飲食店や食品製造業等の資金繰り対策の方法

新しく飲食店や食品製造業者から引き合いがあり、支援に入る際、売上獲得に苦戦していることが通常なのですが、結果の症状として、資金繰りに行き詰まっている事業者も多いです。

そんな悲惨な状況を見て、あらためて資金繰りに困らないために何をしておけば良いのか、
あるいは「困ったときの対処法」を整理してみようと思いました。

当てはまること、既に実施済のこと等々、チェックリストのように使っていただければ幸いです。

目次
1.日々の資金繰り能力を高める最善策は売上の極大化意識
2.節税・税金対策はしてはいけない
3.過剰在庫(余剰在庫)を削減する
4.リース・レンタルの利用可能性を探る
5.セール&リースバック等の活用
6.売掛金未回収の回避(入金管理)
7.先に支払いが発生する売上を減らす
8.借り換えの準備を常々しておく
9.社員預金制度の構築
10.業績評価を利益重視にする
11.適正な人材配置
12.売掛金回収の早期化
13.前入金が実現できないかを検討する
14.支払い期間を延ばす
15.経費支払いを法人カードに変更できないかを検討
16.本当に支払いに困ったときの対処法


1.日々の資金繰り能力を高める最善策は売上の極大化意識 

 そもそも日々、月々の資金繰り能力を高めることがポイントです。それは、売上を想定以上に確保していくこと。需要開拓の手法や方法については、常々、ブログでヒントを記事にしていますので、ぜひ御活用ください。こちらからご覧になれます。

飲食店や食品メーカー(製造業)の集客や販促策の記事

飲食店のメニュー開発や食品メーカー(製造業)の商品開発の記事

2.節税・税金対策はしてはいけない

 世の中には、様々な節税方法があります。しかしながらそのうち9割超の節税方法は直接的な減税ではなく、税金の繰延がほとんどです。そのうち、多くが「何かしらの経費を作って、利益を圧縮するもの」です。つまり課税対象である利益を減らすということです。
 しかしながら、そもそも論です。経費を作るということは、支出を伴うということです。つまり、資金繰りを楽にするという誤解が世に溢れていることに注意してください。節税は税金の繰延べ対策には貢献します。しかしながら、資金繰りを悪化する要因にもなりうるのです。

3.過剰在庫(余剰在庫)を削減する

 過剰在庫(余剰在庫)を減らすことも資金繰りを楽にします。仕入れた商品や食材が、いつまでも店頭やバックヤードに残っていたら、現金回収も滞ってしまいます。また売れないがために、在庫を処分するようでは、廃棄コストや、価格販促による値差補填のような費用がかさみます。これは利益率低下に直結します。

4.リース・レンタルの利用可能性を探る

 リース・レンタルとは、設備や什器等の長期賃貸契約による賃貸を指します。例えば、飲食店が物販を開始するにあたって、真空包装機を必要とした場合、補助金や助成金を活用する等、購入するという選択肢もありますが、リース・レンタルで、毎月リース料金を支払ってレンタルするリース契約も可能です。また、配達用の社用車においても、購入する選択肢もありますが、リース・レンタルといった選択肢もあります。
 リース・レンタル契約が実現できれば、概ね、資金繰りの改善に役立ちます。購入すると資産として貸借対照表に計上しなければなりません。その上で毎年、減価償却する必要があります。1年目、2年目、3年目、4年目、5年目・・と償却期間中に渡り、経費を損益計算書に計上するわけですが、時間が経過するごとに償却額は下がっていくものです。リース契約であれば、リース料は一定ですので、1年目、2年目、3年目、4年目、5年目・・と、毎年同じ費用を計上することになります。資産にしてしまうと(購入してしまうと)、獲得した売上に対して適正なコストではない減価償却費で利益を計算しなければならないので、その商品やサービスが持っている本来の利益率が見えにくくなってしまいます。
 資金繰り改善においては、商品毎やサービス毎の利益率、しいては事業全体の利益率は、非常に重要です。適正な利益が出ていなければ、そもそも手元現金を少ししか残せないからです。また、リース・レンタル費用は、貸借対照表に計上される資産ではなく、損益計算書に計上する経費になりますので、貸借対照表は小さく、スリム化できることになります。結果、総資産経常利益率等は上昇することになります。これは、例えばパン屋やベーカリーのような設備産業においては、大切なことです。金融機関は設備が必要な産業形態には、必ずチェックが入るからです。つまり、貸借対照表のスリム化は、金融機関からの資金調達をスムーズにする効果が見込まれるのです。

5.セール&リースバック等の活用

 保有している資産を、リース会社に売却して、その資産をそのままリース契約で借りることを指します。例えば路面店で展開している飲食店が、店頭に駐車場スペースを保有している場合、こちらを売却して借り受けると言うことです。会社の資金繰りが悪い時は、検討してもよいものです。売却することで手元現金を増やすことができ、資金繰りの改善に貢献します。

6.売掛金未回収の回避(入金管理)

 当たり前のことですが、「回収すべきものを回収しているか?」も資金繰りには大きな影響があります。そのため、請求した金額が決まった期日に入金を確認できているか、支払いのない売掛先には督促を徹底する、与信を徹底する等を心掛けていきましょう。

7.先に支払いが発生する売上を減らす

 例えば、食品製造業(加工業)で商品を売って歩いている事業者であれば、営業代行会社や販売代理店を募集することが当たりますね。5000円の原価が掛かる商品を販売する場合、自社保有のトラックで自社で採用したアルバイトで、納品先をくまなく回って納品していませんか。この場合、アルバイト代ありきで商品の販売を見込むことになります。つまり、人件費が先に発生すると言うことです。事業の資金繰りが上手く行っている場合は、これは問題になりません。しかしながら、事業の資金繰りが厳しいのなら、迷わず、世に溢れる営業代行会社にお願いしてみるのも一考です。この場合なら、営業代行会社に卸値を設定してあげれば、勝手に販売してきてくれます。これは販売代理店でも同じことです。ただし、良い関係性が構築できる販売代理店に出逢うのは至難の業でしょうから、まずは営業代行会社になるかと思います。

8.借り換えの準備を常々しておく

 現在借入が有る場合、現在の金利よりも安い金利での調達方法や金融機関を探しておくことがポイントです。金融機関の取引の数は1件よりも2件、2件よりも3件といった状況を創ると言うことです。銀行等の金融機関の担当者が営業に来てくれることもありますが、基本的にはこちらから探しに行くことが大切です。

9.社員預金制度の構築

 大手事業者に存在する「社内預金制度」というものがあります。これは小さな事業者でも導入できることを知っておきましょう。社内預金制度は、働いている方が働いている事業所に預金をする制度のことです。例えば、ビジネスローンなどで資金調達すれば、金利は10.0%~15.0%は間違いなく掛かります。銀行から調達しても0.1~4%程度は掛かるでしょう。社内預金をしてもらっておけば、不測の事態の資金繰りに大きく活用可能です(間違いなく埋め合わせは必要になりますが)。働いている方が銀行に定期預金をしても、せいぜい金利0.1%程度ではないでしょうか。そうであれば、社内預金制度で金利をこれ以上に設定すれば、想像より楽に預金が集まります。制度構築手順としては、まずは労使協定を締結し、所轄労働基準監督署長に届け出ます。労使協定は労働組合か、それに代わる労働者代表と行うこととなっています。労使協定で預金者の範囲や預入限度額、預金の利率および利子の計算方法、預金の保全方法などを定めるのです。その上で、貯蓄金の管理に関する規定を作成し、これを働いている方に周知徹底すれば良いのです。

10.業績評価を利益重視にする

 資金を手元に残すには、売上も重要ですが利益も重視しなければなりません。利益が多くないと手元に残らないからですね。

11.適正な人材配置

 商品やメニュー毎、営業時間毎の売上や利益、それに見合った人員配置かを今一度、確認してみてください。人を掛けることで、より利益が出せたり、人を減らすことで利益が増えるようだと、手元現金が残すことが、まだまだ可能だからです。資金繰りを楽にする手元現金を増やすには「利益」が重要であることを今一度念頭において取り組みましょう。

12.売掛金回収の早期化

 商品の卸先の事業者からの支払いサイト(支払いまでの期間)を早めてもらう交渉をすることも重要です。取引先の支払い期間にあわせないと取引してくれない等々、諸事情はわかります。しかしながら、仮に10件のうち1件改善するだけでも、資金繰りが楽になったことを実感できるものです。新規の場合は、現状より早い回収期間を設定し請求することが可能な場合も多いです。

13.前入金が実現できないかを検討する

 商品・サービスの販売や取引条件を「前入金」前提のものに変えることも、資金繰りを楽にします。とくに新規顧客との場合は、可能なことも多いです。先に入金があれば「支払いは、入金後」というサイクルを構築することになるため、資金繰りは改善するどころか、どれだけ支払いが増えても、資金繰りが悪化することはありません。これが最良の方法だと言えます。しかしながら、そんなに容易な話ではありません。そこで前入金のメリットを打ち出す販促等を合わせて実施するのです。例えば、英会話の月謝が月々10,000円で1年で120,000円の場合、前払いで110,000円とする等、損が出ず利益が出る範囲で割引の特典を用意する等の工夫も可能です。仮に資金繰りが既に悪化しているのであれば、前入金前提の商品やサービスをテストマーケティングをしてみる気概も必要です。

14.支払い期間を延ばす

 既存の外注先や仕入れ先等への支払いを,可能な限り延ばす交渉をすることも大切です。あるいは、新規の仕入れ先へは、はじめから支払い条件が遅い条件で契約することが重要です。かなり資金繰りが楽になります。交渉ごとのため、既存の支払先に全て成り立つ話ではありませんが、仮に10社のうち1社でも改善できれば、非常に楽な資金繰りを実現できるはずです。交渉が困難な場合は、何かしら対価を用意することも一考です。サービスの場合は、代替えで「オプションのサービスを提供する」「支払額を少し上乗せする等々」です。資金繰りに困っていない事業者への支払いは、労せずに交渉が成立することも多々あります。

15.経費支払いを法人カードに変更できないかを検討

 文房具等の事務用消耗品費、PC、机等のオフィス家具、電話代金等の通信費など、経費支払いを全て法人カードに集約することも資金繰りを楽にします。具体的には、カードの支払いサイトを末締め翌々5日口座引き落とし、20日締め翌々末引き落とし等にすることです。これは、14番の支払いまでの期間を延ばす方法と同じ考え方です。進め方は、自らの事業の経費支払いの支払方法を全て洗い出し、その上で法人カード払いにした方が、支払いまでの期間が延ばせる経費項目を洗い出すことです。また、そもそも、支払いまでの猶予が長い法人カードを作ることも、重要になります。

16.本当に支払いに困ったときの対処法

 事業を継続する中で、支払いに困った経験がある方は少なくないはずです。「本当に首が回らない」といった状況に追い込まれることは無いと思いますが、実際に発生した場合は、次の視点で支払いの優先度をつけ、支払えるところから支払うようにしてください。

優先度①:日常の商売やサービス提供で必要な原材料や水光熱費など、関係性が途切れると売上に影響を即座にきたすもの。
優先度②:種々の税金(遅延利息が後程、事業の資金繰りに多大な影響を及ぼします)

 もし、金融機関に借入等の返済がある場合は、可能な限り事情を話してリスケを申込みましょう。何ら恥ずかしいことでありません。お客様のために「事業を継続することが大切!」であるからこその判断だと理解してください。

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久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。

講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。

2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。

近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。

主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。

売上を伸ばすことで
1)根本的な経営改善をしたい
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