、動画に撮りたくなるような「動き(エンタメ性)」のあるスイーツ。

ジョブ: 「観光地を歩きながら、手軽に甘いものを楽しみたい」

提供価値: 片手で持ちやすく、絶対に服を汚さない工夫がされたパッケージデザイン。

4)宿泊業のジョブ理論事例

「寝るための部屋」の提供から、「誰とどんな思い出を作るか」という価値共創へシフトします。

ジョブ: 「両親の金婚式で、一生の思い出に残る親孝行旅行をプレゼントしたい」

提供価値: サプライズの手配から家族写真の撮影までを専属でサポートするコンシェルジュサービス。

ジョブ: 「大自然の中で、スマホや仕事の通知から完全に解放されたい(デジタルデトックス)」

提供価値: あえて客室にテレビや時計、Wi-Fiを置かず、読書や自然の音を楽しむための設備の充実。

ジョブ: 「赤ちゃん連れの初めての旅行で、とにかく『不安』と『荷物』を減らしたい」

提供価値: おむつ用のゴミ箱、調乳ポット、離乳食の提供、レンタルベビーカーなど、手ぶらで来られるプラン。

ジョブ: 「ただの観光ではなく、その地域の『日常』や『文化』に深く触れる体験がしたい」

提供価値: 地元の農家での収穫体験や、近隣のクラフトビール醸造所の見学など、地域事業者と連携したアクティビティ。

ジョブ: 「リフレッシュしつつ、溜まった仕事も集中して片付けるワーケーションをしたい」

提供価値: 客室内の長時間の作業に耐えるオフィスチェア、デュアルモニターの貸し出し、高速回線。

5)食品メーカー・食料品製造業のジョブ理論事例

スーパーや通販で「なんとなく」ではなく「指名買い」されるための文脈作りです。

ジョブ: 「週末の自宅でのBBQを、準備の手間をかけずにワンランク上の体験にしたい」

提供価値: 味付け済みで焼くだけの極太クラフトソーセージを「本格BBQセット」として提案。

ジョブ: 「リモートワーク中のお昼休み、短時間で『ちゃんとした食事』をとった満足感が欲しい」

提供価値: レンジで温めるだけで、お店のようなコシと本格的な出汁が味わえる高品質な冷凍うどん。

ジョブ: 「お中元・お歳暮で、ありきたりなものではなく『相手の健康を気遣う気持ち』を贈りたい」

提供価値: 素材の栄養素を活かした無添加のジュースや加工食品に、生産者の想いを綴ったストーリーカードを添える。

ジョブ: 「深夜にどうしても小腹が減るが、翌朝の胃もたれや罪悪感は避けたい」

提供価値: 低カロリー・高タンパクな素材を使用し、あえて「少量で食べきりサイズ」に設計したスナック。

ジョブ: 「ただ消費するだけでなく、作り手の挑戦や地域のストーリーを応援している実感が欲しい」

提供価値: 地場産品を活かしたクラフトビールなど、製造過程をSNSで透明化し、ファンが参加できるコミュニティの運営。

6)農業のジョブ理論事例

農産物を「キログラムあたりの単価」で売るのではなく、顧客の生活課題の解決策として売ります。

ジョブ: 「離れて暮らす高齢の両親に、いつまでも元気でいてほしいという願いを届けたい」

提供価値: 滋養強壮のイメージが強い自然薯(じねんじょ)を高級感のある木箱に入れ、美味しい食べ方のレシピと共に贈答用として販売。

ジョブ: 「野菜嫌いな3歳の子供に、なんとか自分から進んで野菜を食べてほしい」

提供価値: フルーツのように糖度を高めたミニトマトを、「はじめてのあまいトマト」という子供向けパッケージで展開。

ジョブ: 「週末の料理で、まるでプロのシェフになったような特別な気分を味わいたい」

提供価値: スーパーでは見かけない珍しい西洋野菜(ロマネスコなど)の詰め合わせに、見栄えのする本格レシピを同梱。

ジョブ: 「取引先への手土産で、お菓子ではなく『センスが良い』と驚かれるものを探している」

提供価値: 桐箱に入った、形・色・糖度が完璧に管理された「宝石のような一粒のイチゴ」などの超高級フルーツ。

ジョブ: 「スーパーの野菜ではなく、誰がどうやって育てたかわかる安心な食材を家族に食べさせたい」

提供価値: 定期便(CSA)で季節の野菜を届けながら、毎月農園の様子や農家からの手紙(ニュースレター)を同封し、顔の見える関係を築く。

第8章:【Q&A】ジョブ理論に関するよくある質問

ここでは、ジョブ理論を学ぶ上でよくいただく疑問に、一問一答形式でわかりやすくお答えします。

Q. ジョブ理論とは一言でいうと何ですか?
A. 「お客様は商品そのものが欲しいのではなく、自分が抱えている『用事(ジョブ)』を解決するために商品を『雇っている(買っている)』」と考えるマーケティングのフレームワークです。「ドリルを買う人が欲しいのは、壁の穴である」という言葉が本質を表しています。

Q. 有名な「ミルクセーキの事例」とはどのようなものですか?
A. ファストフード店がミルクセーキの売上を伸ばす際、「味」ではなく「いつ・誰が・なぜ買っているか」を観察した事例です。結果、早朝の通勤客が「退屈な運転時間を紛らわし、腹持ちを良くする」というジョブのためにミルクセーキを雇っていることを突き止め、売上増に繋げました。

Q. ペルソナ(ターゲット設定)とジョブ理論の違いは何ですか?
A. ペルソナは「30代女性・会社員」のように顧客の「属性」に注目します。一方、ジョブ理論は「金曜日の夜に一息つきたい」といった顧客の「状況と目的(片付けたい用事)」に注目します。属性が違っても、同じジョブを持っていれば同じ商品が買われます。

Q. ジョブ理論は古いと聞きましたが、今でも通用しますか?
A. 提唱されてから時間は経ちますが、全く古くありません。むしろ、モノが溢れ、機能や価格での差別化が限界を迎えている現代において、顧客の「心理」や「体験」にフォーカスするジョブ理論は、これまで以上に重要視されています。

Q. ジョブ理論とデザイン思考はどう関係していますか?
A. 非常に相性が良いです。デザイン思考の最初のステップである「顧客への共感(課題発見)」において、顧客が本当に求めている本質的な課題(ジョブ)を特定するために、ジョブ理論の考え方がそのまま活用できます。

Q. ジョブを見つけるための実践的なフレームワークはありますか?
A. シンプルな構文として、「私は(状況・文脈)のときに、(成し遂げたい進歩・結果)をしたい。なぜなら(個人的な動機・感情)だからだ。」という穴埋め形式のフレームワークがおすすめです。この空白を埋めることで、商品開発や販促の軸がブレなくなります。

★顧客価値を動画でも学べます

参考:日刊工業新聞社賞 受賞論文

存在価値の見つけ方の参考に御利用ください。

初稿:2021年11月10日

加筆修正:2024年2月3日 、2025年2月24日、2026年3月17日

⇒商工会や商工会議所向けセミナーについて

チラシ作成等にかかわるセミナーは、2010年の創業以来290回(2026年3月3日現在)を超え、大変、好評です。内容の深さは、本ブログ記事より更に実務よりになり、会員さんに、きっと楽しんでいただけると思います。ぜひ、ご検討の一助にしていただけますと幸いです。

例えば、秋田県商工会連合会、神奈川県商工会連合会などの各商工会で実施時には、とてもリーズナブルと評価をいただいています。お気軽に御予算で御相談ください。

⇒コンサルティングメニューについて

当社は、初回相談は無料となっています。何かご不明な点がありましたら、お気軽にお問合せください。なお、2回目以降は有料ですが、小規模な事業者や中小企業の方々には、比較的リーズナブルにお見積りしています。

また、所属されている商工会や商工会議所で、私を御指名いただければ、安価に当方に御相談いただける場合もあります。担当の経営指導員の先生方に御相談ください。

⇒マーケティング実践研究の勉強会を全国で開催(個別相談・無料)

適時、無料で参加できる勉強会を全国で実施しています。我が事務所には、飲食業、食料品製造業、食料品卸売業、食料品小売業、農業、漁業、宿泊業に精通した熟練のマーケティング実行支援担当が4名在籍しています。開催地によって担当の先生は異なりますが、これまで、とても好評でした。ふるって御参加ください。くわしくはこちらをクリック(⇒無料で参加できるマーケティング実践勉強会)

⇒社員研修の御案内

商品開発やマーケティング担当者には、創造性豊かなアイデア起案力の養成が必要です。全国でアイデア発想をトレーニングする実務者向けの研修メニューがございますので、お気軽に御相談ください。

== 代表の久保のSNS ==

⇒X
⇒Facebook
⇒Instagram

==お知らせ==

他にも人気の記事はこちらです。

飲食店や食品メーカー(製造業)の集客や販促策の記事

飲食店のメニュー開発や食品メーカー(製造業)の商品開発の記事

久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。

講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。

2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。

近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。

主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。

売上を伸ばすことで
1)根本的な経営改善をしたい
2)資金繰りを改善したい
3)知恵やスキルを身につけたい

そのようにお考えの方は、
是非、お気軽にお問い合わせください。

※メールは24h受け付けています。

おすすめ記事

書籍

PAGE TOP