多属性態度モデル活用による主力メニューや商品の決め方(発掘法)

 支援先の飲食業、食品製造業(食料品製造業)、食料品小売業(食品スーパーや鮮魚店、八百屋)、宿泊業等で、売上を想定通り獲得出来ていない状況の1つに、
「主力メニュー(飲食店)が存在しない」「主力商品が存在しない」「主力になる品揃えが乏しい」「主力になる宿泊プランがわからない」
このような場面に出くわします。

 無論、「この店と言えば!」「このメーカーと言えば!」そんな商品やメニューが存在(主力メニューや商品)した方が、想定通りの売上獲得が叶うものです。とは言え、どうやって数あるメニューの中から、選択すれば良いの?そんな疑問がわくことでしょう。その際のアプローチを紹介します。

 今回のアプローチは、多属性態度モデルというものを、一部活用します。

このアプローチは、当事務所の支援の現場において、多くの成功体験を積んできたもので、自信を持っておススメできます。無論、読んでいただければ、概ね把握することができるでしょうが、どうしても、統計的処理が必要な場面がありますので、そこは種々の専門家に頼りたいところですね。

目次

1.多属性態度モデルとは
2.多属性態度モデル活用による主力メニューの発見の手順
ステップ① 売れ筋メニューや商品をピックアップ
ステップ② 事前に来店客の評価態度を収集
ステップ③ ステップ②でわかること
ステップ④ 多属性評価モデルの日々の確認

1.多属性態度モデルとは

 消費者が、商品を評価する際、1つの属性だけに着目して判断することはありません。その商品の複数の属性に着目して、判断することが普通です。

 そこで、この「複数の属性」を統合したものが、その商品に対する「全体的態度」であると考えます。これが、多属性態度モデルと言われるものです。

2.多属性態度モデル活用による主力メニューの発見の手順

ステップ① 売れ筋メニューや商品をピックアップ

まずは、ABC分析(重点管理)等で、売れ筋商品やメニューを事前にピックアップしておきましょう。そのピックアップしたものは、最低でもAに値するもの、可能ならBに値するものまでを管理の候補とします。

 このステップ①を実現するには、あらかじめ、一定期間の商品毎の売上集計と管理が必要になります。エクセルで充分です。

 その際の売上管理のポイントを、業種業態毎に紹介すると以下になります。
・飲食店
 飲食店の場合、メニューが30点以下であれば、全てを売上の集計対象とします。もし30点以上であれば、スタッフと会話する等、まずは上位30点の目星をつけておいて、一定期間のメニュー毎の売上を集計して、ABC分析しましょう。

・食品製造業(食料品製造業)
 小規模や中小企業の食品メーカーの場合、自社の主力商品は一目瞭然というのが一般的でしょう。プライベートブランドや、特定の小売業の留型商品を除いて、自社ブランド商品の中から選択するようにします。小規模や中小企業の食品メーカーの場合は、おそらく1番売れている商品、あるいは上位3位までの商品は、わざわざ売上を集計する迄も無く、選択可能でしょうから、特にABC分析をする必要は無いと言えますね。

・食料品小売業(食品スーパーや鮮魚店、八百屋)
 この業種の方は少々大変ですが、今どきPOSレジ等は、保有していることが多いので、ABC分析をエクセルで、わざわざ実施しなくても良いのではと思います。ただし、POSレジ等が無い場合は、お客様がお買上にいただいた商品名毎に「正の字」で、レジ打ちで積算する等、必要になるかもしれませんね。また1ケ月単位で売上を集計するということであれば、月末の棚卸で、売れ筋把握も可能でしょう。

・宿泊業
 一定期間に提示している宿泊プランをリスト化し、予約数、実際の宿泊数をカウントしていきましょう。その結果をABC分析すれば良いでしょう。

ステップ② 事前に来店客の評価態度を収集

 ステップ①の一定期間の売上集計と管理を続ける傍ら、利用してくださったお客様に事前にアンケートを行います。どんなアンケートかと言いますと、お客様の嗜好や選好(好み)の強弱を問うアンケートになります。自店に対しての「お客様の評価態度」を問うアンケートです。

 例えば飲食店の場合、提供する料理に対しての嗜好や好みを問うことになりますので、下表のような視点になります。

 ここでは話をわかりやすくするために、3つの属性(彩り・鮮やかさ、食材のコダワリ、栄養バランス)に絞ってあります。無論、細かい方が良いのですが、協力してくれるお客様のことを考えると5~7つの属性程度までにしたいですね。さて何を問うかと言いますと5段階で数字を入れてもらいます。

 回答には、5:最も重視する 4:重視する 3:気にしたことが無い 2:あまり気にしない 1:まったく気にしない

 このようなニュアンスで回答しやすくすると良いですね。あとは、回答者数を踏まえ、統計処理が必要になります。ここは専門家に任せてあげてくださいね。

 食品製造業(食料品製造業:食品メーカー)、食料品小売業(食品スーパーや鮮魚店、八百屋)の場合は、次の視点で整理してあげると良いでしょう。
 パッケージデザイン、商品説明や裏面表示、量目、包装形態、食材のコダワリ・・etc.

 食料品小売業の場合は、上記に店内装飾、POP、売場の買い回りのしやすさ、といった項目を追加していきます。

 要するに商品の構成要素を書き出していくと、アンケートすべき項目の理解が進みます。宿泊業の場合も、原則的には食品製造業等と同じで、その宿泊プランを構成する要素を書き出していくと良いでしょう。
 部屋の面積、温泉やお風呂、御料理、アメニティ、清掃状況、部屋のタイプ・・・etc

ステップ③ ステップ②でわかること

 ステップ②では結局、自社に来店してくれるお客様、購入してくれるお客様の、自店や自社への嗜好や好みの「重要度」(態度)がわかります。具体的には、下表のようになります。

 つまり、この飲食店に来店してくれるお客様は、普段、彩り・鮮やかさには「3」、食材のコダワリには「5」の嗜好があるということです。

ステップ④ 多属性評価モデルの日々の確認

 日常の飲食提供、日常の流通販売を通じて、それぞれの商品やメニューの評価(注1)をお客様1人1人に実施してもらいます。先の飲食店の場合は、3属性についてです。評価は、例えば、次のようでしょう。

3:彩り・鮮やかさが「素晴らしい」 2:彩り・鮮やかさは「ふつう」 1:彩り・鮮やかさは「物足りない」

 注文を取り、その後、配膳する際にでも、回答への御協力を、お客様にお願いするよう、スタッフに協力してもらいましょう。

(注1)ステップ①の結果、明確になった売れ筋を、上位でリスト化し、飲食店なら、提供する料理(メニュー)について、食品や菓子製造業等の食品製造業(食料品製造業)なら、出荷している商品について、食料品小売業なら、品揃えしている商品について、宿泊業なら、宿泊プランについて、利用したお客様に、都度、アンケートを行います。

 話をわかりやすくするために、この飲食店には3つのメニュー(A,B,C)しかないものとします。仮に、一定期間のAメニューの利用者が42名、Bメニューの利用者が39名、Cメニューの利用者が38名だとし、上記3段階を評価していただき、単純平均した場合、下表のようになることでしょう。

ステップ⑤ 主力メニュー候補の選択

 あとは、メニュー毎の評価を得点化することです。先の例であれば、メニューAは、1×3+2×5+1×2=15点 というように計算していきます。

 表であれば、お客様の評価が高いのは「メニューB」となりますので、これを主力メニューとして選抜し、育成していくことになります。

 ここでは説明していませんが、食品製造業(食料品製造業:食品メーカー)、食料品小売業(食品スーパーや鮮魚店、八百屋)、宿泊業も同様に評価していきましょう。上表にあるメニューAが商品A、メニューAが宿泊プランA、といった具合に考えてもらえれば良いでしょう。

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 いかがでしょうか。一部、統計的処理が必要になりますが、個人や小規模事業者の皆さんも取り組みやすいものです。「1番売れているから」といった理由で、その商品を主力メニューや主力商品と決めつけず、総合的・全体的な視野から、主力メニューや商品を発見し、育成していくようにしましょう。目標売上や、必要な売上獲得の近道になるはずです。

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久保 正英(中小企業診断士・マーケティングコンサルタント)

加工食品事業者や飲食店等の消費者向け商売の「マーケティング」戦略立案と実行支援に日々取り組む。 支援する事業者のスキルや、置かれている事業環境を踏まえた「実現性の高い」支援が好評である。

講演やセミナー、執筆においては、「出来ることから出来るだけ実行」をモットーに、実効性の高い内容を傾聴、傾読できる。

2016年には、記号消費論を活用した「集客の手法論」を広く世間に公開し、その内容が認められ「中小企業庁長官賞」を受賞した。

近年は、存在価値論を支援研究テーマに掲げる一方、農林水産省や環境省の委員を2013年以降現在まで歴任しており、飲食業、食品製造業、農業、水産業といった業種の政策への提言も積極的に行っている。

主な著書に『飲・食企業の的を外さない商品開発~ニーズ発掘のモノサシは環境と健康(カナリア書房)』 『「お客様が応援したくなる飲食店」になる7つのステップ (DO BOOKS・同文館出版)』がある。

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