「今の飲食店の売上だけに頼るのは不安。レジ横で自家製ドレッシングを売ったり、お弁当のテイクアウトを強化したりしたい。でも、今の『飲食店営業許可』だけで大丈夫なのだろうか……?」
そう悩んでいませんか?
例えば、当所の支援先に居酒屋が沢山ありますが、それらの6割の現場で、過去に「お刺身を冷凍して販売したいのだが、法的に可能なのか?」といった相談があったのを思い出します。

せっかくの素晴らしい商品があっても、知らずに無許可で販売してしまえば「営業停止」などの大きなリスクを背負うことになります。逆に、ルールさえ知っていれば、今の設備ですぐに始められる物販もたくさんあります。
この記事では、「飲食店が物販を始めるために必要な許可の境界線」を、数ある支援を行ってきた視点で、どこよりも分かりやすく解説します。読み終える頃には、あなたが次に何をすべきか、保健所に何を相談すべきかが明確にわかっているはずです。
しかしながら、通常に戻った現在、食品類の物販で実施できること、出来ないことについて、整理しておく必要があるなと思い、以下に整理しました。
1.【要約】物販の許可・不要リスト
お急ぎの店主様のために、まずは結論をまとめました。自分の売りたいものがどこに該当するかチェックしてみてください。
| 販売したいもの | 新たな許可は必要? | 注意点・条件 |
| 料理のテイクアウト | 原則不要 | 店内で提供しているメニューを容器に入れて手渡す場合。 |
| 仕入れた既製品 | 原則不要 | パッケージ済みの菓子や調味料を、未開封のまま販売する場合。 |
| 店で作ったお菓子・パン | 必要 (菓子製造業) | クッキー、ケーキ、パンなどを袋詰めして販売する場合。 |
| 自家製冷凍食品 | 必要 (冷凍食品製造業) | 料理を冷凍して長期保存できる状態で販売する場合。 |
| 精肉・鮮魚のそのまま販売 | 必要 (食肉・魚介類販売業) | 調理前の生肉や鮮魚をそのままパック詰めして売る場合。 |
| お酒のボトル販売 | 必要 (酒類販売業免許) | 店内のグラス提供ではなく、未開封の瓶や缶を売る場合。 |
飲食店の食品の物販で出来ることは「料理そのもののテイクアウト、食品表示が既にあるものを仕入れた場合(その仕入れたものを封を空けていないもの)の袋や容器入りのもの、農作物を仕入れているのであれば、そのまま販売すること」になります。一方、出来ないことは「酒類を仕入れて販売、精肉を仕入れて販売、鮮魚を仕入れてそのまま販売等々」です。
2.テイクアウト(お持ち帰り)は原則として新たな許可は不要
飲食店ですから、御店で調理して店内で提供しているものがあります。グランドメニュー表にある種々の料理です。こちらは店内での受け渡しであれば、テイクアウトは無許可で実施できます。
3.既製品(仕入れ品)の販売:パッケージの封を切らなければ許可不要
話をわかりやすくすると、裏面表示が既にあるものであれば物販は可能です。裏面表示とは、要するに下記の画像のようなものです。![]()
なお、裏面表示があるからといって、冷凍食品は販売できません。営業許可をとる必要があります。営業許可の申請は各都道府県の保健所で行われています。
4.冷凍食品の販売には「製造業」の許可や届出が必須
店内で提供している主力メニュー(料理)を、冷凍食品で提供したいという御相談も多々あります。この場合は、行う内容に応じて、営業許可や届出が必要になります。以下に概要をまとめておきます。
(許可の種類)
・冷凍食品製造業の営業許可
半加工品などのお惣菜を冷凍食品として製造する場合に必要です。
・複合型冷凍食品製造業の営業許可
複数の種類の冷凍食品を製造する場合に必要です。具体的には、冷凍食品の製造に加えて、以下のいずれかの食品製造業も行う場合に必要となる許可です。
食肉処理業、菓子製造業、水産製品製造業、麺類製造業、
以前の食品衛生法では、これらの複数の業種を営む場合、それぞれの許可を個別に取得する必要がありました。しかし、2021年の法改正により、複合型冷凍食品製造業の営業許可を取得すれば、これらの追加許可が不要となりました。
(許可取得の要件)
・食品衛生責任者の資格
食品衛生責任者の資格が必要です。資格取得には、養成講習の受講または特定の資格(調理師、栄養士など)が必要です。
・施設基準
施設の構造、設備、衛生管理などが都道府県の基準を満たしている必要があります。これは保健所等に、御相談されることが近道になります。この基準は、共通基準と特定基準に分かれます
・HACCPに基づく衛生管理
HACCP(危害要因分析重要管理点)に基づいた衛生管理計画の作成と実施が必要です。
2021年より、すべての食品事業者に「HACCPに沿った衛生管理」が義務化されました。 冷凍食品の販売を始める際は、これまでの飲食店としての管理計画に加え、製造工程における温度管理などの記録も必要になります。 難しく聞こえるかもしれませんが、保健所が配布している手引書に沿って記録をつけるだけで対応可能です。
なお、既製品(袋詰め未開封)の冷凍食品を仕入れて販売する場合もありますね。このような場合は、保健所への届出が必要になります。
5.野菜などの農産物はOKだが、精肉・鮮魚の販売には別許可が必要
調理に使っている農作物を、せっかくなので販売したいといった声もあります。その場合、例えば、レタスなどを1/2にカットしたりする等、加工したものは販売できません。惣菜製造の許可が必要になります。また、精肉の販売も原則出来ません。食肉販売業の許可が必要になります。魚貝類の販売も出来ません。魚貝類販売業の許可が必要です。
6.精肉を販売する際の許認可
例えば焼肉屋さんのような飲食店で、御相談が多いものが、精肉をテイクアウトして良いのか、販売して良いのかです。こちらは、別途こちらの記事で紹介しています。御利用ください。
⇒焼肉屋がメニューで取り扱っている精肉を小売(物販)する手順とポイント
7.飲食店が物販してはいけないものを整理
保健所等の行政の許可が無いと物販出来ないものは、酒類、冷凍食品、精肉、魚介類等の鮮魚です。ただし、許可取得は難しくありません。要するに、保健所等の指示にしたがって、冷蔵庫、冷凍庫等々の必要な設備を別途用意するなどです。
8.【重要】保健所がチェックする「設備」のポイント
物販(特に製造業)の許可を新しく取る場合、保健所は店舗の「ハード面(設備)」を厳しくチェックします。後から「工事が必要」と言われないための、実務的な3つのチェックポイントです。
1)「手洗い場」の蛇口を確認
食中毒対策が強化され、現在は「非接触型(センサー式)」や「足踏み式」の蛇口が推奨(自治体によっては必須)されています。昔ながらのひねるタイプの蛇口だと、物販の許可が下りない可能性があるため注意が必要です。
2)「二層シンク」のルール
飲食店営業とは別に「菓子製造業」などを取る場合、調理用とは別に「器具洗浄専用のシンク」を分けるよう指導されるケースが多いです。厨房の広さに余裕があるか、図面を持って事前に保健所に確認しましょう。
3)「温度計」の見やすさ
冷蔵庫や冷凍庫には、「外から扉を開けずに温度が確認できる温度計」の設置が求められます。中身を冷やすだけでなく、適切に管理されていることを「見える化」することが物販許可の条件になります。
9.迷ったらどこに相談すべきか?
許可が必要か迷ったら、まずは「管轄の保健所」へ相談をすると良いでしょう。インターネットの情報だけでは、ご自身の店舗で「今の許可のまま売っていいのか」を判断しきれない場合があります。
• 相談先: 店舗の所在地を管轄する保健所(食品衛生課など)
• 持参するもの: 現在の「飲食店営業許可証」と、売りたい商品の「具体的な内容(原材料や包装形態)」がわかるメモ
「無許可で販売していた」というリスク(営業停止や罰則)を避けるためにも、 事前の確認がもっともスムーズで安上がりな方法です。自力での申請が不安な場合は、営業許可申請に詳しい行政書士へ代行を依頼するのも一つの手です。
10.物販で多様される(導入される)設備について
これから、自社で物販を製造していこうと思う際、必ず設備投資が必要ですね。小規模事業者が頻繁に利用される物販用の設備について、別途、相場とともに説明しましたので、ぜひ、以下をご活用ください。
⇒「飲食店が物販参入に必要な設備とは?真空包装機と急速冷凍庫をはじめ18選・導入費用と選び方(補助金申請の参考に)」
11.よくある質問(FAQ)
店主様が特に迷いやすいポイントに回答しました。
Q. 店で出しているワインが好評なので、ボトルで販売してもいいですか?
A. 飲食店営業許可とは別に「酒類販売業免許」が必要です。
飲食店営業許可は「グラスに注いで提供する」ためのものです。ボトル(未開封)のまま販売して持ち帰ってもらうには、税務署が管轄する別の免許が必要になります。
Q. 代表者が私(個人)から息子に変わります。許可は引き継げますか?
A. 原則として「新規申請」または「承継届」が必要です。
2021年の法改正により、相続や合併による承継はスムーズになりましたが、単なる名義変更(譲渡)の場合は、一度廃止して取り直す必要があります。タイミングが重要ですので、事前にご相談ください
Q. 物販を始めるなら「HACCP(ハサップ)」の計画も作り直しですか?
A. はい、物販の工程を含めた管理計画に更新する必要があります。
飲食店としての衛生管理に加え、「包装」や「表示(ラベル貼り)」、「発送時の温度管理」など、物販特有の工程を計画に盛り込み、日々記録をつける必要があります。
最後に:その「物販」、無許可でのスタートになっていませんか?
ここまで、飲食店が物販を行う際のルールについて解説してきました。
「意外と簡単に始められそうだ」と感じた方もいれば、「自分の店の場合はシンクを増やさないとダメなの?」と不安になった方もいらっしゃるでしょう。
実は、飲食店経営において「物販の許可」に関する判断ミスは、もっとも避けたいリスクの一つです。
万が一、無許可で製造・販売を行ってしまうと、保健所の指導による営業停止や、お客様からの信頼失墜など、取り返しのつかない事態を招きかねません。また、独断で工事を進めてしまい、後から「基準を満たしていないのでシンクをやり直してください」と言われ、余計なコストが発生してしまうケースも少なくありません。
「自分のお店の場合は、今の許可でどこまでできるのか?」
「最小限のコストで物販を始めるには、どう動くのが正解か?」
当事務所では、これまで数多くの飲食店の売上アップと法的リスクの回避をサポートしてきました。
ネットの情報だけで判断し、一人で悩む時間はもったいないです。まずは一度、あなたの店舗の状況をお聞かせください。
初稿:2019年1月10日
加筆修正:2024年3月9日 、2025年3月3日
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飲食店のメニュー開発や食品メーカー(製造業)の商品開発の記事
久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。
講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。
2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。
近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。
主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。













