ここの成功は、実は交絡因子の把握にあります。
今回はこの説明をしようと思います。
飲食店や食品加工業の事業者の商品
この認知度と売上をグラフ化すると概ね、以下のグラフになることが知られています。
多くの飲食店や食品加工業の商品で、関係性をグラフにすると、
概ね、このような結果になるものです。
さて、この結果、単なる偶然(相関関係)なのでしょうか?
それとも、事実(因果関係)なのでしょうか。
相関関係であれば、ただ単に、売上が向上する局面の事業者においては、認知度が高い事業者が多い・・です。
事実であれば、認知度が高まると、売上が向上する局面になるものだ・・との因果関係が成り立ちます。
結論から言いますと、認知度と売上の関係には、因果関係はありません。
例えば、このようなことがあります。
地域で古くからある洋食屋さん、地域の人は誰でも知っている・・存在
・・にも関わらず、閑古鳥が鳴いている・・ってなこと。
つまり、認知度が高いからと言って、認知度が高まったからといって、売上が上がるという保証が無いのです。
販路開拓の取組においては、この視点が非常に重要です。
新聞折り込みで、地域全世帯にフライヤーを掘りこんで、認知度をあげても、売上につながらない、来店促進につながらない
これは、当たり前にある光景です。
ですから、販路開拓の取組は、そんな単純なものでは無いと自戒しなければなりません。
それでは、どのような視点が必要なのか・・
それは、この売上と認知度の両方に影響を与える「要素」を検討し、探し出す事です。
その上で、その要素がわかったならば、その要素を踏まえた販促策が、有効(認知度向上が売上につながるという事象になる)になります。
実際の話で紹介します。
先のエトアールさんに再登場していただきます。
茅ヶ崎のサザン通りにある洋菓子屋さん、認知度と売上の両方に影響を与える要素を、サザンオールスターズのファンだと設定しました。
そこで、サザンオールスターズのファン向けに、サザンサブレという商品を開発し、販売しています。
また、桑田佳祐さんに、商品を届けることに成功し、本人やマネージャー等々から、御礼のお手紙をいただくことに成功しています。
結果、サザンオールスターズのファンに認知度を高める事、さらには、サザンオールスターズのファンが購入すること、両方に影響を与えることが叶ったのです。
このように、原因(認知度が高まる)と結果(売上向上)の両方に与える要因を、交絡因子と呼び、
相関関係がある!といった事象の背景には必ず存在するものです。
これを攻略したとき、はじめて、上図グラフのような、結果が得られるということは忘れてはならないのです。
久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。
講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。
2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。
近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。
主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。