田舎や地方飲食店のゴースト・レストランやセントラルキッチンの開業準備のポイント

今回は、感染症影響下で相談が多い「ゴーストレストラン」の開業までに「必ず準備」しておきたいことについて紹介します。これまで5件お手伝いしましたが、試行錯誤の末、田舎で成功する再現性を整理できましたので、少々、紹介したいと思います。

念のため確認です。ゴースト・レストランは別名「バーチャルレストラン」「クラウドキッチン」とも呼ばれています。お客様を迎え入れる席を用意することもなければ、接客スタッフも不要です。

つまり、ゴースト・レストランに必要なものは、調理用のキッチンと、調理する人のみです。一般的には、「Uber Eats」「出前館」「LINE デリマ」等々のフードデリバリーサービス業者を通じて注文が入り、料理を作る、そして、この業者に手渡すということですが、支援していて実感するのはデリバリー手数料のランニングコストが高いこと。

ですから、これから開業しようと考えている方は、出来れば、設定商圏内は、自前でデリバリーできる体制を構築することをおススメします。ただし、これは田舎に限った話で、都心部はおススメしません。都心部は、融通の利くデリバリーサービス業者を利用した方が良いでしょう。

地方や田舎の場合、まだまだ、これら事業者の流通網は発達していません。ですから、今のうちに、自前デリバリーを確立しておけば、大きな参入障壁になります。中華なのか、イタリアンなのか、はたまた特定の料理なのかに限って、圧倒的に踏ん張って、先行者の優位性を確保したいところですね。

補助金利用で導入したいデリバリーバイク

開業当初は、まるまる1人を雇用すると厳しいですから、事業が軌道に乗るまでは、起業者=料理人=デリバリー者という振る舞いを頑張りたいところです。

ただし、これを実現するには、以下の観点でオペレーションを綿密に組み上げなければなりません。

・受注時間と納品時間に制約を設けること

・調理する時間を確保し、その時間はデリバリーはしないこと

つまり、ランチ時間とディナー時間に配達を行うことを考え、例えば以下のようなタイムスケジュールを組むということです。

・ランチ:午前8時受付締切、午前8時~11時調理、午前11時以降デリバリー

・ディナー:午後13時受付締切、午後13時以降~16時30分迄調理、午後16時30分以降デリバリー

これで疑問がわくと思うのですが、料理が冷めてしまうのでは?

支援先では大きく「2つの料理」パターンでメニュー構成し、成功しています。

・温かい料理は使い捨て保温容器で対応

 ここは腕の見せ所です。ポイントは熱くて美味しい料理を開発するのではなく、温かくて美味しい料理を開発することです。また電子レンジ対応可容器利用で、温めてもらうことも視野に入れても良いです。

・冷めて美味しい料理を用意

 これは言葉通りです。ただ仮にギンギンに冷やして美味しいものであれば、氷を別途用意して提供すると良いです。例えば汁物であれば、その汁を別途凍らしておくのです。「お好みでどうぞ」と無料サービスとすれば、法的に問題になりません。

さて、以下に大まかな他の論点も記載しておきますので、参考にされてください。

①食品衛生責任者の資格取得
 一般の飲食店と同様に「食品衛生責任者」の資格が必要です。この資格は食品衛生協会で6時間の講習(受講料は10,000円前後)を受ければ取得できます。

 無論、管理栄養士、栄養士、製菓衛生士などの資格を持っている場合は講習が免除されます。

②商圏人口から立地と物件
 基本的に、設定する商圏人口の分布を確認し、商圏人口が多い地に物件を確保できると良いです。田舎の場合、人口分布は山間部等の影響で、偏りが明確ですから、一目瞭然です。わからない場合は、統計局のe-statなどで確認できます。 

 物件は居抜きを狙いたいですね。田舎や地方だと随分前に閉店し、放置されたお店も多数、散在しています。物件ありきで逆に不動産屋さんに相談したり、直接大家さんに相談するのもありです。特に田舎の場合、住居が隣接している居抜き物件が多いです。高齢で出来ないから閉めているといった物件は、特に狙い目です。初期投資が抑えれるばかりか、家賃も安く済む事例が多いです。

③Wi-Fiなどのインターネット環境について
 田舎では、特に絶対とは思いませんが、顧客層に60歳以下がいれば、必須です。注文時の応対のやり取りを省くためには、web受注のシステム利用は準備したいところ。一方、高齢者には、電話が1番だと判断します。また事前予約も期待できますので、紙媒体でも可能にしたいですね。店頭にポスティングできるようにしておくなど。

④「飲食店営業許可」や「そうざい製造業許可」について
 飲食店営業許可でも充足できますが、業を拡げていくためには、最初から「そうざい製造業許可」をおススメします。これがあると、例えば近くの道の駅や土産物店に卸したり、食品スーパーに卸したり、何かと商売の幅が広がるからです。

久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。

講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。

2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。

近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。

主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。

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