農作物そのもの(農業者)の商品開発の方法や手順

今回は、農業者が、農作物そのものを、商品開発する方法について、手順と共に説明していきます。

目次
1.農作物の商品開発の必要性と概念
2.農作物の商品開発の手順と方法
ステップ① 農作物を「どう調理されたいのか」のコンセプトの決定
ステップ② コンセプトにマッチした野菜の機能性の検討と決定
ステップ③ 試行錯誤の栽培による再現性の確立
ステップ④:タネ(種)の選別と固定
ステップ⑤:調理してほしい料理を踏まえた販促活動の実施

1.農作物の商品開発の必要性と概念

個人や小規模の農家は、果物、野菜等々を栽培して販売する際に「こんな料理におススメですよ」「こんな食べ方がありますよ!」と紹介しつつ、お客様に販売する方が多いです。

結果的に出来た野菜を、「サラダに、煮物に、天ぷらに!」といった具合に、多くの農家が提案販売されます。そのこと自体は、それで何ら問題無いのですが、しかしながら、そこが農業者が想定通りの集客や売上を実現する上で、1番の課題なのです。

 本当に、その野菜が、提案する調理法に適しているのでしょうか?
 あるいは、調理法に適しているように その野菜は栽培努力され、完成しているのでしょうか?

 個人や小規模農家の方の場合、直で飲食店に納品したり、個人向けの宅配を実施したり、そのようなことが多いでしょう。そのような方々こそ、

 どういう料理で食べて欲しいのか?
 どういう使われ方を飲食店にしてもらいたいのか?

そのように考えてから、栽培を試行錯誤すべきなのです。

 逆に言うと、この思考で栽培された御野菜等は、他を圧倒する品質が実現できるとともに、販促におけるPRについても、とても響くバリエーションを持つことになるのです。つまり、農作物の商品開発が必要なのです。

 例えば、我がシンプルべジの事例を踏まえて、農作物の商品開発の手順を紹介していきますね。ここでは、飲食店に卸すことを目的に、開発する段取りを紹介していきます。

2.農作物の商品開発の手順と方法

ステップ①:農作物を「どう調理されたいのか」のコンセプトの決定

 取引したい飲食店、あるいは取引している飲食店の「売りのメニュー」を確認します。あるいは、ご自身の御野菜がどのように調理されてほしいかを決定します。例えば、シンプルベジの春菊は「サラダで食べて欲しい」「サラダで提供してくれる御店に卸したい」と決定しています。
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ステップ②:コンセプトにマッチした野菜の機能性の検討と決定 

 ここは、ややこしいので、サラダに美味しい春菊を事例に紹介してしまいます。 ポイントは、調理した結果の料理の「食味や風味をイメージできる」ことがポイントです。春菊をサラダとして提案するために「春菊に求める機能」は主に以下です。

 ⇒春菊らしい香りが必要
 ⇒茎や根元まで全部ざく切りで食べれる柔らかさ
 ⇒春菊独特の苦みや、えぐみが少ない状況
 ⇒見た目が春菊とわかりやすい形状

 このように調理してほしい料理において、求められる機能性や食味、風味、形状等を整理しておきます。

ステップ③:試行錯誤の栽培による再現性の確立

 ここからは、農家さんの腕の見せ所です。既成概念にとらわれず、ステップ②で紹介した機能性や形状、食味や風味を実現できるよう、栽培過程の様々なチャレンジをしてほしいのです。その機能性等を成し得えるための『試行錯誤』をするのです。

 サラダに適した品質は、どのような栽培方法が良いのか、トライアンドエラーで工夫をこらしていきます。ポイントは「自然な流れを栽培に活かす」ということです。トライアンドエラーが目指すのは「再現性の確立」です。

 ・適する土壌を考える:キク科の雑草が多い土壌が良さそうだ・・
 ・柔らかい茎にするためには、白綿が茎の中に少ないようにするには:密植栽培が良さそうだ・・
 ・・・。。etc

 自然を観察しながら、再現性があるように人為的に関わる(栽培)、それが「自然な流れを栽培に活かす」ということです。商品化した後「あの時と風味が全然異なる・・」では、原則的に商品開発しているとは言えません。

 シンプルべジでは、再現性の論点として、例えば以下のような栽培管理を行っています。すべては紹介できませんが、わかりやすい論点のみ紹介します。

⇒ヨモギなどキク科の雑草が多い圃場

⇒密植栽培で茎を細目にする(柔らかくする)

ステップ④:タネ(種)の選別と固定

 どのような農家でも、最初は種を購入しますよね。現在自家採取をしている農家の多くも、最初は購入であったはずです。原則的に農作物を商品開発する場合、購入した種を、固定していかなければ、所与の機能性や形状、食味や風味を維持する事が出来ません。

 最終的に提案したい料理に適する「野菜の機能性」を発揮できる形質や形状、風味に近づくであろうタネを選んでいき、次世代に繋いでいくと言うことです。

 サラダに美味しい春菊のタネ(種)を最初に購入する場合、大きく以下の3パターンから検討をはじめたものです。それは小葉系春菊、中葉系春菊、大葉系春菊です。その上で、調理して食べてもらう際に必要な機能性や食味等から、適切な種を選択して購入するようにします。

・春菊らしい香りが必要:香りは小葉系が適切、中葉系は香り弱い、大葉系は香りがほとんど無い
・茎や根元まで全部ざく切りで食べれる柔らかさ:小葉系は筋張りがある、中葉、大葉系は栽培工夫で柔らかさ調整可能
・春菊独特の苦みや、えぐみが少ない状況:大葉系は茎の中に要因である白綿が多くなる、中葉は栽培工夫で白綿減らせそう、小葉は白綿できない
・見た目が春菊とわかりやすい形状:小葉系は人参の葉等々にも似ている、中葉系は一般的なイメージとして春菊らしい葉の形状、大葉系は関西以西では春菊としての認知度が高い。

 大まかに言えば、以上のように検討し、最終的に中葉春菊を選択することにしたのです。

★自家採取する場合は。機能や形状、風味や食味を充足している「株」を次年度以降、選抜して残しておき、花を咲かせ、そして見守りながら種を取ることになります。

ステップ⑤:調理してほしい料理を踏まえた販促活動の実施

 このように調理してほしい、このような機能があるので、調理はこのようにしてほしい、そのような商談や販促活動を展開するよう、心掛けましょう。例えばシンプルべジは、下のように画像等を示しつつ「サラダに美味しい理由」と伝えることもあります。

⇒サラダで美味しい理由として、茎の中に白綿が無い

(右2つがある。左2つ無い状態で、左がサラダに適していて苦味、えぐ味なし)

⇒茎が一般の流通の春菊に比べしなやかで長いので、柔らかい

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久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。

講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。

2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。

近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。

主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。

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