飲食店のランチ・タイムの集客や販促で役立つマーケティング心理学

今回は、飲食店のランチ時間の集客や販促で、少し知っておくと役に立つマーケティング視点からの『心理学』(マーケティング心理学)の概念や施策のアイデアを紹介します。

ランチタイムは「時間の制約」と「午後の活力」が鍵となります。迅速な意思決定を促し、回転率と満足度を両立させる心理学アプローチです。

ただし、ここに示すアイデアは、あくまで、支援先の現場で、何かしらの背景や情景を浮かべて、考えたものなので、そのまま皆様のお店に利用しても、まったく効果を感じないこともあるかと思います。

そこで、示すアイデアや施策には、その根拠となる学術的な論文や書籍などを紹介しますので、その論点を学んだ上で、皆様の御店ならではの施策に落とし込んでいただければと思います。

なお、施策やアイデアは、小規模事業者でも導入しやすい、SNS(Instagram/LINE)、店頭ボード、チラシ、メニュー表の工夫を中心とした施策です。

① 決定回避の法則(メニューの絞り込み)

アイデア: ランチメニューを「日替わりA(肉)」と「日替わりB(魚)」の2種類のみにし、着席と同時に「どちらになさいますか?」と聞く。

説明: 選択肢が多いと選ぶストレスで満足度が下がる、または決定を先延ばしにする心理を防ぎます。選択肢を最小化することで注文時間を短縮し、提供スピード(回転率)を向上させます。

参考文献: Iyengar, S. S., & Lepper, M. R. (2000). When choice is demotivating: Can one desire too much of a good thing?. Journal of Personality and Social Psychology, 79(6), 995–1006.

② 双曲割引(スピード保証)

アイデア: 店頭に「注文から10分以内に提供。過ぎたら無料」という看板を掲げる。

説明: 人は将来の大きな利益より、直近の確実な利益(すぐに食べられる)を過大評価します。限られた昼休憩において「時間が読める」ことは、味以上に来店動機となります。

参考文献: Ainslie, G. (1975). Specious reward: A behavioral theory of impulsiveness and impulse control. Psychological Bulletin, 82(4), 463–496.

③ バンドワゴン効果(行列の可視化)

アイデア: 開店直後やピーク前に、サクラやスタッフの知人に頼んででも、窓際の席から埋めていく。または、あえて店外に行列ができるように店内の案内ペースを調整する。

説明: 「他人が消費しているものは価値がある」と判断する心理です。外から見て「人が入っている」「並んでいる」事実が、通行人の入店ハードルを劇的に下げます。

参考文献: Corneo, G., & Jeanne, O. (1997). Snobs, bandwagons, and the origin of social standards in consumer behavior. Journal of Economic Behavior & Organization, 32(3), 333–347.

④ アンカリング効果(価格の対比)

アイデア: メニューの最上部に「特選ステーキランチ 2,500円」を配置し、その下に「ハンバーグランチ 1,000円」を置く。

説明: 最初に見た高価格が基準(アンカー)となり、1,000円のランチが「お得」に見える効果を狙います。客単価の底上げと、主力商品の注文率向上に寄与します。

参考文献: Tversky, A., & Kahneman, D. (1974). Judgment under Uncertainty: Heuristics and Biases. Science, 185(4157), 1124–1131.

⑤ プライミング効果(色と食欲)

アイデア: ランチタイムのランチョンマットやメニューブックに、食欲を増進させる「赤」や「オレンジ」を多用する。

説明: 暖色系は交感神経を刺激し、空腹感や活力を高めるプライミング効果があります。短時間で満足感を高め、かつ回転を促す色使いです。

参考文献: Gorn, G. J., Chattopadhyay, A., Yi, T., & Dahl, D. W. (1997). Effects of Color as an Executional Cue in Advertising: They’re in the Shade. Management Science, 43(10), 1387–1400.

⑥ 希少性の原理(数量限定)

アイデア: 「12:00までに入店の方限定」「1日20食限定 ローストビーフ丼」とSNSやボードで告知する。

説明: 手に入る機会が制限されるほど魅力的に感じる心理です。ピークタイム(12:00〜13:00)を避けた早い時間への集客(ピークシフト)にも有効です。

参考文献: Worchel, S., Lee, J., & Adewole, A. (1975). Effects of supply and demand on ratings of object value. Journal of Personality and Social Psychology, 32(5), 906–914.

⑦ テンション・リダクション効果(食後の追加)

アイデア: ランチを食べ終えてホッとしているタイミングで、「プラス100円で一口デザートはいかがですか?」とワゴンで回る。

説明: 大きな決断(ランチの注文・食事)を終えて緊張が緩んだ状態では、追加の小さな提案を受け入れやすくなります。客単価のちょい足しに有効です。

参考文献: Dholakia, U. M. (2000). Temptation and Resistance: An Integrated Model of Consumption Impulse Formation and Enactment. Psychology & Marketing, 17(11), 955–982.

⑧ 同調行動(グループ割)

アイデア: 「4名様以上での来店で全員にドリンクサービス」というキャンペーンをオフィス街で打つ。

説明: 会社員のランチは集団で動く傾向があります。一人の意思決定者(キーマン)を取り込めば、集団全員が追随する同調心理を利用し、一挙に席を埋めます。

参考文献: Asch, S. E. (1951). Effects of group pressure upon the modification and distortion of judgments. Groups, leadership and men, 177–190.

⑨ 返報性の原理(待ち時間のサービス)

アイデア: 満席で待っている客に対し、冷たいお茶や小さな試食を無料で配る。

説明: 「待たされている」というストレスを「サービスを受けた」という恩義に変換します。「帰らずに待とう」という気持ちと、入店後の好意的な評価につながります。

参考文献: Regan, D. T. (1971). Effects of a favor and liking on compliance. Journal of Experimental Social Psychology, 7(6), 627–639.

⑩ シズル感(嗅覚マーケティング)

アイデア: ランチのピーク直前(11:30頃)、厨房の換気扇を全開にし、カレーやガーリックの香りを通りに流す。

説明: 香りは大脳辺縁系(感情や本能)に直接届き、空腹時の通行人の足を無意識に止めさせます。視覚情報よりも強力な誘引となります。

参考文献: Spangenberg, E. R., Crowley, A. E., & Henderson, P. W. (1996). Improving the Store Environment: Do Olfactory Cues Affect Evaluations and Behaviors?. Journal of Marketing, 60(2), 67–80.

⑪ デコイ効果(松竹梅の竹)

アイデア: ランチメニューを3段階にする。松(豪華海鮮丼1500円)、竹(海鮮丼1000円)、梅(鉄火丼800円)。

説明: 「梅」は質が劣ると感じ、「松」は贅沢すぎると感じるため、多くの人が無難でコスパが良さそうな「竹(ターゲット商品)」を選びます。単価の安定化を図ります。

参考文献: Huber, J., Payne, J. W., & Puto, C. (1982). Adding Asymmetrically Dominated Alternatives: Violations of Regularity and the Similarity Hypothesis. Journal of Consumer Research, 9(1), 90–98.

⑫ ザイアンス効果(日替わりSNS配信)

アイデア: 毎朝11時に、その日の日替わりランチの写真をLINE公式アカウントやInstagramで配信する。

説明: 毎日決まった時間に情報接触することで、ランチの選択肢を考える際に「あのお店」が第一想起されるようになります。

参考文献: Zajonc, R. B. (2001). Mere Exposure: A Gateway to the Subliminal. Current Directions in Psychological Science, 10(6), 224–228.

⑬ ゴール勾配効果(スタンプカード)

アイデア: 「ランチ10回で1回無料」のカードにおいて、初回利用時にスタンプを3つ押して渡す。

説明: ゴールまでの距離が縮まっていると感じると、人は達成しようと行動を加速させます。リピート率を高めるための基本かつ強力な手法です。

参考文献: Kivetz, R., Urminsky, O., & Zheng, Y. (2006). The Goal-Gradient Hypothesis Resurrected. Journal of Marketing Research, 43(1), 39–58.

⑭ 認知的不協和の解消(言い訳の提供)

アイデア: 高カロリーなカツ丼などのメニューに「午後からも頑張るためのスタミナ食」「ビタミンB1で疲労回復」と添える。

説明: 「太るかも」という不安と「食べたい」という欲求の矛盾(不協和)を、「仕事のため」「健康のため」という正当な理由を与えて解消し、注文を後押しします。

参考文献: Festinger, L. (1957). A Theory of Cognitive Dissonance. Stanford University Press.

⑮ ハロー効果(産地・ブランド強調)

アイデア: 「〇〇県産〇〇さんのコシヒカリ使用」「契約農家〇〇さんの直送野菜」と、ご飯やサラダの素材を強調する。

説明: 一部の素材が良いという情報が、ランチ全体の品質評価(メインディッシュの味や安全性)まで高めます。

参考文献: Nisbett, R. E., & Wilson, T. D. (1977). The halo effect: Evidence for unconscious alteration of judgments. Journal of Personality and Social Psychology, 35(4), 250–256.

⑯ ピーク・エンドの法則(会計時の飴)

アイデア: 会計時に「午後もお仕事頑張ってください」と声をかけ、メッセージカードを手渡す。

説明: 最後にポジティブな感情(リフレッシュ、応援)を与えることで、ランチタイム全体の印象を良くし、次回の来店につなげます。

参考文献: Kahneman, D. (2000). Evaluation by moments: Past and future. Choices, values, and frames, 693–708.

⑰ カクテルパーティー効果(ターゲット呼びかけ)

アイデア: 店頭看板に「お腹が空いた」と書くのではなく、「野菜不足が気になるビジネスマンへ」「辛いものでストレス発散したい方へ」と書く。

説明: 自分の状況に合致する言葉には無意識に注意が向きます。具体的なニーズを言語化することで、通行人の足を止めます。

参考文献: Wood, N., & Cowan, N. (1995). The cocktail party phenomenon revisited. Journal of Experimental Psychology: General, 124(3), 243–262.

⑱ フレーミング効果(お得感の演出)

アイデア: 「ランチセット 1,000円(コーヒー付き)」ではなく、「ランチをご注文の方は、通常400円のコーヒーが無料」と表現する。

説明: 同じ価格でも「無料」というフレーム(枠組み)で見せることで、圧倒的なお得感を感じさせます。ゼロ価格効果の応用です。

参考文献: Ariely, D., & Shampan’er, K. (2007). Zero as a Special Price: The True Value of Free Products. Marketing Science, 26(6), 742–757.

⑲ 権威への服従(ランキング活用)

アイデア: 店頭に「近隣オフィスワーカーが選ぶランチランキング 1位(自社調べ)」やメディア掲載実績を掲示する。

説明: 第三者の評価や権威を示すことで、失敗したくないランチ選びにおける信頼性を担保します。

参考文献: Cialdini, R. B. (1987). Influence: The Psychology of Persuasion. HarperCollins.

⑳ ホーソン効果(見られている意識)

アイデア: 「お客様の声を募集しています」とアンケート用紙を目立つ場所に置き、スタッフがキビキビと働く姿を見せる。

説明: 人は注目されていると感じると行動が良い方向に変化します。店側が客を大切にしている(注目している)姿勢を示すことで、客側も店に好意的な態度を取りやすくなり、リピーター化します。

参考文献: Landsberger, H. A. (1958). Hawthorne Revisited. Cornell University.

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久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。

講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。

2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。

近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。

主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。

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