【事例付】顧客価値(存在価値)とは?選ばれる飲食店・食品メーカー・小売店のコンセプトの作り方

御店のストアコンセプト、商品やサービスの商品コンセプト、サービスコンセプトは、顧客へのマーケティングを行う際の、全ての土台、骨組みとも言えます。ここでは、どのように、そのコンセプトを決めていけば良いのかについて、「顧客にとっての顧客価値(存在価値)とは何なのか」を念頭にしつつ、説明していきます。

なお、後ほど説明しますが、この顧客価値と各コンセプトは明確に区別する必要がありません。誤解を恐れずに示すなら、「コンセプト≒顧客価値」と理解していただいても良いでしょう。

目次

1.顧客価値(存在価値)とは?(意味と小規模事業者にとっての重要性)

顧客価値とは何でしょうか。それは「御店が存在する意味や意義」「商品やサービスが存在する意味や意義」です。

少し極端に説明すると、商品やサービス、その事業が、「消費者にとって無くてはならないこと」「消費者にとって、無くなったら困ること」と言えます。「事業が何故、存続するのか?」「商品が何故、売れ続けるのか?」ここに真摯に向き合うことで、安定した成長を遂げる小規模な飲食業、食料品製造業など、多くの事業者を目の当たりにしてきました。

さて、その顧客価値を検討する際、常々、忘れてはいけないことが、あります。それは事業者が独り善がりにならないこと。そこで、事業者目線消費者目線で考えることが重要だと、当事務所では常々、説明しています。まとめると以下のような整理になります。

2.顧客価値を構成する種類(機能的価値・情緒的価値・体験価値など)

顧客価値とは、どのようなものがあるでしょうか。また、どのような視点で考えていけば良いのでしょうか。実際、重要なことは理解したとしても、「何から始めれば良いかが、わからない!」というのが現場での支援での実情です。

そこで、おススメしたいのが、以下の5つの価値が、皆さんの事業、商品やサービス、に実装できるかがポイントになります。

①機能的価値:商品やサービスそのものが持つ、物理的・実用的なメリットです。飲食店で言えば、「おいしい」「安い」「ボリュームがある」「提供が早い」「駅から近い」などが該当します。

②感性的価値:消費者の感性に訴えかけ、感動や共感、気持の高揚といった感情を促していく価値です。

③情緒的価値:商品やサービスを利用した際に、顧客が感じる優越的な気持ちや、幸福を感じるような感情を、促していく価値です。商品やサービスを通じて、顧客の心に生まれるプラスの感情でもあります。「居心地が良くて癒やされる」「店主との会話が楽しい」「日常を忘れて特別感を味わえる」「自分へのご褒美になる」などが該当します。

④経験的価値(体験的価値):顧客が商品やサービスを認知してから購入、利用、アフターサポートに至るまでのあらゆる接点で得られる総合的な価値や感情を指します。単なる製品の性能や価格(機能的価値)だけでなく、その過程で感じる喜び、楽しさ、安心感といった情緒的な体験を含めた「選ばれ続ける理由」のことです。

⑤自己表現的価値:商品やサービスを利用することで、自分のアイデンティティや、嗜好、選好、価値観等を表現できる価値です。

以下に、これら5つの顧客価値の事例を紹介しておきますね。

3.小規模店が大手チェーンに勝つための鍵:「機能的価値」と「情緒的価値」の違い

1)大手と同じ「機能的価値」の土俵で戦ってはいけない

多くの小規模な飲食店や食品メーカーは、どうしても「うちの商品・料理は他よりおいしい(機能的価値)」という土俵だけで勝負しがちです。

しかし、機能的価値は資本力のある大手チェーン店が最も得意とする領域です。「安くて、早くて、そこそこおいしい」を徹底的に追求する大手に、小規模事業者が同じ土俵で挑むのは非常に困難であり、過度な価格競争に巻き込まれて疲弊してしまいます。

2)情緒的価値こそが、自店だけの存在価値(顧客価値)になる

そこで重要になるのが、「情緒的価値(経験的価値や体験的価値を通して)」を高めることです。

5章で後述するような、「ただコーヒーが飲める(機能)」ではなく「誰にも邪魔されない自分だけの静かな時間を過ごせる(情緒)」といった、お客様の心の動きにフォーカスするのです。小規模店ならではの細やかな気配り、店主の想いやストーリー、独自の空間づくりなど、情緒的価値を深めることこそが、お客様にとっての「わざわざそのお店を選ぶ理由(=なくてはならない存在価値)」となります。

これからの時代、機能的価値を満たしていることは大前提です。その上で、自店がどのような「情緒的価値」を提供できるかを明確に言語化することが、強いコンセプト作りの第一歩となります。

4.顧客価値とストアコンセプト・商品コンセプトの重要な関係性

ここで支援の現場で、しばしば混乱を与える言葉の理解について、あえて説明しておきたいと思います。それは、ストアコンセプト・商品コンセプトという言葉と、顧客価値との関係性です。ストアコンセプト・商品コンセプトは、顧客価値を考えた後に、バラバラに考えるものではなく、「1本の木(根・幹・枝葉)」のような関係性に捉えて考えておくとスムーズです。

・顧客価値(木の根:Why):お店や商品が「なぜ社会(地域や顧客)に存在するのか」「顧客のどんな悩みを解消し、どんな喜びを与えるのか」という根源的な存在理由です。

・ストアコンセプト(木の幹:Where&Who):上記の顧客価値を、お店という空間・接客・雰囲気を通して「誰に・どのような世界観で提供するか」を言語化した全体方針です。

・商品(サービス)コンセプト(枝葉:What&How):ストアコンセプトを具現化するために、個々のメニューや商品が「具体的に何を・どのように提供し、価値を感じてもらうか」を定めたものです。

つまり、「自店の顧客価値(存在価値)」が明確になって初めて、ブレのない「ストアコンセプト」が決まり、それに紐づく魅力的な「商品メニュー」が生まれるのです。

注)顧客価値、ストアコンセプト、商品コンセプトを三角のピラミッド型に例えるなら、最上位の頂点が顧客価値、次いでストアコンセプト、最下段が商品コンセプト(サービスコンセプト)になります。つまり、ストアコンセプトを具現化するツールが商品であり、その商品はストアコンセプトを踏まえたもので無ければなりません。サービスも同様に考えます。

顧客価値とストアコンセプト・商品コンセプトの関係

.顧客価値からコンセプトへ落とし込む具体的な手順・作り方

1)顧客価値をコンセプトに落とし込んだ事例から概観する

支援先が珈琲専門店を開業するにあたって、どういった顧客価値、ストアコンセプト、商品コンセプトを考えたのかを説明します。その事例を通じて、具体的に顧客価値をストアコンセプト、商品コンセプトに落とし込む流れなどを確認しておきましょう。

御紹介する支援先の珈琲専門店は、ただ美味しいコーヒーを飲む場所(機能的価値)ではなく、「一人で静かに過ごしたい」という情緒的価値にフォーカスした事例です。

▶顧客価値(木の根:Why):社会における存在理由・解消する悩み
「情報過多で常にスマホや仕事に追われている現代人が、日常から完全に離れ、脳の疲労をリセットするための『自分だけの空白時間』を提供する」

顧客が得る喜び:「誰にも邪魔されず、静寂の中で自分自身と向き合い、心身を整える安らぎ」

▶ストアコンセプト(木の幹:Where&Who):誰に・どのような世界観で提供するか(全体方針)

ターゲット(Who):毎日忙しく働き、一人になれる静かなサードプレイス(第3の場所)を求めているビジネスパーソン。

世界観・空間(Where):「私語厳禁・お一人様限定の、図書館のような静寂珈琲店」

言語化されたコンセプト:「あえて何もしない、1時間だけの静かな避難所」

▶商品・サービスコンセプト(枝葉:What&How):具体的に何を・どのように提供し、価値を感じてもらうか

商品(メニュー)コンセプト:「時間を味わうための珈琲」。例えば、注文が入ってから15分かけてゆっくりと抽出する「深呼吸ブレンド」。カップではなく、あえて砂時計とポットで提供し、砂が落ちるのを眺める「時間」そのものを味わってもらう。

サービスコンセプト:座席はすべて壁や窓を向いた半個室の1名席のみ。BGMはボーカル曲を排除し、微かな環境音(雨の音や川のせせらぎ)のみを流す。注文はQRコードで行い、店員との会話も最小限にする。

▶この事例が示す「一貫性」の重要性:根(顧客価値)がブレないから、幹と枝葉が決まる
「自分だけの空白時間を提供する(根)」という明確な目的があるからこそ、「私語厳禁・お一人様限定(幹)」という尖ったストアコンセプトが生まれ、「砂時計と一緒に提供する・会話を最小限にする(枝葉)」という具体的なメニューや接客手法が論理的に導き出されています。

・ポイント:独りよがりな差別化を防げる
もし「顧客価値(根)」をすっ飛ばして「私語厳禁の店(幹)」や「砂時計で出すコーヒー(枝葉)」だけを真似ても、お客様には「ただのルールの厳しい店」「提供が遅い店」としか映りません。根っこにある「お客様への思い(Why)」がすべての土台である、という主張を裏付けることが重要です。

2)顧客価値を表現する具体的な構造

もっと詳細に説明すると、下図のように考えると良いでしょう。原則は、「顧客ニーズ+ウオンツ」、消費者目線においては「顧客ニーズのみ」「ウオンツのみ」でOKということになります。

上記の事例では、「安心して食べられる」という部分が顧客ニーズ、「子供の焼菓子」の部分が、ウオンツです。そして安心して食べられるというものは機能的価値と言えるでしょう。また「車内の国道101号線でラーメンなら・・」は経験的価値と言えるでしょうか。

3)顧客価値の検討の仕方

顧客価値(存在価値)の検討は、大きく3つのステップで可能で、概ね下表のように考えると良いです。

STEP①が特定存在価値(顧客価値)の決定、STEP②が一般的存在価値(顧客価値)の決定、STEP③が決定した存在価値(顧客価値)の需要開拓方法の検討、となります。

STEP①と②を起案する際、独り善がりな(事業者目線のみ)価値付けにならないように、STEP③を常々、念頭に、STEP①と②を起案していく必要があります。このステップ①を検討する際に、先ほどの5つの顧客価値の切り口を念頭に、整理していくこととなります。

6.顧客価値・コンセプトの成功事例

1)Googleキーワードプランナーから顧客価値を決めた事例

①マフィン専門店の事例

Googleキーワードプランナーを使って、検索数の多いビッグワードを抽出しました。その上で、そのワードを実際に検索し、どのような記事がインターネットの上位表示に多いのか、どのようなニーズがあるのかを詮索したのです。マフイン周辺の検索ワードには、乳腺炎の罹患者や糖質を制限したい人がレシピを欲していること、あるいは、そのような商品を探していることがわかりました。

罹患者や制限食の方に定着させたい顧客価値(自店)
・唯一の乳腺炎・糖質制限者向けマフィン

罹患者や制限食の方に認識されたい顧客価値(消費者)
・乳腺炎・糖質制限者も楽しめるマフィンは同店

②地方のドライブインの支援事例

自店への来店時の検索動向を調べました。結果、「所在する地域名 ラーメン」という検索ワードが一定量、調べられていることに着眼しました。その上で、店頭を通過する通行車のニーズに叶うよう、ラーメン メニューを根本的に見直しました。

ドライバーに対し新たに目指す顧客価値(自店)
・市内の国道101号線で1番ラーメンメニュー充実

ドライバーに認識されたい顧客価値(消費者)
・市内の国道101号線でラーメンなら同店

2)口コミサイトの批評から顧客価値を決めた焼菓子の事例

商品や御店に対しての悪口や批評は、見方を変えれば、消費者からの期待や要望ととれます。つまり、その期待や要望の中に、商品や御店の「お客様にとって無くてはならない存在」のヒントを得ることができます。支援先の食品メーカーでは、その悪口から商品コンセプトの見直しの改善点のヒントを得ることができました。

そこで、悪口を整理して、どのあたりを改善していけば良いかを下図のように整理しました。

結果、子供向けの焼菓子では、甘さを控えめにすること、サプリや健康視点を抑制して欲しいという顧客ニーズ(要望や期待)があることを見出し、次のように顧客価値(コンセプト)を整理したのです。

子を持つ保護者の方に定着させたい顧客価値(自店)
・国内で1番甘さ抑制し健康配慮の子供向け焼菓子

子を持つ保護者の方に認識されたい顧客価値(消費者)
・安心して常用させれる子供の焼き菓子は同社

3)自店の1次データを分析し顧客価値を決めた食料品専門店の事例

支援先の食品スーパーでは、売行きや販売点数の多い商品に着眼し、多用な視点でクロス分析を進めました。また商品群毎に相関分析を行うことで、交絡因子を見つけることが叶いました。

健康に配慮した加工食品と量目の少ない刺身の販売量には、強い相関関係があるのですが、因果関係がありません。そこで見つけた交絡因子が、単身の高齢者の存在だったのです。

市内の方々に定着させたい顧客価値(自店)
・単身高齢者が買い回り易い市内№1の品揃え

市内の方々に認識されたい顧客価値(消費者)
・市内で単身の高齢者に親切なお店は同店

3)ジョブ理論で顧客価値を見つけた食料品製造業(食品メーカー)の事例

顧客価値を検討する際に、とても優れた理論があります。それがジョブ理論です。以下の記事で詳しい記事を用意していますので、そちらで理論の概念や思考手順を確認しておいてください。
⇒「ジョブ理論とは?わかりやすい具体例と飲食店・食品・宿泊業・農業での「ジョブの見つけ方」(顧客価値の発見)」

1)レトルト米飯事業者のジョブ理論活用で顧客価値を発見した事例

電子レンジで温めて食べるレトルト米飯を製造している事業者を事例に紹介します。

ステップ①:従来の御客様の使用している状況を想像する
主婦が、「電子レンジで御飯を温めて提供すると、旦那に手抜き料理だと思われる」という状況があることを、顧客調査で知っています。

ステップ②:ジョブ(状況における課題)の認識
しかしながら主婦は、調理を楽にしたいので、レトルト米飯は活用したい考えていることを知ります。それでいて「手抜きだと思われたくない・言われたくない」といった課題があります。

ステップ①:従来の御客様の使用している状況を想像する
主婦が、「電子レンジで御飯を温めて提供すると、旦那に手抜き料理だと思われる」という状況があることを、顧客調査で知っています。

ステップ②:ジョブ(状況における課題)の認識
しかしながら主婦は、調理を楽にしたいので、レトルト米飯は活用したい考えていることを知ります。それでいて「手抜きだと思われたくない・言われたくない」といった課題があります。

ステップ③:ジョブを解決や改善できるツールを雇用する
このジョブに気づいた食料品製造業は、電子レンジで炊飯することができる商品があれば、雇用される(利用される)のではと考え、下記画像のように、電子レンジで炊飯する米飯を開発しました。もちろん炊いていますので、手抜きと思われることもありません。

ジョブ理論で開発したレトルト米飯の事例(無火炊飯)
ジョブ理論で開発したレトルト米飯の事例(無火炊飯)

2)米菓製造業のジョブ理論活用で顧客価値を発見した事例

ステップ①:利用されている状況を想像する
翌日に地元の顧問先に、出張先で土産を買って、訪問することがあることを伝えました。選ぶ基準は、見栄を張れるか、話題になるか、等々です。

ステップ②:ジョブ(状況における課題)の認識
顧問先で、渡して恥ずかしくなく(見栄が守れ・見栄が張れる!)、話題が弾むような御菓子があると嬉しいと、筆者は思っていました。

ステップ③:ジョブを解決や改善できるツールを雇用する
支援先の米菓製造業の経営者に、この「見栄が張れる!」という主旨を伝えたところ、日本で1番価格が高い高級な米菓を開発してくれた。半分は醤油味、半分は米の味(秋田県はコメの産地)を楽しめるように味無し(プレーン)といった「1枚で2度おいしい」米菓であった。多くのお土産を「見栄を張れる」というジョブのために必要とする方々に、最適な米菓が誕生しました。

http://kanaeya.co.jp/

7.モノ売りからコト売りへ:顧客価値(交換価値、使用価値、文脈価値)の本質

顧客価値は、さらに大きく3つの切り口、つまり交換価値、使用価値、文脈価値、で整理できます。具体的には下図のようになり、サービス・ドミナン ト・ロジック(Service-Dominant Logic、 以下S・D ロジック)(Vargo and Lusch 2004)、グッズ・ ドミナント・ロジック(Goods-Dominant Logic、以下G・D ロジック)という視点での解釈が必要になります。

西山・藤川(2016)、藤川(2017)を参考に作成

上記の図に登場する言葉について、以下に、それぞれ説明します。

1)グッズ・ ドミナント・ロジック(G・D ロジック)

価値を生み出すの は企業であり、モノとしての製品に埋め込まれた価値が、企業から顧客へと一方向的に提供されるという考えです。これは、小規模・中小企業の多くの飲食店や食料品製造業等の方々が展開するマーケティングの考えになります。この考えにおいては、購買時にモノが貨幣と交換される際の交換価値(value-in-exchange)を重視する傾向があります。

2)サービス・ドミナン ト・ロジック(S・D ロジック)

価値を生み出すのは企業と顧客の双方であり、様々な顧客接点や相互作用を通して、双方向的な形で価値は共創されるという考えです。この考えにおいては、購買の前後の様々な文脈の中で、企業と顧客の共創によって実現される「使用価値」(value-in-use)ないし 「文脈価値」(value-in-context) を重視する点に特徴があります。近年、業績が良い飲食店や食料品製造業等のマーケティング活動で重視される傾向が強まっています。

3)交換価値とは

顧客が抱える課題を、解決する代わりに貨幣を取得することになります。その貨幣価値に見合った価値を、商品やサービスに実装することで実現します。

4)使用価値とは

顧客が抱える課題の中で、そのモノやサービスを使用することで充足できる場合に、その価値が認められます。

5)文脈価値とは

商品、サービスがもたらす知識・スキルの消費プロセスにおいて、もたらすであろうベネフィットの中から、消費者が認識した時点で実感する価値です。それは、コンテクスト(背景、状況、場面)によって、その価値を気付くこともあるし、気づかないこともあるという考えです。つまり、顧客が置かれている状況次第なのです。

例えば、漁港の近くの食堂で、鮮度の良い刺身定食を食べる場面では、刺身定食は、とても美味しく満足する状況でしょう。しかしながら、牧場に併設のカフェレストランで、鮮度の良い刺身定食を食べる場面では、漁港の近くの食堂で食べる時より、美味しく満足する程度は低いでしょう。このように、置かれている背景、状況、場面によって、実感する価値は変化します。

さて、なかなか難しい概念を説明しましたが、要するに、商品やサービスを売って終わり(G・Dロジック)という時代は終わったということです。これからは、顧客の暮らしや生活に寄り添う考え、価値共創が重要なのです。企業と顧客が協力して、新たな価値を創り出すことを価値共創といいます。価値共創では、顧客の意見やニーズを取り入れて共に価値を生み出すことを重視しているのです。念のため、S・DロジックとG・Dロジックの相違を下表にまとめておきますね。

村松・井上(2010)を参考に作成

8.顧客価値と顧客ニーズの関係性と相違

蛇足ですが、ここも誤解が多いので、説明しておこうと思います。顧客価値と顧客ニーズは似て非なるものです。

顧客ニーズは顧客が抱える「課題や解決したい目的・要望」そのものを指し、「顧客価値」とは企業が商品・サービスを通じて提供する「顧客にとってのメリット(解決策や満足)を指します。つまり、ニーズは出発点であり、価値はその結果として提供されるものです。

例えば次のような感じです。
・顧客ニーズ:時間が無いので10分以内に食べ終わりたい(でも腹いっぱい食べたい)
・顧客価値:注文から手渡しまでに2分・8分以内で食べ終わる量(でも満足感がある)

顧客ニーズについて、もっと知りたい方は以下の記事を参考にどうぞ。
⇒顧客ニーズとは?潜在・顕在ニーズの違いと飲食・食品・小売業での把握方法【事例付】

9.最後に

いかがでしょうか。全てのビジネスの土台は、顧客価値(存在価値)を見つけ出すことです。それをストアコンセプトや商品コンセプトとして明確にすることで、事業や商品、サービスに触れた顧客にとっての重要性の強弱が決まってきます。

ここさえ決まれば、その後に続く集客策や販促策は、ぶれることはありません。ぜひ、皆さんの事業でも、1度見つめ直してみてはいかがでしょうか。

本記事の作成には、下記の受賞論文の他、次のような論文等を参考にしています。

Vargo and Lusch(2004)、Vargo and Lusch(2008)、Vargo and Akaka(2009)、Lusch,Vargo and Wessels(2008)、Chandler and Vargo(2011)

★顧客価値を動画でも学べます

参考:日刊工業新聞社賞 受賞論文

存在価値の見つけ方の参考に御利用ください。

初稿:2021年11月14日

加筆修正:2024年2月3日 、2025年2月24日、2025年2月26日、2025年12月17日、2026年2月21日、2026年3月17日

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久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。

講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。

2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。

近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。

主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。

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