少し古いですが、平成 29 年度生活衛生関係営業経営実態調査(厚生労働省)
これに今回は注目してみます。
この中で例えば、うどん店、蕎麦店の実態と経営上の問題点・課題が整理されている部分を見ていきます。何か特定のメニューや業態を選んで、この記事のタイトルを展開した方がわかりやすいと思ってのことです。
私が個人的に着眼しているのは(図 8)
立地条件別の施設当たり 1 日平均客数を見ていきましょう。
総数1 日平均来店客数は 53.6 人。
1 日平均客数が最も多い立地は、「その他」の地域を除くと、
「工場・オフィス街」で 73.5 人、次いで「郊外」で 64.5 人となっています。
それから(図 10)
立地条件別 施設当たり客 1 人平均食事単価を見て行きましょう。
総数でみると 956.7 円、
立地条件別にみると、「郊外」が最も高い 1,021.9 円、
次いで「商業地区」が958.4 円となっています。
一方、最も低いのは「工場・オフィス街」で 839.0 円となっています。
*コロナウイルス感染症拡大前の2次データであることに留意してください
コロナ禍において、1番苦戦した立地は、工場・オフィス街、次いで商業地区でしょう。また、コロナ禍においてテイクアウトの売上の恩恵を1番受けた立地は 住宅地区になります(種々の2次データより)。やはり、お住まいから近い御店から テイクアウトするのが主でしたから。
工場・オフィス街のテイクアウトは、ランチでしょうが、住宅地区は、ランチ、ディナーと2度チャンスありました。商業地区は、外出自粛の影響が甚大で、完敗な様相です。
さて、ここで考えたいのは「売上=客数×客単価」の視点です。全ては説明しませんが、例えば
商業地区=61.2人×958.4円=58,654円
住宅地区=42.8人×942.3円=40,330円
工場・オフィス街=73.5人×839.0円=61,666円
この数字を解釈すると、工場・オフィス街については、昼を中心とした低価格攻勢、つまり安かろう相応が求められてそうですね。商業地区や住宅地区の場合は、客単価大差無いとすれば、商業地区は店頭の「通行客多少」が売上に影響しています。住宅地区は、設定した商圏(立地商圏)の「住民数」が大きく影響することでしょう。
*いろいろな見方が出来ますが結局、住宅地は商業地区客や工場・オフィス客が来ない側面があります
このように解釈すると、1番リスクが少なそうな立地は 住宅地区?と考察することもできそうです。
何よりも変動費であり固定費の賃料が、種々の2次データで比較してみると、住宅地区は群を抜いて安いです(賃料が1番安いエリアは住宅地区です)
つまり、損益分岐点も低くなる傾向なので、儲けやすいということです。住居地が近いので、パートやアルバイトも、場合によっては調達しやすいかもしれません。
コロナ禍で、1番打撃を受けたのは商業地区、工場・オフィス街。
テイクアウトで一矢報いることが出来ていたのは 住宅地区(種々の2次データより)とのことです。
久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)
加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。
講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。
2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。
近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。
主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。