飲食店のカフェ・タイムの集客や販促で役立つマーケティング心理学

今回は、飲食店のカフェ・タイムの集客や販促で、少し知っておくと役に立つマーケティング視点からの『心理学』(マーケティング心理学)の概念や施策のアイデアを紹介します。

ランチとディナーの間のアイドルタイム(14:00〜17:00)は、食事よりも「空間」「体験」「休息」が価値となります。サードプレイスとしての価値を高める心理学アプローチです。

ただし、ここに示すアイデアは、あくまで、支援先の現場で、何かしらの背景や情景を浮かべて、考えたものなので、そのまま皆様のお店に利用しても、まったく効果を感じないこともあるかと思います。

そこで、示すアイデアや施策には、その根拠となる学術的な論文や書籍などを紹介しますので、その論点を学んだ上で、皆様の御店ならではの施策に落とし込んでいただければと思います。

なお、施策やアイデアは、小規模事業者でも導入しやすい、SNS(Instagram/LINE)、店頭ボード、チラシ、メニュー表等の工夫を中心とした施策です。

① サードプレイスの提供(居場所の演出)

アイデア: 「読書歓迎」「PC作業OK」といったPOPを出し、長居を許容する席を設ける。

説明: 自宅(ファーストプレイス)でも職場(セカンドプレイス)でもない、くつろげる「第3の場所」としての価値を提供し、目的のない来店を促します。

参考文献: Oldenburg, R. (1989). The Great Good Place. Paragon House.

② 視覚的優位性(インスタ映え)

アイデア: 窓際などの自然光が入る席に、高さのあるパフェや色鮮やかなクリームソーダを配置し、外から見えるようにする。

説明: 視覚情報は脳への伝達速度が速く、通りがかりの人の「美味しそう」「撮りたい」という衝動を瞬時に喚起します。

参考文献: Posner, M. I., Nissen, M. J., & Klein, R. M. (1976). Visual dominance: An information-processing account of its origins and significance. Psychological Review, 83(2), 157–171.

③ バンドル効果(セット割引)

アイデア: 「ケーキ単品500円、コーヒー400円」の横に、「ケーキセット 750円」と大きく表示する。

説明: 個別に買うよりセットの方がお得だと感じさせ(痛みの緩和)、客単価を維持しつつ注文率を高めます。

参考文献: Yadav, M. S., & Monroe, K. B. (1993). How Buyers Perceive Savings in a Bundle Price: An Examination of a Bundle’s Transaction Value. Journal of Marketing Research, 30(3), 350–358.

④ テンション・リダクション(おやつの正当化)

アイデア: 「家事の合間の15分休憩に」「仕事の能率を上げる糖分補給」といったキャッチコピーを使う。

説明: 平日の昼間にカフェにいることへの罪悪感を減らし、自分へのご褒美として利用する正当な理由(言い訳)を与えます。

参考文献: Dhar, R., & Wertenbroch, K. (2000). Consumer Choice Between Hedonic and Utilitarian Goods. Journal of Marketing Research, 37(1), 60–71.

⑤ 希少性の原理(時間限定メニュー)

アイデア: 「14:00〜16:00限定 焼きたてスフレパンケーキ」を提供する。

説明: その時間に行かないと食べられないという制約が、アイドルタイムへの来店動機を強力に作り出します。

参考文献: Cialdini, R. B. (2009). Influence: Science and Practice. Pearson Education.

⑥ イケア効果(DIY体験)

アイデア: 「自分で点てる抹茶セット」や「仕上げのソースを自分でかけるデザート」を提供する。

説明: 自分が手作業を加えたものに対して、人は客観的な品質以上の価値を感じます。体験自体が来店の目的となります。

参考文献: Norton, M. I., Mochon, D., & Ariely, D. (2012). The IKEA effect: When labor leads to love. Journal of Consumer Psychology, 22(3), 453–460.

⑦ アンカリング効果(比較による割安感)

アイデア: メニュー表で「アフタヌーンティーセット 2,500円」を一番目立たせ、その隣に「ケーキセット 900円」を載せる。

説明: 2,500円を見た後では、900円が非常に手頃に感じられ、コーヒー単品(450円)ではなくセットへの注文誘導が容易になります。

参考文献: Tversky, A., & Kahneman, D. (1974). Judgment under Uncertainty: Heuristics and Biases. Science, 185(4157), 1124–1131.

⑧ ザイアンス効果(看板の接触頻度)

アイデア: 店頭に「今日のケーキ」の看板を出し、午前中、ランチ後、15時と内容や書き方を変えて出し直す。

説明: 同じ看板でも変化をつけることで通行人の目に留まりやすくし、繰り返し認識させることで好感度を高めます。

参考文献: Zajonc, R. B. (1968). Attitudinal effects of mere exposure. Journal of Personality and Social Psychology, 9(2, Pt.2), 1–27.

⑨ 返報性の原理(試食サービス)

アイデア: コーヒーを注文した客に、新商品のクッキーを「試作品です、よかったら味見してください」と一枚添える。

説明: 予期せぬサービスを受けると、好意的な評価を返したくなり、リピートやSNSでの拡散、帰り際の物販購入につながります。

参考文献: Regan, D. T. (1971). Effects of a favor and liking on compliance. Journal of Experimental Social Psychology, 7(6), 627–639.

⑩ 社会的証明(人気ランキング)

アイデア: 「当店のスイーツ人気No.1〜3」を写真付きでブラックボードに掲示する。

説明: 何を頼むか迷っている客に対し、「みんなが頼んでいる」という安心感を与え、意思決定をサポートします。

参考文献: Cialdini, R. B. (1987). Influence: The Psychology of Persuasion. HarperCollins.

⑪ サブスクリプション(定額制)

アイデア: 「月額3,000円でコーヒー飲み放題(1日1杯)」のパスを販売する。

説明: 来店習慣を強制的に作り出します。コーヒーだけでなく、ついでにスイーツや軽食を注文するクロスセル効果も期待できます(サンクコスト効果の応用)。

参考文献: Danaher, P. J. (2002). Optimal Pricing of New Subscription Services: Analysis of a Market Experiment. Marketing Science, 21(2), 119–138.

⑫ 感覚マーケティング(音のテンポ)

アイデア: カフェタイムはゆったりとしたスローテンポのジャズやボサノバを流す。

説明: 音楽のテンポが遅いと、顧客の動作や飲食スピードも遅くなり、滞在時間が延びます。リラックス空間としての価値を高め、追加注文(おかわり)を促します。

参考文献: Milliman, R. E. (1986). The Influence of Background Music on the Behavior of Restaurant Patrons. Journal of Consumer Research, 13(2), 286–289.

⑬ フレーミング効果(別腹アピール)

アイデア: 「ハーフサイズデザート」を用意し、「ランチの後でも重くない」とアピールする。

説明: 「カロリーが気になる」「お腹いっぱい」という拒否理由に対し、「小さいから大丈夫」という新しいフレーム(枠組み)を提示して注文させます。

参考文献: Levin, I. P., & Gaeth, G. J. (1988). How Consumers are Affected by the Framing of Attribute Information Before and After Consuming the Product. Journal of Consumer Research, 15(3), 374–378.

⑭ デフォルト効果(おすすめセット)

アイデア: メニューの最初に「迷ったらこれ!店主の気まぐれスイーツセット」を配置する。

説明: 人はデフォルト(初期設定)や推奨された選択肢をそのまま受け入れる傾向があります。選択の手間を省かせます。

参考文献: Thaler, R. H., & Sunstein, C. R. (2008). Nudge: Improving Decisions About Health, Wealth, and Happiness. Yale University Press.

⑮ 類似性の法則(コミュニティ化)

アイデア: 「編み物好きが集まる時間」「英会話カフェ」など、特定の趣味を持つ人が集まるイベントをアイドルタイムに開催する。

説明: 共通の趣味を持つ人同士は引き合います。店を「ただの飲食店」から「仲間と会える場所」に変え、固定客化します。

参考文献: Byrne, D. (1971). The Attraction Paradigm. Academic Press.

⑯ カクテルパーティー効果(呼びかけ)

アイデア: 「打ち合わせ場所をお探しの営業職の方へ」「幼稚園のお迎えまでの1時間を有効活用したいママへ」と看板に書く。

説明: 具体的な属性や状況を指名されることで、雑多な情報の中から「自分へのメッセージ」として認識させます。

参考文献: Cherry, E. C. (1953). Some Experiments on the Recognition of Speech. The Journal of the Acoustical Society of America, 25(5), 975–979.

⑰ 心理的リアクタンス(秘密のメニュー)

アイデア: 「会員様と、このチラシを見た方だけが注文できる裏メニュー」を用意する。

説明: 限定されたり禁止されたりすると、かえってその対象が欲しくなる心理です。特別感と好奇心を刺激します。

参考文献: Brehm, J. W. (1966). A theory of psychological reactance. Academic Press.

⑱ フリーミアム(おかわり割引)

アイデア: 「2杯目のコーヒーは半額」にする。

説明: 1杯目の利益を確保しつつ、2杯目のハードルを極端に下げることで、滞在時間の延長と満足度向上、そして客単価の積み上げを狙います。

参考文献: Anderson, C. (2009). Free: The Future of a Radical Price. Hyperion.

⑲ ノスタルジア(レトロブーム)

アイデア: 昭和レトロな「固めのプリン」や「クリームソーダ」を復刻メニューとして出す。

説明: 懐かしさは、過去を知る世代には安らぎを、知らない若者世代には新鮮なエモさを与え、幅広い層を集客します。

参考文献: Havlena, W. J., & Holak, S. L. (1991). The ‘Good Old Days’: Observations on Nostalgia and Its Role in Consumer Behavior. Advances in Consumer Research, 18, 323–329.

⑳ 損失回避性(ポイント倍増)

アイデア: 「雨の日」や「平日15時〜17時」限定で、ポイントカードのスタンプを2倍にする。

説明: 「ポイントをもらい損ねたくない」という心理を利用し、客足が鈍る条件での来店動機を作ります。

参考文献: Kahneman, D., & Tversky, A. (1979). Prospect Theory: An Analysis of Decision under Risk. Econometrica, 47(2), 263–291.

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久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。

講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。

2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。

近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。

主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。

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