飲食店の朝食時間の集客や販促で役立つマーケティング心理学

今回は、飲食店の朝食時の集客や販促で、少し知っておくと役に立つマーケティング視点からの『心理学』(マーケティング心理学)の概念や施策のアイデアを紹介します。

朝食集客のポイントは、健康意識、1日への自分への期待(鼓舞)等が背景にあります。

以下に示すアイデアは、あくまで、支援先の現場で、何かしらの背景や情景を浮かべて、考えたものなので、そのまま皆様のお店に利用しても、まったく効果を感じないこともあるかと思います。

そこで、示すアイデアや施策には、その根拠となる学術的な論文や書籍などを紹介しますので、その論点を学んだ上で、皆様の御店ならではの施策に落とし込んでいただければと思います。

なお、施策やアイデアは、小規模事業者でも導入しやすい、SNS(Instagram/LINE)、店頭ボード、チラシ、メニュー表の工夫を中心とした施策です。

では、始めましょう。

① デコイ効果(おとり効果)による「松竹梅」メニュー

アイデア: 朝食セットを「Aセット(トースト・コーヒー)500円」と「Bセット(A+サラダ+ヨーグルト)800円」に加え、「Cセット(B+高級スムージー)1200円」を用意する。

説明: 一番売りたい「Bセット(800円)」を選ばせるための施策です。高額なCセットが「おとり(Decoy)」となり、比較対象としてBセットが「妥当でお得」に見える心理状況を作り出します。メニュー表やSNSで3つ並べて提示します。

参考文献: Huber, J., Payne, J. W., & Puto, C. (1982). Adding Asymmetrically Dominated Alternatives: Violations of Regularity and the Similarity Hypothesis. Journal of Consumer Research, 9(1), 90–98.

② 単純接触効果(ザイアンス効果)の活用

アイデア: Instagramのストーリーズで、毎朝同じ時間(例:朝6時)に「今日の焼き立てパン」や「湯気の立つコーヒー」の動画を投稿し続ける。

説明: 興味がなかった対象でも、何度も目にすることで好感度が高まる現象です。通勤中の顧客のスマホに毎日「朝のシズル感」を届けることで、選択肢に入る確率を高めます。

参考文献: Zajonc, R. B. (1968). Attitudinal effects of mere exposure. Journal of Personality and Social Psychology, 9(2, Pt.2), 1–27.

③ アンカリング効果による価格設定

アイデア: 店頭看板の一番上に「プレミアムモーニング 1,500円」を大きく書き、その下に「定番モーニング 600円」を書く。

説明: 最初に見た数字(1,500円)が基準(アンカー)となり、その後の600円が「非常に安い」と感じられます。これにより、心理的な支払い抵抗を下げて入店を促します。

参考文献: Tversky, A., & Kahneman, D. (1974). Judgment under Uncertainty: Heuristics and Biases. Science, 185(4157), 1124–1131.

④ バンドワゴン効果(社会的証明)

アイデア: 店頭のブラックボードやウェブサイトに「地域で一番選ばれている朝食です」「毎朝50人が食べているトースト」と具体的な数字で記述する。

説明: 「みんなが選んでいるものは良いものだ」と判断する心理です。特に朝の忙しい時間帯、失敗したくない顧客は他者の選択を判断基準にします。

参考文献: Leibenstein, H. (1950). Bandwagon, Snob, and Veblen Effects in the Theory of Consumers’ Demand. The Quarterly Journal of Economics, 64(2), 183-207.

⑤ 希少性の原理

アイデア: 「朝8:00までの入店限定」「1日限定10食のフレンチトースト」とチラシやSNSで告知する。

説明: 手に入りにくいものほど価値が高いと感じる心理です。「今行かないと損をする」という感情を刺激し、朝の重い腰を上げさせます。

参考文献: Cialdini, R. B. (2009). Influence: Science and Practice. Pearson Education.

⑥ 返報性の原理

アイデア: 店頭で通勤客に対し、小さなカップで「一口コーヒー」や「焼き菓子の一欠片」を無料で配る。

説明: 何かをもらうと「お返しをしなければならない」と感じる心理です。試飲を受け取った流れで、「じゃあ一杯飲んでいこうか」という入店動機を作ります。

参考文献: Gouldner, A. W. (1960). The Norm of Reciprocity: A Preliminary Statement. American Sociological Review, 25(2), 161–178.

⑦ ゴール勾配効果(目標勾配効果)

アイデア: 朝食専用のスタンプカードを作成し、最初のスタンプをあらかじめ2つ押しておく。

説明: ゴールが近づくほどモチベーションが上がる心理です。白紙のカードよりも、すでに進行していると感じさせることで、リピート来店(ゴール到達)への意欲を高めます。

参考文献: Kivetz, R., Urminsky, O., & Zheng, Y. (2006). The Goal-Gradient Hypothesis Resurrected: Purchase Acceleration, Illusionary Goal Progress, and Customer Retention. Journal of Marketing Research, 43(1), 39–58.

⑧ 選択のパラドックス(ジャムの法則)の回避

アイデア: 朝食メニューを「A:和食」「B:洋食」の2種類だけに絞り、詳細は選ばせない。

説明: 選択肢が多すぎると、顧客は選ぶことにストレスを感じ、結果的に購入をやめてしまう現象です。朝の脳が覚醒していない時間帯こそ、選択肢を極限まで減らすことが親切であり、注文率向上につながります。

参考文献: Iyengar, S. S., & Lepper, M. R. (2000). When choice is demotivating: Can one desire too much of a good thing?. Journal of Personality and Social Psychology, 79(6), 995–1006.

⑨ フレーミング効果(強調点の転換)

アイデア: メニューの説明で「脂質10g」と書くのではなく、「90%ノンオイル調理」と表記する。

説明: 同じ事実でも、表現の枠組み(フレーム)を変えることで受け取り方が変わります。朝食において「健康」は重要なキーワードであるため、ポジティブな側面を強調します。

参考文献: Tversky, A., & Kahneman, D. (1981). The framing of decisions and the psychology of choice. Science, 211(4481), 453–458.

⑩ シズル感と感覚マーケティング(Sensory Marketing)

アイデア: 排気ダクトの位置を調整したり、ドアを開放して、コーヒーやパンの「香り」を通りに流す。SNSでは「咀嚼音」を入れた動画をアップする。

説明: 視覚だけでなく、嗅覚や聴覚に訴えることで、本能的な欲求を刺激します。特に嗅覚は記憶や感情と直結しており、強力な誘引効果があります。

参考文献: Krishna, A. (2012). An integrative review of sensory marketing: Engaging the senses to affect perception, judgment and behavior. Journal of Consumer Psychology, 22(3), 332–351.

⑪ 損失回避性(プロスペクト理論)

アイデア: SNSの告知で「美味しい朝食を食べましょう」ではなく、「朝食を抜いて、午前中のパフォーマンスを落としていませんか?」と問いかける。

説明: 人は利益を得る喜びよりも、損失を被る苦痛の方を大きく感じます。「損(パフォーマンス低下)」を回避するための解決策として朝食を提案します。

参考文献: Kahneman, D., & Tversky, A. (1979). Prospect Theory: An Analysis of Decision under Risk. Econometrica, 47(2), 263–291.

⑫ ハロー効果(後光効果)

アイデア: 「地元農家〇〇さんの野菜使用」「〇〇コンテスト受賞の卵」など、一つの際立った肯定的特徴を大きくアピールする。

説明: ある対象の目立った特徴に引きずられて、全体の評価も高くなる現象です。「卵が良いなら、コーヒーもパンも全てこだわっているに違いない」と全体評価を底上げします。

参考文献: Thorndike, E. L. (1920). A constant error in psychological ratings. Journal of Applied Psychology, 4(1), 25–29.

⑬ プライミング効果(先行刺激)

アイデア: 店内のBGMを小鳥のさえずりや爽やかなボサノバにし、壁には朝日やオレンジ色のポスターを貼る。

説明: 先行する刺激(音や色)が、その後の判断や行動に無意識に影響を与えます。「爽やか」「活発」というプライミングを与えることで、朝食への購買意欲や、店内の居心地の良さを高めます。

参考文献: Bargh, J. A., Chen, M., & Burrows, L. (1996). Automaticity of social behavior: Direct effects of trait construct and stereotype activation on action. Journal of Personality and Social Psychology, 71(2), 230–244.

⑭ 双曲割引(現在志向バイアス)

アイデア: 店頭に「注文から提供まで3分以内お約束。遅れたら無料」と掲示する。

説明: 将来の大きな利益より、直近の小さな利益(すぐに食べられる、遅刻しない)を優先する心理です。朝の忙しい時間帯において「速さ」という即時報酬を確約することは、味以上の集客要因になります。

参考文献: Laibson, D. (1997). Golden Eggs and Hyperbolic Discounting. The Quarterly Journal of Economics, 112(2), 443–477.

⑮ ピーク・エンドの法則

アイデア: 会計後、帰り際に「いってらっしゃいませ!」の元気な声と共に、「1日がんばってください!」といったメッセージカードを手渡す。

説明: 経験の評価は「絶頂期(ピーク)」と「終了時(エンド)」の印象で決まるという法則です。去り際の印象を最高にすることで、「また来たい(良い朝だった)」という記憶を定着させます。

参考文献: Kahneman, D., Fredrickson, B. L., Schreiber, C. A., & Redelmeier, D. A. (1993). When More Is Less: The Significance of the End in the Intuitive Valuation of Temporal Experiences. Psychological Science, 4(6), 401–405.

⑯ 一貫性の原理(コミットメント)

アイデア: 「朝活宣言」キャンペーンを行う。SNSで「来週は〇回朝食を食べに行きます」と宣言(コメント)した人にクーポンを渡す。

説明: 人は一度宣言したことや決定したことに対して、一貫性を持たせようとする心理が働きます。自ら宣言させることで、来店確率を劇的に高めます。

参考文献: Cialdini, R. B. (2001). Influence: Science and Practice. Allyn and Bacon.

⑰ 権威への服従(オーソリティ)

アイデア: メニューに「管理栄養士監修 バランス朝食」「店主(職人歴30年)が毎朝焼くパン」と肩書きを明記する。

説明: 専門家や権威ある人物の言葉を無条件に信頼しやすい心理です。特に健康に関わる朝食では、「プロのお墨付き」が安心感と集客を生みます。

参考文献: Milgram, S. (1963). Behavioral Study of obedience. The Journal of Abnormal and Social Psychology, 67(4), 371–378.

⑱ ナッジ理論(デフォルト設定)

アイデア: 朝食のドリンク選択において、追加料金のかかる「Lサイズ」や「高単価ドリンク」を、メニュー表の「おすすめ(デフォルト)」として大きく配置する。

説明: 人は強制されなくても、環境設定(ナッジ)によって選択を誘導されます。初期設定(デフォルト)を選びやすい傾向を利用し、無理なく単価アップと満足度向上を狙います。

参考文献: Thaler, R. H., & Sunstein, C. R. (2008). Nudge: Improving Decisions About Health, Wealth, and Happiness. Yale University Press.

⑲ カクテルパーティー効果(自己関連付け)

アイデア: 立て看板に「朝食メニュー」と書くのではなく、「最近、朝起きるのが辛いあなたへ」「独身男性のための栄養チャージ」とターゲットを絞って呼びかける。

説明: 騒がしい場所でも自分の名前や興味ある言葉は聞き取れる現象を応用し、自分に関係がある情報だと認識させることで、注意を引きます。

参考文献: Cherry, E. C. (1953). Some Experiments on the Recognition of Speech, with One and with Two Ears. The Journal of the Acoustical Society of America, 25(5), 975–979.

⑳ 変動比率スケジュール(ゲーミフィケーション)

⑳ 変動比率スケジュール(ゲーミフィケーション)
アイデア: お会計時にくじを引き、「当たり」が出たらその場の朝食代が無料、または次回のコーヒー券をプレゼントする(確率はランダム)。

説明: 毎回必ずもらえる報酬より、いつ当たるかわからない「ランダムな報酬」の方が、行動(来店)を強化・持続させる効果が高いという学習心理学の理論です。朝の運試しというエンタメ性も付与します。

参考文献: Skinner, B. F. (1957). The experimental analysis of behavior. American Scientist, 45(4), 343–371.

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久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。

講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。

2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。

近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。

主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。

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